憲法96条改憲派を孤立させよう


 四月十六日に今年度予算案が衆院を通過し、安倍政権は極右反動の性格を露わにしてきた。四月二十二日に安倍首相は、侵略反省の文言がある「戦後五十年・村山談話」に対して、「安倍内閣として、そのまま継承しているわけではない」と明言した。また四月二十三日には過去最多168人の国家議員が靖国神社集団参拝を強行するなど、閣僚を含む参拝が相次いだ。これを中国、韓国から批判されると、安倍は二四日に、「わが閣僚はどんな脅かしにも屈しない」などと異常な発言で対応した。四月二十三日には、9条改悪を見越した防衛大綱改定の自民党案が示され、「敵基地攻撃能力」や「核抑止力の検討」が盛り込まれた。
 そして四月二八日には「主権回復の日」政府式典を強行し、「天皇陛下万歳」で締めくくった。安倍はその式辞で、安保条約に日本を縛り付け、沖縄などを切り捨てたこの日を「日本を日本人自身のものとした日」と真逆に描き、「主権」と言いながら、その中味を示す憲法については一言も語らなかった。これは、「主権回復」以前に施行された日本国憲法の価値をおとしめ、憲法改悪を正当化せんとする策謀である。
 これら改憲攻撃に対決する、労働者人民・諸政党の動きも新たに活発化しつつある。9条改憲反対とともに、とくに憲法96条改定反対の声が広がりつつある。法律と同様に憲法を変えやすくすることは立憲主義に反する、自民や維新は憲法がそもそも分っていない、の声である。これらの要素を活かしつつ、今夏の参院選挙に対応できる、憲法改悪阻止の広範な共同戦線をつくることが当面の最大課題である。そのために、全国各地で5・3集会が行なわれた。(編集部)

東京日比谷5・3憲法集会
  憲法改悪阻止の強大な共同戦線へ

 五月三日、この今年の日本国憲法施行記念日には、例年にも増した危機感をもって、安倍自民党などによる改憲攻撃を許さず、これを撃退する大きな共同闘争を進めようという集会・デモが全国各地で取り組まれた。
 東京では、日比谷公会堂の内外において「2013年5・3憲法集会」が約3500人の参加で開かれ、「銀座パレード」も行なわれた。主催は、憲法8団体(許すな!憲法改悪市民連絡会、憲法改悪阻止各界連絡会議、憲法を愛する女性ネット、憲法を生かす会、市民憲法調査会、女性の憲法年連絡会、平和憲法21世紀の会、平和を実現するキリスト者ネット)による実行委員会。
 集会では、高田健さん(市民連絡会)の主催者挨拶の後、アイリーン・美緒子・スミスさん(グリーンアクション代表)、加藤裕さん(沖縄弁護士会・前会長)のスピーチが行なわれた。
 美緒子スミスさんは、水俣写真集で知られる故ユージン・スミス氏のお連れ合いでもあるが、「かって水俣をはじめ全国で反公害の闘いが前進し、国民が毒による被害を減らせたのは、憲法のおかげ」と指摘し、平和・人権を保障するものとしての憲法を守ることを改めて訴えた。
 加藤さんは、「本土」出身で二十年ほど前から沖縄で弁護士をしている人だが、このかん普天間爆音訴訟、辺野古アセス違法確認訴訟、高江スラップ(行政による市民嫌がらせ)訴訟などを沖縄県民と共に闘っている。加藤さんは、4・28「主権回復」式典に対する沖縄の怒りから話し始め、オスプレイ配備反対や辺野古基地建設反対など、このかんの沖縄県民の闘いの広がりが、先日の県民世論調査における改憲反対の数字を高めていることにも示されていると報告した。
 集会後半では、志井和夫さん(日本共産党委員長)、福島みずほさん(社会民主党党首)が連帯スピーチを行なった。他の国会議員では、沖縄社会大衆党の糸数慶子参院議員、民主党の近藤昭一衆院議員がメッセージを寄せている。
 最後に集会アピールが提案され、採択された。
アピールは現情勢を、「安倍政権はこの夏の参議院選挙で改憲発議に不可欠な3分の2の議席を獲得し、『天皇を元首』に『戴いて』、『国防軍』で戦争をする国をつくるという自民党の『憲法改正草案』の実現にむけて、領土問題などで国際緊張を煽りながら、維新の会などと連携し、立憲主義を破壊し、憲法改悪を容易にする96条改憲を突破口にしようとしています。こうした安倍政権のもとで日本国憲法はいま重大な危険にさらされています。」と捉え、「安倍政権が96条を手始めに全面的な改憲に乗り出した今日ほど、広範な共同行動が求められている時はない」として、思想・信条・政治的立場の違いを超えた共同の闘いをつよく訴えるものであった。
さて、近年の憲法闘争では、2007年に改憲国民投票法案反対での一定の高まりがあった。この法案は強行成立したが、それらの闘いによって第一次安倍政権は倒壊したのである。現在、闘いはその頃の次元にも達していないとみられる。しかし情勢は、より重大化している。まさに、腹をくくった取り組みが問われている。(東京A通信員)

松戸5・3憲法集会
  民主的「第三極」の地域的形成を

 五月三日、千葉県松戸市では「2013松戸憲法記念日の集い」が、都心日比谷の大集会と同時刻であるが、市民会館ホールに1100名以上の参加者を集めて行なわれた。主催は同集い実行委員会。
 今年で十一回目を迎えた松戸5・3集会は、講師に法政大学社会学部学部長の田中優子さんを招いて開かれ、周辺自治体からも多くの人々が参加した。
 集会は、グループ『蓮』の演奏につづき、集い実行委員長の神・子さんから、憲法をめぐる現在の情勢をふまえ集会開催の意義が語られた。
 田中優子さんの講演は、「ひろげよう!憲法9条 不戦の誓い…脱原発を求め、沖縄の苦しみを見つめて」との題で行なわれ、その中で、ご自身の研究専門分野である江戸学の考察内容をふまえての、自民党改憲草案への批判がなされた。
 「百姓一揆」は、江戸時代の民衆の直接民主主義の重要な一手段であったこと。原発(核エネルギー)、電気のない時代に、文化は後退することなく花開いたこと。また豊臣政権の「朝鮮出兵」の失敗により、日本経済がどん底に陥る中、自給的経済建設で文化的発展を実現したこと。天皇制も幕府統治の保障としてしか位置しなかったため、象徴的機能は今以上に希薄であったことなどを語りながら、現憲法下における立憲主義、平和主義の意義、脱原発の意義を語り、自民党改憲草案を全面批判した。また現憲法における天皇条項を削除し、第二章の戦争放棄を第一章にしてもいいのではないか、とも語った。
 田中さんの講演は大変歯切れもよく、テレビで観られるとおりの和服姿がマッチする粋な立ち姿もあってか、満員の参加者に賛同の意と感銘を与えたようである。
主催の集い実行委員会は、思想信条の壁を乗り越えて、憲法擁護の一点で結集した74団体で構成され、民主的運営を持って、一年の準備期間を経て集会の実現がなされた。地域的な民主的「第三極」結集へ到る一つの典型として、松戸憲法記念日の集いが存在するのではないだろうか。
集会後は例年通り、実行委員会参加の「活かせ9条松戸ネット」が呼びかける市内パレード(今年は「政府は憲法尊重擁護義務を守れ!怒りと抗議のパレード」)が、約百名の参加で行なわれた。(千葉A通信員)