「政権交代」活用し「第三極」形成へ
     
         日本の左翼勢力をふるいにかける新政権対処


 8・30総選挙以降、民主党を中心とする鳩山連立政権が成立し、その内政・外交が始動してきた。自民党から最大野党への「政権交代」は、日本の左翼勢力と労働者人民の運動が経験する初めての事態であり、この情勢に対する認識と実践は、左翼各勢力をふるいにかけるものとなっている。新政権下の経過を確認し、左翼の闘争方向を鮮明にしよう。
 九月九日、総選挙で選挙協力してきた民主党、社民党、国民新党が「連立政権樹立に当たっての政策合意」を行なった。また三党は、社民党と国民新党の各党首(福島みずほ、亀井静香)が入閣し、政権内に「基本政策閣僚委員会」を設けて政策調整に当たるとしている。
 この民主・社民・国民新の政策合意は、脱官僚依存、国民生活の立て直し、緊密で対等な日米同盟と東アジア共同体という政治基調をはじめ、多くの諸政策が民主党のマニフェストに沿ったものとなっている。「子ども手当て」創設、生保母子加算復活、高校教育無償化、「最低保障年金」など一元的年金制度の確立、農業者への戸別所得補償制度、後期高齢者医療制度の廃止、障害者自立支援法の廃止などなどである。国民新との関係では「郵政事業の抜本見直し」が入り、社民党との関係では「労働者派遣法の抜本改正」が詳述されることとなったとみられる。これらの施策は、具体的内容では論議を要するとはいえ、おおむね当面の改善策としては評価できるものである。
 焦点の一つ、沖縄基地政策では、民主マニフェストの記述と同様の、「日米地位協定の改定を提起し、米軍再編や在日米軍のあり方についても見直しの方向で臨む」という抽象的な合意となった。民主党は当初、外交はやってみなければ分からないなどと言って、この課題では自己のマニフェストの文言を政権合意とすることすら嫌がったのである。
 民主マニフェストにあって政権合意にないものは、衆院比例定数の削減、憲法改正の検討、米国との自由貿易協定FTAの交渉促進、などである。
 民主党は衆議院では単独過半数であるが、参議院ではこの三党でぎりぎり過半数であるにすぎない。来年の参議院選挙までは社民、国民新との連立を必要としている。
 九月十六日、特別国会の両院で鳩山由起夫が首相に選出され、鳩山民主・社民・国民新連立政権が発足した。旧自民系の北沢防衛相で安保体制を堅持させ、松下労組出身の平野官房長官のほか経団連交渉役としてトヨタ労組出身の直嶋経済産業相、脱官僚依存を菅国家戦略相、仙石行政刷新相、長妻厚労相などで強調という内閣であるが、保守系と連合幹部出身が合体するブルジョア政権の布陣である。
 新政権は内政では政治主導・脱官僚依存をアピールして、今年度補正予算の一部見直し、事務次官会議の停止、一部公共事業の中止などに着手し、また外交では鳩山首相が、九月二十二日の国連気候変動サミットで温室効果ガス「25%削減」を表明、二十三日にオバマ大統領と初会談、二四日の国連総会演説で「新しい日本」をアピールした。
 こうして新政権は今のところ、内外での政権イメージの刷新にかなり成功しており、七割を超える高い内閣支持率を得ている。その政治の実質は、来年度予算編成に具体的には表現される。この政権は結局何ができて、何ができないのか、その答えはこれから出る。その答えが、新政権を突き上げる労働者人民の闘いに係っている範囲は狭くないのである。

  「左」右の日和見主義

 こうした新政権の情勢下、日本の広い意味での左翼には、「左」右の日和見主義というべきものが現われている。
入閣した社民党は、政策転換において一定の役割を果たしているが、民主党内の中道左派と合流せよという圧力は避けがたい。路線的に「第三極」形成の方向を取らなければ、解体の道をすすむだろう。
日本共産党は「健全野党」を自認して、新政権のよい政策には推進役、悪い政策には防波堤という対応を取っている。要求で一致する大衆団体ならそれでよいが、革命政党としては政権の本質をふまえない是々非々主義である。ブルジョア政治がどう変わったのか(我々が言う「第一極」から「第二極」へ)、それをふまえた統一戦線政策をもっていない。
新左翼の一部で、鳩山政権「打倒」を叫んでいる人々も、形は「左」だが、日共と同様で「政権交代」の歴史的意味が分かっていない。また、政府と人民の闘争の弁証法的発展をふまえない万年スローガンでは、情勢を活用することはできない。
他方、新左翼の一部ではブルジョア新政権「支持」を掲げる人々も出てきている。利用可能性があるからといって、なぜ「支持」なのか。こうした見解の背景には、選挙による「政権交代」への過大な意味付与がある。
今回の「政権交代」は、それ自体が初めてであるだけでなく、アメリカ一極支配と市場原理主義の破綻、官僚主導と利益誘導の既成政治が日本資本主義の延命にもはや桎梏となっていたこと、これら内外の歴史的転換が背景にある。これは新しい情勢であり、左翼の試行錯誤も一定やむをえない。
しかし、我々労働者共産党は明確に主張する。「政権交代をどれだけ意識的に活用できるかどうかは、これからの攻防の帰趨を決するといっても過言ではない」、「この政治の変化を活用して労働者民衆自身による社会の再建と資本との闘争の大規模な発展、『第三極』政治勢力形成へ、大きく道を開かねばならない」(09・7二中総決議)のである。