9・1さようなら原発講演会に2000余名
  小出裕章「憲法」を語る

 九月一日、東京・日比谷公会堂にて、「つながろうフクシマ!くりかえすな原発震災9・1さようなら原発講演会」が開かれ、厳しい残暑にもかかわらず全席2000席がすぐ満席という盛況であった。主催は、「さようなら原発」一千万署名市民の会。
 この集会は、当日が関東大震災九十周年であり、そうした独自の意義も持つが、九月十四日に行なわれる同主催の、「再稼動反対!9・14さようなら原発大集会」(亀戸中央公園・午前十一時〜)へ向けた前段集会でもあった。
 開会のあいさつが、市民の会呼びかけ人の鎌田慧さんから行なわれた。鎌田さんは、「関東大震災では戒厳令がひかれ、日本にいた朝鮮や中国の人たちが何千人も虐殺され、日本人の労働運動家らも官憲から殺害されました。今また、安倍首相も改憲案で、非常事態や軍事裁判所を唱える危険な時代となっています。反原発とは、こうした動きにも反対し、原発がいらないというだけでなく、平和に、差別なく、みんなが暮らしていこうという運動です。」「日本の『3・11』から、世界は多くを学んでいるのに、日本だけが後ろ向きになっています。福島のこれだけの悲しみ、想いをなんとも思わず、再稼動というのは許せない。来る9・14から、もう一度大きなうねりを作っていこう」と訴えた。
 集会は、ジンタらムータの演奏やザ・ニュースペーパーの政治コントを挟みながら、佐藤和良さん(いわき市議会議員)が福島からのアピール、小出裕章さん(京都大学原子炉実験室助教)が講演を行なった。呼びかけ人では、大江健三郎さんの講演、澤地久枝さん、内橋克人さん、落合恵子さんの発言があった。
 佐藤和良さんは、フクシマの現況を次のように報告した。「いぜん15万余の福島県民が避難を強いられ、原発事故の関連死は1400人を超えています。こうした中、政府や東電は、放射能汚染水を二年四か月に渡って垂れ流していることを、参院選が終わってから、やっと認めました。今の対策論議も、太平洋に放出してしまうための出来レースで、当てになりません。」「こども被災者支援法の稼動と損害賠償の期限延長とを求めて、八月二六日に全国運動を出発させました。被災者支援法の、ようやく決まった政府基本方針では、適用範囲を県内三十三市町村のみとし、年20ミリシーベルト未満は切り捨てです。基本方針を撤回し、1ミリ以上の被曝地域に適用せよ、これを求めて秋の国会へ向け500万署名を進めています。福島告訴団の刑事告訴をふくめ、被害者は決してあきらめず闘いを続けます」と訴えた。
小出さんの講演は、事故の概要から始まり、憲法の話に及んでいった。「事故は今も進行中です。溶けた炉心がどこにあるかすら分かりません。政府のIAEAへの報告ですら、広島原爆168発分のセシウム137が放出されました。これは大気中への放出のみで、今も汚染水で放出が続いています。4号機には広島1万4千発分の放射能を持つ使用済み燃料棒が、危険な状態のままになっています。」「事故をなるだけ小さく描き、忘れさせようとする策謀が進められています。原発推進には政治的背景があります。すでに一九六九年の外交政策大綱に、『核武装の技術的ポテンシャルは常に保持する』とあります。現在日本は45トンもの分離プルトニウムを持ち、実質的に核保有国になっています。昨年の原子力基本法の改定で、安全保障が目的、と入りました。」
ここまで述べて小出さんは、スクリーンに日本国憲法前文を映し出した。「国民が、『政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすること決意し』、主権を持ったというのが憲法です。政府による未来への犯罪をやめさせよう!」と締めくくった。
 映像による、まさにこのステージでの「浅沼刺殺」再現というオマケもあったが、反原発に反改憲が重なり、政治的に意義ある講演会であった。(東京W通信員)


福島第一原発の汚染水たれ流し、世界中に高まる避難
  再稼働やめ、全力で放射能封じ込めを

 福島第一原発事故の放射能汚染水問題で八月七日、政府の原子力災害対策本部がようやく、毎日300トンの汚染水が海へ流出していると試算値を発表した。陸から敷地の地下へ流れてくる毎日600トンの地下水の約半分が、原子炉建屋やタービン室の地下に溜まる高濃度汚染水と混ざって流出しているというのである。ある程度予想はされていたが、この二年半続く大量汚染には戦慄すべきである。
 また八月十九日には、地上タンクから高濃度汚染水が流出しているのが発見され、二十日東京電力は推計300トンが漏れたと認めた。原子力規制委員会は事故レベル3と評価した。タンク漏れも予想されてはいたが、増え続ける地上タンク、その経年化、手薄な監視態勢など、きわめて危機的な状況である。
 これらによって、福島原発事故が収束などしておらず、放射能汚染が広がり続けていることが改めて明らかとなった。反原発世論、福島の県民・漁民の怒りは高まり、また世界中が日本政府の事故対応に懸念を深めている。
 第一に問われることは、原発再稼動どころではなく、その審査での規制委員会の人員・予算を転じることも含め、国が総力をあげて汚染水対策を執ることである。
安倍政権は九月三日、汚染水対策の基本方針を決めた。しかしそれは、汚染水対策では東京電力任せとせず国費470億円を出す、内320億円で遮水壁を凍土方式で作る等とするだけのもので、海への放射能たれ流しを当面放置するものでしかない。
福島原発の放射能封じ込めは、何兆・何十兆円かかろうが、やらなければならない人類的な課題である。民主党政権も今の自民党政権も、そういう腹構えがなく、小手先の対応で事態を悪化させている。事故直後の五月には、鋼矢板方式の遮水壁が提案されていたが、1000億円かかるので東電が拒否している。今回も、より安いが効果不明な凍土方式を採用している。
第二には、東電の存続を前提とする路線を破棄し、東電の国有化によって汚染水対策・廃炉作業を国の直接責任とすべきである。
東電が東電としてあるかぎり、東電は採算上の言い訳を行ない、政府は都合よく東電に責任転嫁する。東電を一旦国民の財産とした上で解体し、発送電の民主的改革を行ないつつ、東電の債権者(東京都や大銀行)に事故収束の連帯責任を取らせなければならない。
東京都がオリンピック招致で、「福島は遠い、東京は安全」なとど言っているのは、無責任かつ傲慢の極致である。(A)


8・16ピースサイクル東海村一日行動
  東海村政は原発不要

 首都圏から百キロ圏内にある唯一の原子力発電所、日本原子力発電・東海第二原発の廃炉を求める、茨城県と首都圏住民の闘いが続いている。
 昨年四月には、茨城県知事に宛てた17万筆の廃炉要請署名の提出が行なわれ、また、東海村・村上達也村長の提唱した「脱原発をめざす首長会議」の開催が成功するなど、住民と一体となった廃炉を求める闘いが前進している。
 このような中、八月十六日には、反核平和運動・全国ピースサイクルの1コースとしての「2013六ヶ所ピースサイクル」が、昨年に引き続きその出発地を東海村での一日行動として取り組まれた。
 この一日行動には、地元茨城県住民と首都圏各地から30数名が参加し、まず東海駅前に結集。ピースサイクル全国ネットワーク共同代表の吉野信次さんから一日行動の概要が提起され、東海村村議の相沢一正さんからは、東海第二原発廃炉に向けた闘いの現状が報告された。
 自転車隊を先頭として、車に分乗した参加者は、東海村役場へ表敬訪問に訪れた。村役場側からは、総務部長や原子力安全対策課長などが対応してくれて、提出済みの質問事項にていねいな返答を得られた。
東海村が原発立地自治体であることから、他の立地自治体同様に自治体財政の原発依存率が高いのではないだろうかという疑問に対し、東海村では依存率が極めて低いことを住民の産業構成から立証してもらい、東海第二原発の廃炉に向けて支障がないことの感触をはっきりと得ることができた。
また表敬訪問した他の自治体と比較するならば、住民に向き合った対応が際立って良く、首長の姿勢がこれほど反映するものかと痛感した。東海第二原発廃炉に向け、今後住民自治と一体となった東海村の自治(団体自治)に期待するものである。(なお、四期務めた村上村長が引退し、九月八日投票の村長選挙となっている。誰が新しい村長となっても、もはや原発を必要としていない東海村の民意に背くことは難しいだろう)。
この後訪れた日本原電東海第二原発の対応の悪さは、際立っていた。ピースサイクル側から提出済みの要請にまともに答えようとしないばかりか、当初は照りつける戸外で対応しようとし、一時緊張さえ醸し出される始末であった。それもこれも日本原電が、東海第二原発、敦賀原発一号機・二号機の再稼動を原子力規制委員会に申請するという、ハレンチな暴挙に出ていることと切り離されないだろう。
その後、原子力科学館を見物後、地域コミュニティーセンターに参加者が集まり、東海村周辺の住民・市民団体の活動の紹介が行なわれ、終了後、六ヶ所ピースサイクル出発の部隊を全員で見送った。
以上のように、東海第二原発をはじめ全原発の廃炉、六ヶ所再処理工場稼動阻止、核燃サイクル廃絶を実現せんとする闘いは、全国の労働者民衆・各地住民の闘いと連動して続けられている。(東京Ku通信員)


五輪問題
 東京招致に場当たり対処の安倍政権
 汚染水対策に世界は不信

 九月七日(日本時間八日未明)、アルゼンチンのブエノスアイレスで開催された国際オリンピック委員会(IOC)総会は、2020年夏季五輪開催地を決選投票によってようやく東京に決定した。
東京招致運動にかかわった人々は、三候補のうちでは東京が比較的有利だと思っていた。だが、終盤に入り、福島第一原発の汚染水漏洩に対する東電の一貫した場当たり的な対処、政府の東電任せなどに対する海外の批判が拡大し、にわかに東京不利が明らかとなった。
ドイツのDPA通信は、「汚染水漏れは東京電力が最初に認めていたよりも深刻だ。きちんと管理されているという政府の説明にも疑いが増している」と報じた。イギリスのBBCは、汚染水漏れについて「津波による炉心の溶融以来、最大の危機」と伝えた。韓国では、魚介類の安全について不安が拡大し、ソウルの環境保護団体は「日本の水産物の全面禁輸」を求める声明を出した。韓国政府は、六日、福島など8県からの水産物輸入を九日から全面禁止するとした。
福島県漁業協同組合連合会は、事故直後から「国が前にたつべきだ」と主張し続けてきたが、多くの漁協には、「東電は安全よりもコスト優先だ」と厳しい批判が渦巻いている。  
三日、福島原発告訴団の武藤類子さんら3人は、東電と同社幹部32人を公害犯罪処罰法違反で刑事告発した。
事態の急転に安倍政権は驚き、これまた場当り的な対処を図った。一つは、九月三日に発表した汚染水対策の基本方針(本紙二面参照)であり、もう一つは、東京招致を補強するものとしてIOC総会への高円宮妃久子氏の出席である。
そもそも安倍政権は、政権発足以来、原発推進をかかげ、事故調査の究明と廃炉促進よりも、原発輸出と原発再稼働に熱心である。そのため、汚染水対策も東電任せにしてきた。オリンピック東京招致が危うくなって、ようやく重い腰をあげるとは、姑息なことである。
高円宮妃久子氏のIOC総会への出席も、東京招致が危ういと危機感を抱いて、官邸が宮内庁に急きょ働きかけたものである。でもこの問題も物議をかもす。風丘典之宮内庁長官が、「皇室の政治利用」を懸念する発言をしたからである。
長官発言について、菅官房長官は政治利用に当たらないとして、ただ震災復興への世界の支援に感謝を伝えるあいさつをするだけである、と詭弁をろうした。だがこれは、真っ赤な偽りである。彼女は、招致委員会の竹田理事長とともに、ロビー活動をしているからである。
宮内庁長官が懸念するのは、天皇制存続の秘訣に触れる問題であるからである。天皇制の存続には、「勝ち組に乗る」「多数派に乗る」という大原則がある。従って、極力争いごとには、参加しないのである。東京招致は、マドリードのような圧倒的多数の支持(91%)をえているわけではない。そして、原発反対の世論も、未だもって衰えてはいない。だから、宮内庁が東京招致活動に全面的にのめりこむことには、躊躇するわけである。だが、権力の要請をむげに断わるわけにいかず、「苦渋の決断」で妥協したのである。(T)