エジプト、チュニジア民衆の政権打倒大闘争に連帯し
  日本の政治閉塞打破しよう


 日本では菅民主党の「自民党化」によって、09年「政権交代」の意義が帳消しにされんとしており、政治的閉塞状態が深まっている。
しかし世界では年明けとともに、北アフリカから中東にかけて、諸国民の民主主義闘争が急速に高まり、この大衆闘争の力によって長期独裁腐敗政権を打倒し、「政権交代」を実現するという画期的な情勢が生まれている。
チュニジアでは一月十四日、大統領ベン・アリがサウジアラビアに逃亡、二十三年間続いた独裁政権が倒された。きっかけは、ひと月ほど前に起きた失業青年による焼身抗議自殺であった。彼ムハンマド君は、露天野菜売りで家計を支えていたが、警察に弾圧・暴行され、奪われたリヤカーを返せと要求して自殺したのであった。なんということか、もう腐敗政権、失業、物価高はごめんだ!という怒りは国に満ちた。反政府行動は日増しに拡大し、治安警察の武力弾圧を撃退し、ついにベン・アリ一族を追放した。今も、旧体制を温存する暫定政権との闘いが続いている。
この闘いは、地域大国エジプトに連鎖。二五日から急速に全国に拡大した民衆デモは二月一日、最大野党ムスリム同胞団と連携しつつ、「百万人デモ」をカイロで実現、二十九年間続いたムバラク大統領独裁政権を葬りつつある。エジプトで「民主革命」が達成されるならば、中東全域に、また対イスラエル関係に重大な影響を与える。
米欧の帝国主義諸政府は、新自由主義グローバル政策や「対テロ戦」の優等生であるベン・アリ政権やムバラク政権を重宝してきた。その危機に対し、当初は「改革」措置を促して守ろうとしたが、それでは民衆の闘争拡大を止められず、ついには見限り、「政権交代」に介入する策動に転じている。日本の菅政権は、親日的なエジプト国民に何のメッセージも出すことなく、ただ米政府の策略に追随するだけとなっている。
また、もう一つの重要な動きとして韓国では一月二十日、二大与野党のハンナラ党・民主党とは別の、諸政党と民衆団体によって、「第三極」的な統一戦線を作る画期的な動きが始まっている(記事別掲)。
アラブ諸国の現在の闘いから学ぶべきは、「大衆闘争」の力である。韓国のいわゆる進歩勢力の連席会議から学ぶべきは、「統一戦線」形成の努力である。
日本の労働者人民も一昨年、自民党長期腐敗政権を打倒したが、その推進力としての「大衆闘争」も「統一戦線」もないまま、たまたま選挙によって政権交代を実現したのである。その結果、政権は、もう一つの大ブルジョア政党である民主党の手に落ちた。「大衆闘争」と「統一戦線」を欠いたままでは、この民主党政権が、人民の諸要求と日米支配層との間を動揺しながら、新自由主義政策などに立ち戻っていくことは避けられない。
一月十四日、経済財務相に元自民党・与謝野を入れた菅改造内閣が発足し、二四日に通常国会が開会、菅首相が施政方針演説を行なった。その内容は三つ、「TPP参加」「消費税増税」「日米同盟深化」である。
前二者については、「環太平洋パートナーシップ協定(TPP)は、米国を始めとする関係国と協議を続け、今年6月を目途に、交渉参加について結論を出す」とし、また「国民の皆様に、ある程度の負担をお願いすることは避けられない。内閣は、今年6月までに社会保障改革の全体像とともに、必要な財源を確保するための消費税を含む税制抜本改革の基本方針を示す」としている。
なぜ、6月目途なのか。会期末が6月であり、それまでに「TPP」「消費税」の難題を先送りし、とにかく十一年度予算案と関連法案を成立させることを最優先にして、菅政権の延命を図りたいからである。幸か不幸か、自民党など反動的野党勢力は民主党政権打倒・解散要求を前面に出しており、菅政権と内容的に一致している「TPP」「消費税」での大連立的動きは今のところ表に出ていない。しかし、予算関連法案成立の取引として、TPP参加・消費税増税・年金改革案・憲法審査会開始などについて、大連立への布石が引かれる危険性が高くなっている。
民主、自民の抗争によって若干の時間はできたが、早期に「第三極」的な共同闘争に着手しなければならない。今の我々は、ブルジョア二大勢力の取引を粉砕し、「政権交代」の実質を獲得できるだけの、「大衆闘争」と「統一戦線」をいぜん欠いているのである。
失業青年の決死の抗議が、いま世界を変えつつある。青年が、失業者・労働者が、すべての民衆が立ち上がれば、この日本も変えることができる。「大衆闘争」に支えられた「統一戦線」を形成せよ。