編集部だより

★李白とともに並び称えられる詩人に杜甫がいる。彼の『春望』の一節に「国破れて山河在り/城春にして草木深し」がある。これは日本でも昔から有名である。★七五五年、安禄山の乱があり、玄宗皇帝は敗走し、楊貴妃は殺される。世にいわれる「安史の乱」は、歴史的にみると、律令制を崩壊させる上で大きな役割を果たした。★反乱軍に捕えられた杜甫は、獄中で、唐帝国の傾く様を「国破れて」といい、しかし山や川は昔のままだ、という。★だが、3・11は、「国敗れて山河無し/街閑として人影無し」である。日本は何に敗れたのか。経済成長至上主義にである。そして、3・11は昔のままに山河を残さず、放射能にまみれた山河を残したのである。★第二次世界大戦で日本中の大都市は空襲にあい、特に東京などは焼け野原になる。しかし、人々だけは残った。だが、3・11は放射能のために強制避難とされる。「人影無し」である。「人家に還らんと欲して還るを得ず/生きて再び故地を踏む日のあらんや」である。★それでも福島県は脱原発を鮮明とし、復旧・復興に決然として立ち上がっている。東日本大震災の被災者たちの、悲しみと希望をかかえた立ち上がりに応え、本年もまた復旧・復興と脱原発を!(竹中)