〔沖縄からの通信〕

  普天間問題
  公約違反の新案は破綻する
    4・25県民大会を成功させ、普天間基地を叩き出そう

 三月二五日、北沢防衛相が普天間「移設」の新案を伝えるために来沖した。その案は@シュワーブ陸上案、A勝連沖埋め立て案、B徳之島などへの普天間基地機能分散という三案からなるが、五月までに単一案にするという形である。(また当面@に移設しBをやりながら、Aの海上基地を作るとする二段階移設案とも言われている。)
 これは本質的に、「県外」を放棄した「県内」移設案である。このかん鳩山首相は「最低でも県外」と言ってきたが、初めて鳩山連立政権の公約違反が明らかにされた。
 翌二六日の闘いは分散的になされた。一坪反戦地主会による普天間軍用地強制使用の公開審理闘争、伊波洋一宜野湾市長による「グアム統合」についての講演会、県内女性23団体による「3・26普天間基地の県内移設に反対する女性集会」、平和運動センターによる北沢防衛相への緊急抗議行動、平和市民連絡会による北沢・仲井真会談への抗議行動、等々である。
これらの闘いが、公約違反に怒りを強める沖縄民衆を励ましつつ、当面の沖縄県民全体の闘いは「4・25県民大会」へと進みつつある。県内移設反対・普天間早期閉鎖を求める全会一致の2・24県議会決議を背景に行なわれる4・25県民大会(読谷村運動広場、午後三時)は、政府の新案に対する挑戦となるだろう。
北沢来沖後の二九日、米国防総省で岡田外相とゲーツ国防長官の会談が行なわれ、二五日沖縄での北沢・仲井真会談で示されたものと同様の三案が米側へ伝えられた。この日初めて岡田外相の口から「現行案」(辺野古沿岸案)が消え、日本政府の考え方が定まったのが分かる。(とはいえ、政府の新案が正式の政府案となるためには、基本政策閣僚委員会での一致あるいは決裂が必要なはずであるが、いぜんこの与党閣僚委員会には掛けられていない。)

  何だったのか検討委員会

この新案を前にすると、昨年十二月十五日の基本政策閣僚委員会で政府与党検討委員会が設置され、今年三月八日まで長く続いたその検討委員会とは何だったのか、疑問が生まれる。この間に、「県内移設はもう成立しない」と誰にでも思わせる1・24名護市長選挙の勝利があった。しかし、連立で決めるという柔らかいカーテンの向こう側から沖縄にやって来るのは、北沢と平野官房長官による「ゼロベース」(現行案も含むの意)、「県外は困難」という、名護市長選勝利を打ち消すメッセージだけであった。新案には、国民新党・下地幹郎案が高い濃度で入っているが、社民党の「グアム移設案」は1ミリさえ入っていない。
この過程の当初、防衛官僚は五月まで待つだけ待って米側に「現行案以外はNO」と言わせれば解決すると思っていたにちがいない。そうはいかなくなった。名護市長選がかれらにとって番くるわせで、「トラスト・ミー」が実行不能となり現行案が消えた。
この番くるわせで、下地が派手に登場してくる。彼の背後には防衛官僚・日米官僚が隠れているが、官僚にとって好都合なのは下地が沖縄出身の衆院議員であることだ。ヤマトの沖縄差別が薄められる。政府与党検討委のこのかんの報道では、各党案提示の三月八日まで、にこやかな下地と社民党・阿部氏のツーショットが連日流された。なぜか、下地と社民党との仲は悪くないようだ。
また意外に思えるかもしれないが、「県内移設」の逆流に最も敏感になっているのは、「県外」の公約へ新年から転じた沖縄自民党である。かれらは、これから窮地に陥ることが予感できるからだ。

  全面的「県内」の国民新党案

検討委での下地の国民新党案は、「シュワーブ陸上案」と「嘉手納基地統合案」からなる全面的な県内移設案であった。これは以下の経過で、沖縄選出国会議員の会「ウルの会」の解散をもたらした。
このかん「ウルの会」は下地が事務局長で、会を最大限に利用して民主と社民を手玉に取ってきた。下地の検討委案に、すぐに民主党・喜納昌吉氏が「ウルの会を解散せよ!」とかみついた。社民党は抵抗。二度三度、昌吉は迫った。全員出席・全員一致の会則を満たさず、この時は失敗。ついに公開討論会の席上から喜納氏は、下地、照屋寛徳氏を前にして、「県内移設に反対できない『ウルの会』は存在理由がない。ウラナイ会(売る・売らないともじった)を作らないとダメ」と言って、県民に直接訴えた。これに社民党は耐え切れず、三月二五日「ウルの会」は解散となった。この解散は、下地への強烈なパンチであり、「県内移設」への反撃でもある。

  社民党「グアム移設案」

社民党が検討委に提示した「グアム移設案」を見てみよう。鳩山政権成立後の日米安保協、検討委員会、政府の複数案提示、それによる対沖・対米交渉の開始というこれまでの過程を通じて、グアム移設案は国民に対し、有力な影響を与えていない。全過程を仕切ったのは防衛官僚であり、グアム移設案は蚊帳の外に置かれっ放しであった。実質的な防衛官僚案を覆い隠すために下地に案を出させ、その一案だけではおかしいので、なんでもよいから二案、三案と出させながら、始めから決めている、いや名護市長選で修正を余儀なくされた防衛官僚案を、三つからの選択肢の一つのように見せかけている。
 「グアム移設案」は、移設先をグアムに選ぶという国民多数が解釈している誤解を解いて初めて、効力を発揮する。社民党は、そこを努力しなかった。
 もともと米国は、06年7月の「グアム統合軍事開発計画」08年9月の国防総省グアム軍事計画報告を持っている。これは陸・海・空・ミサイル等の軍をグアムに統合し、巨大な軍事基地を建設するというもので、沖縄海兵隊の行き場もそこに予定されている。グアムからは東京、沖縄、台湾、フィリピンへほぼ等距離であり、一点でにらむことができる。
 防衛官僚らも、大メディアもこれを知っていながら語らない。県内移設の理由が喪失し、それが「移設」ではなく、新鋭機オスプレイ配備等の新基地であることがバクロされるからだ。社民党は米軍グアム統合計画を国民に精力的に、分かりやすくバクロせず、グアムの他に佐世保だの大村だのを語って、「移設先探し」となっている。社民党は、「マスタープランの中に普天間の行き場が用意されているのだから、代替はいらない。グアム移転には費用の四割を日本側が負担することにもなっている」と一本槍で行くべきであり、日本政府もそう対米直言すべきなのである。
 グアム統合計画のバクロは、依然これからの運動にとっても重要である。県議会決議の「県外」は移設先を明示しておらず、県民の心情は「アメリカの基地であるからアメリカ本国へ持ち帰れ」である。社民党の「グアム移設案」は、それに対してグアム住民への基地押しつけを是としない正論の批判があるが、政治的には有益である。それは、日米両政府のペテンを突き崩す道筋となるからだ。グアム統合計画を著作でふれている研究者には、我部政明、屋良朝博、吉田健正らがいる。この三氏は沖縄人である。

  現行案降ろさない知事

 さて、仲井真知事はどうしているのか。名護市長選以降、仲井真は超軽薄に「県外」を語りだした。その実、県民から総意として拒絶され、県議全員に否定され、政府も捨て、友人たる沖縄自民党からも支持を得られない「現行案」を、いぜん県案から降ろしていないのである。それでも彼は現在、政府・当局者と会談する時には、「現行案」論者の知事としては言ってはいけない「県外」を主張する。彼の言葉は、今後も超軽薄に変わるだろう。彼に知事権限を持たせておく訳にはいかない。

  下地一派を孤立させることが重要だ

 下地一派を孤立させることが重要だ。防衛官僚にとっては、沖縄選出の下地なしに政治の場に物申すことができないほど大事な存在である。一月末の嘉手納町・沖縄市・北谷町の三市町長を集めての嘉手納統合案の提示などは、現政府内では他にやれる者はいない。
 下地は、新案が出る直前の三月二十日、「ちゃーすが普天間」討論会に出席し自説を開陳したが、翌日の琉球新報がこれを派手に報道している。この討論会は客観的にみれば、政府新案のなめらかな登場を促す役割を果たしている。この討論会を企画したのは、「ネオキの会」を名のる石川真生氏である。同氏は、06年の糸数慶子・知事選の際にも、下地の知事選介入を助けるべく討論会という同じ手法を取っている。討論会での下地や照屋氏の発言とは異なり、県民総意の「県外移設」(必ずしも本土各県を意味しない)の主張は、移設先を特定するものではない。それが沖縄人の圧倒的多数の態度である。

  問われる日共の思想性

 また、予想どおり日本共産党は二月県議会決議に際し、「無条件撤去」でなければならないとして「県外移設」に反対し、一旦は退場を選んだ。あまりの異常さに驚いた人たちが議会の延期を願い出た。その、「鳩山政権に対して『県外』公約を守れ!と迫っているのに、なぜ退場か?」と言う疑問に日共は答えられず、ついには決議に同意した。下地派の一人は、日共が退場すれば便乗して退場するつもりであったが、一人で退場するのは自殺行為とみて結局退場なしの全会一致となった。
 引き止める者がおらず、日共が退場していたら笑いものになっていたであろう。かれらの体質はこうである。3・26女性集会の文案作りで、「沖縄差別」という言葉を日共が認めず、けんけんがくがくのあげく「沖縄への差別」となったらしい。笑い話のようだが退場問題と根は一つで、かれらの思想性に根ざしているようだ。一つには、沖縄の特殊性を認めたら党の全国普遍の政策が壊れると錯覚している。これからも類似の問題は起きるだろう。

  新案は、より悪らつ

 以上、鳩山政権の公約違反があらわになる現況下、沖縄の各勢力の批判を述べてきたが、新案のひどさを確認して報告を終わりたい。
 勝連沖案では、官房機密費をもつ平野は、うるま市議らを東京に呼び一本釣りを開始した。すでに六人が釣り上げられた。十四年前の内閣特命・岡本行夫による名護買収劇に似ている。あの当時の「反基地をとるか経済をとるか」などの沖縄人殺し文句は、今は通用しない。普天間騒音訴訟では、「五億あげるからガマンせよと言うなら、十億あげるから基地を持って帰ってくれ」と言って上訴する時代になっている。平野は沖縄を知らない。
 平野が中心に、勝連沖埋め立て案を出しているが、「あそこにはジュゴンがいない」と言ったらしい。沖縄の浅海域の多様な生命の生産力を彼は知らない。藻草、スヌイ(モズク)、モーイ草、グンジャンピギ、岩ノリ、ナチョーラ、ウニ、ナマコ、サザエなど貝類、またシャコ貝、カニ、エビの類、ナマコ、タコ、甲イカ、白イカ、そしてミーバイ、タマン、イラブチなど沿岸白身魚類等々。勝連の浅海地帯はモズクの一大産地である。沖縄の浅海域はどこでも猛烈な生産力をもっている。陸は雨が降らないと農作物は枯死寸前までいくが、海はその心配がない。沖縄の海を壊すことは罪が重い。
 本命のシュワーブ陸上案もはげしい反発にあっている。三月には、新基地を認めてきた辺野古住民の組織「推進協」がその看板を取り外した。十四年にわたるシガラミから早く抜け出ることを願う。新案に対しては、かれらは一転して「体を張って阻止する」、「土地の賃貸契約(200名)を拒否する」と決めている。シュワーブ陸上案は辺野古の頭上だけでなく、南の宜野座村、北側の名護市二見以北10区をも侵害する。大多数の沖縄人は、現行案よりも比べ物にならないほど悪らつと感じている。3・26女性集会での東村高江、名護辺野古、嘉手納、読谷、沖縄市、北谷、糸満、うるま市等々からの発言にも、それはよく示された。「ヤマトゥはアンポで食うため、沖縄差別を腹を決めてやろうとしている」。
 4・25県民大会を成功させ、新案阻止、普天間基地を県外へ叩き出そう。(沖縄T)