編集部だより

★歴史好きの女性を「歴女」と言うそうである。私の姪も、「歴女」の一人である。NHKの大河ドラマをみて、「歴女」になったようである。★戦前の歴史小説には、荒唐無稽のものもあり、生年年代からして、決して遭遇さえもありえない人物二人を同じ時代の歴史舞台に登場させるものもあった。神話と史実を混用させていた皇国史観の時代では、さもありなん、ということであろうか。★さすがに、戦後の歴史小説では、このようなことはほとんどないと見てよいであろう。というのは、史実が明らかでない部分に、作家が訴えるテーマを投げ込む手法が一般的なこととなったからであろう。中には、歴史家顔負けと思えるほどに史実を探求した上で、執筆する作家もいるほどである。★だが最近は、歴史家としての最低限のマナーも忘れて、現代人の眼で歴史を安易に裁断する学者がいるようである。対象とする時代の人々の「ものの見方・考え方」に出来うる限り近づいて、確かな史料に基づいて、史実を構成することが、いかなる立場の歴史家でも必須の態度である、と思う。史実の評価は、その上でのことである。★ところが、ただ何でもいいから、面白ければ好い、という時代風潮に押し流されて、歴史家としての最低限のマナーを踏み外す歴史家がいるようである。ポピュリズム歴史家とも言うべきか。(竹中)