東京日比谷5・3憲法集会に4200名
  始動NO!憲法審査会

 五月三日の日本国憲法施行六十二周年の日、憲法改悪に反対し、その平和的民主的条項を活かすことを求める行動が今年も全国各地で展開された。
憲法改悪の策動は、安倍政権時における〇六年十二月の改悪教育基本法の成立、〇七年五月の改憲国民投票法の成立によって一時勢いづけられたものの、〇七年七月参院選挙での自民党大敗と安倍の政権放棄とによって一気に失速し、これ以降、9条擁護の世論は以前よりもさらに優勢となった。改憲国民投票法による衆参両院の憲法審査会は法的に設置はされたが、その中味は何も決められず、始動できない状態が続いてきた。このように明文改憲をめざす動きは停滞したものの、しかし今日、自衛隊ソマリア沖派兵、ミサイル迎撃体制の発動など、麻生政権によって解釈改憲の暴挙がいっそう強められる現況となっている。
四月二十三日には、衆院議院運営委員会で自民・公明与党が、今国会での憲法審査会の早急な開始を求める動議を提出した。動議が可決されれば、自公は衆院本会議に憲法審査会の「規定案」(定数や議決要件など)を提出しようとしている。民主党は現時点での憲法改定論議の再開には消極的であり、自公の憲法審査会始動策に反発している。しかし、この最大野党は改憲手続き法と憲法審査会自体はみずからが掲げてきた党であり、来る総選挙の後には、改憲着手の「大政翼賛」化という危険性がある。麻生政権の反動的延命策とともに急浮上してきた改憲策動を、その端緒から木っ端みじんに粉砕しよう。

五月三日、東京都内では「生かそう憲法 輝け9条 2009年5・3憲法集会」が日比谷公会堂の内外で開かれ、約4200名が参加した。主催は、許すな!憲法改悪・市民連絡会など憲法関係の八団体を事務局とする集会実行委員会。
 この実行委員会による5・3集会は今年で九回目となるが、今年の取り組みの特長は一つは、昨秋以来の「非正規切り」の情勢を受けて25条「生存権の保障」を活かしていくことが強調されたこと、また一つは、「始動NO!憲法審査会」をかかげて、麻生自民党による憲法審査会を始動させんとする現下の動きに強く抗議し、これを許さない大きな行動となったことである。
 集会は最初に、憲法改悪阻止各界連絡会議の柴田真佐子さんが主催者あいさつ、つづいて落合恵子さん(作家)、益川敏英さん(京都産業大学教授、ノーベル物理学賞受賞)がスピーチを行なった。
 落合さんは、このかんの「自己責任」論への批判を切り口に、憲法の9条や25条の価値を若い人たちへ伝えていくことが私たちの世代の責任であると語った。
 益川さんは、次のように語った。「私の精神形成は60年安保にあります。今、憲法改悪で巻き直したい人々は、戦争の危機をあおるとか、何か策略を考えているのでしょう。かれらの方が火傷を負うかもしれませんが、この危険を広く伝え、備えておくべきです。」「人間の歴史は大きな目で観れば進歩しているというのが、私の観点です。たとえば五〇年代のアメリカは非常に野蛮な国で、黒人差別の暴力や労働運動へのテロが横行していました。その国で、なにはともあれ黒人の大統領が誕生しました。進歩の過程には、しかし逆流も起きます。憲法9条への逆流を、日本人は結局乗り越えるだろうと私は信じます、いや乗り越えねばならないのです。」(益川さんはベトナム反戦や大学非常勤解雇反対など社会運動でも早くから知られる人であるが、昨年のノーベル賞受賞でその言動には影響力が大きくなったといえる。彼は、憲法状況がより厳しくなれば研究第二、運動第一でやると公言している人であり、一層の活躍に期待したい。)
お二人のスピーチに、公園から屋外ビジョンを観ている一千余の参加者もふくめ大きな拍手が寄せられた。
アイヌ民族の音楽・踊りがレラの会によって演じられた後、社民党党首の福島みずほさん、日本共産党委員長の志位和夫さんがスピーチ。福島さんは、海賊対処法案やグアム移転協定批准案の参院での闘いなどについて報告。志位さんは、核兵器についてのオバマ大統領演説(四月五日プラハ)を「心から歓迎する」として、憲法9条の成り立ちと核廃絶の課題が密接不離であることを主に語った。
最後に「集会アピール」が、平和を実現するキリスト者ネットの毛利亮子さんから提案されて採択された。アピールは、「自民党憲法審査会などが『憲法審査会始動』への動きを繰り返すなか、『国民投票法』施行の2010年を前に政府は、改憲手続き法のキャンペーン・パンフレットを発行し、今年度予算に約47億円を投入して『国民投票』のシステム作りを準備」していること批判し、9条擁護のいっそうの拡大を訴えるものであった。
閉会後、参加者は連休で賑わう銀座をパレードした。(東京W通信員)
 

九条の会おおさか5・3集会に1200名
  不況に戦争の危険が

 大阪市では五月三日、「九条の会・おおさか」主催の「世界同時不況と平和を考える」と題した憲法記念日のつどいが、エルおおさか大ホールで開かれ約1200名が参加した。昨年の舞洲アリーナでの「9条世界会議・関西」への八千名の参加に続き、憲法九条を守る幅広い、大衆的な集会の成功となった。
 集会は、呼びかけ人の生活協同組合大阪府連合会会長・津村明子さんが開会あいさつを行ない、桃山学院長の宇野徹さんが宗教者としての立場から九条堅持のゲストスピーチを行なった。つづいて、大阪が橋下府政になってから補助金が4分の1にカットされたセンチュリー交響楽団の有志により弦楽四重奏の演奏が行なわれたあと、講演と対談に移った。
 講演で同志社大学大学院の浜矩子教授は、「現在の経済対策は愛国金融ともいうべき傾向があり、日本の企業に、日本の商品に支援し、そして自国民優先となって外国人を排除し、差別する傾向が強まり、やがて戦争への道につながる恐れが強くなる。国・政府が自国の金融に援助する経済的国家主義が強まる」と述べて危機感を訴えた。
 関西大学法学部の森岡孝二教授は、「最近の経済は株主資本主義というべきもので、配当と内部留保の増大のために、リストラするほど株価が上がる構造になっており、また増大した非正規労働者を金融破綻の中で大量解雇する一方、正規雇用層の過労死と過労自殺の多発と中所得層の疲弊をも生み、労働者の貧困化をもたらしている」と特徴を述べた。
 お二人の対談では、このような経済状況からの戦争の道への危険性が出され、平和憲法を守ることの重要性が述べられた。集会は、閉会あいさつを日本カトリック正義と平和協議会会長・松浦悟郎さんが行なって、九条を守ることを軸として大衆的に成功裏に終わった。
 なお大阪では同日、「9条改憲阻止!5・3共同行動」と題する集会とデモが実行委員会形式で行なわれ、約230名が参加した。
 また、「とめよう改憲!大阪意見広告運動」が昨年に続いて取り組まれ、5・3当日の毎日新聞に「戦争は最大の浪費 憲法九条は未来を照らす」との意見広告が掲載された。この意見広告の参加者は1337名に及んだ。(大阪A通信員)


裁判員制度阻止4・21日比谷全国集会
  制度開始を前に大動揺

 この五月に裁判員制度が開始されるちょうど一ヶ月前となる四月二十一日、雨の降りしきる東京・日比谷野外音楽堂で、「裁判員制度はいらない大運動」の主催による全国集会、「裁判員制度をみんなで阻止しよう!4・21日比谷全国集会と銀座デモ」が1850名の参加で開催された。
 集会は、呼びかけ人の交通ジャーナリスト・今井亮一さんの開会挨拶で始まり、同じ呼びかけ人の家庭問題評論家・池内ひろ美さんからの問題提起が行なわれた。関東学院大学教授の足立昌勝さんからは、「この制度は、国民が司法に参加したというアリバイ的な理由付けのためにあるだけ」と正しい指摘がなされた。また蛭子能収さんからはこの制度に、自身の漫画家の仕事を踏まえての反対の表明がユーモラスになされた。
 つぎに、裁判員候補通知を受け、これを拒否した井上実さんが実名で登壇し、「人を裁きたくないし、死刑や無期の判決は下せない。必ず心に深い傷が残る。嫌なものは嫌と声を上げよう」と力強く表明し、万雷の拍手を受けた。
 この後、東北・仙台から九州までの全国から集まった仲間の紹介と、その決意表明が行なわれた。九州の仲間からは、福岡から鹿児島までの情宣活動を展開した報告。埼玉県からは、四月十一日にさいたま市で三百人を結集し集会をもったこと。千葉県からは、二月二十二日に千葉市で集会を開催し、その後県内十一ヶ所でのキャラバンを実現したこと、また、千葉県弁護士会が裁判員制度実施の延期決議を新潟県弁護士会に続いて勝ち取ったことなどが決意と共に報告された。
 最後に「集会宣言」を採択し、当面の行動提起(五月十四日の霞ヶ関デモ、五月二十一日の全国一斉行動など)を確認した。
 集会後、降り続ける雨をはねのけ、日比谷公園から東京駅先まで銀座デモを行ない、街頭の市民に裁判員制度反対の訴えを行なった。
 この制度は、集会においても指摘されるとおり、司法改革、司法への国民参加の名のもと国民に司法制度の一翼を無理やり担わせようとするもので、これは憲法の立憲主義(国家権力制限規範としての憲法)に明らかに抵触する国家権力の違法な新自由主義政策と言える。
小泉「改革」時代に策定された新自由主義的施策の多くに対し、疑問符が打たれるようになっているのが今日の情勢の特徴である。この集会に先立つ四月一日、与野党の国会議員によって「裁判員制度を問い直す議員連盟」が立ち上げられた。裁判員制度が開始直前になって深刻な動揺にぶつかったことは明らかである。
五月開始阻止に向け、労働者、市民、全国民の闘いの前進をかちとろう。(東京K通信員)