狭山事件・不当逮捕50年
 改めて石川無罪の闘いを

 1963年、被差別部落出身の石川一雄青年が差別と偏見によって不当逮捕されてから50年にあたる今年五月二十三日、東京・日比谷野外音楽堂において「冤罪50年〜今こそ再審開始を!狭山事件の再審を求める市民集会」が同集会実行委員会の主催で開催され、部落解放同盟員、労組、市民など約3000名が結集した。
 集会は、小室等さんのミニコンサートに続いて、組坂繁光・部落解放同盟中央本部委員長の開会あいさつで開始された。そして各政党あいさつに次いで、石川一雄・石川早智子さんのアピール、狭山再審弁護団報告、松岡徹書記長による基調報告がなされた。
 石川一雄さんは、今年の5・23メッセージで、「半世紀を経ても再審実現が適わぬ事に無念、遣る瀬無い思いは禁じ得ません」との心の底からわきあがる思いを語り、「何としても今年中には事実調べの方向性が附けられ」、「今年中に勝利の目処が立てられるよう一層のお力添えを賜わり」たいと、闘いへの固い決意を明らかにしている。
 その後集会は、足利事件の菅谷利和さん、布川事件の杉山卓男さん、氷見事件の柳原浩さんからの連帯アピール等々を受け、集会アピールを採択し、「一日も早い再審開始を!」の熱気の中、銀座方面へのデモ行進に出発した。
 狭山闘争は、不当逮捕五十年を迎え、今重要な山場にある。
 2009年9月、裁判所・検察官・弁護団による「三者協議」が始まり、同年12月に東京高裁第四刑事部の門脇裁判長が、東京高検の検察官に証拠開示勧告を行なっている。そして2010年5月、二十二年ぶりに検察官から36点の証拠が弁護側に開示されるなど、事態がようやく動き出している。
 しかも開示された証拠の中には、石川さんが逮捕当日に書いた「上申書」や「取調べ録音テープ」など重要な証拠が含まれている。この「上申書」の筆跡が、よく知られている「脅迫状」のその筆跡と一見して別物であることは衝撃的ですらあったが、今年五月初旬には、上申書は犯人が残した脅迫状と筆跡が異なるとする専門家の新たな鑑定書などが裁判所に提出されたのである。
 そればかりではない。昨年には、自白どおりに発見されたとして有罪証拠とされた腕時計が、被害者のものでないことが明らかにされた。被害者が使うはずのないバンド穴を使っていることが専門家の鑑定でつきとめられたのである。石川さんが有罪であるとされた証拠が次つぎと覆されている。このように、これまでに129点の証拠が開示され、狭山弁護団は筆跡鑑定や法医学者の鑑定など106点もの新証拠を提出し、無実であることを実証している。
 これらの証拠を、今春に交代した裁判官全員が検討し、証拠開示と事実調べについて判断することになる。情勢は、検察官が何年も隠していた手持ちの証拠が少しづつだが開示され、事態が動き出している。この情勢は、2010年足利事件、11年布川事件が、検察手持ちの証拠全面開示と鑑定人尋問など事実調べとによって無罪判決を勝ち取ったように、狭山事件の「再審の扉を開けるためのかすかな光」となっている。
 五月八日にもたれた三者協議では、新たに就任した河合裁判長を始め担当がほとんど交代した。河合裁判長は証拠開示について、「これまでの姿勢を踏襲する」と表明した。しかし、その進展について楽観はできない。狭山事件は、冤罪事件一般ではなく、警察・検察が部落差別のもとに見込み捜査と取調べを行ない、デッチ上げた国家権力による差別事件であり、その後も権力者は差別を利用して人民支配を続けているからである。
 再審を実現し無罪を勝ち取るのは、闘いの高揚以外の何物でもない。各地域での取り組みを強め、たくさんの人々に事実を知らせ、今後の中央での集会をはじめ大衆闘争をいっそう拡大することが求められている。
 狭山闘争を今こそ改めて共に担い、部落差別をはじめ差別を許さない闘いを強め、石川一雄さんの無罪判決を勝ち取ろう。(東京O通信員)