ピョンヤン宣言七周年

 9・15東京−蓮池透さんが講演
   新政権は政策転換を

 2002年9月の日朝ピョンヤン宣言から七周年の九月十五日、拉致被害者家族連絡会元事務局長の蓮池透さんを講師に迎えて、「過去の清算と拉致問題の解決を考える」七周年集会が東京・文京区民センターで行なわれた。主催は、日韓民衆連帯全国ネットワークなどの呼びかけで諸団体・個人が参加する「『韓国併合』から100年 真の和解・平和・友好を求める2010年運動」(略称・2010年運動)。
 この日の集会は、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)による日本人拉致問題が、日韓・日朝連帯運動のみならず、左翼全般にとって喉につっかえる小骨のようにトラウマとも言える状況を呈し続けていることへの、ハッキリした解決の道筋と運動の前進を促すものと位置付けられ、開会前から続々と参加者がつめかけ、会場いっぱいとなる250名ほどが集まった。
 集会は、日韓ネット共同代表の渡辺健樹さんの主催者挨拶に続き、蓮池透さんが登壇し講演を行なった。
 蓮池さんは講演の冒頭で、今までの日本政府は日朝正常化から対北強硬路線へと路線を転換させ、「北朝鮮問題での自由な論議ができなくなるという世相に危険な感じを受けた」と述べ、大要次のように語った。拉致問題は日朝関係の問題であり、核問題はおもに対米問題だ。日本政府などが言う「核・ミサイル・拉致」の一括解決は誤りであり、北朝鮮経済制裁が単純な感情論に基づくものでしかなく、「思考停止」に陥っている。七年間の経過をみると、日本政府は広報などいろいろやってきたが、強硬姿勢による拉致被害家族向けの「エクスキューズ(言い訳)」や「国内向けのパフォーマンス」を行なってきただけであり、政治的意図ではなく問題解決の具体的政策を欠いている。
 そうであるが故に「今われわれがやるべきことは制裁ではなく、対話を。対話のためには、日本政府の約束違反などこのかんの日朝間の不信感の処理も必要」であり、「コミュニケーションとネゴシエーション(交渉)なしに和解はありえない」。
最悪の状態に陥っている日朝関係を打開する手立てとしては、唯一の合意事項であるピョンヤン宣言での「不幸な過去の清算」の意思を明確にし、北朝鮮の日本政府に対する不信感を取り除き、「行動対行動」の原則に戻ることにより、対話と交渉を積み重ねることが唯一の道である。具体的には、昨年八月の日朝実務者合意(制裁一部解除と再調査委員会立ち上げとの同時行動)に戻ることが検討されるべきだ。また、新たに出発する鳩山政権が、これまでの政府の姿勢とは異なるのか、どのような方向性をもっているのかは不明である。
以上の蓮池さんの講演の後、集会は、ノレの会による「イムジン河」などの歌唱を挟んで、バウネットジャパン共同代表・西野瑠美子さんの講演(「軍隊慰安婦」問題の記述復活を教科書各社に要請する活動などを報告)が行なわれ、また、新しい反安保行動をつくる実行委員会、許すな!憲法改悪・市民連絡会、沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック、「日韓100年」ネット、在日韓国民主統一連合(韓統連)から各アピールが行なわれた。
採択された集会アピール「鳩山新政権に対朝鮮政策の転換を求めます」は、自公政権が進めてきた北朝鮮敵対政策の根本的転換を求めるものであり、「新政権がピョンヤン宣言に基づき、@制裁を解除し、日朝国交交渉を速やかに再開すること、A100年余に及ぶ過去の清算を真摯に行なうこと、B拉致問題もその一環として対話を通じて速やかに解決すること」を要求するものであった。
来年で朝鮮併合から百年を迎えるが、過去清算の点では日本政府は「河野談話」「村山談話」の枠を出ておらず、その域すら右翼勢力に脅かされている現況にある。政府と国民は、併合・侵略の歴史認識を正しく持たねばならない。その上に立って、日朝・日韓の民衆連帯を一層強化しよう。(東京K通信員)


日朝ピョンヤン宣言7周年近畿の集いに600名
  制裁よりも対話を

 九月十七日、大阪市の北区民センターにて「9・17日朝ピョンヤン宣言7周年近畿のつどい」が同実行委員会の主催で開かれ、関西各地から日朝国交正常化を求める市民団体、労働組合、朝鮮総連など在日の人々の参加によって約600名の盛況であった。
 主催者あいさつ、全日建連帯労組生コン支部による和太鼓演奏、東大阪朝鮮中級学校による民族舞踊の文化公演に続き、講演が始まった。
 講師は康宗憲(カン・ジョンホン、早稲田大学アジア研究機構客員教授)さん、「制裁より対話を!日朝ピョンヤン宣言の履行に向けて」の演題で次のように語った。
 制裁だけでは、問題の本質は何も解決できない。米朝関係では、クリントン米元大統領の八月四日の訪朝を契機に、二国間交渉の実現へ動いている。米朝敵対関係の解消が問われる。また韓国の李明博大統領は、前政権の「太陽政策」を評価し継続すべきだ。日本政府の制裁一辺倒の外交では、諸懸案の解決の道は開けない。拉致問題を解決するためにも、国交正常化を推進すべきだ。そして政治的信頼を作るには、民間交流の活性化が大事である。制裁だけでは「核・ミサイル・拉致」の問題は全然解決しない。
 集会では最後に、対政府要請文が提案された。@日朝間の問題解決のため対話を再開する意思を、鳩山首相は日本政府を代表して共和国政府に伝えること、A現在の制裁措置で「親族間の小荷物のやりとり」や「出版物の郵送」をも禁止しているような、在日朝鮮人などへの人権侵害を直ちに中止すること、B朝鮮民主主義人民共和国に出入りする船舶や航空機の臨検は戦争につながる行為であり、貨物検査法案に反対すること、などの内容を拍手で確認した。
 さて来年2010年八月二十二日で、日韓併合100年をむかえる。日本の朝鮮半島における植民地支配が本格的にはこの日から始まり、「同化政策」「土地の取り上げ」など数々の支配政策で、朝鮮民族を圧迫・収奪してきた。戦争が泥沼化すると「強制連行・強制労働」、女性は「従軍慰安婦」として連行されていった。このかんの自公政権は、軍隊「慰安婦」などこれらの史実を教科書から抹殺し、朝鮮・アジア侵略の歴史を歪曲してきた。
 日韓併合百年を機に、民主党中心の新政権が史実に向き合い、過去のあやまちを教訓として、新しい対朝鮮半島外交に転ずることが求められている。私たち国民には、日朝間の歴史的真実を知り、在日をふくめ友好連帯をきづくことが問われている。
対話によって日朝間の互いの問題を解決し、日朝国交回復を早期実現すること、そして朝鮮半島の南北統一実現に寄与する道を進んでいかなくてはならない。(関西N通信員)


9・19滋賀
  日米合同軍事演習反対!あいば野集会に600名
  新政権は軍事一体化放任か

 九月十九日、滋賀県高島市今津において「日米合同軍事演習反対!9・19あいば野集会」の集会・デモが開催された。
 麻生自民党政権が崩壊し、新たに鳩山民主党政権が登場したその下での、初めての日米実動軍事演習の強行である。その意味で本集会は、鳩山連立政権の今後の動向に注意を払いつつ、自民党政権下で進められてきた安保再編・日米軍事一体化に対する闘いの今後を見据えていく重要な集会であった。
 集会参加者数600名の意味するものは、これまでの自公政権が進めたイラク派兵、海上自衛隊のインド洋・ソマリア沖派兵など矢継ぎ早やの自衛隊派兵の恒久化策への強い危機感と、また今後の鳩山政権の軍事政策へのけん制の意思とを、併せ持ったがゆえの結集といえよう。
 そして、この集会が、近畿各地で反戦・改憲阻止などを担ってきた仲間たちにより、平和フォーラム近畿ブロックと、09あいば野に平和を!近畿ネットワークとの共同行動として闘い取られたことも、反戦反基地の闘いでの重要な前進として見て取ることができる。それは、新自由主義攻勢の崩壊、麻生自民党の歴史的大敗という時代の変動の中で、ここ数年、形作られてきた反戦・反失業・反差別の新たな共同行動を闘う勢力の結集が、個別的な闘争局面でも実現しつつある証に他ならない。
 集会では、沖縄からはヘリ基地反対協の安次富浩共同代表、近畿比例区で当選した服部良一衆院議員をはじめ、各地の闘う仲間がアピールした。神奈川、あいば野、岩国、沖縄を貫いて進められる米軍基地再編、それとの自衛隊の一体化、これとの各地での攻防は、全国的な大きな闘争陣形を求めていることが発言で示された。共同行動の歩をさらに進めよう。
 鳩山政権の中心の民主党はそのマニフェストの中で、対米追随一辺倒の歴代自民党政権の安保・外交政策をあたかも否定しているかの如く、「主体的な外交戦略を構築し、緊密で対等な日米同盟関係の構築」と謳いあげている。「対米自主」とも読み取れる主張である。だが、そうした文言の裏では、「対テロ戦」での日米軍事一体化の進行が止まってはいない。日米軍事一体化は憲法違反の集団的自衛権行使に直結しており、また「緊密で対等な日米同盟関係」の現実は、アフガンへ主戦場を移したオバマ政権の戦略に同化し緊密化していくこととなるだろう。
 鳩山政権は、来年一月まででのインド洋給油活動の停止を語ってはいるが、それ以外の日米軍事再編のすべてを放任している。
あいば野演習場では十月初旬から、十回目の日米軍事演習が強行されようとしている。9・19行動はこの中止を要求したものである。これは前回の合同演習から十ヶ月も空けないでの実施であり、きわめて頻度の高いものである。
 横須賀では、八月二四日から二八日まで原子力空母ニミッツが入港し、九月三日には演習と中東地域の作戦行動を終えた原子力空母ジョージワシントンが戻ってきた。原子力空母の二隻態勢という事態である。また、八月二九日には元戦略原潜オハイオ(現在は核トマホーク攻撃艦に改造されている)が再び寄航してきた。ジョージワシントン母港化の強行以降、横須賀基地の機能強化は目立っている。
 沖縄・辺野古、高江の新基地建設でも、建設強行の動きと予算措置が止まっていない。ばく大な浪費であるMD予算の執行(来年度予算では、防衛省がPAC3ミサイル配備拡大のために944億円を計上している)も、そのままである。
 こうした実態を見ると、選挙スローガンとして表明された日米同盟見直しや基地問題の解決という公約も、そのまま信じることは全くできない。
 だからこそ今回のあいば野集会が、民主党政権下での初の行動として、その日米軍事一体化・安保強化の継続に反対し、それと対をなす改憲策動の温存をも視野に入れて、取り組まれたことの意義は大きいといえよう。
 この集会に、釜ヶ崎日雇労働組合はこうした情勢評価を踏まえて、堂々と六十名の動員で対応した。実に今年に入って、六度目のバス「勝利号」での反戦・反貧困・反差別の闘いへの決起である。
昨秋よりの失業・アブレ、野宿者の増加は釜ヶ崎を直撃し、その労働者をいっそうの絶対的貧困へ追い立てている。生きるためには仲間たちの闘う団結しかない、釜日労の「動員」はその意思の共有化を示すものだ。反戦反基地闘争に、反貧困の旗を掲げて、釜日労の決起は続く。(釜日労組合員M) 


成田空港
  円卓合意無視の一坪強制買収提訴
  前原・辻元国交省を問う

 前号で報告したように成田国際空港会社は、8月、用地内の金堀台(横堀)、新山(横堀)、東台(木の根)など4ケ所の一坪共有地に対し千葉地裁に仮処分申請を行なった。地裁は、「仮処分」を決定し、柳川秀夫さん(三里塚芝山連合空港反対同盟世話人)をはじめ共有者に対して「仮処分決定書」を送ってきた。
さらに9月、本訴を提訴することを公表し、一坪共有地の強奪を開始した。会社は、「空港敷地の虫食い状態を解消するために提訴する。これ以上、話し合いでの解決は困難で、やむを得ない措置」などと、本訴を強行することを明らかにした。更にすべての共有地に対しても同様の裁判を起こすとの報道もされている。
この一坪強奪にむけた動向は、10月22日の平行滑走路北伸供用強行とあわせ、東峰住民の追い出し策動の強化と、三里塚闘争への全面的な攻撃に他ならない。供用強行に抗議し、10・18東峰現地行動に参加し、一坪共有地強奪阻止裁判の取り組みを支援していこう。
 すでに加瀬勉さん<三里塚芝山連合空港反対同盟大地共有委員会(U)代表>は、「我々一坪共有者及び反対同盟に対する新たなる宣戦布告である」と判断し、全国の仲間たちに「我々はいかなる卑劣な手段にも屈することなく、自らの土地の権利を守るために全面的に闘う」というアピールを発した。
 柳川秀夫さんは、九月二十日・東京で成田プロジェクト主催の「映画&トーク」で、一九九一年からの政府とのシンポジウム、円卓会議によって「強制的手段はとらない」ことを約束させ、運輸大臣が確認し、事業認定を取り下げたことを再確認し、今回の裁判は、この約束を一方的に破棄したに等しいものと批判し、「形を変えた強制代執行だ。あいかわらず反省していない」と述べた。
 更に「土地取り上げのために一方的な手段に出てきた。どうして約束を破るような事態になったのか問いただしていきたい」と鳩山政権に突きつけることを明らかにした。会社だけの暴走なのか、政府はどういう立場なのか。前原国交相、辻元、馬渕副大臣に対して、問いただすということである。
前原国交相は、乱立97空港に対し空港整備特別会計を抜本的に来年度から見直すと表明した。概算要求に改革案を盛り込むと表明している。しかし、空港問題は、根本的問題を抱えた成田の今回のような強硬手段に対しどのような態度を取るかが問われている。官僚主導の強行策に対し、「凍結」を宣言しなければならない。
更に二酸化炭素排出量25%削減を実現するには空港問題、航空行政の根本的な見直し抜きには実現しないことは明白である。加瀬、柳川さんの檄に応え、成田国際空港会社の暴挙を許さず、鳩山政府の責任を追及していこう。10・18東峰現地集会に参加しよう。


9・13関西新空港反対!泉州現地集会
  年間90億補助のツケは誰に

 去る九月十三日、泉南市岡田浦浜において、「関西新空港反対!泉州現地集会」が昼過ぎ、開催された。
 集会には、主催者団体である「泉州沖に空港をつくらせない住民連絡会」に結集する仲間、「しないさせない戦争協力関西ネット」に結集する労組員、またバス『勝利号』にて駆けつけた釜日労の仲間、「関西三里塚闘争に連帯する会」の仲間など、約八十名の結集で、終始団結の集会を勝ちとった。
 集会は、去る八月三十日の「自民党崩壊選挙」を反映して、長年にわたる「談合・利権」に翻弄され破綻した「関空」の経営実態を「住民連絡会」代表の若野正太郎氏が厳しく非難した。開港15年を経てなお年間九十億円の補てんを受け、一兆一千億円の負債を抱えて、当然ながらそのツケは、泉州地域住民をはじめ、日常困苦にあえぐ民衆に責任転嫁をはかってきたこと、政権交代後も闘いをゆるめることなく全国の反空港闘争と連帯して前進していくことが、主催者を代表しての発言として強調された。
 共闘団体アッピールでは、釜日労の山田委員長が、釜現地から就労要求を軸に現社会の在り方の根本を糺(ただ)す運動の構築を!と発言し、「しないさせない戦争協力関西ネット」を代表して星川氏は、関西一円での反戦運動の強化と、きたる「9・19あいばの集会」、「10・12戦争あかん!基地いらん!09関西の集い」への総結集を、と訴えた。
また、現地泉南市議の小山氏は、ズサンな空港行政のシワ寄せによる住民生活の危機の実状を訴える中で、「我々は今、あえて来るべき未来から現在を見、変革の取り組みを進めていい時代だ」という表現を使い、住民自治による時代の転換を強調した。このことは今日、新自由主義の暴走・破綻で民衆の不満を戦争・ファシズムへの道に取りこまれていくのか、諸闘争の中から構想を明確にして協働・自治のシステムを実現可能にしていくのか―このことが問われてくる時代に突入してきたと言っていいと思う。
一九七二年以来、現地運動を担ってきた「住民連絡会」は、今集会の基調報告の中で、「さらに交流を・連帯を強化して、空港をつぶすまで闘っていく」ことを表明している。また、「関西三里塚闘争に連帯する会」からは、「卑劣な土地取り上げ策動=一坪共有地買収を許さず、10・18三里塚東峰現地行動に参加しよう!」との連帯アッピールも届いた。石垣・静岡・羽田など全国の反空港の闘いと連帯して、「関空」を廃港に追いこもう!
集会後は、まだ残暑厳しい泉南市郊外を、「関西新空港反対」、「空港アクセス道路延伸反対」、「泉州のたまねぎ畑を守ろう」などのスローガンを声高らかに、南海樽井駅まで情宣・デモを貫徹した。  (関西I通信員)