アフリカ・ジブチに戦後初の海外自衛隊基地建設着工
  海外基地・憲法九条改悪を許すな

七月十七日、アフリカ・ジブチ共和国で海外軍事基地を建設するための起工式が行われた。それは、戦後初の海外自衛隊基地建設であり、本格的な軍事拠点づくりである。
七月二十三日、ソマリア沖の海賊に対処するとしてP3C哨戒機と護衛艦を派遣した「海賊対処活動」が派兵期限を迎えた。それに先立つ七月十六日、菅民主党政権は、ソマリア沖・アデン湾での「海賊対処活動」一年延長を閣議決定している。それに関連して防衛省は、アフリカ・ジブチ空港に四十二億円をかけ、哨戒機用施設(海軍基地)建設に着手した。海上自衛隊は、P3C二機をジブチに派遣寝泊まりする隊舎や格納庫を、ジブチ国際空港滑走路南側にある米軍基地内に借用していた。
計画では、滑走路北西側をジブチ政府から貸借し、来年春頃完成予定としている。
起工式には、ジブチ共和国国防大臣等政府関係者や駐在米国大使らが招待され、日本側からは防衛省を代表して、現地派遣部隊責任者、木村康張・派遣海賊対処行動航空隊指揮官(一等海佐)らが出席して行われた。
現在ジブチには、フランスとアメリカの海軍基地が建設されている。日本は、この地で三番目の海軍基地保有国になる。「資源確保」「権益擁護」を掲げ、米国の戦争政策「不安定の弧」の最先端に海上自衛隊基地が建設されている。日本政府は、ソマリアへの自衛隊派兵にあたり、ジブチ共和国との間に、自衛隊の駐留活動を保障する「地位協定」(公換公文)を締結している。その内容は、自衛官がジブチで傷害事件を起こしても、日本が裁判権を全て行使できる等、在日米軍と比べてすら、はるかに日本に有利な協定である。それは、占領軍としての特権そのものであり、自衛隊や自衛隊員の法的地位を確保し、軍事基地を拠点にした活動を保障しる内容である。民主党政権のもとで、自衛隊の海外進出が進められ、海上自衛隊の基地建設が押し進められている。
民主党政権は、国連平和維持活動(PKO)への参加や海賊に対処する活動を実施するとして、海外派兵を行い、多国籍企業や投機資本の利益を、軍事面から支えようとしている。ジブチでの海上自衛隊基地建設は、その一環であり、海外派兵を容易にする恒久法の先取りである。日本帝国主義は、レアメタルや資源を手に入れるためにも、ジブチに本格的に軍事拠点づくりを行っている。武装した自衛隊の海外派兵と海外基地建設は、憲法九条に違反する行為であり、直ちに中止されなければならない。

  米韓合同軍事演習にも海上自衛隊が初参加

また民主党政権は、哨戒艦沈没事件後の対北軍事行動としての米韓合同軍事演習(7月25〜28日)に対し、自衛隊を初めて参加させた。海上自衛隊の将校4人が、横須賀から出撃する原子力空母ジョージ・ワシントンに同乗した。今回は視察参加とはいえ、憲法が禁ずる集団的自衛権行使への突入である。
今年五月、「改憲手続き法」に基づき、憲法審査会の始動・改憲を目指す策動が、民主党や自民党の改憲勢力によって進められている。そして、総務省も政令の準備を進め、強行に施行している。今や明文改憲・解釈改憲の動きが強まっている。憲法九条改悪を許さず闘いを強化するとともに、海外派兵・海外基地建設等侵略を押し進め、憲法九条を空洞化する具体的な攻撃にも全力で闘い、阻止しなければならない。そして、地域から闘いを組織し、第三極を勝ち取るために奮闘しよう。(O)

※ 資料「ジブチ共和国における日本国の自衛隊の地位に関する日本政府とジブチ共和国政府との間の公換公文」の主な内容
 「四、部隊、海上保安庁及び連絡事務はジブチ共和国政府によって次の特権及び免除を与えられる。(a)施設並びに部隊、海上保安庁又は連絡事務所が使用する船舶及び航空機は、不可侵とする。ただし、ジブチ共和国政府の官吏は、日本国政府の権利のある代表者の同意を得てそれらに立ち入ることを許される。(b)部隊、海上保安庁及び連絡事務所並びにこれらの財産及び資産は、あらゆる形式の訴訟手続きからの免除を享有する。(c)施設、施設内にある用具類その他の資産及び部隊、海上保安庁又は、連絡事務所の輸送手段は、捜索徴発、差押えまたは、強制執行を免除される。(d)部隊、海上保安庁及び連絡事務所の公文書及び書類は、いずれの場所においても不可侵とする。(e)部隊、海上保安庁及び連絡事務所の公用通信は、不可侵とする」
                          

ハン・チュンモク韓国進歩連帯共同代表への
     李明博政権の国家保安法弾圧を糾弾する

  
日韓民衆の力で即時釈放を

 六月の韓国統一地方選挙に敗れた李明博政権は、哨戒艦沈没事件を利用しての反北キャンペーンが、韓国民衆からノーを突きつけられたことに対し、軍事独裁政権の再来ともいうべき公安弾圧をしいてきた。
 六月二十九日、国家情報院(旧KCIA)と公安警察は、韓国進歩連帯の事務所などと主要幹部の自宅を押収捜索し、ハン・チュンモク(韓忠穆)共同代表、チョン・デヨン前執行委員長、チェ・ヨンオク自主統一部副委員長を強制連行した。チョン前執行委員長とチェ副委員長は、七月一日拘束令状が棄却され釈放されたが、ハン・チュンモク共同代表はいまだにソウル拘置所に収監されたままである。
 令状によると国家保安法上の会合、通信、指令授受などの容疑が指摘されている。容疑そのものは確認されないものの、韓国進歩連帯側は「2007年、中国瀋陽で6・15南側委員会が政治実務会談を開いたことと関連がありそうだ」と推測している。またハン・チュンモク共同代表と面会した夫人の孫美姫さんは「国家情報院は2004年に北京で、2005年に瀋陽でハン共同代表が北側人士と会ったのち、6・15南側委員会が結成されたことを問題にしている」と語っており、韓国進歩連帯のみならず6・15南側委員会までが標的となっていることがわかった。
事実七月十九日には、祖国統一汎民族連合(汎民連)大邱地域本部の事務局長宅などを同地域の保安捜査隊が押収捜索し、図書、文書資料、パソコン、CDなどを押収している。また同十九日、祖国統一汎民族青年学生連合(汎青学連)に対して警察は、北を称賛する掲示物があるとの理由で同南側本部のホームページを閉鎖した。一方このような政権側の公安弾圧に毅然と対決する進歩・統一勢力に対し、一部右翼分子が進歩連帯事務所にデモをかけるなどという騒ぎを起こしてもいる。
 この公安弾圧に対して、韓国進歩連帯と参加団体は抗議の声明と談話、国家情報院前で六百名の参加の決意大会がもたれた。進歩連帯は、「(政府)統一部の許可を受けて北側人士と接触したことを国家保安法の嫌疑にかけるのは、6・15共同宣言を無効化させ、南北関係を後退させようとする反統一的暴挙」と厳しく批判、民主労働党のイ・ジョンヒ議員も「政府は地方選挙の敗北を克服する唯一の道が国家保安法だと考えているようだ」と話している。記者会見文で、今回の事件を「地方選挙で敗北した李明博政権の政局転換用の企画捜査」と定義し、▲選挙惨敗をごまかすための韓国進歩連帯弾圧中断▲国家保安法による公安弾圧中断▲押収捜策を中断して連行者の即時釈放を要求した。
 進歩連帯が李明博政権の「標的」となる経緯は、次のとおり。進歩連帯は2007年に、民主主義と南北の統一を目指す韓国における最大の実戦部隊であった全国連合(民主主義民族統一全国連合)を引き継ぎつつも、情勢に適応した進歩陣営の単一連合体と出帆した。当初韓米FTA反対闘争を激烈に闘いぬいた。2008年の米BSE牛肉輸入反対キャンドルデモを全面的に支持し、これに参加したことにより、オ・ジョンニョル(呉宗烈)執行顧問など幹部が指名手配、連行されるという事態を招いた。しかしこのキャンドルデモは、中学生高校生が端緒を切り開き、進歩連帯はこれを全面支持しただけであり、「北の指令」を受け「背後操縦」などしたわけは、さらさらないにもかかわらず、なのである。
 また進歩連帯は今回の統一地方選挙では、巨大与党化しているハンナラ党に対し、民主党などの既成野党に進歩政党・民主労働党を参加させ、反MB(李明博)選挙連帯の結成に中心的な役割を担い、選挙戦での勝利に最大限の貢献をしている。それゆえにあらゆる面から反動政権と化したMB政権は、南北統一運動の先頭に立つ進歩連帯に焦点を絞り、反動法たる国家保安法による弾圧をかけてきているのである。
 韓国の最も信頼できる友人、ハン・チュンモクさんの拘束に対し、日本でも七月二日には、日韓民衆連帯全国ネットワーク(日韓ネット)は即時釈放を求める緊急声明を発している。日韓民衆連帯の力で日韓両政府の戦争策動に反対し、進歩連帯への公安弾圧を跳ね返し、ハン・チュンモク共同代表の即時釈放を勝ち取ろう。(Ku)