反空港全国連絡会11・21〜22石垣島白保集会が成功
  航空行政の抜本的転換問われる中


 十一月二十一・二日の両日、沖縄県石垣市白保の民宿「船着場」において、「反空港全国連絡会・石垣島白保集会」が開催された。全国連発足から九回目となる今回は、初めて新空港建設をめぐる現地白保で開催され、現地・全国併せ二十名の参加があった。
 前回開催地での確認により、「空港はいらない静岡県民の会」が連絡先となり、実行委員会の形で準備が進められ、全国の反空港諸団体の力で開催したものである。また今回のテーマは、航空産業の破綻の進行と政権交代下での空港建設の動向を考えるため、「新石垣空港問題と航空行政のゆくえ」とされた。
 二十一日の集会は、司会の「静岡県民の会」の芳賀直哉さんから、実行委の形で準備が進められた経過を紹介する開会あいさつが行われて始まった。
 現地石垣島・白保新空港の問題を、「八重山・白保の海を守る会」の東條利一さんが次のように報告した。二〇〇〇年に決定された「カラ岳陸上案」による新空港建設は、〇六年十月に着工され、工事が強行されている。十三年二月開港予定で、三月末現在では事業費で進捗率約五十%とされている。設置許可取消訴訟が東京地裁で闘われており、二月に生島融「守る会」事務局長の証言、三月にコウモリ専門家の松村澄子山口大准教授による絶滅危惧種リュウキュウユビナガコウモリ等の絶滅のおそれについての証言が行なわれ、五月には異例の裁判官による現地検証が行なわれた。十一月には、浦田健作大阪経済法科大客員教授が空港予定地のカルスト地形の洞窟の危険性について証言。来年二月に結審となる。また、共有地の強制収用の根拠となる事業認定への取消訴訟を二月に提訴し、九月に第一回公判が始まった。これら裁判は厳しいが、異例の現地検証が行なわれる中、勝訴をめざして闘っている。
 また、共有地主の鷲尾真由美さんより、アセスメントの問題点と公金支出違法訴訟の報告があり、翌二十二日の現地視察についての意見交換も行なわれた。
 続いて、関西の3空港の問題を、「泉州沖に空港をつくらせない住民連絡会」の根本博事務局長が報告。「七二年より運動を始めた。九四年に関西新空港が強行開港された。二本目の滑走路が供用されたが、離発着回数は一本滑走路の限界十六万回どころか、財務省との合意の十三万五千回にも到達せず、減少すらしている。十年度160億円に追加要求された補給金の保留、また大阪府による3空港に関する提言など、見直し論議が行なわれているが、地元泉佐野市が早期健全化団体に転落するなど財政破綻の現状はさらに進むだろう」。
 「羽田空港を監視する会」の今井英男さん、大道寺毅さん、松島光男さんが報告。「A滑走路北側離陸左旋回陸上飛行と低高度内陸進入の開始により、一日百便以上が大田区上空を通り、騒音は杉並区等にまで拡大する被害が深刻化している。来年十月のD滑走路供用へ24時間突貫工事が強行されているが、すでに騒音問題が突出してきた。ハブ空港問題での成田空港との関係論議では、地元ではハブ化に否定的な受け止め方だ。JAL経営破綻問題は、悪しき『夢産業』としての航空産業の構造的問題であり、空港特別会計に代表されるムダな空港づくりと過大な負担の結果である。一方でJALの企業年金問題が、意図的に緊急問題に仕立てられている」。
 「空港はいらない静岡県民の会」の桜井建男事務局長より、開港直後からすでに破綻状態の静岡空港の報告、「三里塚暫定滑走路に反対する連絡会」の高橋千代司さんより、空港会社による民事訴訟での共有地強奪策動が報告された。
集会では、「民主党政権下での今後の航空行政をめぐる意見交換」が行なわれた。全国で九十七空港に達した根拠となった「空港特別会計」の見直しが提起されているが、航空産業は成長産業といまだ位置づけられている限界がある。関空の160億補給金凍結が報じられているが、航空行政の根本的見直しになるかは不透明である。全国の空港の実態を、これまでの運動の中から突きつけていく必要があるのではないか。来年度予算に向け各空港の実態を議員や閣僚に突きつける行動や、航空・空港問題でのシンポ開催などを早急につくりあげようとの意見も出された。さらに結成十年になる来年は、全国連のあり方の検討も含めての関東(東京)での開催をとの意見も出され、活発な議論となった。
翌日、現地視察が、連日の雨が幸運にも晴れる中で行なわれた。カラ岳中腹より、「石垣島・白保に空港をつくらせない大阪の会」の栄篤志さんが、カラ岳陸上案の決定経過とその工事状況を説明した。五月の現地検証時には未着工だったカラ岳海側が削られ無惨な姿をみせていたが、工事はまだ、エプロン部分にしかコンクリートが打たれていなかった。まだ止めることのできる工事だと一同確認した。
共有地では、強制収用するな、コウモリを守れ、サンゴを守れなどの立て看板を皆で打ち立てるなどを行ない、また共有地への通路を作るよう求める要請行動を行なった。参加者有志は翌日、白保のサンゴを海に入って見る行動を行なった。
遠方での開催にもかかわらず、全国連の集会が白保で開催されたことは大きな成果であった。いまだ不透明な連立政権下の航空行政だが、空港建設をストップさせる可能性がみえてきた情況を確認し、さらに運動を発展させることを決意させた集会となった。
                                  (関西S通信員)