集団的自衛権行使容認・9条改憲を許すな!
 立法改憲阻止し安倍打倒へ

 安倍自民党による憲法96条先行改憲策動は、維新の会一派が支持するのみで、広範な批判に直面し、当面すすまなくなっている。しかしこの中、現在の闘いの焦点となっているのが、「集団的自衛権の行使」をめぐる攻防である。政府による憲法解釈の変更(解釈改憲)、また新法や法改定による憲法の実質的変更(立法改憲)、これらの策動を粉砕するならば、憲法闘争の力関係は大きく前進するだろう。この集団的自衛権行使の容認策動について、同志が最近の動きを以下まとめてみた。(編集部)

  集団的自衛権行使容認へ人事強行

 八月八日、安倍政権は、内閣法制局長官に集団的自衛権行使に積極的な小松一郎前駐仏大使を充てる人事を、内閣で決定した。安倍政権は、憲法9条・96条「改憲」反対が過半数を超え、明文改憲に時間がかかると見て、どのような手段を講じても集団的自衛権行使を解釈改憲によって実現させんと画策、この人事を強行した。
 参院選直後、安倍首相は「国家安全保障基本法」を内閣が国会に提出する「閣法」でやるべきだと表明した。この人事は、それに基づいて行なわれている。
 安倍政権は、集団的自衛権行使を可能にする憲法解釈の見直しを3段階で進めるとした。
 それは、@「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)を九月に再開、その報告書で集団的自衛権行使を容認するよう首相に提言する。A政府として憲法解釈の見直しに取り組み、見直しを表明。B自衛隊法など法整備を行なうとしている。
政府はそのために、内閣法制局を取り込み、憲法解釈の見直しと、それを法的に規定する国家安全保障基本法等の策定を、強引に推し進めようと画策する。これまでの政府見解「9条の下において許容されている自衛権の行使は…必要最小限度の範囲にとどまるべきものであると解されており、集団的自衛権を行使することは、その範囲を超えるものであって、憲法上許されない」との解釈を変更し、集団的自衛権を容認させんと奔走している。
 安倍自民党政権は、議席上の参院選圧勝を背景に集団的自衛権の行使を容認させ、既成事実を積み上げて「改憲」への道を突き進もうとしている。安倍自民党政権の目論見を決して許したはならない。

  「魔法の法典」、国家安全保障基本法

 2012年七月、自民党総務会は、集団的自衛権行使を容認し、「秘密保全法」の整備等を規定する国家安全保障基本法案(以降、国家安全基本法)を決定した。それは、「国際連合憲章に定められた自衛権の行使」のもとに、「我が国、あるいは我が国と密接な関係にある他国に対する外部からの武力攻撃が発生した事態であること」(法案10条第1項)を自衛権を行使する場合の遵守事項と定めている。つまり国連憲章が定める集団的自衛権を憲法9条の制約なしに行使できることを前提とした法案である。そして第5条は、「政府は、本法に定める施策を総合的に実施するために必要な法制上及び財政上の措置を講じなければならない」と規定し、6条は「国の安全保障に関する基本的な計画を定めなければならない」とし、集団的自衛権行使を具現化させる下位法や自衛隊法の改正を提案している。
そればかりではない。国家安全基本法第3条等3項は「国は、我が国の平和と安全を確保する上で必要な秘密が適切に保護されるよう、法律上・制度上必要な措置を講ずる」として秘密保全法の制定を求めている。政府は既に、「国の安全、外交、公共の安全及び秩序の維持」の三分野を対象とする秘密保全法案を作成している。しかしこの条項は、「必要な秘密」を『無限定』に保護の対象とする秘密保護に関する基本法制定を規定している。つまり国家安全基本法は超反動法であり、制定を絶対に許してはならない法案である。
 安倍政権は、閣法でこの法案を成立させると表明している。しかし、八月二十日、山本庸幸前内閣法制局長官は、現在までの政府解釈について「半世紀以上議論され、維持されてきた解釈で、変更は私自身難しいと思っている」と発言。別の元長官も、解釈変更に反対の意見を述べている。内閣法制局の取り込みには、かなりのむずかしさがある。
 けれども、この法律が「魔法の法典」とされるゆえんは、議員立法でも可能なことにある。議員立法には、内閣法制局が関与せず、衆参それぞれの法制局が憲法適合性について意見を述べることになっている。が、法案提出の判断は、議員にある。安倍自民党政権は、議員立法によってでも国家安全基本法の成立をねらっている。
 安倍政権は、憲法論議をさけ、96条「改憲」を策動したことによって、憲法9条などの「改悪」派の少なからずまでも96条改悪反対に追い込んでいる。それと同じ手口で国家安全基本法の成立を強引に推進し、集団的自衛権行使容認を実現せんと、遮二無二突き進めば矛盾も出てくる。衆参両院とも「改憲」派が多数を握っている。しかし労働者民衆が巧みに闘うならば、当面の憲法闘争に歴史的勝利をおさめることは可能である。今や安倍政権打倒の主力は民衆自身の闘争によっている。集団的自衛権行使容認、この解釈改憲・立法改憲を許さず、さらに明文改憲阻止の闘いへ前進しよう。

  米国と共に戦争する国へ安保法制懇報告

 安倍政権は、早ければ十一月後半にも有識者懇談会「安保法制懇」に報告を提出させ、集団的自衛権行使容認にむけたスケジュールを進めようとしている。報告の内容は、「公海のおける米艦の防護」など4類型の憲法解釈見直しにとどまらず、集団的自衛権行使を全面的に容認する提言になると言われている。
 4類型とは、@米国に向かう可能性がある弾道ミサイルを、ミサイル防衛(MD)システムで撃破する。A日本が公海上で共同訓練中に米艦船が攻撃され、自衛隊艦船が反撃する。B国連平和維持活動(PKO)で他国部隊が攻撃され、自衛隊が駆けつけて反撃する(駆けつけ警護)。CPKOで自衛隊が外国軍を後方支援する等であり、@Aが集団的自衛権にあたっている。そしてBCは憲法解釈で禁じられている。安保法制懇はこれら4類型を可能にしようと目論んでいる。
そればかりではない。安保法制懇の会合では、サイバー攻撃を受けた場合の反撃や漁民に偽装した特殊部隊上陸など、相手国からの武力攻撃に至らない低レベルの戦闘行為まで論議されている。また、同盟国の米国が他国から攻撃された時、自衛隊が米国に敵対する国へ行き戦闘に加わることまで考えられているという。さらに集団的自衛権行使は、アメリカ等同盟国に限らず友好関係にある国家まで拡大しようとする見解もあるという。
どこまでが提言されるかは明らかになっていない。しかし、集団的自衛権行使を全面的に容認し、アメリカと共に世界中で戦争ができる国にすることをねらっているのは確実である。安倍政権は、この反動的提言をもとに憲法解釈を見直す。これはすでに自民党日本国憲法改正草案の先取りであり、明文改憲の布石である。安倍政権の暴挙を許してはならない。

  防衛政策大転換の防衛大綱中間報告

 七月二六日、防衛省は、防衛政策大転換の「防衛大綱」中間報告を発表した。その内容は、旧来の「専守防衛原則」を反古にし、集団的自衛権の行使を前提にしている。安倍政権は、国会内「改憲」勢力の数からして、集団的自衛権が容認されるものと高をくくり、それを先取りした防衛大綱を発表させ、明文「改憲」の布石にしようとしている。そのためにも防衛省は、十一月に予定される安保法制懇の報告を反映した防衛大綱を、十二月に策定しようと目論んでいる。
 防衛大綱中間報告は、@「尖閣」問題とからめて「機動展開能力や水陸両用機能を確保することが重要」と述べ、海兵隊機能の強化を打ち出している。そして、A警戒監視態勢を強化するため、米軍最新鋭偵察機「グローバルホーク」に代表される高高度滞空型無人機の導入を検討。B敵基地攻撃能力保持を念頭に、弾道ミサイル抑止の総合的な対応能力を充実させると明記した。そしてC日米防衛協力指針(ガイドライン)の見直し論議を通じてサイバー攻撃対策強化、D「武器輸出三原則等運用の現状が近年の安全保障環境に適合するか検討し、必要な措置を講ずる」として武器輸出三原則のさらなる緩和を明記している。
「敵基地攻撃能力保持」、集団的自衛権行使としての「海兵隊機能の充実強化」等々これらは、説明するまでもなく防衛大綱の大転換である。
「防衛大綱」中間報告は、アメリカ帝国主義の軍事戦略の要、アジア太平洋地域での陸海空一体の共同作戦を想定している。米軍部隊と共に自衛隊が戦争する構図であり、自衛隊が実戦部隊として果たす役割を明確にしたものに他ならない。戦争勢力安倍政権は、集団的自衛権を行使し、戦争へ突き進もうとしている。また防衛大綱に盛り込んで集団的自衛権行使の容認を促し、明文改憲への布石とする目論見も見逃してはならない。
 戦争勢力安倍政権の策動を許さず断固とした闘いが求められている。

  行使容認阻止、主力は労働者民衆の闘い

 今や安倍政権等戦争勢力が跋扈し、集団的自衛権行使容認、日本国憲法明文「改憲」、米国と世界中で戦争する国をめざして奔走している。
 しかし地域の「9条の会」等市民運動の側は、運動を活性化させ、連携を強めて、9条改悪反対の活動を推し進めている。また、安倍政権の登場に前後して憲法への関心が高まり、9条改悪反対のチラシを受け取る人々も、少しずつ増えてきている。脱原発の闘いも、安倍自民党圧勝をものともせず、意気が上がっている。
 今こそ労働者民衆の闘争を一層拡大し、連携を強めて闘争の輪を拡大することが求められている。そして、「改憲」阻止の広範な共同戦線形成へと発展させよう。安倍政権打倒、反動的諸政策阻止の主力は、労働者民衆の闘争であることが明らかになっている。安倍政権は、憲法論争をさけ、96条改悪と同じ手口で集団的自衛権の行使容認をなしとげようとしている。小手先の技術で乗り切ろうとするところに安倍政権の弱さがある。ひるまず闘争を拡大し、安倍政権の野望を打ち砕こう。そして、民主的左翼的「第三極」をたぐり寄せよう。(O)