4・11韓国総選挙−野党側「敗北」を考える
 大統領選へ課題問われる

 四月十一日に行われた韓国総選挙の結果については、李明博政権の不人気とは裏腹に予想外の野党側の敗北となり韓国内民主統一陣営ばかりでなく、日本の日韓連帯運動陣営においても落胆の色は隠せないでいる。そこでここでは総選挙結果の詳細と敗北の原因について、さらに本年十二月に行われる韓国大統領選の展望を記すこととする。
 まず全300議席の総選挙結果は、与党セヌリ党(旧ハンナラ党)152議席(地域小選挙区127、全国比例代表25、そのうち2名が選挙違反等で離党、投票率42・8%)で単独過半数を確保した。民主進歩陣営では民主統合党(旧民主党など)127議席(小選挙区106、比例21、投票率36・45%)、統合進歩党(旧民主労働党など)13議席(小選挙区7、比例6、投票率10・3%)となり、進歩新党(投票率1・13%)緑色党(投票率0・43%)で議席獲得はならなかった。その他保守野党の自由先進党は5議席、無所属は3議席であった。
 この選挙結果からわかることは、与党セヌリ党が43%弱の得票率で過半数の議席を獲得したことであるが、その原因の幾つかについては、韓国民主進歩陣営の中で出されている総括的論評にある指摘が、日本の我々にも多いなる参考ともなるだろう。
 そのひとつは、野党圏の選挙統合が本紙でも指摘したとおり、あまりにも立ち遅れてしまったことに尽きるのではないか。野党選挙連帯が立ち上がるのは、あまりに遅すぎたのではないか。それに比べるならば、与党側は背水の陣とも言うべき対処であった。李明博政権と一定距離を置いたように見えるパク・クネを選対委員長に据えたところで党名変更さえした体制側に対し、野党陣営の見通しの決定的な甘さ、取り分けても反李明博の代表と自認した民主統合党に見られるところの与野の差異の不鮮明さがあったのではないだろうか。
 その結果は、若年層が投票行動に向かわず、中高年齢層に偏った投票結果となり、再び地域主義が幅を利かせることとなってしまった。ソウル首都圏では、与野伯仲のなか野党陣営の勝利にはなったものの、これさえも決定的な勝利まで勝ち得たとは言えるものではなかった。
 また一つの典型的な例証は、民主労総の最大級の拠点の一つであり、進歩陣営の一大拠点たる蔚山地域(小選挙区六)でセヌリ党に全敗を喫してしまったことに見られる。ただ済州島(小選挙区三)ではセヌリ党が全敗をしている。ここでは海軍基地建設反対運動が続けられ、さらには4・3蜂起を経ての全島的な歴史的反中央の島民感情が存在するものと思える。
 これらの諸点を踏まえれば反李明博野党選挙連帯が、単純に得票率から総計すると、今後の大統領選では勝利するのが当たり前との推論は当てはまらないだろう。運動の中身がそこには反映をしていない。政策面でも反李明博を前面に立てた野党側に対し、パク・クネのセヌリ党は脱李明博を打ち出し、争点の曖昧化に成功したと言える。例えばBSE問題では、米帝の代理人たる李明博とは距離をおき、再考の立場さえも主張しているのである。果たしてこのような与党側の対応に野党選挙連帯が対決しきったのだろうか。その点が曖昧となり、野党側の選挙戦当初の足並みの乱れを、与党側に的確に突かれてしまったのではないか。
 これに対抗するならば、旧来の新自由主義と決別し、どのような韓国社会を展望するかのプランを前面に打ち出すことが、求められたのではなかったのではないか。この点で言うならば韓国社会は、日本以上に新自由主義が浸透しており、若年層にとっては職の問題も含めて未来の展望に欠ける現実がある。その意味では朝鮮半島の自主的な平和統一は、平和の問題ばかりでなく新自由主義から脱却するところの朝鮮民族の生活権・生存権に関わる問題といえよう。
 また生存権に関わるならば、福島第一原発事故を契機として、韓国でも原発問題が総選挙で政策課題の重要な一つとなった。概ね民主進歩陣営は民主統合党も含めて、脱原発を政策の重要な柱とした。この点では、韓国の緑の党である緑色党が脱原発の老舗で、この運動の中心に位置するはずであったが、概ね野党側が脱原発を標榜することで緑色党はこれに埋もれてしまい惨敗することとなった。この教訓は、日本での緑のグループに当てはまるのではないかと思われる。
 政府側は、北朝鮮との「安保問題」を盾として基本的に日本同様、原発推進を謳っており、民主進歩陣営との対立が鮮明となっている。セヌリ党はこのことには言及せず、曖昧化している。
 以上の点を踏まえて、本年十二月の大統領選は大変緊迫した状況が考えられる。民主進歩陣営が総選挙敗北の教訓を生かし、若年青年層を中核とし、この層の将来展望を描ききる、平和で人権・生存権がはっきりと保証しうる政策提起が必須となるのではないだろうか。このことを踏まえての大統領選勝利は、北東アジアの平和の確かな一歩となり、日本の対米追随への揺り戻しの再考を促す決定的な機会となるだろう。(ku)