労働者共産党第五期第三回中央委員会総会決議(2013・9)

   新時代を開く共産主義者の団結・統合を


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 一九九九年の結成大会が採択したわが党の綱領的文書「共同声明」は、団結・統合の呼びかけをもって締めくくった。
 「世界史の大転換と日本階級闘争の厳しい現状は、日本の革命的左翼に活動の在り方の抜本的な質的転換を求めている。21世紀の新しい地平に立って、小異を残して大同につく協力と統合の共同事業を達成しよう。団結・統合して、革命の時代を切り拓こう!」
 二〇〇三年の第二回党大会が採択した情勢・任務決議は、団結・統合の進め方について、「共同声明」の確認を発展させて、次のように述べた。
 「党は、綱領・戦術・組織の上での基本的一致を条件とし、また共産主義運動の現代的発展を目指す課題意識を共有し、また党建設の総括の相互了解を重視し、また大会を開いて指導部と全体を統合することによって、共産主義政党・政派との組織統合を行う。党は、二党間統合協議を主とする方法によって、対象党派、政派への働きかけを引き続き進める。統合協議では、わが党の「共同声明」「規約」が可変的であることを当然としつつも革命運動の原則を堅持し、団結の願いをもって論争するとともに、意見の違いを柔軟に処理して統合の達成を目指す。
 また党は、既存の党派の再編という次元だけでは左翼の本格的な再生・結集軸には成り得ないことを認識しつつ、その次元を超えて、広く先進的な人々とこれからの世代にアピールできる規模と内容をもって、団結・統合の大きな流れを形成することをめざしていく。」
 二〇〇八年の第四回党大会が採択した情勢・任務決議は、「日本においても戦後の利益誘導型政治構造が後景に退き、これからの一時代の階級攻防を規定する政治構造が形作られる局面に突入した。新たな時代の階級闘争は、以下の三つの路線を極とする三つの政治ブロックに収斂して闘われるに違いない」として、共産主義者の団結・統合をこれからの一時代の政治構造の内に位置づけた。
 「第一極」をなす路線は、「超大国アメリカのグローバル支配と良好な対米関係を大前提とする路線である。グローバルに権益をあさる巨大投機資本と多国籍企業の利益を代表し、資本の自己増殖運動と社会の存立が両立しなくなるこれからの時代において、開き直り的に前者を推進する路線である。」
 「第二極」路線は、「アメリカ一辺倒・新自由主義(市場原理主義)をやりながらも、他方でアメリカと一定距離をとった東アジア共同体を志向し、民衆の政治的包摂に腐心するマッチ・ポンプ路線となるだろう。この路線は、新自由主義の諸結果である『格差』『貧困』などに対する民衆の側からする批判が高まる局面で、政治的に浮上する。」
 「第三極」路線は、「まだ立てられていない」としつつ、「土台となるのは、非正規層への立脚と階級的団結の形成であり、地域を基盤とする相互扶助社会の創出である」と指摘した。そして「巨大投機資本と多国籍企業のグローバルな自己増殖運動が日本の社会をも崩壊させ始めた時代状況の中で、これからの支配の在り方をめぐる支配階級の側の路線形成と政治再編が路線対立を顕在化させながら先行してきた。だが民衆の側においてもまた、旧来の運動の在り方からの転換、政治・組織流動、路線の模索という過程が深く進行している」とし、この過程の推進的一翼として共産主義者の団結・統合を位置づけた。
 そして、二〇一一年の第五回党大会は、次の点を指摘した。「3・11」と世界金融危機再来の動向が加速しようとしている政治情勢の最大の特徴は、「支配階級内部の路線対立を超えた」「新たな社会を創造する動き」にこそある。労働者民衆の側の「政治勢力の形成と路線の立ち上げが問われている」と。
 いまや問題の核心は、資本主義が歴史的役割を果たしていた時代の共産主義運動の在り方を総決算できず、しかも資本主義が社会を崩壊させ始めた現代の共産主義運動を定立できないために、共産主義運動が分散と混迷を深め、消滅の危機に陥っていることにある。その結果、労働者民衆は、支配階級のあれこれの路線に包摂され、自立的な力の蓄積を不断に解体され続けている。この主体状況の克服が問われているのである。

       A

 われわれは、1970年代半ばにはじまる団結・統合の事業を押し進めた経験を持っている。しかし今回のそれは、当時のそれと質的に異なるものとなるだろう。
 当時の団結・統合は、革命的左翼の少なからぬ部分が、国家権力問題に対するその「左翼」的誤りの故に、1970年前後の学生運動の激動と後退の試練に対して『政治第一』の見地から正しく対処できず、多くの場合組織的にも分裂していったことへの反省をバネとするものであった。
 そもそも19−20世紀の共産主義運動は、まずもって国家権力を奪取し、しかる後に社会革命を展望するものであった。そこでは国家権力問題が圧倒的に中心課題であった。70年代半ば以降の日本における団結・統合は、まさにその領域での総括と教訓の定式化の上に推進された。
 しかし時代は、「世界史の大転換」期に入っていった。産業の成熟、地球環境限界への逢着など社会の土台が変化し、グローバル資本主義とりわけマネーゲーム資本主義が台頭する。ソ連の崩壊は、大転換期を象徴する事件の一つであった。19-20世紀の共産主義運動は、そのサイクルを終えた。
 資本主義はいまや、投機マネーの肥大化の対極に失業人口を膨張させ、またそれを背景として就労層に資本への度を越えた隷従を余儀なくさせ、こうして労働者の生存を日常的に脅かし、社会が成り立たなくなる時代をもたらした。また資本主義は、人間社会の対象的自然との間の物質代謝を、地球環境限界を踏み超えて増大させる方向に突進しており、その意味でも社会の存立を危うくさせている。そうした中で人々は、資本主義と異なる仕方での生存の在り方・社会の在り方を求め、模索し、闘い始めているのである。
 したがって今日の共産主義運動は、資本主義とは異なる仕方での生存の在り方・社会の在り方の創造を、ブルジョア社会の内部において、粘り強く推進していくことができなければならない。そこでは、まずもって国家権力の奪取に集中し、社会革命をその後のこととしてきたかつての運動形態からの転換、今日的形態の模索が求められている。
 すでに日本の共産主義諸潮流において、共産主義運動の今日的形態を模索する議論が顕在化してきており、旧来の形態に安住する傾向と分岐しだしている。共産主義者の今日における団結・統合は、この流れの合流として闘いとられるに違いない。もちろん、そうした今日における団結・統合にとっても、国家権力問題の領域における党的総括の相互了解は、不可欠のものである。

       B

19-20世紀の共産主義運動の経験は、主要に国家権力問題の領域におけるものだが、それはそれで多くの貴重な教訓を残した。われわれは、それを21世紀の革命実践に活かしていかねばならない。だがその為にも何よりも、21世紀の労働者民衆と結合しうる質をもった共産主義運動の創立が前提である。まさにこの前提を、われわれは欠いている。この自覚がなければ事は始まらない。
 21世紀の今日、資本主義は歴史的役割を果たし切り、社会を崩壊させるマネーゲーム資本主義へと転化している。だがこれに抗して、ブルジョア社会に置き換わる新たな社会へと向かわずにはおかない社会再建と闘いの流れが、ブルジョア社会の崩れの中から現れはじめている。現代の共産主義運動は、人々のこの流れが意識化され、結び付き、政治勢力として登場することに貢献できなければならない
 共産主義運動に問われている課題は、次の点にあるだろう。
 第一の課題は、崩壊していく社会(=人間)の立て直し・新たな社会の創造に、能動的に関わることである。
 住民自治を発展させ、地域社会の自立性を高めていく。全ての反抗の現れを、新たな社会の創造にリンクしていく。
 第二の課題は、資本主義の下では生存が困難になる時代の労働運動を切り拓くことである。
 労働運動を、ブルジョア社会に代わる新たな社会システムを創造する第一の課題にリンクさせる。非正規層・失業層各々の自律的運動の発展を促進し、正規、非正規、失業層の階級的連帯を発展させる。
 第三の課題は、国家・国境の廃絶・死滅を目指すことである。
 既存の国家の打倒を目指すだけでなく、国家に奪われ、階級支配の手段となってきた社会の共同的機能(軍事、治安、環境保護、インフラ整備、教育、福祉など)を、地域社会(とその広域連合)が奪回することに助力し、国家・国境の廃絶・死滅を目指す。
 第四の課題は、核兵器・原発を廃止し、農業・漁業・林業のみならず、工業も含めた循環型経済社会への変革を推し進めることである。
 資本主義工業は大量の無産者を生み出し、革命主体形成の主な土壌となったが、利潤追求のために工業の略奪的・自然破壊的な性格を全面開花させた。この略奪的工業をリサイクル工業と再生可能エネルギーの発展へと変革し、循環型経済の一環に組み替えることを目指す。
 第五の課題は、「第三極」を形成し、既存の国家と資本の支配の転覆を目指すことである。
 国家と資本の社会(人間)破壊に抗する労働者民衆の闘いと社会再建運動が、支配階級のあれこれの路線による包摂から自己を解放し、政治革命を目指すことに助力する。
 第六の課題は、現代的な革命組織の構築を模索することである。
 現代の革命組織は、労働者民衆の闘いや地域社会再建の自律的活動を横に結び、ネットワークを発達させることを土台に、政治革命をめざすものとなるだろう。その指令システムは、調整機構の性格を強めることになるだろう。
 共産主義運動は、過去を総決算し、新たな出立をなす歴史的節目に在る。われわれは、日本の現実に立脚する仕方で、この歴史的節目の要請に応えていかねばならない。
 日本では昨年末の総選挙と7月の参院選において、ほとんど生命力を喪失している戦後利益誘導型統治の「異次元」的(=無謀な)巻き返しに依拠しつつ・投機マネーの肥大化を歓迎する「第一極」路線を大きく取り込んだ「アベノミクス」路線が、「右傾化」をちらつかせながら圧勝した。巻き返し過程にある「第一極」は分断され、「第二極」は一敗地にまみれ、労働者民衆の大衆闘争の主導によってのみ政治的新局面を開くことのできる舞台が現出した。それは、左翼的民主的な「第三極」の旗を求め、同時に共産主義者の団結・統合を促さずにはおかない。これからの世代との結合も問うだろう。われわれは、この時代の要求に応えていかねばならない。(以上)