消費税増税断固阻止を
       新自由主義右派の政界再編策動に対決し、
     労働者人民の「第三極」政治勢力の形成へ



年内の重要対決点として、震災・原発対応、普天間問題に加え、消費税の増税を許すか許さないかが決定的な課題となってきた。消費税増税の策動は、ここ二年半続いた「政権交代」と民主党政権の時代を終わらせようとしている。それは、ブルジョア諸政治勢力の再編成に帰結するだろう。
このかんの民主党の数々の公約裏切りによって民衆の政治不信が高まったが、いよいよ消費税増税の策動によって、既成の国政政党への不信は頂点に達しつつある。この不信を利用し、来る総選挙へ向け「新党」策動を強めているのが、石原都知事、亀井(国民新党)、平沼(たちあがれ日本)らであり、それと連携する大阪の橋下一派、愛知の河村一派である。これらの徒党は、国家主義者や新自由主義者の雑炊であり、まとまった第三党などには成りそうもないが、政界再編の起爆材にはなるだろう。民主党や自民党を口先で非難する彼らの正体を暴露する闘いが、重要になってきた。
求められるのは、こうした怪しげな「新党」ではなく、労働者人民の利益にしっかりと立った「第三極」政治勢力の登場である。この労働者人民の共同の政治勢力をブルジョア的政界再編に対峙させ、前進させること、消費税問題をしてその闘いの好機としなければならないのである。

  「消費税解散」

 消費税増税策動の最近の経過をみてみよう。野田首相による年内に案を作れの強い指示によって、民主党は昨年十二月二九日、「2014年4月より8%へ、15年10月より10%へ段階的に消費税率を引き上げる」とする案を決定した。年が明けて一月六日には、政府・与党として、この消費税増税を柱とする「税・社会保障一体改革」案を正式決定した。この消費税増税案には、「経済状況を好転させることを条件に」という文言が付いている。これは、消費税増税に現状では反対とする小さくはない党内世論を懐柔・分断するためのものであったが、消費税増税法案の国会提出時(三月末提出を想定)には、党内が再紛糾する火種ともなっている。
つづいて野田は一月十三日、消費税増税を主眼とした内閣改造を行なった。これは、普天間返還問題で失態を続け問責決議を受けた一川防衛相などを退任させるとともに、岡田元民主党幹事長を「税・社会保障の一体改革」担当相に据えるものであった。
一月十六日の民主党大会で野田は、消費税増税へ強硬姿勢を示した。解散・総選挙は消費税増税法案を成立させた後とし、自民党などによる提出前の解散要求を拒否した。
以上の過程で、小沢一郎や鳩山由起夫が野田批判を強め、消費税増税などに反対する一部民主党衆院議員が分裂する(新党きづなの結成)など、民主党の分解が始まっている。
野田首相は一月二四日開会の通常国会で、消費税増税法案の年内成立を主眼とした施政方針演説を行なった。その演説では、福田、麻生の首相演説を引き合いに出しつつ「政局ではなく大局を」と述べて、なりふり構わない自民党などとの翼賛を求め、消費税10%への年内突破の意思を露骨にした。
この「消費税国会」は、2012年度予算案が衆院で成立させられた後は、一気に解散色となるとみられる。財界や官僚が期待しているのは、民主・自民の翼賛による消費税増税法案の成立、その後の合意解散である。これが支配階級の総意としての「大局」であるが、しかし「政局」はそのとおりに動くとはかぎらない。野田政権が立ち往生し、強行解散となればどうなるか。総選挙で最大与野党のどちらが勝っても、消費税問題は権力抗争の争点であり続け、ブルジョア政治の統治能力の欠如をさらけだす結果にもなりかねない。労働者人民の消費税増税反対の闘いが、付け入る隙は充分にあるのである。

  公約違反の集大成

このかん政府・財界・マスコミ総がかりで、少子高齢社会化・財政危機によって消費税増税はやむをえないという大合唱が続けられ、世論誘導が行なわれてきた。しかし、「3・11」以降は、震災復興に水をかける大衆課税をやる時か、として世論調査でも消費税増税反対論のほうが優位になる変化が生じている。日本が破綻しないためには、我々も協力するしかない、と思わされてきた少なからずの国民も、ちょつと待てよとなってきたのである。
野田民主党による消費税増税への踏み込みは、このかんの民主党の公約違反の集大成である。民主党は09年総選挙で、消費税増税を公約に含む自民党と闘って政権交代を実現した。民主党のこの総選挙マニフェストは実は、消費税について何も触れていない。マニフェストに書いてないことはやらないと言って総選挙を戦ったのである。それに勝利して成立した鳩山連立政権はその3党連立政権合意において、「今回の選挙において負託された政権担当期間中において、歳出の見直し等の努力を最大限行ない、消費税率引き上げは行なわない」と公約したのであった。
野田が言うように、衆院任期中に消費税率引き上げ法案を決めても、実施は2014年で任期四年を過ぎるから公約違反ではない、というのは誰も認めない。
09年政権公約でいう「歳出の見直し」のほうは、どうなったのか。総選挙マニフェストで、国の支出(総予算207兆円)を2013年度には9・1兆円削減し、収入では「埋蔵金」活用や租税特別措置見直しなどによって7・7兆円増やし、計16・8兆円の財源を作れるとしたのは根拠がないわけではなかった。その後、民主党指導部は「見通しが甘かった」などと弁明したが、民主党政権が数兆円しか浮かすことができなかった主な原因は、官僚依存政治・補助金政治を打破することを自ら放棄したからである。これは、昨年末の「八ッ場ダム」復活決定に端的に示されている。
また16・8兆円の見積りには、衆院比例定数80削減など反動的なもの、国家公務員人件費2割削減など内容精査が必要なものが含まれるが、他方では、軍事費や原発予算の削減がまったく除外されている。
2012年度予算案では、米軍おもいやり予算、在日米軍再編関係費を合わせて2500億円、原発推進関係費で4200億円(もんじゅ・核燃サイクル関係は25%減ったが、依然300億円も付けている)である。これらは全面的に削減できる。また政府は年末に、次期主力戦闘機としてF35の採用を決めたが、一機99億円として今後米国から1兆円ぐらい買うつもりである。「敵地攻撃」用のステルス機が、なぜ日本に要るのか、自民党時代ですらできなかったことをやっている。
このように日米安保での政治選択を少し変えたり、脱原発の民意に沿う政策決定を行なうだけでも、大きな財源を浮かせることができる。国内空洞化の主犯である大資本に奉仕し、原発利権にしがみつき、米国への追従を最優先とする誤まった政治を続けるために、大衆生活が犠牲になる必要は一銭たりともない。

  土台からの改革を

しかし、消費税増税は今は不適切であるにしても、今後の社会保障を考えると消費税増税はいずれ避けられないのでは、という疑問も少なくはない。
政府・与党の「税・社会保障一体改革」案は、この国民の疑問に誠実に答えていない。それは、消費税増税の代わりに、小泉時代に強化された法人税減税・金持ち減税をほんの少し元に戻すだけのことで、とても一体改革案とは言えない。民主党政策である「税方式による最低保障年金(月7万支給)」実現のためには、消費税率17・1%が必要と試算されたが、選挙が怖くなって隠してしまった。
新自由主義の資本主義体制を前提とする枠内で「一体改革」を論じれば、こんな結果にしかならない。財政の土台となるものからの改革が必要だ。多国籍企業・金融資本を規制し、公的・社会的就労を創出し、地域から新しい内需を振興する、当面はこうした投資・雇用・消費の一体的改革が問われている。その先には、資本を社会的所有に転化する社会主義的変革が展望される。これによって財政と家計は根本的に刷新されるだろう。
大きな展望をもって、消費税増税反対闘争に勝利しよう!