労働者派遣法改正案の修正成立を
  問われる非正規組織化の戦略

 政府・与党の労働者派遣法改正案が三月十九日閣議決定され、同二九日に、今国会での成立を確実にするためとして先に参議院の方へ提出された。
 派遣法改正問題は、08年秋以降の自動車産業などでの派遣労働者大量首切りによって一挙に社会問題化し、その改定案がこれまで、旧政府案、当時の野党三党案、昨年末の労働政策審議会報告としての案、現在の政府・与党案として示されてきた。
 自公政権時の旧政府案は、日雇い派遣について30日以内を原則禁止とするだけで、雇用破壊・格差拡大の現状をなんら規制しないものであった。昨年の国会で旧政府案とともに廃案となった野党三党案は、登録型派遣と製造業派遣の原則禁止にふみこみ、また派遣先責任の強化、違法派遣対処の「直接雇用みなし規定」での内容などにおいて、労働者人民の要求を一定取り入れたものであった。
 その野党が昨年八月総選挙で勝利、派遣法問題でも三党案と同様の内容を含む連立政権合意が行なわれ、民主党連立政権が登場した。こうして派遣法抜本改正の期待が高まった。しかし再開された労政審では、連立政権合意ではなく旧政府案をベースとした審議となり、使用者側委員のみならず派遣業界の意を受けた公益委員が抵抗するという事態が生じ、その報告は、常用型なら製造業でもよいとするなど、三党案よりも大きく後退した内容となった。現在国会に提出されている政府案は、社民党の要求によって「派遣先の事前面接」解禁が削られたものの、基本的にこの労政審報告に沿ったものである。
この政府案は「改正」案と呼べるものなのか、多くの人が疑問としている。登録型派遣・製造業派遣は原則禁止としているが、登録型は「26専門業務」その他で、広く可能となっている。日雇い派遣は、派遣元との雇用契約期間2ヵ月以下は禁止とするが、一日単位での派遣は可能である。
最大の問題は、「常用型」の定義があいまいなまま、常用型派遣なら製造業でも可とした点である。現状では、派遣元と半年等の雇用契約を反復している労働者でも、毎日同じ派遣先に出勤していれば常用型とされている。本当は常用型と言うなら、派遣元との期間の定めのない雇用契約であるべきだ。自動車関係で派遣切りされた人の多くは常用型であったが、派遣先が解約すると、派遣元からも雇用関係を住居ごと切られてしまった。この再発を防止できる法改正でなければならない。
政府案はその他多くの点でザル法というべきだが、しかし冷静に考えると、八十年代以降続いた新自由主義の労働規制緩和の流れから転ずる、その第一歩とみなすことはできる。ザル法であっても流れたら、新自由主義勢力は反撃のときが来たとみなすだろう。今国会の審議で、常用型の定義を含む雇用契約安定策や、団交応諾義務を含む派遣先責任の強化など必要な修正を求めつつ、成立させることが必要だ。
他方、現場においては、会社側とくに大企業では、派遣法は使い手が悪くなったと認識され、請負・委託、期間工・外国人研修など非正規労働者使い捨ての別の方途を進めている現況がある。政府案が施行五年後などとしているのは、その切り替えのための準備期間とも言える。
派遣法改正だけで非正規問題の解決がないことは明らかである。派遣法の一部改正のあとは、派遣労働者・非正規労働者の生活と権利をどう守るのか、労働組合にどう組織していくのか、その戦略と政策が問われるだろう。(W)