2012年
年頭アピール

    労働者共産党中央常任委員会


全世界人民と連帯し新自由主義と闘おう
 復興闘争と脱原発に勝利を


 すべての読者・友人の皆さん! 二〇一二年の年頭に当たり、労働者共産党のアピールをお送りします。
当面する党と労働者人民の闘いにおいて、重視すべき内外情勢の特徴は、以下の諸点にある。
第一は、欧州の債務危機問題に端を発する金融危機と新興国をも含めた全世界へのその影響である。
ギリシャから発したソブリンリスクは、アイルランド、ポルトガルに波及し、今やユーロ圏第三位の経済規模をもつイタリアをも襲っている。事態の深刻化で、ドイツやフランスの国債も不安定となり、欧州銀行は軒並み動揺している。ユーロ危機は、財政統合へ踏み切るか、それともユーロ分裂か、いよいよその正念場を迎えつつある。
 財政危機は、ヨーロッパのみならず、アメリカや日本でも明らかに進行している。
 ヨーロッパの債務危機やアメリカ経済の低迷などにより、新興国の経済成長も鈍化の傾向を強めている。その背景には、中国など新興国の最大の輸出先である欧米の景気後退、新興国の景気刺激のための補助金の期限切れ、欧米資本の流出などがある。
第二に、政治軍事面では、成長著しいアジアでの米中のヘゲモニー争いが一段と強まっていることである。対立は、一つには、経済圏構想とその実現をめぐっての攻防である。中国のASEANへの接近を見て、アメリカは一昨年来TTPを利用して、対中巻き返しを画策している。野田政権は辺野古新基地建設に固執するだけでなく、TPP参加交渉を明確にし、カナダ、メキシコの参加を誘引してアメリカを援助している。これを見た中国は、従来のASEANブラス3による東アジア共同体構想をひとまず引き込め、ASEANブラス6で妥協して、対抗しようとしている。しかし、大国同士の熾烈なヘゲモニー争いは、肝心のASEAN諸国をないがしろにするものであり、インドネシアやタイなどはASEAN中心を再度強調しつつある。
もう一つは、やはりアジアをめぐる軍事的対抗関係の深まりである。中国は海軍の遠征能力を向上させつつ、空母建設を急いでいる。これに対して、アメリカは、南シナ海を巡る中国とベトナム・フィリピンなどとの対立につけ込んで東アジアサミットなどで対中国包囲網を強めている。また十一月には、「対テロ戦争」を「収束」させつつ、アジア太平洋を安保の最優先地域として、日韓での米軍展開を維持しながら東南アジア・太平洋では強化する新たな戦略を公表した。そして、中国ミサイルの射程外のオーストラリアに、米海兵隊を駐留させることで合意した。
第三は、財政赤字の積み重ねの中で、世界各国とも利益誘導型政治の基盤はなくなり、既成政党同士の権力争いは非和解的となり、ますます厳しいものとなっている。全般的に各国政権基盤の弱体化の傾向がある。中には、既成政党の闘争が泥仕合的な傾向に陥り、長期間組閣ができなかったり、政権をテクノラートにゆだねたりする諸国も現われている。
日本でも、民主党と自民党の人民生活そっちのけの権力闘争が泥沼化している。本年もまた、予算案をめぐり党利党略が展開され、懸案事項を解決するための国会はおろそかにされるであろう。民主・自民の二大政党の泥仕合は、多くの人民の不満と怒りを引き起こし、両党からの離反はますます強まりつつある。こうした状況に乗じて、大阪、愛知、新潟など地方版の集権主義者による経済・教育などでの新自由主義的諸政策を推進する諸勢力が台頭してきている。政界は、流動化の兆しをみせている。
第四は、弱肉強食の新自由主義の犠牲となった労働者人民の抵抗闘争への決起である。
リーマン・ショックで打撃を受けた金融機関は国家や国際機関の支援で立ち直り、経営者たちはまたたくまに高額報酬を回復したのに対し、労働者人民は失業や極度の貧困状態に陥ったままである。弱肉強食の新自由主義に対し、労働者とりわけ若者たちの怒りは激しく、「ウォール街を占拠せよ」の運動は、アメリカ各地だけでなく、ヨーロッパなど世界各地にすぐさま拡大した。ギリシャやイタリアなど債務危機に陥った諸国では、労働者の抗議集会やゼネストが大規模に繰り返し展開され、粘り強い抵抗闘争が継続されている。
 やはり高失業の下で、貧困にあえぎ、さらには独裁者たちの圧制に打ちくだかれていたアラブの若者たちは、昨年「アラブの春」をチュニジア、エジプト、リビア、イエメンへと波及させ、いまはシリアでも厳しい弾圧下で粘り強い闘いを継続している。また、エジプトでは、軍のコントロールを乗り越え、「第2の革命」へ進撃している。
日本では、東日本大震災と福島第一原発の大事故を契機に、人民の間には脱原発運動が全国的規模で広がり、脱原発と同時に、これまでの使い捨ての「豊な生活」への反省をふくめて、生活の質を変革する動きが社会のあちこちに生まれつつある。
 大震災からの復旧・復興と、脱原発の闘いを発展させることは、本年もまた第一級の課題である。
被災地の一部では、復興計画を地区単位で討論しつくりあげ、これを基礎自治体が援助する形が進められている。だが他方では、上からの復興と新自由主義的政策を推進する勢力が牢固として存在している。我われは、これに断固として対決し、住民自治・地方自治を着実に発展させ、労働者人民の相互扶助、格差の是正、貧困の克服などを前進させる必要がある。
福島現地では県議会につづき、県知事も県内全ての原発を廃炉とする態度を鮮明にした。
福島のみならず全国で、市民による各地の放射線量の調査と安全な食生活の確立や、保育園・学校・住居・農地などの除染を進めると共に、各地の原発を停止し、廃炉にする大衆的な闘いがますます重要になっている。脱原発の一環として、今年こそは、巨大な浪費となっている核燃料サイクルの廃止を勝ち取らなければならない。
復旧・復興と脱原発以外では、第一に、非正規労働者の団結と闘争の発展を一歩一歩推し進め、労働組合運動の覚醒と発展をかちとることである。失業者・野宿者のための仕事の創出や住居確保の活動、最低賃金千円以上の獲得、条件のある地域・労組からの労働者供給事業の実現、不当な有期雇用の禁止・均等待遇の実現、原発労働者の賃金・労働条件の改善と長期にわたる健康管理の獲得などを闘い、非正規労働者の団結を促進する。野田政権が自民・公明と妥協するために、改正派遣法案を完全に骨抜きにしたことは、労働者階級に対する背信行為であり、厳しく糾弾する。
 第二に、消費税値上げに反対する闘いを広範に組織し、その阻止のために闘う。財務省主導の消費税増税案は、税金の無駄遣いを全面的に解決しておらず、法人税を軽減し、租税特別措置を改正しないなど、所得の再分配もなく、低所得者の負担を重くするだけである。消費税増税のための民主・自民の連携を注意し、その粉砕のために闘う。
 第三は、新自由主義攻勢の一環であるTPP(環太平洋経済連携協定)は日本農業を破壊し、自給率をさらに悪化させるものであり、さらに日本の社会保障体制をアメリカン・スタンダードに劣悪化させるものである。同時に、アジアを巡る米中のヘゲモニー争いにおいて、アメリカを支援し、アジアを分断させるものである。我われは、TPPに反対し、断固闘いぬく。
 第四は、沖縄の辺野古新基地建設を阻止し、普天間基地を閉鎖させる闘いを、粘り強く推し進める。野田政権は、アセス評価書を沖縄県へ提出し、埋め立て申請を行なうなどの辺野古基地建設の手続きをただちに中止すべきである。年内に強行せんとしているオスプレイ配備は、沖縄県民と共にかならず阻止する。沖縄の米軍兵力の減少・撤退は、朝鮮半島など緊張する東アジアを平和と共存のアジアに転換させる上で大きな役割を果たすものでもある。
 世界の人民と連帯して、新自由主義の攻撃と対決し、敢然と闘おう!