【沖縄からの通信】

参院選、糸数勝利から、来年一月・名護市長選勝利へ
 
沖縄の自己決定権を行使しよう


 「けいこ」の選挙区戦

 沖縄の参院選挙の選挙区戦は、「日本政府」派と「沖縄人」派との闘いとなった。その結果は、次のとおり。

 糸数慶子 294420
 安里政晃 261392
 新島メリー  10505
 金城竜郎   9462

 沖縄人が日本政府に打ち勝った。メリーは、民主の喜納昌吉系で反戦平和主義であるから、その1万は本来糸数に行くべきものであった。とすると、糸数と安里(自民・公明)との票差は4万。
 全国に吹き荒れたアベノミクス喧伝の中で、また沖縄の保守陣営も普天間「県外」移設をかかげ、争点を隠そうとする混沌の中で、この4万は大きい。沖縄の新しい流れと見ることができる。
 知事選(2010年11月)では、全地域で自公に負けた。今回、「けいこ」が全地域で勝っている。数十年来の保守王国地域でも逆転している。経済や雇用を気にしながらも、県民は日本政府派の甘言になびかなかった。現在進行中の米軍機オスプレイの配備、日本政府の沖縄蔑視、前政権による「県外」公約の破棄、現政権で強まる「県民愚弄」、県内保守にみられる「県外」要求と「辺野古移設」容認との有りえない「共用」、これらに対する県民の回答である。
 普天間基地の大山ゲート、野嵩ゲートには、昨年九月の「ゲート封鎖」以来十ヵ月たつ今も、怒りで、あきらめきれずに、人びとが行動を続けている。この心の痛みが県民に共有され、日本政府や安倍首相に負けられないという思いが、投票行動に決定を与えてもいるだろう。
 糸数慶子は、当確の報での開口一番、「県民の断は下った。仲井真知事の埋め立て承認はありえない」と、自己の最大の任務とその決意表明を宣言した。
 沖縄の「新しい流れ」とは、この決意表明を取り巻いていく流れである。
 沖縄のここ十数年の歴史は、「鳩山の乱」(09年の政権交代)にも助けられて、いったんは勝利した。これが、「5・28」日米合意(2010年)を認めず、オール沖縄で「県外」となった状況である。しかし、民主党政権下でオスプレイの強行配備が始まり、安倍政権となって一層強圧的にこれを踏襲、辺野古埋め立て申請を県に出すなど、安倍の憲法改悪や軍事国家主義の路線の中で、沖縄を弾圧するぞ、という現況に到った。これで、いったんの勝利は、また新しい始まりに戻された。
 今、強大になった安倍自民党、その一角としての沖縄自民党や仲井真知事による「県外」が、沖縄県民にとって、どれほど信用があるのか。今回の参院選では、「県外」と「辺野古移設」とがドッキングし、これが県民の「県外」と争ったのである。沖縄自民党や仲井真の「県外」はウソ、隠れ蓑、偽装であり、面従背反でありうることを、県民は肝に銘じていなければいけない。(そういう偽装であったとしてもかれらは、それから公然と脱け出ることもむずかしい。県民の総スカンで、再び国会議員ゼロになるからだ)。こう言っても、今現在でも、かれらに「県外」で縛りをかけ続けることは正しいのだが。

「山シロ」の比例戦

 沖縄にとって、比例区(政党別)の戦いはむずかしい。沖縄にとって最大の課題は、島ぐるみとなって日本政府と闘うことなのだから。
 沖縄にとって山城博治は、あらゆる反基地の現場につうじ、県内移設反対県民会議などの政治的仕事もこなしている人物であり、糸数慶子以上に沖縄の代表なのである。がしかし、制度上、比例から出なければならない。このかんの流れ上、大田昌秀、山内徳信の後を継いで、社民党の中で他党と争わねばならない。県内での比例の結果は、次のとおり。

 自民 140234
     (25・7%)
 社民 107301
     (19・6%)
 公明  90980
     (16・6%)
 維新  69287
     (12・7%)
 共産  51346
      (9・4%)
 民主  36431
      (6・7%)
 みんな 24052
      (4・4%)
 生活  11471
      (2・1%)
 緑の党  7923
      (1・5%)
 幸福   3482
      (0・6%)
 みどりの風2413
      (0・4%)
 大地   1816
      (0・3%)

 山城は個人名得票としては、県内で69460票を取り、全国計で112641票であった。
 山城より得票の少ない者が、数多く当選している。3万台からおり、沖縄の儀間(維新比例)は4万台で当選している。全国的にはわずかな得票率でしかない社民党(今回2・4%に低落)の比例名簿では当然、又市幹事長との競争になる。「勝負にならない」という考え方があった。小さい沖縄と全国とでは、そうも言える。
 が、沖縄には沖縄なりの条件があり、それに応じて闘えば、勝てないとは言えない選挙戦であった。糸数慶子と同じように、沖縄の代表という戦略でやればよい。「社民党」は横において置くのである。「島ぐるみの闘い」に相応した戦略である。
 山城博治は、活動家の人々には有名だが、一般的には知名度がない。だから知名度抜群の「けいこ」と並べて「山シロ」を使えばバッチシである。「けいこ」を利用して知名度を上げる。「けいこ」は一期目から、辺野古を争点とした日本政府との一騎討ちのシンボルだから、比例の「山シロ」を選挙区の「けいこ」と並べて同様に戦う、これは上策である。
 沖縄社民党の新里委員長は、「けいこ30万票の内の、20万票を山シロにいただきたい」と、終盤「3日戦争」に入ってから言っていた。立派な考えだが、「山シロ」の闘いを単独でやってはいけない。山シロを主要にではなく「けいこ」を主要にして、必ず並べて戦い、島ぐるみ的に、と付け加える必要があった。
 社民党は、まどろっこしい。「山シロ」の集会に、「けいこ」の旗さえ立て切れない。効果がうすい「山シロ」の「単独」のポスターも、全県的にみられた。どうして「並べる」上策を実行しないのだ。これでは、「けいこ」につぎ込んできた六年間の県民努力の結晶である30万票が生かされない。
 新里さん! 「けいこ」と「山シロ」を「並べて使うな」と言う共産党からのクレームに従ってやったことなら、社民党はなおさら大きな過ちをやったことになる。
 共産党は、「けいこ、にひ」(仁比聡平)で始めたが、ピッタリでない。仁比はヤマト(福岡県出身)である。それで次に「けいこ、にしひら」になった。これを「完全セット」と銘打っていたが、泥縄で続かない。最後には、「比例は共産党と書いてください」となった。共産党は、社民党の「けいこ、山シロ」にやきもきし、社大党(糸数の出身党)を通じて、ケチをつけてきた。
 市民運動による勝手連はその総会で、糸数と山城を推すと決めた。「けいこ、山シロ」の旗を作ったが、ゴタゴタを言われ、無用な摩擦を避けたいと、その使用を尻込みする者もいた。山シロ比例戦には、このような困難が沖縄ではあった。

 儀間問題見落とすな

 さて今回、自民党からではなく、維新から、辺野古移設派=政府派が比例で当選した。この儀間光男の当選は、維新と下地幹男(そうぞう)と防衛省の合作である。これで沖縄出身の政府派国会議員は、また一つ増え、衆院の国場、比嘉、参院の島尻安伊子、儀間の4名となった。
 下地は鳩山政権にも参加し、知事選挙にも民主党や社大党との付き合いを利用し、介入を計ったこともあるが、結局落ち着くべきところに落ち着いた。彼は国民新党、維新と渡り歩いたが、結局カネめあてで、政府の沖縄予算・防衛省予算にありつくためには何でもするカイライである。
 この下地に導かれて、儀間が出てきた。昨日まで「県外」を言う浦添市長であった者が、一夜明ければ、辺野古移設派、数少ない「貴重な」安倍政権のコマに変わってしまう。
 山城が11万でもできないことを、下地と橋下徹が4万をかき集めてできてしまう。計算上3万2千で可能となる。維新は予想を破って、それほど落ちていない。本土での約12%に対し、沖縄でも約13%を取っている。
 この選挙戦で見落とされているのが、この儀間の問題だ。彼は、公然と「県外」の縛りを破って「辺野古」をかかげたにもかかわらず、そっとして置かれている。叩かれず、隠然と知れないままに、かく成った。市民運動の勝手連は浦添での運動力量は多いが、儀間を批判していない。他の活動家もそうだ。
 こうした面から見ると我われは、安里の26万には勝ったが、儀間の4万には負けたのである。

 名護で決着つけよう

 参院比例は、沖縄にとってモーレツに不公平だ。しかし、選挙戦とは、大衆的・集団的芸術とも言える面をも持っている。二〜三名の者たちが日米合意と称して、沖縄を奴隷的に扱うこともできるが、選挙をつうじて徒手空拳の沖縄が、それを数の上で破って一種の宣言を突きつけることもできる。こうして沖縄は、「県外」を日本の政権に対して、何回も宣言してきた。
 また、オール沖縄の行動としても、沖縄の人権を認めない政府に対し、「建白書」を宣言してきた。県会議員らオール沖縄の人びとが、今年一月の「建白書」東京行動の帰途後、野嵩ゲート封鎖に加わった。それは宣言を一部実行したものでもある。
 日本政府の差別的・暴力的な扱いに対し、沖縄側も自覚を高め、団結を固め、政治的運動を高め、抗議の次元から、自らの行動、自らの政治決定・自己決定のレベルへ移っていっている。自己決定権は、もらうもの、ある日突然できあがっているものではなく、意識的に作り上げていくものである。
 今、日本の国民は、歴代政権に訓治され、NHKにマインド・コントロールされ、「日米安保基軸のため、沖縄にはガマンしてもらう」という、世界の人権感覚・政治感覚に追いつけないところにいるが、沖縄が自己決定を強めていけば、このままでは世界に向かって恥ずかしいということを悟っていくだろう。
 最後に、名護について語らなければならない。選挙区戦で、名護市は二桁の僅差であった。

 糸数 11535
 安里 11384

 その差151。投票率51・7%。糸数には新島メリー337、安里には極右・幸福実現の金城397を加えると、差は91に縮まる。
 このことを、わざわざ菅官房長官がマスコミに発表した。「県外」への流れに逆らって、ここ名護では誘致派が生き残ってきた。菅は、かれらを激励しているのである。
 今日の状況では、来る名護市長選挙で、かれらの候補者は辺野古移設を公約には掲げ得ないだろう。しかし、安倍政権下の情勢で戦われる以上、辺野古NOかYESかが、言葉になりえぬ大争点となる。
来年一月の名護市長選は、沖縄にとっては、対安倍との戦い、対日本政府との戦いとなる。辺野古NO!の稲嶺市長を必ず、再選させねばならない。
沖縄の自己決定権を行使しよう!(T)