菅政権を早期退陣させ、東北復興・脱原発の推進へ
 「大連立」は「政権交代」の清算


 東北の被災者をそっちのけにした、このかんの菅内閣不信任案の騒動は、日本のブルジョア政治家の統治能力を根本的に疑わせるほどお粗末なものであった。結局、不信任案を否決しても菅民主党政権はいよいよ「死に体」化し、民主党・自民党のブルジョア二大政治勢力による挙国一致の震災対応を名目とした大連立的政権の成立へと、議会政治は向かいつつある。
いま労働者人民に問われる課題は、震災対応の基本路線では大差がない民主党・自民党などによる取引・野合に対決し、このブルジョア二大政治勢力に対峙する「第三極」的な政治勢力の共同戦線を形成すること、その推進力としての労働者階級人民の闘争力量を強化することである。それは、大資本と官僚のための「復興」路線を許さず、被災地住民・労働者人民のための復興路線を対置して闘いぬくということである。
 自民党、公明党など反動的野党は六月二日、「菅首相では震災・原発に対応できない」などと執権時代の地方切り捨て・原発推進の責任を棚に上げ、党利党略の内閣不信任案を提出した。その日、菅首相は民主党代議士会で、「震災への取り組みに一定のメドがついた段階で、若い世代に引き継いでもらいたい」として事実上の退陣表明を行なった。この表明が効を奏して、民主党内の不信任案同調はわずかなものとなり、三日の衆議院で不信任案は大差で否決された。
反動勢力の攻撃である不信任案の否決は当然であった。採決では社民党は途中退場し、日本共産党は出席して棄権したが、民主・自民に等距離を置きたいというだけならば、これらの対処には積極的意味が無い。
 不信任案を大差で否決したにもかかわらず、すぐに潰れそうな政権というのも珍しい。退陣表明ではその時期などが抽象的であったため、否決後の菅の居直り発言、それに対する鳩山の「ペテン師」発言が飛び出すなどして、与党の醜態と混乱を上塗りにした。こうして、「一定のメド」とは早くなりつつある。自民党対案を丸呑みにした復興基本法案は六月中に成立しようとしており、復興対応の今年度第二次補正予算案でも取引が進んでいる。
われわれは、自民・公明の策動を粉砕しつつ、菅首相の早期退陣を要求する。
労働者人民の闘いの前進にとって、現局面で有利な政権は、「被災者の生活が第一」「国民の生活が第一」の政治、すなわち二〇〇九年政権交代の原点に帰った政治をよしとする政権である。党内にそうした新政権を生む力が残っているのかどうか、最期的に民主党に問われている。「大連立」政権や、自民党の政権回帰は断固粉砕しなければならない。
われわれは「震災・原発」対応において、新自由主義・地方切り捨て・原発堅持の政治路線に対決し、住民自治・地方再生・脱原発の政治路線で対峙する。
成立見込みの復興基本法案は復興庁の設置、復興特例国債の発行など大枠を決めるもので、今後に復興特別措置法案、関係法律の改正案などが出てくる。東北復興の具体的な内容・施策をめぐる闘いは、これからが本番となる。復興債については公債特例法案が争点となる。その償還財源は消費税増税というデタラメな前提を許さず、カネあまりの大資本・大銀行に当面償還なし、無利子で引き受けさせねばならない。また復興債の前に、政府は保有ドル・米国債の一部でも円に変えて資金調達すべきだが、その検討すらしていない。
福島原発大災害については、メルトダウンが津波による電源喪失だけではなく、地震による配管損傷によっても起きていることが明らかになった。津波対策強化による原発の延命ではなく、すべての原発停止が必要だ。
このかんの闘いと世論によって、菅首相は五月六日、浜岡原発の停止要請を中部電力に行なわざるを得なくなり、浜岡原発は止まった。しかし、浜岡は特例としており、また廃炉の決定でもない。菅首相は、2010年エネルギー基本計画での原発増設を撤回し、再生可能エネルギー重視へ転じているが、いぜん原発依存の路線を続けている。
労働者人民の闘いによって菅政権を早期退陣させ、民衆的な東北復興への道筋と、脱原発への政策転換をかちとろう。それは、沖縄基地押し付けの「5・28日米合意」からの転換を含む、日本政治全体の変革の始まりとなるだろう。