四月統一地方選挙を闘い抜き、住民自治の前進へ

   地域から民衆の「第三極」政治勢力を

四月の前半・後半に、統一地方選挙が行なわれる。
今回の特徴の第一は、「大阪維新の会」や「減税日本」など昨今流行の地域政党が、大衆扇動型の政治手法を駆使して躍進せんとしていることである。新自由主義の地方行政をすすめて労働者人民を収奪し、住民自治を否定する勢力の伸長を許してはならない。
さらに今回の統一地方選では、アメリカの恫喝に屈し、財界に擦り寄り、官僚に搦め取られた菅政権のもと民主党が大敗し、他方、自民党の挽回も絶望的な中、小泉路線の継承を実質的に掲げる「みんなの党」が躍進することも危惧される。
こうした情勢下、多くの先進的な人々が、統一地方選にかかわり、住民自治の確立・豊かで人間らしい地域社会の実現・労働者人民の生活向上のために、奮闘することが求められている。また選挙戦を通じて、多くの人々と出会い、労働運動・市民運動など様々な運動体と出会って、地域でのネットワークを創出していくという意識性が必要である。これらの取り組みによって、民主や自民およびその別働隊と対峙する、労働者大衆の「第三極」的政治勢力の実現の手掛かりをつくり出すことが問われている。
わが党は、こうした「第三極」的立場に立って労働者・住民の利益を掲げる候補を、所属政党・無所属の如何を問わず支持し活動することを呼びかける。

住民自治否定の地域政党−「減税日本」「大阪維新の会」

@「減税日本」のポピュリズム

 二月六日、名古屋市長選、愛知県知事選、名古屋市議会解散の是非を問う住民投票、これらの「トリプル投票」が実施された。その結果、市長選では、「減税日本」の河村たかしが六十六万二千票もの票を、愛知県知事選では大村秀章が百五十万二千票もの票を獲得して当選した。河村市長は、次点の民主党・社民党・国民新党推薦の石田芳弘の三倍もの票を得て当選。大村も大差をつけての当選だった。民主党は牙城のはずの愛知県で大敗し、全国に衝撃が走った。
河村の地域政党「減税日本」は、攻撃の相手を議員に絞り込み、分かりやすい敵をつくって民意を駆り立てるポピュリズム(大衆迎合主義)的手法で、圧倒的な支持を受けた。河村市長らは地域政党を立ち上げて大政党に挑むとし、菅民主党政権の裏切りによって失望した市民を「改革派対守旧派」の構図を作り上げて引き込んだ。それは、かっての小泉政治に共通する手法であり、「何かやってくれそうな雰囲気に乗せてしまう」危険な手法である。
 民主への失望、自民への不信を謀略的に刈り取る、この手法を充分警戒する必要がある。

A道州制の「中京都構想」「大阪都構想」

河村と大村はこの選挙で、市民税・県民税の十パーセント減税、愛知県と名古屋市を合体する「中京都構想」を掲げて、二人三脚の選挙戦を展開。河村市長は、議員報酬半減、定数削減の「議会改革」を掲げた。しかし「減税日本」の掲げるこれらの政策は、住民自治を否定する新自由主義に基づく政策であり、反動的な代物である。
「減税日本」がかかげる「中京都構想」、また「大阪維新の会」が掲げる「大阪都構想」も、いずれも道州制に基づく主張であり、労働者人民の利益に反するものである。
橋下大阪府知事の「大阪都構想」は、大阪府と大阪市隣接周辺市を一体化して広域行政の一本化をはかり、都が広域行政を担い、十二程度に分割された特別区が都に従属して住民サービスを担うというものである。そして「広域行政にかかわる財源を一つにまとめて、大阪全体のグランドデザインのもとに財源を集中投資して、世界の中での都市間競争に打ち勝つ」と主張する。さらに続けて、「住民サービスの何がどう変わるのか」ではなく「大阪都全体のGDPを上げる。住民の所得をあげる。そして市町村の税収を上げることが第一の目標」と主張する。つまり大阪都の行政は、住民生活に関わる仕事は放り投げ、基礎自治体から権限を奪い取り財源を吸い上げて、大企業の基盤整備に重点投資し、大企業の利益のために奔走する新自由主義の政策そのものである。
「中京都構想」も愛知県と名古屋市を合体して一つの司令塔を置くとしているが、「大阪都構想」と同様の代物だ。
 振り返ると、国策によって東京府と東京市が一九四三年に合体し、中央集権的な制度が発足して以降、東京都の各区にとって自立権の拡充こそが宿願だった。都が主、区は従属の上下関係がずっと続いてきた。課税権も握られ、区は権限の拡充を求めて努力を重ねている。二〇〇七年には、二十三区で構想する特別区長会が、課税権や事務のすべてを区に委ねて、都から独立した自治体となる構想まとめている。「中京都構想」も「大阪都構想」もこの努力に逆行する動きであり、住民自治を否定する反動的な構想である。
 ところが大阪、愛知の流れに乗り遅れまいと、東京でも同様の動きがある。一部区長の間では、道州制への同調を都知事選の支援条件とする案も検討されている。
 関西では、橋本知事らの構想に、関西経済同友会のメンバーが中心になって「経済人・大阪維新の会」を立ち上げ、「統一地方選にむけて力強くサポートしたい」としている。東京でも財界からは、統合論が盛んである。二十三区を一つにまとめて「東京都区州」にする案が、経済同友会から昨年発表されている。この動きをみても、道州制の階級的本質が見て取れる。

B「二元代表制」の否定

 次に警戒しなければならないのは、河村市長の「庶民革命」なる改革が「二元代表制」を危うくし、「大阪維新の会」にいたっては、それを否定して「一元代表制」を主張していることである。
 地方自治の二元代表制は、議会を議決機関および行政の監視機関として、行政を執行機関として、それぞれ議員と首長を住民の直接選挙で選ぶものであり、権力の分立を基本としている。その基盤は住民主権であり、住民に対して責任を持つということである。従って各議員にも、政策を立案し提案する姿勢が求められている。二元代表制は、憲法九十三条に規定され、議院内閣制とは大きく異なる仕組みである。首長と議会の緊張関係、チェック・アンド・バランスの機能が、住民の総意を反映するという考えを取っている。
この考えが一欠けらもない河村市長は、出直し名古屋市議選(3月13日投票)に、「減税日本」から四十人ほどを擁立、定数七十五の過半数を占めようと画策している。河村市長は、市長選、県知事選の勢いに乗じて議会を制圧せんとしているが、市長派が多数派を形成し市長の言うがままの議会運営となれば、市長と議会の馴れ合いが再生産されるだけである。
さらに「大阪維新の会」は、「二元代表制の下では、いわゆる“ねじれ現象”を招き、行政に混乱を招く場合も多い。だから現実には、二元代表制でも首長が多数派の支持を得ている事例が多い」とし、「大阪の場合は地域再生が経営課題であり、おそらく権力は集中させるべきで一元代表制がよい」とまで言ってのけ、二元代表制を否定している。それは住民自治に敵対する、許すことのできない主張である。「大阪維新の会」は府・市で百名を大幅に越える立候補を予定し、議会での多数派を形成しようと虎視眈々とねらっている。

C議員定数と議員報酬

 三つ目の問題は、議員定数の削減である。河村市長は議員定数と議員報酬の半減を掲げて勝利した。それに続いて次々に結成された地域新党の中には、定数削減や報酬の削減を主張している党が多い。
しかし、定数削減は住民自治にとって重大な問題がある。まず議員定数は、主権者である住民の声のもとに、議会が自律的に決めるべきものである。また、議員定数が削減されれば、力の弱い個人や団体が、議会に議員を送ることは困難になり、主権者の座からますます遠ざけられることになる。名古屋市で提案通りに議員定数が半減されれば、十六の選挙区で、定数が一ないし二になり、組織力・資金力の弱い候補は当選することがむずかしくなる。それは住民自治の精神に反している。
 また議員報酬については、一般的な労働者の収入と同じ水準でよいが、議員が活動したり、政策立案等に必要な経費は、それと別個に保障されるべきである。

D議会改革・住民自治を進めよう

 長引く不況、貧困と格差の拡大、若者の失業増、国政の閉鎖感が強まる中で、「地域政党」が名古屋・愛知で勝利し、全国的ブームが始まった。地域政党は、「大阪維新の会」や「減税日本」に続いて、「埼玉改援隊」「松山維新の会」「地域政党岩手」「京都党」など様々な地域政党が続々と誕生している。民主や自民からの乗り換えが主流とはいえ、このような地域政党は今後も各地で結成されるだろう。それは、民主党政権が掲げた地方分権が一向に進まないことへの裏返しでもある。
 しかし一方では、「河村劇場」を教訓に、住民自治や地方議会改革の積極的動きが始まっていることも事実である。地方議会の不要論さえ聞こえる他方では、住民と対話する議会、議員が政策提言や条例提言をして討議し合える議会、それらの情報公開を徹底する議会を求める声も強まっている。これらの新しい動きに注目し、今こそ住民自治を大胆に押し進めることが求められている。
 政治の質的転換のためには、労働者・住民の要求と闘争を通じての、地方政府の確立・住民自治の実現が不可欠である。住民自治の実現とその保証となる地方政府の財政自主権の確立によってこそ、住民の声に基づいた政策を実施し、住民自身による地域作りが可能になる。この地方政治の変革は、市民一人ひとりの政治性を成長させ、人民による自己統治のシステムを目指すうえでの土台となるだろう。
 各地の地域政党への対処については、個別に慎重に判断し、新自由主義をすすめ労働者人民の利益に敵対する勢力、道州制を掲げ住民自治を否定する勢力については、その反動性を暴露し、断固として闘争しなければならない。

小泉路線を継承する「みんなの党」

小泉政権は、新自由主義政策を押し進め、かってなく貧困と格差を拡大して労働者人民の生活を破壊した。「みんなの党」の基調は、その小泉路線の継承である。しかし街頭演説では他党批判を表に出し、「消費税を導入する前にやるべきことがある。国会議員や官僚がまず身を切るべきだ」などと主張して有権者を欺いている。そのため市民運動を担う人々の中にさえ、「みんなの党」に期待する人々がいる。
「みんなの党」は、「世界標準の合理的な経済政策を進め、閉鎖的な規制や制度は改革す」という「経済成長戦略」を述べ、さらに「アジア市場を国内市場とする」として、「コンビニ、専門店、学習塾、介護、農業、食品などの海外進出を強力に支援」し、これらの「地域密着型産業の規制を改革」すると主張している。つまり徹底した規制緩和でコンビニにいたるまで企業の海外進出を進め、医療さえも徹底した競争のルツボに投げ込むと言うのである。
 また「みんなの党」は、「格差を固定しない『頑張れば報われる』雇用失業対策を実現する」として、「民主党政権の『派遣禁止法案』は働き方の自由を損ない雇用を奪うものであり反対」とする。政府案さえも否定し、派遣労働を一層拡大して低賃金、不安定雇用を押し付けようとしている。かれらは格差を拡大する社会制度は放置し、「頑張れば報われる」と我々の尻をたたくのである。
 さらに、「『郵政民営化』を進める」と主張し、金融資本・産業資本の利益のために「三百兆円の郵貯、簡保資金を民間市場に流す仕組み」を求めている。そして法人税を四十%から二十%に減税し大企業に奉仕しようとしている。
 またさらに、「『脱中央集権』を図り、『地域主権型道州制』を『新しい国のかたち』にする」と述べ、住民自治を否定し、道州制を主張する。おまけに、「米価を下げて農家の収益性向上」などと矛盾混乱した諸政策を掲げている。
 「みんなの党」は、小泉型の新自由主義を推し進める反動政党である。この党の本質を暴露しよう。

東京都知事選挙に都民の「第三極」を

 以下の政治基準で、統一地方選候補者の是非を判断し闘いぬこう。
 第一に、憲法九条改悪に反対し、戦争と軍事基地、対米一辺倒に反対する候補者を支持しよう。菅民主党政権は中国対峙で日米安保を深化させ、日米韓の軍事同盟を強化して戦争策動を強めている。地域から反戦平和を発信する議員が必要だ。TPP反対は、対米一辺倒反対でもある。
 第二は、格差拡大や自然環境破壊に反対し、福祉や教育、労働者の権利などを重視し、豊かで人間らしい地域社会を目指す候補を支持しよう。地域をいっそう疲弊させる消費税増税に反対する。
 第三は、住民自治の発展をめざして、市民・住民団体と共に活動する姿勢のある候補者を支持しよう。こうした政治姿勢は、所属政党や政治主張だけでは判断できない。住民自治の運動と共に歩む議員を増やさなければならない。
 注目の東京都知事選では、日本共産党の小池晃、外食大手ワタミ創業者の渡辺美樹、そして神奈川県知事から転ずる松沢成文などが立候補を表明している。現知事が出馬しなければ、松沢が石原反動都政の後継者であり、彼の当選を許してはならない。民主党は今のところ松沢に相乗りも、独自候補擁立も、どちらもできない有様である。
 わが党は都知事選に、自公でも民主でもない「第三極」候補を共同して擁立することを呼びかける。小池の政策には積極面もあるが、その支持枠組では敗北が必至であり、より広範な共同戦線が求められている。長期に続いた反動都政を今こそ転換させ、国政転換の号砲としよう。