労働者共産党第五期第三回中央委員会総会決議(2013・9)                   

安倍政権の反人民的諸政策の貫徹を
許さず、民主的・左翼的「第三極」形成へ


(1)安倍政権の圧勝は、民主的・左翼的「第三極」形成の好機

 参院選後の情勢の特徴は、安倍自民党が強大な国会勢力を獲得、生活を守り、脱原発、9条改悪阻止、安倍政権打倒の主力は大衆闘争以外ないことが鮮明になった。大衆闘争の発展を背景にして民主的・左翼的「第三極」政治勢力の形成が現実にむけ、道がひらかれようとしている。共産党は、安倍批判の一定の受け皿になったが、民主党の一部や生活の党など新自由主義に修正をはかる「第二極」勢力が衰退した。共産党は、安倍批判や民主党批判票の一時的受け皿になったものの、その意味を理解せず、セクト主義を強めている。社民党に代表される議会内「第三極」は微力となった。今こそ労働者民衆の運動を高揚させ民主的・左翼的「第三極」をたぐり寄せよう。
 7月21日参議院選挙が実施され新勢力自民党115議席(公示前84)公明党20議席(19)を獲得、与党が過半数122議席を超える135議席を占め議席上圧勝した。
 そして、エセ「第三極」の維新・みんなの党が延命している。参院選圧勝によって与党が衆院3分の2参院2分の1を超える議席を獲得、「ねじれ国会」が解消した。安倍政権は、政策が支持されたとして秋の臨時国会以降「追加の成長戦略」を決定し、原発の再稼働・海外輸出、憲法改悪、国定教科書づくりをめざす教科書法の制定など教育の改悪、沖縄・辺野古新基地建設等、反動的諸政策実現のため突き進むにちがいない。
しかしそれは、矛盾を激化させ、労働者民衆の不満と怒りを拡大し、安倍政権を崩壊に導く。
 安倍自民党政権の勝利は、脆弱な基盤の上にもたらされたものに過ぎない。なぜなら安倍政権の諸政策は、アベノミクスによる景気「期待感」以外、全く国民から支持されてはいない。6月の朝日・東京新聞の調査では、原発再稼働や消費税増税、9条「改悪」96条改悪でいずれも反対が50%を超えている。アベノミクスには関心はあるが期待せず、改憲・原発・消費税では安倍政権に反対、これが世論の多数派になっている。
そればかりではない参院選圧勝によって安倍政権はアベノミクスを継続、大規模金融緩和を推進し、来年度予算では、公共事業に大金をつぎ込むであろう。しかし、投機マネーの肥大化は、市場原理主義の道を掃き清め、失業者を増大させ、さらなる貧困と格差拡大を結果する。
 また財政出動のさらなる拡大は、国家財政の破綻を引き起こし、際限ない増税となって降りかかってくる。
 その上、安倍政権は、投機マネーに依拠した経済的社会的土台の薄弱な不安定な政権であり、増大する労働者民衆の不満と怒りを吸収する姿勢とメカニズムを欠いている。従って安倍政権による反動的な諸政策の強行は全面的な自己矛盾に陥り、労働者民衆の不満と怒りを一層激化・拡大して民主的・左翼的「第三極」政治勢力形成の環境をより成熟させていくにちがいない。
 不満と怒りを闘いに組織し、闘争の拡大が今こそ求められている。粘り強く闘い、地域や職場、各戦線に信頼される運動を創出、連携を呼び掛けてネットワークを広げる必要がある。そして闘争を一層拡大し、いくつかの課題で広範な共同戦線を形成すべきである。そのためには、諸政治勢力の連携も求められる。ゆるやかで広範な共同戦線の形成は民主的・左翼的「第三極」を可能にするにちがいない。
 安倍政権の攻撃は、労働者民衆や運動体・政治勢力の団結を促し民主的・左翼的「第三極」をたぐり寄せる絶好の機会を提供する。安倍政権圧勝を戦術的には重視し、戦略的に恐れず大胆に闘争を推し進めよう。

(2)アベノミクスは労働者民衆の闘争を激化させる

  参院選圧勝を受け安倍政権は秋の臨時国会を「成長戦略実行国会」と位置付け、削除された項目の復活も含めて、その実現にむけ秋以降全力を上げる。
 6月14日安倍政権は「成長戦略」「経済財政基本方針」「規制改革実施計画」を閣議決定している。具体的には、原発再稼働と原発輸出、労働規制緩和、TPP参加、混合診療、設備投資企業減税等々が掲げられている。これらは「世界一企業が活動しやすい国」を目指すという文字通りすでに破産した新自由主義小泉改革の再現以外何物でもない。
 安倍政権は、労働規制の緩和では、労働者への搾取・収奪を強め労働力の移動を容易にするために、職種や勤務地・労働時間が限定される「限定正社員」の拡大を画策している。そして2014年度中に賃金体系や人事評価のあり方、解雇を含めた雇用ルールの整備を計画している。さらにこの目論見を推進するため、労働者の再就職を支援した企業に支給する「雇用調整助成金」を減らし、従業員を転職させた企業に出す「労働移動支援助成金」を増やすとしている。
 そればかりではない。何時間労働したかに関係なく原則として最初に決めた賃金だけを支払う「裁量労働制」の拡大も秋から検討することになる。そして「解雇の金銭解決制度」も参院選後に議論を本格化する考えを示した。この制度は、企業と労働者が解雇をめぐって争った時金銭で解決する制度で、解雇規制の緩和をねらった反動的代物である。
 第一次産業についても「株式会社による農業参入の全面自由化」等、小規模農漁業の破壊をねらっている。
 そればかりではない、6月に削除された「混合診療の大幅拡充」も復活する可能性が高い。さらに今秋、消費税増税実施決定も目論まれている。
 労働者への搾取・収奪の強化、社会保障の大幅引き下げによる生活破壊は、TPP推進によって一層顕著になる。それは労働者民衆の生活をより耐えがたいものとし、貧困と格差を一層拡大し矛盾を激化させることになる。
 そして一方で「産業競争力強化法案(仮称)」の柱として、独占企業優遇の投資減税の早期成立をねらってくるのは確実である。財界に甘く、労働者民衆からは厳しく収奪する。これが安倍政権の基本になっている。
 アベノミクス推進は矛盾を激化させ、労働者民衆の大衆的反抗が激化拡大するのは確実である。闘争を組織し反撃することが求められている。

(3)脱原発・改憲阻止・辺野古新基地建設反対等闘争を拡大し、広範な共同戦線の構築を

 脱原発闘争
 安倍政権は民主党の掲げた「2030年代に原発ゼロ」の曖昧な方針すら白紙化し、原発回帰を公言した。そして原子力規制委員会の新安全基準をもって原発再稼働に拍車をかけようとしている。安倍政権は成長戦略の中核に原発再稼働・核燃サイクル政策追求・原発輸出を掲げ、強引に推進せんと画策している。すでに電力4社12原発が新基準への適合を確認する安全審査を原子力規制委員会に申請した。
 また、安倍政権は、原発輸出のためトルコ、サウジアラビア、UAE訪問、フランス、インドとの首脳会談、ポーランド等東欧4か国首脳会談を実施するなど前のめりの姿勢が際だっている。そのため安倍政権は、闘争の拠点、脱原発テントの撤去など、民衆の批判を抑圧・封じ込め、強引に原発推進を実現せんとしている。しかし経産省前広場側は、ハンストや訴訟取り下げ要請署名運動を展開、一歩も引かぬ姿勢を示している。また6・2脱原発共同アクションに85000人が結集、闘いが強められている。さらに参院選では、山本太郎脱原発候補がおよそ67万票を得て当選、同じく当選の共産党候補の票を合わせると約137万もの票を獲得した。それは都知事選宇都宮候補の得票数を大きく上まわっている。脱原発勢力は粘り強く闘い、着実に基盤を固めている。
 参院選圧勝による原発推進は、民衆の怒りをかい、さらなる大闘争が展開されるにちがいない。労働者民衆の怒りを闘争に組織し、脱原発の闘いを一層拡大して、原発が立地する現地と結び付いた広範な戦線の構築が求められている。また、労働運動として脱原発闘争を強化することはもとより、被曝労働者を支援する活動を重視し、生命と健康を守る運動の発展のため奮闘することも大切である。

 「改憲」阻止の闘い
 安倍自民党政権は、その弱さをカバーするため、参院選圧勝を背景に憲法改悪、教育政策改悪等を推進し、排外主義的国民統合、民衆への分断と抑圧を強めようとしている。
 参院選では自民・維新など96条先行改憲勢力の議席が3分の2に遠く及ばず、96条改悪は阻止された。しかし「改憲」に前向きな自民党、日本維新の会、みんなの党に「加憲」の公明4党を加え、「改正」の発議に必要な3分の2、162議席を超えている。今後、安倍自民党は、民主党内改憲派議員に働き掛け、公明党を説得するなど改憲勢力拡大、憲法改悪を狙うにちがいない。
 そのため安倍政権は、現行では機能しえない国民投票法について、秋の臨時国会でその改定案を提出せんとし、憲法改悪への準備を進めようとしている。また一方では、集団的自衛権を憲法解釈によって容認する動きが進められている。さらに秋の臨時国会では、日米共同戦争に必要な軍事機密保全のため、また国家安全保障会議(日本版NSC)創設のため、関連法案の早期成立が目論まれている。今や「改憲」阻止の闘いは、正念場を迎えている。秘密保全法反対、日本版NSC創設反対、解釈「改憲」による集団的自衛権容認反対、国民投票法など憲法改悪の諸準備反対等、安倍政権の攻撃に反撃の闘いを広範に組織することが求められている。また、96条・9条改悪に反対して運動を組織するなど、闘争の輪を拡大し、憲法改悪阻止の広範な共同戦線構築にむけ奮闘する必要もある。
 
  教育闘争
 安倍政権は民族主義・排外主義で国民を統合せんとし、極右反動の教育路線を進めている。それは、一方で新自由主義の活動を担い発展させるための、精神的支えとしても位置づけられている。そのため、「不適切な性教育やジェンダーフリー教育・自虐史観偏向教育は行わせない」「近隣諸国条項」見直し等を掲げ、侵略戦争美化、アジア労働者民衆蔑視、差別拡大の教育を推進している。その姿勢は、侵略・植民地支配、軍隊「慰安婦」強制動員などの「歴史認識」問題で中国、韓国、そしてアメリカからも「歴史修正主義」復古的「国粋主義」として批判され、矛盾を深めている。それにもかかわらず安倍政権は、「教科書採択のあり方を抜本的に改善」「『領土教育』も充実」と主張する。つまりこの秋以降、教科書に共通に記載すべき事柄を文科大臣が指定し、検定審議委員を国会同意人事にするなど、教科書の定義・検定・採択を包括する教科書法の制定を行い、国定教科書化を推進しようと目論んでいる。そして、つくる会系教科書の採択とあわせて、軍国主義教育、排外主義教育、格差拡大の差別選別教育を推進しようとしている。また公約は、「高校在学中の…達成度テストの創設…大学入試を抜本的改革」などと述べ、就学年齢の引き下げ、大学入学を含めた飛び級と留年の実施を画策している。さらに首長や国家による教育統制の強化も目論んでいる。そして一方では厳罰主義を採用、枠からはずれた子どもには容赦なく対応する。つまり戦前戦中教育への回帰である。このような反動教育は子どもの幸せとは無縁であり、断固とした闘争を組織することが求められる。

  沖縄闘争
 沖縄では糸数候補が三度の当選を果たし、日本政府代表(自民党県連候補)を敗退させた。それでもなお参院選公約を受け、安倍政権は圧勝を背景に、辺野古移設を強力に押しつけてくるだろう。しかし沖縄民衆は「オール沖縄」の統一戦線で辺野古移設論を葬り続けてきた。今後もそうするにちがいない。知事に埋め立て申請を拒否させることが重要な闘いになる。また、目前の敵「仲井真体制」は、普天間の県外移設を掲げて以降力を回復、宜野湾市長選で井波洋一候補を攻略、来年1月名護市長選勝利を狙っている。さらに昨年10月に配備されたオスプレイに対し、配備反対の闘争も果敢に闘われている。自衛隊はオスプレイ購入計画を推進している。自らの課題としてオスプレイ配備反対、移設阻止、「仲井真体制」の拡大を許さず、名護市長選勝利の闘いを担い切り、沖縄の民衆と連帯して断固とした闘いを展開することが要求されている。
 最近、名護ヘリ基地反対協の安次富浩氏が自決権をもつ沖縄自治州の構想を提起した。注目する必要がある

(4)今こそ民主的・左翼的「第三極」の形成を

 安倍政権打倒の主力は労働者民衆の闘争であることが鮮明になった。そして民主的・左翼的「第三極」形成は、正念場を迎えている。
 その形成のためには、政党的には、左翼諸派が団結し政治的社会的な存在感ある力量を獲得すること、また、いわゆる社民・リベラル勢力が一定回復すること、また、日本共産党が政治的統一戦線に前向きになること、これらが問われてる。日共は現在、自民党対抗勢力は自党以外に存在しないとする独善的セクト的姿勢を強めているが、これは厳しく批判され是正されなければならない。また、社民的勢力の再建は我々自身の課題ではないが、大衆運動との関わりからいうと重要性をもっている。現在のこうした政党情勢上の困難を打破することも、結局は労働者人民の闘いの前進にかかっている。
 我が党は安倍政権の反人民的諸政策の貫徹を許さず、労働者民衆と共に全力で闘う。そしてその闘いを通じて民主的・左翼的「第三極」政治勢力形成を求めて奮闘する。そのため次の5点を掲げて活動する。
 @ユニオン・個人加入制中小単産を主力とする地域社会に根ざした日本労働運動を一層拡大、発展させるために活動する。
 A労働運動相互の連携を強め、労働運動と市民運動・住民運動との連携を深めて地域でのネットワークを広げ、安倍政権に対する諸闘争の発展のために奮闘する。
 B脱原発等を通してかかわり始めた若者や子育て世代などとの交流を深め、政治的信頼関係を強め、運動の発展・継続にむけ奮闘する。
 Cこれらの闘いを通じて獲得した運動の蓄積をもとにネットワークを一層拡大し、脱原発、憲法改悪阻止の広範な共同戦線を実現する。
 D民主的・左翼的「第三極」政治勢力の共闘を継続・拡大させ、革命的左翼諸派・共産党・社民党等左翼世界の大きな政治的再編を含め、左翼勢力民主勢力合流のため活動する。

 我が党は以上の闘争を通して民主的・左翼的「第三極」を形成、新たな社会創造の闘いを労働者民衆と共に推進する。
 今や闘いこそが局面を切り開くであろう。(以上)