第5期第2回中央委員会総会決議(2012・9)

脱原発闘争を拡大発展させ、
  「第三極」政治勢力の形成、
  住民自治主導の復興を!



  
 T はじめに

  第五回党大会は、脱原発・復興活動で「復興活動・脱原発・安全な食と水の確保等、地域の課題に取り組み、住民自治を実現して地域的統一戦線を勝ち取ろう」として脱原発の任務を次のように決議した。それは(1)全ての原子力発電所の停止・廃止を求めて運動を強化する。当面浜岡や老朽化した原発の即時廃止・全ての新規建設計画の撤回、核燃料サイクル施設の停止を求めて活動する。(2)安全な「食や水」の確保、第一次産業の国家による保障と農業生産の拡大を求めて運動を強化する。(3)原発全廃期限を明確にして、脱原発法の制定要求を支持する。の三項目であった。
 さらに決議は、「住民自治を主導として、国家や地方行政が支援する復興を追求、民衆の側の自治的団結を形成し発展させ、人と人・人と自然との豊かな関係を実現する地域社会の復興を追求する。」とし、復興の立場を鮮明にした。そして5項目の復興の任務を決議した。
 我が党は、第五回大会決議の基調を継承する。そして、今二中総で、激化する情勢をふまえ、当面の闘争方針を明確にする。
 
  U 脱原発・震災復興をめぐる情勢

(1)高まる脱原発闘争

 第5期第1回中央委員会総会から1年、支配階級のなりふりかまわぬ攻撃に、20万人もの人々が脱原発の闘いに立ち上がる等、労働者民衆の闘争が高揚し新たな局面を迎えようとしている。
 2011年9月19日「さようなら原発1000万人アクション」集会が開かれ、会場の明治公園には内外を埋め尽くす6万人が参加した。集会は、5万人参加実現の呼び掛けを上まわる画期的な結集を勝ち取り、脱原発闘争の高揚を予感させるものとして打ち抜かれた。
 9月2日に発足した野田政権は原発再稼働方針を明確にし、さらに9月22日には、国連原子力会合で原発堅持を世界に宣言しようと画策した。集会は、それに抗議し、再稼働阻止、1000万人署名推進・世論の喚起等を目的に開催され、原水禁・原水協・新旧反原発運動が参加し、中央労働団体の枠をこえた大合流として勝ち取られた。それは、「第3極」政治勢力が見える形で登場した集会として実現された。
 11月11日第2回経産省包囲行動が再稼働阻止全国アクション実行委員会主催で開催され、1300名が参加した。包囲行動の1回目は、9月11日1500名の参加で行われ、この闘いの中で、上関原発建設に反対する若者などによってハンストが開始、それ以降これを継続する形で「経産省前・脱原発テントひろば」が設けられた。それは九条改憲阻止の会等多くの人々によって堅持され、闘いの大きな拠り所になっている。
 大震災から1年、「原発はいらない!3.11福島県民集会」が同集会実行委主催のもと郡山市開成山野球場で開催され、16000名が参加した。
 この日東京でも「追悼と脱原発の誓いを新たに3.11東京大行進」が首都圏反原発連合主催で行われ日比谷公会堂裏に14000名が結集、国会包囲に接続した。そして午後4時「3.11原発ゼロへ!国会包囲網ヒューマンチェーン」が社会文化会館前集合で始まり、1万数千人によって国会が完全に包囲された。また全国各地でも労働者民衆が立ち上がっている。
 今や原発再稼働阻止・原発廃止の闘いは、労働者民衆と財界、官僚との間でかつてない程、力比べの闘いになっている。
 「さようなら原発1000万人アクション」は脱原発、再稼働阻止を求めて6月12日、衆参両院議長に、6月15日内閣総理大臣に、750万筆もの署名が提出された。(9月現在、800万筆)しかし、野田首相は関西広域連合の知事と交渉を行い、関係閣僚会議で地元の理解は進んだとして「私の責任で判断する」と再稼働に踏み込んだ。そして6月16日、野田首相の「安全宣言」により、大飯3・4号機の再稼働が決定された。
 再稼働決定の16日、都議会でも原発都民投票が否決、32万人の声が切り捨てられた。原発推進派石原知事の与党、都議会自民・公明の手による暴挙で、大阪に次ぐ2件目となった。
 今後舞台は原発立地県に移り、静岡・新潟で住民投票を目ざす取り組みが行われている。
 再稼働の決定に前後して、再稼働阻止の闘いが現地や東京そして各地で激化した。
 東京では、首都圏連合呼び掛けの官邸前行動が行われ、6月1日2700名、6月8日4000名、6月15日には、翌日の再稼働決定を阻止しようと12000名が結集した。そして6月22日には決定強行に抗議して45000名が、6月29日には20万人が国会南側半分から官邸、経産省前に到る道路と空間を埋め尽くした。国家の中枢エリアが民衆によって占拠されたのは、前代未聞の快挙であった。毎週金曜日の官邸前行動は、ツイッターやフェイスブック等の呼び掛けで、3月末から開始、5月までは多くて1000人程度の参加だった。しかし、6月に入ると再稼働強行に反対する闘争が大きく燃え上がった。
 現地では、福井県庁そばの公園で、6・7緊急集会が開催され2000名が結集した。また。6月30日、7月1日大飯原発前では、再稼働を前に300名の人々が2日間にわたり、道路を封鎖し闘い抜いている。大阪などでも集会が持たれた。
 しかし野田政権は、再稼働反対の声に耳を貸すことなく、廃炉規定の見直しを行い40年を越えての原発稼働を可能にした。そして、6月20日、原子力規制庁を作るための設置法を成立させ、原子力基本法の一部を改訂「我が国の安全保障に資することを目的として」の文言を付け加えた。それは、核武装の可能性に道を開いたものであった。
 そればかりではない、政府のエネルギー・環境会議は、2030年の原発依存度を0%・15%・20〜25%の三つに分け、8月までに決めるとした。運動の高揚に秋以降への延期を検討するとしているが、0%以外は大震災前以上の稼働をねらったものである。政府は、15%以上に誘導して核燃料再処理工場を維持し、「もんじゅ」も一定期間動かそうと画策している。
 この暴挙に、労働者民衆の怒りが高まり、官邸前行動に7月6日15万人、同13日にも15万人と空前の規模で闘いが続いている。そして7月16日代々木公園は脱原発を求める人々で埋め尽くされた。「さようなら原発10万人集会」はうだるような猛暑にもかかわらず17万人が結集、過去最大の集会になった。そして、7月29日夜、集会とデモに続く「国会大包囲」には推定20万人の労働者民衆が結集した。組織的勢力が、大衆闘争で統一戦線を形成したことが、成功の一因となった。また、超党派の集会を組織的勢力が下支えする形をとったことは評価に値する。
 8月12日。「脱原発社会をめざす8・12労働者集会」が開かれ、会場に入りきれない程の1300名の労働者市民がつめかけた。集会には東部労組・全港湾・全水道・東京清掃労組など同集会実行委主催で開催され、労組として脱原発運動を強化し地域運動・住民運動と連携し闘うこと。職場での放射能安全対策を労働者の知恵を駆使して作り上げること等を提起した。集会は「さようなら1000万人アクション」を労働運動から担うことを表明、脱原発闘争を一層前進させるものとして勝ち取られた。
 9月14日エネルギー環境会議は、2030年代の稼働0をあいまいなかたちで決定したが、9月19日、野田内閣は、「2030年代に原発稼働ゼロ」を目指す「革新的エネルギー・環境戦略」さえ閣議決定を見送った。政府は、アメリカの圧力と財界・官僚にすり寄って、圧倒的多数の労働者民衆が要求する脱原発の願いを踏みにじった。そして電力会社は大間をふくむ3基の原発の新増設を強行せんとし、再稼働の動きを一段と強めている。さらなる闘争の拡大で、再稼働阻止・脱原発を実現しなければならない。
 一中総以降1年間、労働者民衆の脱原発闘争が高揚し、大飯原発3・4号機再稼働をめぐって、空前の規模の闘いが組織され、継続されようとしている。それは世界が注目する大闘争である。
 野田政権がそれにもかかわらず原発を推進する背景には、米国の核・原子力政策への追随をはじめ、日米同盟関係を最優先する外交路線の推進、独占ブルジョワジーとそれに結託した官僚の利益の追求、これである。
 従って脱原発は、単に再生可能エネルギーに替えればすむ問題ではなく、社会の全面的変革が突きつけられている闘いである。
 労働者民衆は、国会が翼賛状態になり、再稼働問題でも機能しない現実に業を煮やし、個々の人々が動き出し、空前の直接民主主義の行動を実行した。小泉政権に裏切られ、期待した民主党政権にも失望し、自らの手で自らの要求、脱原発を実現すべく立ち上がっている。
 それは、エジプトタハリール広場やオキュパイ(占拠)等世界的潮流となった直接行動を日本でも実現する行動であり、ブルジョワ支配階級との階級闘争の総力戦である。
 官邸前行動や脱原発集会への結集は、ツイッターやフェイスブックを活用して若者や多くの労働者民衆に呼び掛け、空前の規模の集会が実現した。また、「経産省前脱原発テントひろば」設営も、個々に解体された非正規、失業者、女性、若者等運動の勝敗を左右する人々に集まる場所、闘争拠点を提供している。
 我が党は、労働者民衆と共に脱原発闘争を一層拡大発展させるよう奮闘する。
 そのためにも「第三極」政治勢力の形成が求められている。脱原発の闘いは、一日共闘であった。労働者民衆の闘いの前進は「第三極」を促さないではいない。「第三極」実現は、地域的統一戦線・全人民の統一戦線に道を開く事になるだろう。「第三極」は、非正規・失業労働者の組織化、つまりユニオン、個人加入制中小単産を主力にして形成される。9.19前段行動で、中小三単産が連携し、多くの労組が脱原発闘争を担ったことは重要である。さらに8.12集会で労働運動が脱原発闘争を強化することを訴えたことも注目に値する。また、「被ばく労働を考えるネットワーク(仮称)」が4.22集会開催、その後の活動を通じて、被曝の実態を明らかにし、対政府、対企業への運動を進めていることにも注目する。

(2)震災から1年半、住民自身による再建が着実に進められている。

 東日本大震災から一年半、国家主導の新自由主義による復興か、住民自治主導による復興かをめぐり矛盾が顕著になっている。
 野田政権は東北を、部品・素材・原材料の供給網と位置づけ、高速道路網などインフラの復旧に力をいれた。そして一方で、「復興特区」方式による農業集約化と民間資本の参入、漁業権への民間企業参入、医療分野等「規制緩和」を行い、工場誘致や外資系企業も含む多国籍企業、農業関連企業、環境・医療関連資本の参入を進めている。そして被災者が手放した土地をも資本蓄積の手段として活用する政策を推進している。
 宮城県は、国の掲げる新自由主義復興政策のもと「特区」による漁業権の民間開放・農地法の規制緩和を強く求め、一方「選択と自由」方式による漁港や水産加工施設の復旧・復興方針を推進した。漁港や水産加工施設の復興、被災142漁港のうち60漁港を拠点港として優先整備する方針をとった。また、新産業の誘致にも積極的に取り組み、仙台市以南地域では農業関連企業の誘致を進めている。
 それに対し、岩手県は、被災者の生業と暮らしの再生を重視、宮城県とは異なる傾向を示し、被災108漁港全ての復旧方針をいち早く打ち出している。
 また福島県も「原子力に依存しない安全・安心で持続的発展可能な社会づくり」を基本理念の第一に掲げ、地域社会・経済再建のビジョンを示している。
 新自由主義の復興政策が進められるのにともない、復興格差が拡大している。
 仙台の繁華街は、復興景気に沸き、東北内陸部の自動車、電子部品等供給工場の復旧は、2011年夏の時点で解決に向かっている。しかし、激甚被災地、三陸海岸地域等への復旧投資は、大きく立ち遅れている。宮城県気仙沼市等では、宮城県の復興方針によって、漁港関連施設や水産加工工場、商店、住宅の再建ができないまま1年以上放置されている。
 また被災地では、1年を経過した時点で、34万人以上の被災者が避難生活を強いられている。その中で孤独死・自殺など「震災関連死」も増えつつあり宮城・岩手・福島で1438名(2012年3月)に達している。しかも仕事や所得の機会、病院や介護施設が不十分な状態で、多くの被災者が住み慣れた土地を去りつつある。
 その上失業率が依然高く、瓦礫処理もほとんど進んでいない等深刻な状況にある。しかも瓦礫処理の多くを大手ゼネコンが請け負っている。
 国家主導の復興は、住民のための地域産業復興・生活再建や地域社会の復興とは無縁である。 これに対して被災地では、筏や漁船も含め、残された生産手段や仮設店舗等を活用して、地域ベースの住民主体による生活や地域産業を協同で再建する多様な試みが広がっている。そこには、生活協同組合やNPOが支援、あるいは支援を目的としてNPOを組織するなど、創造的な取り組みがなされている。基礎自治体が有効な支援策を創造する地域もあるが、住民自身が粘り強く行政に働きかけ、交渉を強めて一歩一歩勝ち取っている地域もある。
 こうした取り組みは、農業分野でも広く実践され、新自由主義の復興と対抗して着々と進められている。国家主導の復興はますます矛盾を深め様々な矛盾を顕在化させている。
 これに対して住民自身による再建が着実に進められ広まっているのである。

  V 当面の方針

 以上の情勢をふまえ第五回大会決議を指針として、以下の方針を掲げ闘争する。
(1)脱原発闘争の拡大・発展を求め、次の課題を重視して全力で闘う。
@原発の再稼働阻止・原子力政策改悪に反対して闘争を強め、全原発、核燃料サイクル施設の停止・廃止に向け奮闘する。
A安全な「食や水」の確保、除染、放射能から労働者民衆の生命と健康を守る運動を支持し推進につとめる。
A.安全な計測体制を整備、情報公開を要求し、安全な「食と水」を確保させ、第一次産業の国家による保障と農業生産の拡大を求めて闘争を強化する。
B.労働現場の放射能安全対策を職場労働者の協力をもとに、総合的な対策を追求する取り組みや、被曝労働者を支援する枠組み、活動の創出に向けた運動を重視し、被曝労働者等の生命と健康を守る運動を推進する。
C.福島ならびに周辺の放射線汚染地域、さらに汚染が疑われるすべての住民、とりわけ乳幼児、若年者、妊産女性への定期検診の実施、疾病者への医療、生活保障を求める。これらの各自治体での完全実施とその費用の全額を国と東京電力へ弁済を要求する市民・住民運動を全面的に支援し、国および東電の責任のがれを許さない闘いを強化推進する。
B労働者民衆の闘争の高揚を背景に、核燃料サイクル施設の即時停止・廃止、早期の原発期限を明確にした脱原発法制定を求めて奮闘する。
(2)脱原発闘争の拡大・発展にむけ労働者民衆と共に全力で闘い、その闘いを通じて「第三極」政治勢力形成を求め奮闘する。そのために次の4点を掲げて活動する。
@ユニオン・個人加入制中小単産を主力とする地域社会に根ざした日本労働運動を一層拡大・発展させ、学習を深めて労働運動として脱原発闘争を強化するよう奮闘する。
A労働運動相互の連携を強め、労働運動と市民運動・住民運動との連携を深めて地域でのネットワークを広げ、脱原発闘争の強化発展のために闘う。とりわけ地域での闘いを重視し、共に担い拡大することは大切である。
 地域では、廃炉を求めて自治体決議を上げる請願・陳情、原発の運転差し止めを求める訴訟・住民投票、地方議会で脱原発勢力を拡大する運動等様々な闘争が行われている。運動は今や地方に少しずつ広がっている。これらの闘争を支持し発展させることが重要である。
B若者や子育て世代など運動に関わり始めた労働者市民との交流を深め、政治的信頼関係を強め、団結して脱原発闘争を担い、運動の発展、継続のために闘う。
C「第三極」政治勢力の共闘を継続・拡大させ、革命的左翼諸派・共産党・社民党等左翼世界の大きな政治的再編を含め、左翼勢力民主勢力合流のため活動する。
(3)住民自治を主導として行政が支援する復興を追求し、自治的団結の形成発展のために闘う。そのため以下の3点を掲げて闘争する。
 @被災地では、住民主体による生活や地域産業の復興を協同で再建する多様な試みが、農業、漁業第三次産業等で広がっている。これらの復興を支持し、住民自治を基本とする社会の創造や大都市工業に従属しない地域づくりを今後も追求する。それは地域に働く場を創出し、復興格差解消にも貢献する。また、それらを支える生活協同組合や地域NPO、復興を支援する目的で組織された諸組織の活動を評価し、支援する。復興支援を民族主義・全体主義を煽る道具とすることに反対する。
 A住民自治による復興を推進するため、地方自治体が有効な支援策をとるよう追求し、自治体が自由に使える地方交付金や民衆の自治的復興推進組織への資金供給を勝ちとるよう活動する。
 B災害瓦礫広域処理計画の再考を含め、独占企業やゼネコンによる復興ではなく、被災者や全国の失業者が復興の仕事につけるよう運動を強める。また労働組合による労働者供給事業を組織し、雇用を実現する。災害復興事業で得た資金を、住民自治による復興に役立てる。
  新たな社会創造への闘いを共に推進しよう。(以上)