〔書 評〕

『資本主義終焉の実相』
         新時代への展望
       著者:   松平直彦
       同時代社  2012年8月31日発行
       定価:   2200円(外税)

   マルクス主義の現代的発展めざす
          議論を起こし、「第三極」形成を促進しよう

 本書は、わが党の理論誌と機関紙に掲載してきた私の論文を一定のほど手を加えつつまとめ、1970年代初頭にはじまる世界史的変化とその行き着く先について、体系的に明らかにしたものである。それは、世界史的変化との乖離を拡大し、労働者民衆の共通の世界観(革命実践の指針)としての生命力を喪失してきたマルクス主義を、今日的に発展・再構築する作業であった。
 本書のポイントは、次の点にある。
 第一は、資本主義の時代の結語として、「人間の時代への三つの契機」の形成を抽出したことである。「産業の成熟」「地球環境限界への逢着」「人間(関係性)の豊かさへの欲求の高まり」である。
 第二は、資本主義が、自己の創りだした「人間の時代への三つの契機」と適合できないため、「社会の崩壊」と「国家の機能不全」をもたらしているメカニズムを明らかにしたことである。
 第三は、労働者民衆が、生存の必要に迫られて、また「人間の時代への三つの契機」に導かれて、真の人類史への道を切り拓かずにはおかないと結論したことである。 
 今日、支配階級は、二つの路線の間で対立を深めている。一方は、資本主義の唯一の発展方向であるマネーゲーム資本主義をあからさまに推進する路線であり、社会が崩壊しても構わないとするものである。もう一方は、マネーゲーム資本主義を推進しつつも、階級支配秩序を維持する見地から民衆の包摂に腐心するマッチ・ポンプ路線である。この路線対立は体制末期特有のものである。しかし労働者民衆は、ある時は前者に、次は後者への期待を寄せて流動し、自己の足で立つことができないできた。
 だがここにきて、労働者民衆が大衆的反抗を拡大させ、思想・政治的に自己の足で立つ局面を手繰り寄せつつある。これまでの社会の在り方からの転換を追求し始めている。戦略的議論を起こし、「第三極」形成に向けた協力関係の形成に力を注いでいかねばならない。本書はそうした議論を起こすための一つの提起である。(M)