2011年 年頭アピール

 国政転換求め、「第三極」勢力前進を
     日米韓結託の戦争挑発打ち破り、東アジアの平和・連帯かちとろう
                              労働者共産党中央常任委員会

(1) 行き詰まった菅政権

 菅首相は十二月十七日、沖縄を訪問し、破廉恥にも「辺野古がベター」などとして仲井真知事と会談したが、「5・28日米合意」に何の進展も得られず、県民の抗議の中、うなだれて帰京しただけであった。普天間返還問題での菅政権の行き詰まりは、政治全般で低迷・迷走する菅政権の末期状態を集中的に示している。
昨年十一月二八日の沖縄県知事選では、普天間基地閉鎖・撤去 辺野古新基地建設反対を掲げて決起した伊波洋一候補が、支持政党票では優勢であった仲井真弘多現知事を終盤で追い上げたが、惜しくも敗北した。{沿岸案}容認から「県外」移設の公約に転じた仲井真候補が、伊波候補を敗って当選した。(知事選の詳細については、四面「沖縄からの通信」を参照)
 しかし、当選した仲井真知事が、県民の反基地闘争の高まりを無視できずに知事選で「県外移設」の公約を掲げた以上、菅政権との名護市辺野古への移設協議難航は必至である。九月名護市議選では、辺野古新基地建設反対を掲げる市長派が圧勝し、また県知事選と同時に投票された宜野湾市長選では、伊波前市長を継ぐ安里猛氏が自公候補を激戦で制した。普天間基地の地元と「移設先」とされる地元の両方が、「日米合意」の撤回を求めている。
菅政権の国会運営が暗礁に乗り上げる今、沖縄県民の闘いは一層菅政権を追い詰め、「本土」世論をも動かしつつある。県知事選後の朝日新聞世論調査では、「日米合意見直しを」が59%に上昇した(六月の同調査では「日米合意を評価しない」が26%)。
菅政権は、いぜん仲井真知事に望みを繋いでいる。「県外が進展しない、普天間の危険性除去の為には苦渋の選択をせざるを得ない」として、仲井真知事が任期途中で辺野古新基地建設容認に動き出す危険性は存在する。しかし、沖縄県民の闘いによって、その公約破棄が打ち砕かれるのも必至である。
 菅政権の行き詰まりが明白となった。今こそ労働者人民が求めたはずの、「政権交代」の本当の政治を実現する闘いが求められている。その政治は民主党政権でも幻想に終わることが、このかんの教訓である。民主・自民の二大ブルジョア政治勢力と闘う、「第三極」政治勢力の前進が求められている。

(2)アメリカの東アジアでの巻き返し

 世界経済では、一昨年十一月ギリシャに端を発した動揺が、昨秋アイルランドにも波及し、金融危機と財政危機が相乗したアイルランド危機が発生した。アイルランド危機は根深く、ポルトガルやスペインに波及する可能性が高まり、ユーロ危機の再燃が懸念されている。
 リーマンショックから3年目を迎え、世界経済は、低迷する日米欧と、すぐさま立ち直った新興国へと二極分解した。しかし、中国など新興国は金融緩和を背景にしたマネーの流入や資源価格の高騰により、インフレ傾向が高まり、経済の減速が見込まれている。ユーロ危機から国際金融危機再燃の可能性が高まっている。
 混迷する世界経済を背景に、アジア太平洋地域でのアメリカ帝国主義による巻き返しが、顕著になった。昨年行なわれたAPECでは、アメリカはアジア太平洋自由貿易圏構想をめざし、その具体策として環太平洋戦略的経済連携協定「TPP」を基礎に、自由貿易圏を発展させるとしている。アメリカは、TPP加盟を表明し、関税を原則撤廃する等のTPPを強力に主張している。そして、中国等が掲げる東アジア共同体構想をTPPのもとに包摂して、ASEANを巻き込んだ中国の台頭・攻勢に巻き返しをはかっている。TPPには、ASEANからシンガポール・ブルネー・マレーシア・ベトナムの参加が表明されている。中国との関係が深いベトナムの参加は、注目すべきことである。
菅政権は、このアメリカの巻き返しを強力に支援し、民主党が掲げた「東アジア共同体構想」から大きくかけ離れた行動をとっている。
 アメリカ帝国主義は、アジア太平洋地域で自らの権益を守るために、中国対抗的な日米同盟論を強め、日米韓による中国包囲網を強めている。これに対し中国は朝鮮民主主義人民共和国(以下共和国)との連携を強め対抗している。昨年十一月に発生した朝鮮半島西海での南北砲撃戦を口実として、すぐさまアメリカ帝国主義は、米韓合同軍事演習を黄海で実施し、原子力空母やイージス艦までも繰り出して、中国や共和国を牽制した。
国際的な金融危機を前に、各国は軍事的緊張をあおり、民族主義・排外主義を強めようと画策している。また一方では、金融資本の権益を守るために、労働者人民を犠牲にした財政再建策を強めている。世界資本主義の混迷を背景とした民族排外主義の高まり、人民収奪の強化を粉砕しよう。

(3)民主党のブルジョア政治と闘い、菅内閣を退陣させよう

菅政権は、日米同盟を「深化」させ、アメリカ帝国主義のアジア戦略の一端を担う一方、TPP参加を画策し、財界の要求にこたえようと奔走している。また、一方では、長引く不況・金融危機を前に、労働者人民を犠牲にした政治を押し進めている。
 日本国内では、景気の低迷を受け、外需依存から内需拡大への転換が求められた。しかし、ブルジョアジーの多くは日本内需に見切りをつけ、中国・インド等「アジア内需」に資本増殖の活路を見い出している。そして、国際的な競争力強化のために政府に低賃金、使い捨て政策の続行を求めている。また、自らの利益追求を優先し、農業等第一次産業を切り捨て、社会保障をも削減しようと目論んでいる。強い経済・強い財政を掲げて登場した菅政権は、これら財界の要求を第一にして、労働者人民の生活を脅かしている。
 さらに菅政権は十二月十六日に「税制大綱」を閣議決定し、消費税増税を当然視しつつ、一方で企業には法人税減税を実施して優遇する等、財界本位の方向に舵を切った。法人税の減税は、大企業の内部留保を拡大するだけで、決して内需の拡大にはつながらない。(三面参照)
 また、TPPでは、菅政権が財界の要望を受け、参加を積極的に検討し「関係国との協議を開始する」と決定した。しかしTPPは、例外なき関税撤廃であり、参加するならば、安い輸入農産物が大量に流れ込み、日本農業の壊滅は必至である。民主党が掲げた農業の継続と穀物自給率の確保は、夢のまた夢となる。
 さらに菅政権は、高齢者を差別し重い負担を強いる後期高齢者医療制度の廃止や、応益負担の障害者自立支援法の改正を掲げながら、その実施を先送りにして現在に至っている。菅政権は、民主党が掲げた政治主導の政治の実現をかなぐり捨て、官僚にすり寄り、財界本位の政策を進めている。それは、民主党が掲げた「国民の生活が第一」の政治とは、かけ離れた政治である。
 そればかりではない。外交・軍事政策で、菅民主党政権が日米同盟基軸を政権交代以降かつてないほどに強調し、沖縄県民の意思を全く無視して、「5・28日米合意」に固執していることは先述した。
 九月に発生した「尖閣諸島」沖での中国船拿捕事件では、「尖閣諸島はわが国固有の領土であり、領土問題は存在しない」等と強硬な態度を明らかにし、漁船船長の逮捕・送検に踏み込み、一線を越える行為に走っている。菅政権は、日米同盟を強め、中国に対抗する方向を選択した。さらに菅政権は、前述のように、アジアでの中国に対するアメリカの巻き返し策動を強力に支援し、民主党が掲げた「東アジア共同体構想」を真っ向から否定している。そして、黄海の米韓合同軍事演習に連動して、日米合同軍事演習を九州・沖縄沖などで大規模に繰り広げた。こうして新冷戦的な米韓日の危険な結託をすすめ、共和国に敵対し、中国包囲網をめざす活動を積極的にすすめてている。
十二月十七日には、菅政権は新「防衛大綱」を閣議決定し、「動的防衛力」と称して攻撃的自衛隊強化路線と、南西諸島配備増強を決めている。我々はアジア人民との連帯を求め、菅政権のこれらの危険な選択に断固反対する。

(4)労働者の闘いが政治を変える

 二〇〇九年八月、衆議院選挙で自民党が大敗し、民主党連立政権が誕生した。小泉政権によるアメリカ一辺倒の新自由主義は、格差を拡大し、貧困層を増大させた。格差解消、貧困からの脱却、そして仕事を求めて人々は「国民生活が第一」を掲げる民主党に投票したのであった。しかし、その後、鳩山−菅政権は、官僚に取り込まれアメリカ帝国主義の恫喝に怯え、財界にすり寄って国民の期待を裏切った。労働運動・市民運動等あらゆる戦線から闘いを巻き起こし、菅政権との闘いを強めなければならない。
 そのために我が党は、以下の闘いをとくに重視し強力に押し進める。
 昨年の臨時国会でも、労働者派遣法改正案は、再び継続審議となり、未だ成立していない。政府の改正案は、登録型派遣・製造業派遣を広く容認する等限界が明らかであるが、しかし、労働規制緩和から規制強化に転換する第一歩として、有効である。抜本改正を支持しつつも、今年こそ成立を勝ち取るために、運動を強めなければならない。
また、労働者派遣法改正は、非正規問題の解決の第一歩にすぎず、非正規労働者を運動の主体として大規模に組織化する方向が目指されなければならない。非正規・有期労働者の権利確立と組織化の闘いを、労働組合による労働者供給事業などの活動とともに、大胆に押し進めることが大切である。
 また民主党は、公約で、最低賃金として時給800円を掲げ、「景気状況を考慮しつつ全国平均1000円をめざす」と主張している。800円ではワーキングププアーの固定化であり、時給1000円以上をめざして闘いを強めなければならない。財界と結びついた菅政権は、この問題にも抵抗し、低賃金で雇用しようとつとめるであろう。闘いを強め、民主党の公約通り最低賃金1000円を是非とも実現しよう。
 さらに、菅政権は、前述の通り日米同盟を強化し、アメリカのアジア戦略にのっとって行動を強めている。そして、民族排外主義をあおり、中国や共和国などアジア人民に敵対している。菅政権による戦争策動を断固拒否し、アジア人民との共生の道を進まなければならない。

財界本位、アメリカ一辺倒の政治に身を転じた菅政権を、労働者人民の運動の高揚によって退陣させ、民主党内を含む広範な人々と連携して、国政の当面の転換を年内に実現させよう。
 労働運動こそが、こうした政治課題を高くかかげて、闘い抜こう。

(5)闘いを高揚させ、「第三極」政治勢力を実現しよう

我が党は当面、労働者人民とともに国政の転換を求めて闘いを押し進める。そして、この活動を通じて、民主・自民の二大ブルジョア政治勢力に対峙できる「第三極」政治勢力の形成を目指す。
その広範な共同戦線をすすめる推進軸として、さまざまな左翼勢力の結集・協力を推し進めなければならない。
また左翼勢力の根幹として必要なものが、わが党をはじめとする革命的政党の強化である。共産主義運動の現代的発展を課題とし、大衆運動と結びついた、誠実な共産主義者・先進的労働者の団結・統合をひきつづき追求していく。
非正規・正規をつらぬく労働運動の新しい発展が、当面の日本労働者階級の闘いのカナメである。それを中軸として、地域社会の再建など広範な社会運動と共に進む、労働者人民の地域的・全国的な統一戦線をめざしていく。
新しい時代2011年は、激動の国外・国内情勢のもとに幕を開けた。それは闘いを組織する好機である。沖縄県民の闘いに続き、労働者人民の運動を高揚させ、日本革命の道を切り開こう。共に闘わん。