TPP参加阻止、沖縄基地撤去に勝利しよう
  東アジアの分断か、連携か

 野田首相が十一月三日、フランスでのG20首脳会議において、「2010年代半ばまでに消費税率を10%まで引き上げる」、「その法案を今年度内に提出する」と明言し、国際公約にしてしまった。
これだけでも大変なことだが、さらに彼は十一月十二日、今回アメリカ主催のアジア太平洋経済協力会議APECにおいて、「日本はTPP(環太平洋経済連携協定)交渉に参加する」と表明する危険が高まっている。
TPP参加については、日に日に農業団体をはじめ各界で絶対反対の声が大きくなっている。与党民主党の中でも反対・慎重論は高まっている。TPP反対論は、労働者・農民の利益に立つ者から、国益国家主義の立場の者まで、ある意味非常に広範になっている。このなかで野田首相が勝手にTPP参加を表明するならば、政権倒壊を覚悟しなければならない。
わが労働者共産党も、今夏の第五回党大会において、「アメリカは、TPPを基礎に、経済的・政治的に対中国巻き返しを図りつつある」と捉えつつ、「日本農業をさらに破壊し、農民層を零落させる例外なき自由貿易協定TPPに断固反対する」と決定した。
TPP参加は、FTA以上に、「自由貿易」の名でアメリカン・スタンダードを押しつけ、アメリカの(またオーストラリアの)農産物が日本になだれ込むということである。また、農業分野だけでなく、医療や国・自治体の公契約など広い分野で市場原理主義を徹底させ、アメリカ資本の参入を自由化する。
そしてTPPは、経済自由化と農業保護をめぐる問題だけでなく、国の外交基本路線の問題である。政府や財界は「アジアの成長を取り込む」と口にするが、TPP交渉には中国もタイもインドネシアも参加していない。ベトナムが対中国の意味で参加しているが、要するに日米同盟一辺倒の経済版でしかない。米国市場だのみというより、アメリカ帝国主義と組むことが政治的に優先されているのである。
日本がTPPに参加すれば、東アジアが米・日・豪および韓国と、中国・ASEAN諸国などとに分断される始まりとなる。日本・中国・朝鮮半島などの連携による東アジア共同体を阻止する、アメリカ帝国主義のこの狙いが進むこととなる。
同様のことが、軍事面でも起きている。明白な転換は、昨年十二月の新・防衛大綱が中国対抗の日米安保強化を打ち出したことであった。
普天間問題でも民主党政権は、移設先が見い出せないなどの言い訳ではなく、対中国によって、軍事基地は沖縄にこそ置かなければならないのだという居直りを強めている(米軍だけでなく、自衛隊を与那国島にも配備せんとしている)。この十月に「沖縄詣」した閣僚の一人、玄葉外相は外務・防衛官僚の意そのままに、「日本の安全保障環境は厳しさを増している。沖縄の地理的有利性は簡単に代替できない」と仲井真知事を「説得」した。沖縄は国防の最前線基地となれ、これは沖縄戦の悲惨を招いた、かっての日本帝国の沖縄政策と同一である。
今日、東アジアが分断されれば、対中国の矢面として沖縄は軍事要塞化を強要される。しかし東アジアの連携が進めば、沖縄は東アジア諸国民の平和交流拠点として発展できるだろう。
東アジア分断の政治か、それとも東アジア連携の政治か。この問いが、TPP反対、沖縄基地撤去の闘いに通底している。東アジア民衆の連帯を強め、闘いに勝利しよう。