編集部だより

★春には、嵐が付きものだ。だが、それにしても今年の春は異常だ。ようやく春らしいポカポカ陽気かと思ったら、例の如く遅霜が襲う。ところが、夏を思わせる暑さがあるかと思うと、次は大雪だ。★「三寒四温」とは、よく言ったものだが、今年のそれは、振幅が大きく、期間も長い。そのため、作物にも大きな影響を与えた。寒さ、日照不足、降雨量の多さなどで、野菜の出来が悪く、高騰につながった。★農水相はこれに慌てて、「出荷の前倒し」を農協などに要請した。だがこれを聞いて、ある農民が、「工場のように前倒しなんぞ、できる訳がない」と怒っていたのが、印象的であった。異質な関係なのに、農業を工業のようにとり扱うのが、そもそもの誤りである。★農作物の高騰は、工場的な水耕栽培には「追い風」といわれる。だが、今日においても、人類は土壌を完全に分析しきってはいない。戦後の「工業的農法」の行き着く先が、土壌からの逃避とは恐れ入ったものである。だがそれも、化学肥料や農薬への依存や作物の劣悪化という現状から逃れることはできない。高度成長以降のトマトのあの不味(まず)さといったら、それはえもいわれない。★戦後日本農業の荒廃をもたらした原因は、工業的農法や専作化などにある。これからすれば、農業の復興には、やはり「有畜複合農業」しかありえない。★春の暖気は五月の連休でようやく定着し、それに乗って飛来したのか、街に一羽の燕をみた。(竹中)