辺野古回帰撤回・対米交渉やり直しを
     参院選で「日米合意」容認派を一掃しよう

 鳩山首相は五月二八日、沖縄県民を公然と裏切る言語同断の「日米安保協合意」とそれを追認する「閣議決定」の二つを強行し、しかし、その犯罪性に耐えかねて六月二日、首相辞任を表明した。六月四日、民主党の党代表選をへて、菅直人党代表が国会で新首相に指名され、六月八日に民主・国民新の連立による菅政権が発足しようとしている。
 沖縄をはじめ全国の労働者人民は今こそ、菅新政権を包囲し、沖縄裏切り決定の撤回をはじめ、新政権を沖縄と日本の民衆の意思に従わせる闘いを強めよう。新政権がそれを実行できないならば、七月十一日投票予定の参議院選挙で沖縄県民・日本国民は、鳩山のみならず民主党そのものを首にするであろう。

 「5・28」撤回せよ

 まず第一に労働者人民がやるべきことは、新政権が前政権による普天間基地「県外・国外移設」の公約破棄を正すつもりがあるのかどうか、民主党主導政権を厳しく問いただし、辺野古逆戻りの政府方針決定である「5・28閣議決定」の撤回、対米交渉やり直しを求めることである。
しかし菅直人首相も、鳩山政権での副総理兼財務相として「5・28閣議決定」の共犯者である。菅政権が、かんたんに軌道修正に応じることはありえない。「県外・国外移設」を堅持する沖縄と日本政府との対峙が、参院選挙をはさんで、しばし続くだろう。菅首相は当面、鳩山政権崩壊の主因となった普天間問題で積極的発言を避け、そのかん政府・防衛省官僚は、仲井真知事らを通じた沖縄切り崩しの画策をすすめるだろう。
我われ労働者人民は、政治的に脆弱な「5・28」を守ろうとする勢力を切り崩す闘いを進めなければならない。たとえば参院選挙では、民主党に対し、「日米合意」容認派の候補には懲罰を与え、「日米合意」反対派の候補には激励する対処が必要だ。
この「日米合意」は、ペンタゴンと防衛・外務官僚によってのみ推進され、鳩山が踊らされて成立したものであって政治的に無理がある。沖縄地元当局の容認すらなく、また連立与党の合意もないまま強行され、この対米合意を認めよと閣議決定にかけたやり方は、自公連立時代にもなかったひどい暴挙である。「日米合意」と「閣議決定」は、辺野古逆戻りの内容が悪質であるだけでなく、1・24名護市長選挙と4・25沖縄県民大会に示された市民・県民の意思を真っ向から無視する民主主義の蹂躙である。
しかしこのデタラメな日米合意は、日本側が態度を修正すれば、やり直しとならざるをえない。日米2+2合意は〇六年のそれも今回のそれも、日米間の行政合意であり、政治が変わればいつでも白紙となりうるものである。これに比して、グアム移転協定は日本側では国会承認を要件とする条約として扱われているが、行政合意は政権が変われば見直して当たり前なのである。

  安保論争へ

 第二に問われている課題は、沖縄海兵隊と日米安保のあり方、その要不要を、参院選挙の過程を利用しつつ、国民全体の一大争点にしていくことである。
 鳩山が短期間で防衛官僚に洗脳され、「考えれば考えるほど沖縄海兵隊の抑止力が必要」と「学んだ」ことは、かえってこの論争に火をつけた。鳩山は何度も「現行案」否定を口にしたが、迷走のすえ結局、アメリカが堅持した「現行案」とほぼ同じものに屈服した。このことは「本土」の世論に、「対等な日米関係」の挫折として苦渋を与えた。鳩山は「沖縄の心を傷つけたことを謝罪」したが、沖縄を傷つけてまで必要なのが安保なのか、大きな疑問が投げかけられた。
 この論議は、沖縄海兵隊の実態やグアム移転計画の検証という各論を含みつつ、沖縄・日本からの海兵隊全面撤去、それを始めとする日米安保体制見直しの議論へ進まざるをえない。この過程では、「5・28」の二文書が、韓国哨戒艦沈没事件とその5・20軍民合同調査団報告を最大限に利用し、日米安保の意義が再確認されたと強調しているように、さまざまな逆流が仕掛けられるだろう。しかし世界の多極化など歴史の大局は、半世紀続いた日米安保の問い直しを不可避とするものである。
しかし鳩山政権は安保見直しの論議をおそれ、〇六年日米合意の大枠を前提として出発してしまった。鳩山政権の対米交渉の挫折は、防衛・外務官僚に政治主導を貫徹できなかっただけでなく、その政治に安保見直しの路線・政策を欠いていたからである。我われ闘う勢力は安保粉砕の立場であるが、この安保見直し論議を、米帝一掃・安保粉砕への道筋として活用することができる。

  各戦線整えよう

 第三に問われていることは、基地・外交問題以外においても、菅新政権に対してその政権公約・与党公約を問いただし、労働・社会保障政策、財政、地方自治など諸分野での闘いを整えることだ。
 新政権の政権合意は、社民党が離脱したことなどによって、鳩山政権の連立合意よりも各政策で一定後退することが予想される。反面、小沢一派の政治が後退し市民主義的な政治が強まる可能性もあり、その利用可能性はよく検討されるべきだろう。
最後に、直面する参院選挙にどう対処するか。
今回、民主党は与党であり、社民党は野党である。これらの与党・野党を問わず、基地問題では辺野古逆戻りに反対かどうか等、各政策での候補者の具体的公約によって是非を判断しよう。比例区でも候補者で判断し、候補者名を記入せよ。
自民・公明の復権を許すな。「みんなの党」をはじめ新党諸党は自民党の別働隊である。新自由主義・右翼勢力を一掃せよ。
沖縄選挙区では、ヤマト政界の与野を超えて、反基地での候補「一本化」をひきつづき求める。一人だけ残っている自民現職を落選させ、仲井真知事与党を解体しよう。
参院選挙をはじめ当面の情勢で、左翼勢力が、沖縄裏切りの民主党は自民党と同じ、民主党主導政権は打倒だ!などと立てても、何ら実践的ではない。憲法改悪・消費税10%を掲げる自民党旧勢力の復権策動を粉砕しつつ、もう一つのブルジョア政治勢力である民主党主導政権との闘いを巧みに繰り広げていくこと、この当面の過程を省略することはできないのである。
この過程を通じてこそ我われは、民主・自民の二大ブルジョア勢力に対峙する「第三極」勢力を形成し、さらに労働者階級人民の革命勢力の進出を実現していくのである。