10・26韓国  ソウル市長選挙  
  野党諸党・市民勢力の統一候補が勝利

  どうすすむか進歩勢力大統合
  

 10月26日に行なわれたソウル市長補欠選挙は、野党統一候補で無所属の朴元淳(パク・ウォンスン)候補が、与党ハンナラ党のナ・ギョンウォン候補を大差で破り当選を果たした。
 ソウル地域有権者数837万4067人中投票率48・6%(406万5667人が投票)で朴候補は215万8476票、ナ候補は186万7880票と大差で勝利した。
 朴元淳氏の勝利には、いくつかの要因がある。その第一が朴氏の知名度の高さである。韓国最大の市民運動団体である参与連帯の創設者で、政策シンクタンク「希望製作所」の常任理事を務める弁護士の朴氏は広く知られ、さらに大変な人気のある安哲秀(アン・チョルス)ソウル大融合科学技術大学院院長のバックアップにより、民主党予定候補者を抑え野党単一候補が実現したこと。
第二に今回市長選になったのは、前市長呉世勲(オ・セフン)氏が、次期大統領選での与党ハンナラ党の最有力候補に数え上げられたためか、学校給食の段階的無償化案の住民投票に打って出るというギャンブルを行ない、住民投票に敗北をきっしてしまい、公約どおり辞任に追い込まれたからである。これも李明博政権に対するソウル市民の審判といえた。
 このような中で行なわれたソウル市長補欠選挙は、当初から野党側の優位が語られていた。この市長選では、野党圏の民主党、国民参与党(ノ・ムヒョン前大統領派の保守野党勢力、国会に議席は無い)、進歩陣営の民主労働党、進歩新党と進歩新党からの離党者、在野民主勢力、市民運動勢力が一体となり、『革新と統合』(ナミュン・インスン、ムン・ソングン、キム・ギシク、ムン・ジェイン、チョ・グク、イ・ヘチャンらが共同代表)に糾合される形で選挙戦が戦われた。
このことに関連して多くの問題点が、噴出している。それは進歩陣営の統合問題が、暗礁に乗り上げたことである。
本年一月に進歩陣営の統合連席会議が持たれ、合意文書も採択された。しかしながら9月に統合協議の結論をそれぞれの党で出すとしながら、まず進歩新党においては統合反対派の存在が表面化し、9月4日の党大会で民主労働党との統合案を否決したことから、チョ・スンス前代表、ノ・フェチャン元代表、シム・サンジョン元代表らは「新しい進歩政党建設のための統合連帯」(統合連帯)を結成し、党内から民主労働党との統合を目指す勢力の拡大を図った(後にこの三氏は離党する)。
ところが当の民主労働党は、統合論議の進展しない進歩新党との関係だけでなく、協議要請をしてきた国民参与党との統合問題が持ち上がり、統合推進の党執行部派と民主労総に基盤を置く統合反対派とに分岐を見るに至った。この国民参与党との統合問題も絡んで、進歩陣営の統合は暗礁に乗り上げた。この事態に対し、統合連帯も、当然ながら民主労働党と国民参与党との統合に反対を表明した。
 9月25日に開かれた民主労働党の臨時党大会においては、党執行部提案の国民参与党との統合事案においては、議決に必要な三分の二に届かず否決された。
 このような進歩陣営の混乱状態が収束されぬまま、ソウル市長補欠選挙に突入してしまった。このことから進歩陣営関係者からは、進歩政党も『革新と統合』に吸収されてしまうのではないかとの危惧の声が発せられている。ともあれこのような中、『革新と統合』が、来年11月の大統領選挙に安哲秀氏を最有力の候補者に押し上げるものとの声が高まっている。
 韓国では、日本とは大統領制と議院内閣制という制度的違いがあるにせよ、制度圏にしても運動圏にしても、大統領選や総選挙のたびに党の離散集合が繰り返されている。あれほどの全人民的な大運動を経験してきた韓国においても、統一戦線に関する問題点が存在するように思えてならない。
進歩陣営の統合実現と、来秋大統領選挙での広範な統一戦線を願わずにはいられない。(Ku)