参院選挙、自民党圧勝恐れるに足らず
民衆の闘いによって民主的・左翼的「第三極」を
 

安倍政権打倒、その主力は大衆闘争

七月二十一日の参院選挙では大方の予想どおり、きわめて低い投票率52・6%の中、安倍自民党が大幅に議席を増大させ、参院でも自民・公明が過半数を占めることとなった。これで反動的諸政策阻止・安倍政権打倒の主力は、国会外の労働者民衆の闘いであることが鮮明になった。そして、この闘いの中では国会両院の現状とは対照的に、民主的・左翼的「第三極」政治勢力形成が現実となる条件が増大しているのである。
 参院選での政党支持状況を比例区相対得票率で見てみると、自民34・7%、公明14・2%、民主13・4%、維新11・9%、共産9・7%、みんな8・9%、社民2・4%、生活1・8%などとなっている。激減民主から自民に票が回り、議席上では自民圧勝となっているが、無党派票が自民党に向かったという形跡はない。共産が安倍批判の一定の受け皿となった。エセ「第三極」の維新・みんなが延命した。また民主党の一部や生活の党など、新自由主義に修正を図る「第二極」勢力が衰退し、社民党に代表される議会内「第三極」勢力は微力となった、これらが見てとれる。
しかしその反面、東京選挙区では脱原発を掲げた無所属・山本太郎候補が、早々と当確を決め、画期的な勝利を収めた。これ以外でも首都東京では、日本共産党が比例二位で得票し、また三宅洋平候補(緑の党比例)が驚異的に得票するなど、安倍自民党への強い批判が広範に示された。
沖縄では、辺野古NO!の糸数慶子候補が、日本政府代表(自民党県連)候補を敗退させた。(記事4面)
そして参院選直後から、ブルジョア議会での安倍自民の支配などどこ吹く風と、反原発などの大衆闘争は、以前にも増して活発に展開されている。安倍政権の圧勝に落胆することはない。むしろ矛盾が激化し、労働者民衆の闘争を拡大・前進させ、民主的・左翼的「第三極」の現実性をたぐり寄せるにちがいない。

民意とずれる脆弱な安倍政権

 安倍自民・公明連立政権は、脆弱な基盤の上に立っている。なぜなら、いわゆるアベノミクスに関心はあるが期待せず、改憲・原発・消費税では安倍政権に反対、これが世論の多数派になっているからである。
その上、この唯一世論の興味を引いた経済政策も、これから矛盾が爆発してくる。参院選圧勝によって安倍政権はアベノミクスの継続、すなわち大規模金融緩和を推進し、公共事業に大金をつぎ込み、資本のための規制緩和の成長戦略を進めるであろう。しかし投機マネーの肥大化は、市場原理主義の道を掃き清め、不安定雇用と失業者を増大、さらなる貧困と格差拡大を結果する。また財政出動のさらなる拡大は、国家財政の破綻を引き起こし、労働者民衆への際限のない増税となって降りかかる。
 さらに、安倍政権は時代遅れの大規模財政出動と投機マネーに依拠した経済的社会的土台の薄弱な政権であり、増大する労働者民衆の不満と怒りを吸収するメカニズムを欠いている。排外主義的国民統合や民衆への分断と弾圧でのぞむ以外にない。従って安倍政権による反動的諸政策強行は全面的自己矛盾に陥り、不満と怒りを激化・拡大して、民主的・左翼的「第三極」政治勢力形成の条件を成熟させる。

原発推進・雇用破壊の安倍「成長戦略」

 参院選圧勝によって安倍政権は秋の臨時国会以降、「追加の成長戦略」を決定して原発再稼働・海外輸出、消費税増税など反動的諸政策の実施に突き進み、集団的自衛権行使の全面解禁、さらに憲法改悪へ進もうと画策する。
 「追加の成長戦略」での労働規制緩和では、搾取・収奪を強め労働力の移動を容易にするため「限定正社員」の拡大を画策する。また労働した時間に関係なく、原則として最初に決めた賃金だけを支払う「裁量労働制」、この拡大も秋から検討される。そして「解雇の金銭解決制度」も参院選後に議論を本格化する考えが示された。
さらに第一次産業についても「株式会社による農業参入の全面自由化」等、小規模農漁業の破壊をねらっている。そればかりではない。六月には参院選対応で削除された「混合診療の大幅拡充」も、復活する可能性が高い。労働者への搾取・収奪の強化、社会保障の大幅引き下げによる生活破壊は、TPP推進によって一層顕著になるにちがいない。さらに今秋、消費税増税実施決定が目論まれている。
 新自由主義小泉改革の再現、アベノミクス「三本目の矢」は、矛盾を激化させ、労働者民衆の反抗が激化拡大するのは確実である。非正規を組織化する労働運動の再生をかけて、この安倍新自由主義への反撃が求められる。
「成長戦略」の中核に原発再稼働、核燃サイクル政策の維持、原発輸出が掲げられている。そのため原子力規制委員会の新安全基準をもって、原発再稼働に拍車をかけようと目論んでいる。すでに電力4社12原発が、新基準への適合を確認する安全審査を規制委員会に申請した。また、ベトナムに原発輸出を決め、安倍が原発のセールスマンになって、インドやトルコ等多くの国々で首脳会談を実施している。
そして一方では、闘いの交流拠点、経産省前・脱原発テントの撤去など、批判を抑圧・封じ込め、強引に原発推進を実現せんと画策している。
しかし経産省前テント側は、ハンストや提訴取り下げ要請署名運動を展開、一歩も引かぬ姿勢で対峙している。選挙翌日の七月二二日に開廷された二回目の脱原発テント裁判には、五月の初公判を上回る人々が結集し、また二六日金曜日の国会前には、選挙前よりも多くの人々が集結、活気あふれる闘いが展開された。脱原発共同アクションでは、六月二日に85000人が結集し、十月十三日には再び大結集を実現せんとしている。
参院選圧勝を口実とした安倍政権の原発推進は、労働者人民の大闘争を引き起こす。怒りを闘争に組織し、原発立地の現地と結び付いた、広範な共同戦線構築が求められている。また、労働運動として脱原発闘争を強化し、被ばく労働者支援の活動を重視して、生命と健康を守る運動の発展に向け奮闘することも大切である。

広範な共同戦線で「第三極」は可能だ

 先述したように参院選東京選挙区では、山本太郎が67万票を得て当選、原発ゼロを強調して同じく当選の吉良佳子(共産)の票を合わせると137万票(合計の得票率は23・4%)を獲得している。これに落選はしたが大河原雅子(民主党公認取り消し)の票を合わせると三名で得票率28・5%を超える。
この数字は、みんなの党と維新の二名合計13・2%を圧倒し、自民二名の合計29・7%に互角である。エセ「第三極」を圧倒し、民主的左翼的「第三極」が可能であることが、首都東京で示されている。
参院選では96条先行改憲勢力(自民党、日本維新の会)が3分の2に遠く及ばず、当面96条改憲は阻止された。しかし、「改憲」を公約とする自民、維新と、改憲に前向きなみんなの党に「加憲」の公明党4党を加え、非改選の2議席を合わせて164議席は、参院3分の2である162議席を超えている。安倍政権は民主党内改憲派議員に働きかけ、公明党を説得、憲法改悪を狙うにちがいない。
 さらに憲法改悪に向け、秋の臨時国会で国民投票法の論議を本格化させる構えを見せている。また集団的自衛権行使を憲法解釈で容認する動きも進めている。この解釈改憲と一体のものとしての国家安全保障会議(日本版NSC)創設のため、関連法案早期成立さえ目論まれている。今や「改憲」阻止の闘いは正念場を迎えている。
 96条・9条改悪に反対し、改悪阻止の広範な共同戦線構築が求められている。
 さらに沖縄では、安倍政権は「本土」での圧勝を背景に、普天間基地の辺野古「移設」を強引に押し付けてくる。しかし、沖縄民衆は「オール沖縄」の統一戦線で、それを葬り続け、今回も糸数勝利で葬った。今後もそうするにちがいない。また、オスプレイ配備・追加配備反対の闘争も果敢に闘われている。自衛隊もオスプレイ購入計画を推進している。埋め立て拒否・辺野古「移設」阻止、普天間基地閉鎖・オスプレイ撤去、来年一月の名護市長選勝利に向け、沖縄の民衆と連帯し、断固とした闘いの展開が要求される。

闘争拡大で民主的左翼的「第三極」を

 「一強多弱」の末期的ブルジョア議会の姿が露わになり、その他方では、反動的諸政策阻止・安倍政権打倒の主力が、労働者民衆の闘争であることが明確となった。闘いは、安倍自民党圧勝をものともせず、意気があがっている。不満と怒りを闘いに組織し、より大きな闘争を実現しよう。そして、地域や職場、各戦線に信頼される運動を創出、連携を呼びかけてネットワークを広げよう。それを、広範な共同戦線形成へと発展させよう。
 安倍政権の攻勢は、労働者民衆や闘争組織・政治勢力の団結を促し、民主的左翼的「第三極」をたぐり寄せる絶好の機会となる。
 安倍政権圧勝を戦術的には重視し、戦略的には恐れず、大胆に闘争を推し進めよう。