麻生連立政権の反動的延命策動を粉砕し
  政権交代・「第三極」勢力形成へ

 崩壊寸前にあった麻生連立政権は、大資本救済の〇九年度予算案が通ればブルジョア支配層にとって用済みとみられていたが、ここにきて政権延命の悪あがきを開始している。しかし総選挙を引き伸ばせば伸ばすほど、自民・公明の権力崩壊はそれだけ徹底的なものとなるだろう。
このかん我々労働者人民は、雇用と生活のため実際的闘いに大きな力点を置かざるを得なかった。この現下の闘いの只中から、さらに政治闘争の勝利の展望を切り拓いていこう。自公連立政権打倒・政権交代を実現し、次期政権に労働者人民の闘いを突きつける用意をととのえよう。自民・民主二大ブルジョア勢力に対決する「第三極」政治勢力の形成へ向け、共同戦線を強化しよう。
さて、政権延命の悪あがきとは第一に、麻生政権が、二月末に予算案を衆院通過させ年度内成立に目途を付けた後(三月二七日に参院否決の後、憲法規定により成立)、検察庁と結託して三月三日、民主党・小沢代表に政治資金規正法違反容疑の「国策捜査」を仕掛けたことである。総選挙に備え、最大野党の支持切り崩しに躍起となっている。また第二には、三月二七日の「迎撃命令」発動という異常極まりないやり方で「北朝鮮ミサイル」騒ぎを煽り立て、有事体制・危機管理体制にメディアを動員し、外国の「脅威」へ国民の政権批判の目をそらす謀略を展開していることである。
小沢代表への政治献金問題は、第一には、三月四日に小沢代表自身が「政治的にも法律的にも、不公正な国家権力の行使だ」と検察批判をしているように(その後トーンダウン)、自民党が民主党に仕掛けた政治抗争であるということだ。西松建設マネーは二階経済産業相、森元首相などにも回っている。漆間官房副長官は「自民党側は立件できない」とオフレコ発言し、これを国会で追及されると「記憶にありません」との常套文句で答弁し、発言を否定できなかった。小沢の政策秘書が政治資金規正法の「虚偽記載」で三月二四日起訴されたが、「斡旋利得」では無理だった。
しかし、この問題は第二に、政治資金規正法違反の程度の軽重がどうあれ、小沢一郎ら民主党の政治家どもの多くが、ブルジョアから巨額の政治資金をもらい、その期待を受けて活動する連中であることを分かりやすく国民にバクロした。
「なんだ民主党も自民党と同じじゃないか」、国民意識に対する自民党の作戦は一定の効を奏したが、自分にも降りかかってくる。企業・団体献金を全面禁止せよ。
自民も民主もダメなら、選挙での国民の支持は社民党や共産党に向かうのか。そう単純にはならない。三月二九日投票の千葉県知事選挙で、極右ポピュリスト的な森田健作候補が自民党の支持を受けながら「完全無所属」を強調して立ち回り、共産の候補にはもちろん、民主・社民の候補にも圧勝してしまった。小沢代表を辞任が無かったことが影響したと見られているが、不況が深まる中、極右的「第三極」の危険性すら感じさせる選挙結果であった。
左翼的・民主的な勢力による「第三極」政治勢力の形成を、着実に進めなければならない。その基礎は、この恐慌下で生きんとする労働者人民の闘いである。ともに闘おう。


北朝鮮ロケット
  「破壊措置命令」は戦争挑発
   米国の誘導で前線任務

 朝鮮民主主義人民共和国が人工衛星ロケット(米日は長距離弾道ミサイルだと主張)の打ち上げ準備をはじめるや(四月五日に発射)、アメリカ軍部が、そして日本の首相・防衛相も呼応して、これを迎撃すると騒ぎはじめた。先制攻撃、アメリカ本土防衛のための日本の武力行使、戦争の挑発である。
アメリカ軍部は、オバマ大統領の命令があればとの但し書きを付けたが、日本の場合は、麻生が前のめりになって自衛隊法82条2「破壊措置命令」を発令。麻生は、日本に落下するようならという限定を次第に強調するようになるが、朝鮮を敵視してミサイル防衛システム(MD)を稼働させ・全自衛隊が臨戦態勢をとる戦争挑発的性格を変更はしなかった。
 こうした中でゲーツ国防長官が、「ハワイに向かって来るようなら(迎撃を)検討するが、現時点でそのような計画があるとは思わない」と述べ、同時に日本による迎撃は支持すると表明する。しかも米軍は、この間連続的にMDによるミサイル迎撃実験をやってその成功を誇示し、朝鮮人民軍を牽制しながら自衛隊を鼓舞・扇動するということまでした。米軍がスパイ衛星、地上レーダー、イージス艦、潜水艦、朝鮮上空の偵察飛行などを連結して情報を掌握し、自衛隊と韓国軍の作戦行動を統制しているステージの上で、自衛隊が単独で最前線に押し出され、迎撃の役回りを引き受ける形が出来上がってしまったのである。ちなみに、自衛隊が「誤探知」のミスを犯すなど臨戦態勢の緊張のただ中にあった時、麻生が頼りにするアメリカは、原子力空母を日本周辺海域の外に出し、ボスワース特別代表に対朝鮮の交渉意志を繰り返し表明させていたのであった。
麻生は、アメリカの誘導の下で危険な火遊びに国民を引きずり込んでいたのである。幸い大事には至らなかったが、この事態の政治的意味は考えておく必要がある。
 第一は、アメリカの世界戦略の転換との関連である。
 イラク・アフガン侵略戦争の泥沼に足を取られ、世界金融恐慌の深みに沈むアメリカは、多極化世界に適応することを余儀なくされている。もとよりアメリカの軍事的経済的権益と政治的ヘゲモニーとを確保しながらということである。
東アジアにおいては、台頭する中国の役割を重視せざるを得ないし、朝鮮に対しても体制転覆を目指すという訳にはいかなくなっている。こうした多極化動向を帝国的に包摂するには、日本を軍事的出撃拠点として確保・強化し、自衛隊に前線任務を分担させていく必要がある。だが日本は大きな政治変動期に入っており、「対等な日米関係」「横須賀の第七艦隊だけでよい」と主張する政治勢力が政権を掌握しかねない状況にある。
そこでアメリカは、今回の朝鮮に対する戦争挑発騒動を仕掛けた。今回の騒動によってアメリカは、日本に対してアメリカによる軍事的庇護の必要を再認識させ、前線任務の自衛隊による肩代わりに本格的に着手し、そのうえ高価なだけで信頼性の低いミサイル防衛システムを実戦の渦中でテストするという副産物まで手にしようとした訳である。
 第二は、軍事のもてあそび問題である。
 麻生は、戦争挑発をやった。ただ単に、アメリカに従い、排外主義を煽ることで、政権の浮揚を図りたいがためにである。
 政権浮揚のために軍事をもてあそぶ態度は、小泉政権以来のアメリカ一辺倒政治と固く連関した構造的なものである。ただ小泉のイラク派兵は、まだアメリカの世界統合力が強く、その政治に守られていたし、軍事的にも米軍の陰に隠れていればよかった。これからの時代は、アメリカが軍事的にも政治的にも後退する。その中でのアメリカ一辺倒政治と軍事のもてあそびは、大義なき無謀な戦争に民衆を投げ込まずにいない。今回の戦争挑発騒動は、その危険を垣間見せた。それとともに支配階級の側の政治の質が、ひどく劣化していることを露にしたのだった。
 第三は、労働者民衆の政治の形成との関連である。
 このかん日本の政治は、アメリカ一辺倒政治・市場原理主義を推進する社会の崩壊を顧みない潮流から、アメリカと一定距離を置いて東アジアと共同し民衆の政治的再包摂を目指す潮流へ、支配階級内部におけるヘゲモニーが移行しはじめ、政権交代を介してこの移行が完遂される方向に動いている。労働者民衆も、この移行の実現を支持する中で、自身の社会再建運動と闘争力再構築の道を開き、「第三極」政治勢力の形成を模索しだしている。
 今回の騒動は、格差・貧困問題を契機としたこの間の政治的地殻変動に対する反動であり、戦争挑発・朝鮮バッシングをその手段として使ったことろに特徴があった。われわれは、始まった政治的地殻変動の促進して政治転換を完遂し、日朝国交正常化・東アジア政治関係の再編の中で反動的策謀の根を断ち切っていかねばならない。(M)

 
海賊対処法案
  ソマリア沖自衛艦はただちに撤収せよ
   派兵恒久法に道拓く

 麻生連立政権は三月十三日、自衛隊法82条「海上警備行動」を法的根拠に、ソマリア周辺海域への自衛隊出動命令を下し、また同日、「海賊対処法案」を閣議決定・国会提出した。翌十四日、海上自衛隊呉基地から護衛艦二隻が出動し、すでに月末からアデン湾などで活動している。さらにP3C哨戒機も派遣されようとしている。
 今回のソマリア派兵はこれまでの自衛隊海外派兵と異なり、特徴として第一に、「国際協力」を主要に掲げず、日本の海外の財貨を守るためとして強行しており、海外権益のために軍事力を行使するという帝国主義的派兵一般に直結するものである。また第二に、武器使用規準に飛躍があり、任務遂行のための武力行使を可能とするものである。第三に、派兵恒久法の制定に道を開くものとなっている。
 新法制定の前段としての82条「海上警備行動」による派兵も、極めて不法・不当である。日本領海・専管水域に限られるはずのこの条項で、海外派兵を強行した。しかも国会承認なしの、政府判断のみによる派兵である。新法を制定するまでもなく、政府はただちに「海上警備行動」発令を撤回し、現地から海自艦を撤収させなければならない。そして現地の沿岸警備や民生安定を支援する等の、憲法9条に沿った別途の方策を策定しなければならない。
 政府は、このソマリア派兵の法的根拠を「海上警備行動」から「海賊対処法」に移行させようとしている。提出された海賊対処法案には次のような特徴がある。
第一に今回の派兵法案は、「ソマリア派遣特措法案」ではなく海賊対処法案となっている。つまり、これまでのイラク派兵やインド洋派兵が「特措法」として個別対応かつ時限立法であったことと異なり、海賊対処としては一般対応であり、かつ恒久法として提案されているのである。自衛隊派兵の一般法・恒久法が意識されている。
この法案は、海賊行為は海上保安庁によって対処するとしつつ、「特別の必要がある場合」には自衛隊で対処できるとする構成になっている。つまり政府も海賊対処が警察・海保の仕事であることを否定できないが、日本のシーレーン防衛に何がなんでも軍事力を使いたいがために、自衛隊派兵の条項を入れ込んだのである。
法案は第二に、これまでの自衛隊派兵で使われてきた武器使用規準(正当防衛・緊急避難、「自己防衛」および「自己の管理下に入った者の防衛」)を超えて、警察官職務執行法7条を適用するとともに、海賊船とみなした船を停止させるための危害射撃を認めている。
警察官職務執行法7条は、「他人に対する防護」や「公務執行に対する抵抗の抑止」のために武器を使えるというもので、拡大解釈すればこの適用だけでも武器使用規準は飛躍する(「海上警備行動」においても警職法7条を適用している)。法案はさらに、海賊が暴行・脅迫に至る以前でも、「航行中の他の船舶に著しく接近し、若しくはつきまとい、又はその進行を妨げる行為」も海賊行為であるとし、制止の措置に従わない場合は危害射撃ができるとしている。
 任務遂行のための武力行使、戦後初の交戦を可能とする法案をかならず阻止しよう。(F)