【沖縄からの通信】

10・14沖縄の自己決定権を考える勉強会
  「内的自己決定権」の獲得へ

 十月十四日・那覇市で、沖縄平和市民連絡会の主催による「沖縄の自己決定権を考える勉強会」が開かれた。
 問題提起を島袋純さん(琉球大、政治学・行政学)、コーディネーターを新崎盛暉さん(沖縄大、沖縄現代史、平和市民連絡会)が行なった。
 島袋純さんは、「沖縄の『人民の自己決定権』―国際人権法と国際立憲主義に依拠して―」というテーマで提起を行なった。この提起は、2時間近くの長大なもので、今日の沖縄の闘いをさらに押しすすめるために、「内的自己決定権」の行使を考えるべきと結論づけるものと言える。その結論を説明するため、氏の学説の体系、沖縄の復帰前・後に対する史観、日本国憲法観、安倍政権観、国際人権法の到達点などなどについて懇切ていねいに語った。
 提起の要旨を紹介する。人が人というだけで基本的人権をもつ。これを確認・共有するために、第一段階として権利の章典を宣言する。これを文言と成すため、憲法制定会議が人民代表によって作られる、これが第二段階。憲法原案が人々に提示され、議論喚起され、人々全体の合意形成が諮られ、人民の投票または議会によって承認される、これが第三段階。
 権利の章典を拘束力ある規範となすため、政府を創出する。権力を創造し、統制する仲間・私たちということで、人々の政治的統合が行なわれる。立憲主義が人々に血肉化する。教育でこの物語を何度も繰り返し教えることで、血肉化が世代間伝承する。こうして立憲主義を守る主体が育成される。これが護憲の本質である。
 日本国憲法は、権利の章典の手続き、憲法制定会議、人民の承認が無い(天皇の勅令、帝国議会で改正)。立憲主義の血肉化に失敗している。
 また、憲法より上に日米安保条約を容認し、主権在民より上の米軍特権を認めている。
 しかし、「権利の章典」の条文化、主権在民、基本的人権、社会権、権力分立、地方自治の条項を持ち、当時の世界標準以上の普遍的内容を持っている。
 復帰前の沖縄は、権力者(米軍)が好きなように犯罪を作り、好きなように逮捕し裁くものであった。基本的人権は無かった。米軍統治はアメとムチで分断社会を作り、公共的空間は存在できなかった。しかし島ぐるみ闘争によって、自由な雰囲気が作られていった。
 復帰運動には、二つの動因があった。①立憲主義の運動であった。外国軍による統治から、基本的人権を保障する日本国憲法の下へ入る。②日本民族となり同化し、権利回復していくであった。
 復帰後の日本政府の沖縄統治はどうであったか。公用地暫定法、地籍明確化法、駐留軍用地特措法、地位協定等によって①が否定された。沖縄振興が最重要課題として②が推進された。
 沖縄人が復帰した日本国の憲法は、安保条約の下にあった。立憲主義は疑わしい。在沖米軍が有した無期限・自由使用の権利を、日本政府が肩代わりして継続・保障することが施政権返還の本質であった。沖縄人の「立憲主義憲法の下へ」という主たる動因は、裏切られた。
 安倍政権は、積極的に立憲主義を破壊しようとしている。安倍政権による4・28主権回復六十年式典は、日本の「民族」と「主権」から、沖縄を除外する意味をもっている。沖縄への徹底的な弾圧の意志が示されている。
 ここで、沖縄への構造的差別を解消する手立てはあるのだろうか。
 1945年・国連憲章、1948年・世界人権宣言、1960年・植民地独立付与宣言、1966年・国際人権規約(人民の自己決定権、これを国家が侵害できないよう制約)などが制定され、国際立憲主義は進展してきた。今も進化しつつある。スコットランドやカタロニアなどなどで、主権国家内におけるマイノリティ(少数派の「人民」)の主権者としての権利回復=内的自己決定権の制度化ができた。
 自己決定権は、国家に与えてもらう権利ではない。歴史的・政治的・文化的に独自性をもつ集団に当然に、つまり国際法によって直接与えられている権利である。世界の人々が創造した国際立憲主義を沖縄人が利用させてもらい、その成果を世界の人々にお返しすることができるのではないか。
 以上、大きな拍手であった。(補足すると、外的自決権とは、国家としての分離あるいは結合を意味するが、内的自己決定権とは、自治州の獲得、国法レベルの法律制定権などを意味する。また、ここで言う自己決定権は、地方自治・住民自治一般でいう自治権ではなく、国際法が固有集団に認める自決権を意味する)。
島袋氏の提起する方法で闘うということは、沖縄人の主体性を血肉化していく意味でも貴重なものだ。この理論と今の実際とを結びつけ、現実にみあった政治行動を描くことができるだろう。例えば、内的自決権を行使するための独自の議会を求める運動等である。そうした運動の過程そのものが闘いとなる。琉球立法院の1962年2・1決議が今日、再評価されているのも、国際法を利用し、沖縄から世界に発信するというその闘い方である。
 沖縄人自身の闘いによって、沖縄は救われる。沖縄の自己決定権の獲得!(沖縄T通信員)