高木文科相は、朝鮮高校無償化見送り策を撤回せよ!
  教育と無縁の政治判断

 11月24日、高木義明文部科学相は、延坪島とその海域で勃発した大韓民国軍と朝鮮民主主義人民共和国軍との砲撃戦を受け、朝鮮学校への高校無償化制度適用について「審査に与える影響は、大きいと思う。重大な決断をしなければならない。」と述べ、適用を見送る可能性を示唆した。この発言は、民族差別・排外主義に基づく許すことのできない攻撃であり、直ちに撤回し、速やかに朝鮮学校の高校授業料無償化を実現すべきである。
 去る11月5日、高木義明文部科学相は、高校無償化制度に関する朝鮮学校の審査基準を決定し発表した。これによって朝鮮学校ごとの申請に基づき、正式に審査、年内にも指定される見通しとなった。
 発表によると、適用基準は、「就業年数3年以上」「年間授業時間800時間以上」「校舎面積600平方メートル以上」「教員数6人以上」等である。そして、年間指導計画、財産目録、学級編成表等13の書類を11月末までに文部科学省に申請・審査をへて高木文科相が指定することになるとされている。さらに、支援金が生徒に渡っていなかったり、書類が提出されなければ、指定を取り消すとの条件が、付け加えられている
 全国にある全10校の朝鮮高級学校は、この基準を満たしており、申請があれば全校が支援の対象となることが明らかになった。これは、市民団体や朝鮮高校の生徒らが、各地で集会やデモ・街頭署名・文部科学省への要請活動を行ない、勝ち取った成果であった。
 ところが、朝鮮学校の高校授業料無償化が可能になった矢先の11月24日、高木文部科学相は、砲撃戦を口実に朝鮮高校授業料無償化を反故にし、在日朝鮮人・韓国人の願いに敵対して、その本性をあらわにした。
 高木文部科学相は民主党内右派と連動し、朝鮮高校授業料無償化に敵対して、11月5日の発表にあたっては、適用基準を設定したり、条件を付けたりする等差別的排外主義的な対応に終始してきた。そして、無償化実現を見送るという暴挙を行なったのである。文部科学相は、「教育的見地から、政治がらみでの判断はしないという考えは変わらない」としながらも「その上で重大な判断を迫られる可能性がある」と言い放ち、無償化実現の放棄を示唆したのである。我々はこのような暴挙を決して許さない。そして、政府が民族差別を即刻やめ、朝鮮高校授業料無償化を直ちに実現することを要求する。
 それぞれの民族は、自国の言語を学び文化を継承発展させるためにも、民族教育を実施し、受ける権利を有する。まして、在日韓国人・朝鮮人は、日本の植民地支配による強制連行、あるいは生活苦による渡日を余儀なくされた人々である。そして、朝鮮学校に通う三世・四世は、その子孫であり、日本政府がそれらの人々を支援するのは当然のことである。日本の侵略戦争と植民地支配を謝罪し、アジアの人々との共生を願う立場からも、朝鮮学校をはじめとする外国人学校への差別的な処遇を改め、日本に暮らす全ての子ども達に、学ぶ権利を保障しなければならない。国連人種差別撤廃委員会も、高校無償化からの朝鮮学校除外は、国際人権法違反であると指摘し、その是正を日本政府に勧告している。
 長期不況下で労働者民衆の生活は、益々厳しいものになっている。子ども達の教育を受ける権利を保障し、生きる力を育むためにも、朝鮮高校授業料無償化は、直ちに実現されねばならない課題である。民主党は、マニュフェストで子ども手当の支給などを決定し、子育ては社会的に支えられるべきものとの理念に基づき、幾つかの教育政策を打ち出している。一人ひとりの子どもの幸せのためにも、これらの理念にのっとって教育政策を進めることが必要である。
四月に施行された高校無償化法の理念も本来、高校生一人ひとりへの就学援助としての個人支給であって、学校へ支給されるのは便宜的な措置にすぎない。どの高校に通っているかで、高校生を差別してはならない法律である。法適用の可否は、高校の実質を有しているかどうかの実務的な判断のみであって、教育内容を問題とするならば、それは改悪教育基本法にも違反する「教育への不当な介入」となる。在日外国人学校が、日本人学校と教育内容に差異があるのは当然なことであり、民族・国籍の違いを反映した差異を問題とするなら、まさに排外主義そのものである。
菅民主党政権は差別排外主義に基づく朝鮮高校授業料無償化の放棄をやめ、直ちに高校無償化の朝鮮学校への適用を実行するべきである。われわれは断固として闘いぬく決意である。共に闘おう。(O)


政権「交代」は「後退」へ
       派遣法改正と郵政正規化はペテンか

 昨年九月の「政権交代」で、当初は三つの大きな政策の変化が生まれた。一つは、普天間基地返還問題での「県外・国外移設」の追求であり、一つは、労働者派遣法改正案の政府・与党による提出であり、もう一つは、小泉郵政民営化の凍結とそれを見直す郵政改革法案の提出であった。前者は、対米一辺倒などこれまでの外交の全般的見直しに通じ、後二者は、新自由主義推進などこれまでの内政の全般的見直しに通じるものであった。
 その後、周知のように普天間問題では「5・28日米合意」という公然たる裏切りがあり、派遣法改正案でも、郵政改革法案でも、七月参院選での敗北があるとは言え、その後の民主党主導政権の本気度が疑われる事態となっている。
 今春通常国会で継続審議の派遣法改正案は、今秋臨時国会では宙吊りにされてしまい、「派遣法抜本改正を求める共同行動」などがこのかん早期審議入り・成立を求める行動を繰り返してきたが、ようやく十一月二六日に衆院厚生労働委員会で審議入りした。この改正案は、製造業派遣原則禁止を看板倒れにするなどザル法であるが、このかんの労働者の要求を反映した面もあり、労働者使い捨ての流れを変える第一歩として、その早期成立が求められている。しかし十二月三日閉会では、再継続審議の長期戦となりそうである。
 郵政改革法案は、鳩山政権時の亀井静香金融・郵政改革相に代表される支配層の中の(親米派に対する)民族派の要求を反映するもので、郵政労働者・利用者の要求を反映したものとは言えない。しかし、市場原理主義に対する一つの見直しということはできる。ところがその後、新自由主義勢力の巻き返しによって、審議入りすらできないままになっている。
 郵政非正規労働者の半数「十万人を正規化する」、これは亀井が掲げたものである。この課題は郵政改革法の成否とは関係なく、JPの労務政策でやれることだが、現在まったく羊頭狗肉に終わっている。三年勤続などの条件を付けて3万4千人にしぼられ、一次・二次試験でたった8438人しか残らなかった。大規模に正規化が取り組まれたならば、その影響は大きかったはずだが、ペテンでしかなかった。
 これら昨年「政権交代」のシンボルといえる施策が、ことごとく破産しつつある。しかし民主党だけが悪いのではない。根本的には、我々労働者人民の闘いが弱いからである。我々の闘いが前進する分野では、「政権交代」の意味が復活する場合もあるだろう。(W)