12・19韓国大統領
  民主進歩の政権交代
    当面問われるのは、反共保守政権の退場

 十二月十九日投票の第十八代韓国大統領選挙では、反共保守で、公共事業拡大の一方では新自由主義を推進してきた李明博大統領に替わる、民主進歩陣営の大統領が実現するかどうかが最も注目される点である。
 十月時点では、九名の大統領候補が選管に届けられていた。有力候補では、保守系の与党セヌリ党のパク・クネ(朴槿恵)、無所属のアン・チョルス(安哲秀)、野党の民主統合党のムン・ジェイン(文在寅)の三氏。他には進歩勢力から、統合進歩党(国会議員数六名)のイ・ジョンヒ(李正姫)、統合進歩党から分離した進歩正義党(国会議員数七名)のシム・サンジョンをはじめ、六氏の名前が上がっていた。
 有力三氏のうちパク・クネは、四月の総選挙で予想に反してのセヌリ党勝利を主導したことから、世論調査でも優勢を維持していた。セヌリ党も若年層の雇用確保や福祉の推進などを、李明博政権の批判さえ行ないながら主張し、支持を高めていた。
 ところがパク・クネは、軍事独裁政権時期の大統領で父親のパク・チョンヒが行なった人権弾圧を擁護する発言を繰り返して、とくに2007年に再審裁判で完全なデッチ上げとして無罪が確定した人民革命党事件の関係者から厳しく追及され、九月二四日に謝罪の記者会見を行なわざるを得なかった。これにより、それまで独走状態にあったパク・クネは、急速に支持率を落としたといわれる。(1974年の人民革命党事件では、同年の民青学連事件に関連し背後より指導したとして、四月八日に国家保安法容疑で逮捕された23名の内8名が死刑判決を受け、18時間後の九日に処刑された)。
 さらに追い討ちをかける形で、父親の朴元大統領の不正蓄財事件が表沙汰となり、この不正蓄財を継いだのが、娘のバク・クネであったことが問題視されている。(ただし、この事件では時効が成立している)。
 ムン・ジェインは弁護士出身で、ノ・ムヒョン前大統領の弁護士時代に共に人権弁護活動を行ない、共同の法律事務所に属し、出身地も同じという経歴である。ノ・ムヒョン政権では、大統領秘書室長などの要職を歴任し、大統領の側近として活躍した。今回の出馬に際しては、ノ政権の限界点たる新自由主義的傾向(韓米FTAの推進など)を自己批判し、民衆・労働者側に立つことを表明している。
 医師、大学教授でIT企業代表のアン・チョルスは、自身の開発したコンピュータウィルス・ワクチンを企業には有料、個人には無料と図るなどにより、韓国の若者たちからカリスマ的な支持を得ている。昨年のソウル市長選挙では、野党統一候補パク・ウォンスンを支持し勝利の一躍を買った。大統領選では野党統一候補との期待が高かったが、彼は与党にも野党にも距離を置くと言明し、また統一政策などでは、金大中政権・ノ政権の「太陽政策」を継承するとしながらも、対北安保堅持を表明している。このため彼は、保守側からは危険な革新系と批判され、野党側からは新自由主義の企業家と批判されて距離を置かれた。
 このアン・チョルスは、大統領選登録日前日の十一月二十三日に突然、出馬辞退の記者会見を行なった。辞退の理由も明らかにしなかったため、アン・チョルス支持派の票がどこに行くのかが不鮮明となっている。彼本人は、野党単一候補実現を主張していたことから、歓迎の声も出てはいる。
 進歩勢力・労働者陣営からは、統合進歩党のイ・ジョンヒ、労働者大統領候補を自認しての無所属キム・ソヨン、進歩新党出身の無所属キム・スンジャが登録を行なった。進歩正義党の国会議員シム・サンジョンは出馬を辞退し、ムン・ジェイン支持を表明した。
統合進歩党のイ・ジョンヒ候補も、進歩勢力統合発展のために出馬と宣言したが、民主・進歩陣営の政権獲得のためムン・ジェイン支持への含みを持たせている。事実、この三年近くでは各種選挙戦で、民主労働党(今の統合進歩党)が統一候補実現に大きな力を発揮してきた経緯がある。
なお、四月の国会議員総選挙以降の、統合進歩党の分裂と、これに伴うナショナルセンター民主労総の独自政治化など進歩・労働陣営の内部分裂状態は、この大統領選を通しても、いぜん収束の目途がまるで見えていない。これについては、大統領選の結果がどう関係するかも含め改めて評する必要があるが、ここでは、韓国民衆にとって失われた五年とも言うべき保守政権に終止符が打たれ、民主進歩陣営の大統領が誕生することを強く期待するに留めたい。(Ku)


  朝鮮高校補助金裁判始まる(大阪地裁)
   守ろう民族教育の権利

 今年九月二十日に、朝鮮高校への補助金交付の再開を求めて、大阪府・市への提訴が行われた。これに到る経過を見ておこう。
2010年4月に高校授業料無償化法が施行され、2年半が経過するが、いまだに全国各地の朝鮮高級学校10校の生徒に対して就学支援金が交付されないまま、無償化の対象から除外されている。
 地方自治体も、政府の高校無償化除外の措置を受けて、東京都、宮城県などで朝鮮学校への補助金が不支給になっている。他の自治体でも減額されている。
 大阪でも、「維新の会」の橋下前知事の登場後、大阪府議会、大阪市議会でも「維新の会」の台頭によって、補助金が不支給になった。
 1974年に大阪府が大阪朝鮮学園に初めて設備補助金を支出、1991年度からは大阪朝鮮学園に「私立外国人学校振興補助金」の交付を開始した。(とはいえ、大阪府の一般の私立学校補助金との額では大きな差があり、平等の原則に違反するものであったが。)
 この74年から始まった助成金・補助金について、大阪府は一方的に2012年3月29日に不支給処分を下した。大阪市も、1990年から始めた補助金を、2012年3月30日に事前説明もなく突然停止した。
 このかん橋下前知事は2010年3月12日、朝鮮学校2校を視察した。そして補助金交付の継続の前提として4項目を提示し、それを満たさなければ2010年度分の執行を留保すると発表した。
 その4項目とは、@日本の学習指導要領に準じた教育活動を行なうこと、A学校の財務情報を一般に公開すること、B特定の政治団体と一線を画すこと、C特定の政治指導者の肖像画を教室から外すことであった。その後、一項目を追加し、肖像画を職員室から撤去する、など5項目となった。これらの要求は、民族の言葉・文化・歴史を学ぶ民族教育の否定、一般に外国人学校の自主性を否定するものであり、不当な干渉である。
 このような状況のもと、朝鮮高校への高校無償化法の即時適用と、大阪府の補助金の全面回復を求めて、2012年3月1日(3・1は朝鮮独立運動記念日)に大阪市阿倍野区民センターに800名が参加して、「朝鮮高級学校無償化を求める連絡会・大阪」結成集会が開かれた。その集会で、補助金問題で大阪府・市への訴訟も含む行動を起こす必要があると報告された。
 また6月1日には、朝鮮学校に財政支援を府民などが行っていくための「大阪朝鮮学園支援府民基金」が設立されている。
 そして9月20日、補助金交付を求めて大阪地裁に提訴が行われた。原告は学校法人大阪朝鮮学園、被告は大阪府・代表者知事松井一郎、大阪市・代表者市長橋下徹である。
 請求の趣旨は、大阪府知事が原告に対して2012年度「私立外国人学校振興補助金」を交付しないとした処分を取り消し、補助金交付を決定せよ。また、大阪市長が原告に対し2012年度「義務教育に準ずる教育を実施する各種学校を設置する学校法人に対する補助金」を交付しないとした処分を取り消し、補助金を交付せよ。また、政府が原告に対して無償化措置を執らないことが違法であること確認せよ、である。
 先日の十一月十五日には、この朝鮮高校補助金裁判の第1回公判が大阪地裁で開かれ、原告代理人の丹羽雅雄弁護士らによって訴状が力強く表明された。次回は、来年の一月二二日である。
 かって関西では、朝鮮学校を強権で潰そうとした政府に対して闘った、阪神教育闘争の経験がある。今回は、朝鮮高級学校への無償化除外、補助金不支給という、まさに朝鮮学校に対しての兵糧攻めという攻撃であり、第二の阪神教育闘争である。
 在日の朝鮮・韓国人、また諸民族の学習権・民族教育の権利は、当然の権利であり、国と自治体は、その自主性を尊重しつつ、私学と同等の補助金を支給する責任がある。民族差別を許さず、マイノリティの教育を保障することは、日本の民主主義にとって不可欠である。
 国に対し朝鮮高校無償化の即時適用を求め、自治体に対し補助金の回復を求めよう。大阪・朝鮮高校補助金裁判におおきな支援を!(関西N通信員)