東日本大震災・現地支援報告
       第五報・最終回、発信八月九日

  被災地の人々を忘れない


 東日本大震災から五ヵ月目を迎える八月十一日、わたしは三月二四日からの現地支援活動を終え、大阪・釜ヶ崎に戻ります。
 現地では七月から八月にかけて、避難所から仮設住宅への移行が急ピッチで進んでいます。いつもよく行っていた避難所も、「明日から仮設住宅に入れる」といった所が多くなっています。しかし問題もあります。一つの地域で仮設住宅への移行が完了すると、その地域全体への公的支援が終了することです。
 家はなんとか住める状態で残っていても、漁業や農業、水産加工業の再生の目途が立たず、生活の目途が立っていません。
 また、比較的、仮設住宅への移行が進んでいる宮城県でも、予定している22050戸の完成見込みは九月中旬にずれ込み、岩手県では予定の13984戸の完成も八月末にずれ込んでいて、両県ではまだ9500人が避難所生活を余儀なくされています。
 原発事故のあった福島県ではいまだ、二次避難所を含めて、9379人が避難所生活を強いられています。
 まだまだ緊急的支援が必要です。わたしは八月十日ぎりぎりまで、避難所や仮設住宅まわりを行いました。
 しかし、総じて支援活動も、緊急的支援から本格的復興に向けた産業の再生(新たな産業の創出も含む)、地域の再生への支援、これらへ移行する時期を迎えています。
 すでに、釜ヶ崎や支援の多くの仲間が現地に入り、炊き出しや水産加工場のヘドロ撤去、養殖の再開に向けた港のガレキ撤去、養殖イカダの修理などに汗を流してくれました。今後も、こうした取り組みを強めていかなければなりません。
 次に重要なのは、日雇・下層の労働運動の前進です。
 復興事業を当て込んで、人夫出し飯場が生れています。復興事業が本格化する中で、これがさらに増え、失業者を中心に大きな労働市場が形成されるだろう。悪質な飯場=タコ部屋も増えるだろう。すでに地元のマスコミに、こうしたタコ部屋の記事も載り、岩手県では、暴力団員が派遣法違反で摘発されています。
 わたしも、地元のホームレス支援団体の食事会で知った「未払い」問題について、その飯場に行って支払いを約束させたが、こうした活動を通じて労働者の団結をつくり出していかなければなりません。
 そして第三には、反原発闘争の前進です。わたしがよく行っていた女川に、「原発は事故で止まるか、みんなで止めるか」という立て看が残っています。
 闘争の中で「みんなで止める」ことができず、「事故で止まる」という最悪の結果を許してしまいましたが、今度こそ「みんなで止める」を実現していこう。
 3・11を境として、世の中は大きく変わろうとしています。
 あのプロボクサー亀田興毅ですら、被災地の炊き出しでのインタビューで、「困っている人がいるのだから、何かするのは当たり前ちゃうん!?」と答えているように、「人を蹴落としてでも自分だけいい思いをする」、「他人のことには無関心」といった資本主義の下での価値観からの転換が進み、「どう生きるのか」、「人と人との関係は!」といったことが問われ始めています。「今までは人より大きな家に住み、人よりいい生活がしたかったが、今は、つつましくとも平穏な暮らしがしたい」との、被災者の言葉が印象に残ります。
 最後に、わたしの現地での活動を支えてくれた仲間の皆さんに感謝するとともに、今後も現地での支援活動を続けていく仲間たち、そして、「八月十一日に帰ります」と言うわたしに涙を流してくれた(そればかりか後日、組合事務所に残暑見舞いも兼ねたお礼状まで送ってくれた)被災地の人たちのことを決して忘れず、この経験を活かし、釜ヶ崎で活動していくことを明らかにして、4ヵ月半におよぶ現地支援活動のレポートを終わらせてもらいます。
 八月九日現在、東日本大震災の死者15687人、不明者4757人です。(S)

8・12〜15釜ヶ崎夏祭り
  被曝労働許すな

 第40回釜ヶ崎夏祭りが八月十二〜十五日、「安心して働き、生活できる釜ヶ崎を実現しよう!全国・全世界の労働者と手を結ぼう!」をメインスローガンに、西成・三角公園などで開催された。
 今年の特長は、あの「3・11フクシマ」を受けて、反原発・反核の諸企画が多くの団体の共同で行なわれたことである。長年の原発産業の中で命と健康を奪われてきた下層・下請労働者、これらの仲間をどう守っていくのか、など決意のみなぎる企画であった。
 また、夏祭り実行委員会の一翼として「釜ヶ崎講座」は、十三日に「特掃見学ツアー」、十四日に恒例の「釜ヶ崎ツアー」を取り組んだ。特別清掃の「見学ツアー」では、受託事業者のNPO釜ヶ崎支援機構からの講義の場も設け、参加者は真剣に聞き入っていた。
 長い闘いの歴史の中で形成されてきた「夏祭り」、これを守り、さらに闘いの営みを、と改めて感じる夏であった。(関西I通信員)