12・16総選挙
  安倍政権は何をもたらすか
  幻想の経済成長となえつつ


@ 結果

 12月16日、第46回衆院総選挙が実施され、以下の結果となった。
 自民党圧勝(294議席)、公明勝利(31議席)、民主党惨敗(57議席)、維新の会躍進(54議席)、みんなの党躍進(18議席)、未来の党不振(9議席)、社民党消滅の危機(1議席)・共産党ジリ貧(9議席)。投票率は、59・32%で戦後最低。
 自民は単独でも安定多数、自公で三分の二を超える。これによって、安倍政権が誕生することになった。

A 特徴

 自民党の圧勝をもたらした最大の根拠は、民主党政権が期待を裏切り政治的混迷をもたらしたことに対する失望であり、安倍自民党が経済成長への回帰幻想を振り撒きつつ、小選挙区制での漁夫の利を得たことにある。
 経済成長は今や幻想にすぎない。経済成長に依拠して利益誘導型統治が機能した時代は、はるか前に終焉している。しかし、そこからの脱却をめざすブルジョア的改革の相対立する二つの道、市場原理主義路線とコンクリートから人へ路線は、この間、社会の崩壊と政治の混迷を拡大しただけで相次いで頓挫してしまった。その背後には、官僚主流の巻き返しがあった。特に直近の民主党政権の路線的挫折は、官僚支配(利益誘導型統治)への回帰の流れを人々に印象付けたのだった。
 今回の総選挙は、この流れの中で実施された。財界とマスコミは、利益誘導型統治の本家本元である自民党による安定統治への期待を全力で助長した。安倍も、建設国債の日銀引き受け等の主張によって経済成長幻想を振り撒き、それに拍車をかけた。
 とはいえ、産業発展時代・利益誘導型統治への回帰は、まさに幻想である。この幻想は、早晩消滅する。資本主義は、マネーゲーム資本主義への道を開く以外ない。その意味で、この「第一極」路線を代表する維新の会とみんなの党が、回帰幻想の奔流の中で躍進したことは注目しておかねばならない。
 未来の党は、利益誘導型統治からの転換を目指しつつも、社会の崩壊を促進する市場原理主義路線とは一線を画し、社会的包摂を重視する「第二極」路線を継承した。しかしこの党は、振るわなかった。その理由は、民主党政権の挫折がこの潮流の挫折に他ならならず、復権に必要な間もなく総選挙に直面したからである。また、経済成長時代への回帰幻想の奔流よって「卒原発」が争点ぼかしされ、押し流されてしまったからである。
 社民、共産は、国会内の地位を失おうとしている。戦後体制・利益誘導型統治の枠内での左翼のあり方から脱皮できず、ジリ貧・消滅の危機を迎えているということである。
 今回の総選挙のもう一つの大きな特徴は、労働者民衆の疎外である。脱原発運動、被災地、沖縄…沸き起こる民衆の怒りの声を目的意識的に無視し、押し潰したということである。支配階級は、時に、選挙という儀式を介して支配階級の特殊利益を正当づけ、労働者民衆の抑圧へと転ずる。それは大阪で橋下があからさまにやった手口であり、今回安倍政権がやろうとしていることである。

B 安倍自民党政権との闘いと「第三極」形成

 安倍政権が誕生する。この政権は、次の結果をもたらさずにはおかない。
 第一は、財政赤字の無制約的増大(際限無き増税)に道を開くことである。
 安倍政権は、公共事業に財政資金を無制約的につぎ込む政策に踏み込むとしている。もちろん、それが経済成長をもたらすのであれば、税収の増大によって埋め合わせることが可能である。しかし、市場が飽和し、産業が成熟してしまった現代では、そうした波及効果は生まれようがない。財政出動の無制約的拡大は、際限のない増税となって民衆に降りかかる。
 第二は、投機マネーを肥大化させることである。
 安倍政権は、産業資本への大規模なマネー支援をやろうとしている。公共事業への無制約的財政支出だけでなく、金融緩和でも従来の制約を取り払うとしている。しかし、注入されるマネーは、産業成熟・市場飽和の現代では、実体経済を拡大することなく過剰化し、投機マネーに転化していく以外ない。投機マネーの膨張は、その対極における失業人口の膨張と表裏のものである。労働者民衆は、貨幣価値の低下にも苦しめられる。
 安倍政権は、投機マネーを肥大化させるという意味で、市場原理主義台頭の道を掃き清める役割を果たすことになる。
 第三は、大衆闘争の高揚を呼び起こし、「第三極」の形成を招来することである。
 安倍政権は、アメリカをバックとした政・財・官トライアングルの利益誘導型政権だが、かつての実質を持たない・社会的土台の薄弱な極めて不安定な政権である。安倍政権は、そうした弱さをカバーするためにも排外主義的国民統合や、民衆に対する分断と抑圧を強めていくだろう。
 この政権は、増大する労働者民衆の不満と怒りを吸収する姿勢とメカニズムを欠く。この政権の下で、社会の閉塞感は極点に達するだろう。原発再稼働の拡大、集団的自衛権の合憲化、改憲など、内外にわたる敵対的態度は明らかである。経済生活における敵対性は歴然としている。労働者民衆の大衆的反抗は、不可避に激化・拡大する。大衆闘争の高揚は、「第三極」政治勢力形成の環境を成熟させるに違いない。それは、第二次安倍政権誕生の帰結であるだろう。労働者民衆の「第三極」形成は、正念場を迎える。(M)


12・16東京都知事選挙
  宇都宮候補が健闘

 十二月十六日、東京都知事選挙が行なわれ、石原後継・猪瀬候補の当選を阻止できなかったものの、脱原発・反消費税・教育統制反対・憲法改悪阻止などを掲げた宇都宮けんじ候補が健闘、第二位で968960票を獲得した。
 宇都宮候補は、都民生活の破壊と抑圧をすすめた石原反動都政からの抜本転換を求める都民の期待に応え、十一月九日に立候補を表明。短期の選挙戦では、各地の市民運動をもとに50以上もの「勝手連」が立ち上がり、労働者市民の支持を拡大した。
 選挙後、宇都宮候補は、「福島の事故は終わっていない。しかし、その痛みを都民に伝えきれなかった」と振り返る。そして「脱原発・反貧困は、訴え続ける日本の課題」として闘う決意を示した。脱原発を訴えてきた人びとは、「あきらめない」、「望みは捨てないですよ」と語気を強め、粘り強く闘う信念を語った。
知名度が猪瀬候補に遠く及ばず、急な出馬で運動の広がりにも課題が残ったが、それでも約100万票の獲得は重大な意味をもっている。東京での自公・維新との闘いにおいて、今後へ向けた重要なステップとなった。
脱原発の課題では、この春以降、政府・電力会社はいっきに原発を再稼動せんと目論んでいる。これを東京都民の問題として争点化することが問われる。わが党は、労働者市民とともに原発廃絶・改憲阻止等を闘い抜く。共に闘わん!(首都圏委員会0)