【沖縄からの通信】

 仲井真県政の粉飾を剥ぎ取り、日本政府に対決しよう
  参院選けいこ、山シロ勝利を


 野嵩ゲートでの普天間基地閉鎖行動が今も続いている中、参院選挙の沖縄選挙区・糸数慶子、比例区・山城博治を勝利させる闘いが本格化している。
 沖縄の市民運動などによる「けいこ、山シロ・市民勝手連」も、五月三十一日に事務所開きを行ない、各政党とは独自に選挙闘争を推進している(那覇市・教育福祉会館1F、電話098・885・8230)。
 「けいこ」、こと糸数慶子参院議員は沖縄選挙区の2期目。辺野古NOを争点に、沖縄代表と政府代表(自民党県連候補)とを対決させるところの、一本化戦略の最初の候補者であった。六年前の彼女の勝利からスタートした一本化戦略は次つぎと勝利していき、09年の「鳩山の乱」を迎えて、ついには衆参共に沖縄で日本政府代表(自民党)をゼロにするところまで追い落とした。(しかし昨年末の総選挙で、自民一議席が復活)。
 「山シロ」、こと山城博治は、山内徳信参院議員の後継として全国比例から出る。沖縄人は、この二人に一票づつ合計二票投票できる。
 山シロは、雄弁にして戦略戦術にたけている。彼の右に出るものはいない。オスプレイパッド反対の高江での、防鳥網戦術は有名である。また『けーし風』誌77号にみられる仲井真知事に対する観点は、彼の戦略を表しているといえる。
 山シロは、高江、野嵩ゲート、辺野古の浜を駆けずり回っている人で、そういうところでは知らない人はいない。県庁労働者として労働運動をやってきて、今は沖縄平和運動センター事務局長の席にいて、諸団体で成る基地県内移設反対県民会議の中心的位置にもいる人である。全国の皆さまは、山シロをお願いします。
 今参院選では、「辺野古」の争点は不明瞭になっている。しかし、今はどういう時か、我われの立っている地点は何か、それは明瞭である。日本政府による沖縄の扱い方は、より一層の差別・抑圧を増している。「けいこ」と「山シロ」の敵は、本質的にはこの日本政府であるが、目前の敵は「仲井真体制」というべきものである。
 この仲井真知事を顔とする仲井真体制は、普天間基地の「県外」移設を掲げて以降、力を回復し、宜野湾市長選で伊波洋一を攻略し、来年一月の名護市長選を狙っている。「鳩山の乱」で生れ出た「県外」策のうまみを、知事は誰よりも知っている。自民党政権復帰後も東京から政府・与党要人が何回も来沖し、辺野古容認策へ移るよう圧力をかけるが、彼はそれを手放せない。手放せば死あるのみで、彼らは大きな矛盾を抱えている。
 仲井真体制は日本政府との間に、このように粉飾、みせかけがあるだけでなく、沖縄県民との間にも、みせかけを作っている。政府との間でのみせかけは形式的なもの、言葉の上のものであり、県民の闘いが無ければ容認へ動く。沖縄県民との間のそれは実質的なものであり、県政として「県外」を確約しないのであるから、最終的には信頼不可能である。仲井真の「県外」は、政治信条でも政策でもなく、反基地の県民世論に合流したものでもない。生き残りのために、他人の旗を手にしているだけなのだ。闘いは仲井真との闘いであり、それは即、日本政府との闘いになるというのが実相である。
改めて仲井真体制を検証したい。
@県民大会に出席しない。知事としての大会出席は、日本政府に対する最大の武器である。日本政府に対して、「現知事は政府の手がかりとして使用不可能」というサインを送ることができるし、また県民との間では「知事の県外策は本物」という団結を生むことができる。しかし彼はそうしない。
A辺野古アセスを受理している。県知事が、アセス各段階で納得のいくまで精査すれば、防衛省のエセ・アセスは十年も二十年も完成しはしない。「県外」の公約を理由に、不受理だって可能だ。彼はそうせず、安倍政権の埋め立て申請をも、すんなり受理している。
B秘密裏の会談を、政府関係者とたびたび持っている。県民の側に立っているなら、これはありえない。
C場違いの予算の話しをする。政府と一緒になって、県民買収の世論工作をしている。
D何十回もかぎりなく、「沖縄県民の理解を得たい」政府要人との知事面会を連発させ、新聞にのせて、「本土」世論の工作をしている。
「県民の理解を得たい」とは、沖縄に対して言っているというより、「本土」の国民に向かって、誠実に沖縄には対処していますよ、と工作する言辞である。この言辞は、沖縄に対しては恐喝である。暴力団がよく使う、「これほど誠意を尽くしてもか」と同じで、暴力を背後に準備している者が使う言葉である。「殺されたいか」と同義である。沖縄人たちは、「あれってどういう意味?」と言っている。県民の総意は明らかになっているのに、これを分ったうえで「理解を求める」では、公然たる侮辱である。
E「4・28屈辱の日」に、政府式典へ(高良倉吉副知事を代理出席させ)お祝いに行った。出席を拒否し、県民意思を全国に表明する絶好の機会を捨てている。
F「県外」を実現するため、公約を実現するため、積極的・主体的には何ひとつしていない。ときどき、「県外移設のほうが早い、と申し上げている」と状況説明をするのみ。沖縄県の知事として、権威と権限を行使して、日本政府に「辺野古移設は認めない」と表明していない。これを直訴に行った今年一月の東京行動にも、知事は参加していない。
さて今、沖縄には、名護にも宜野湾にも、県にも各政党にも辺野古移設論は存在しない。形式的には、葬り去っているのである。辺野古移設の破綻が確定するのを妨げているのは、この知事の偽装である。また県民側には近年の各選挙で、「県外移設」「国外移設」「グアム移設」「無条件撤去」などなどの、実践上はささいな意見の不一致によって、決定的な勝利を逃がすという事態が生じた。これに仲井真の粉飾が絡み合った。
最近、「県外」論のインパクトは失なわれたとして、「県外」も「オール沖縄」も否定的に見る知識人が増えている。これは、仲井真県政のみせかけにガマンがならないからと言うこともできるだろう。
しかし、仲井真がニセ者であったとしても、知事の職にある者を含めて、「県外」を「オール沖縄」で闘うことの意義は変わらない。沖縄民衆が作り上げてきた、「オール沖縄」の統一戦線の地平を捨てるようなことは愚かである。
この「オール沖縄」の闘いの先に、何があるのか。ここ数ヵ月の間で、いくつかの重要な提案がなされた。
@名護ヘリ基地反対協の安次富浩氏が、自決権を持つ沖縄自治州の構想を提起した。A琉球大の島袋純教授は、沖縄憲章の創設を提案した。B琉球民族独立総合研究学会が、沖国大の友知政樹氏・安良城米子氏、また宮里護佐丸氏(琉球弧先住民族会)らによって創設された。
安倍政権が、天皇制軍国主義と沖縄差別政策に回帰しつつある中、人びとは人智を尽して立ち向かっているのである。まずは、「けいこ」と「山シロ」の勝利を!(T)