朝鮮独立運動90周年
  和解・平和・友好の実現を求める3・1集会

   光州民主化抗争当事者が証言

 三月一日、東京で3・1朝鮮独立運動90周年を記念しつつ「和解・平和・友好の実現を求める3・1集会〜100年にも及ぶ不正常な関係に終止符を!」が開催された。会場の文京区民センターの前には、排外主義を叫ぶ右翼団体が妨害行動を演じていたが、これを一笑に付しつつ約200名が参加して盛況であった。主催は、日韓民衆連帯全国ネットワークなどによる3・1集会実行委員会。
 最初に、主催者挨拶として渡辺健樹さん(日韓ネット共同代表)が、オバマ米新政権の対朝鮮政策が注視されている中、日本こそ制裁ではなく対話によって、日朝正常化プロセスに入るべきだとアピールした。
 つづいて、高嶋伸欣さん(琉球大学名誉教授)の「歪められた歴史認識の現実と克服に向けて」と題する講演が行なわれた。高嶋さんは、シンガポールなどとの教科書問題交流で知られる人であるが、田母神論文を批判して、その論理は、日本だけが侵略国家ではなかった、だから日本は侵略国家ではない、とする幼児認識レベルであると批評した。
 休憩の後、今年の3・1集会の目玉と言える韓国ゲスト、元「全南道庁」保存のための共同対策委員会、その訪日団による特別アピールが行なわれた。登壇して挨拶した四名の人々はすべて、一九八〇年五月の光州民主化抗争の当事者であり、市民軍の生存者である。
 代表してアピールした安盛玉さんは、次のように語った。「当時わたしは高校二年生で、民主主義も軍事独裁も分かりませんでした。しかし、五月十八日に大学生などによる大きなデモが起き、それへの軍の残虐な弾圧を目撃して、わたしも投石を握りしめるようになりました。二十一日には全南道庁舎前で軍による無差別発砲によって四十人が射殺され、もはや武器を取って戦うしかない、武器庫を襲っての市民の武装がなされました。市民に道庁が占拠され、コンミューンが出現しました。光州市民75万の内20万が市民軍となり、施設などを守る約500人の機動打撃隊が編成され、私たちを含め内157名が道庁防衛に就きました。二十七日、軍が戦車、機関銃、ヘリコプターで突入を開始し、多くの仲間が殺されました。私たちは捕らえられ拷問されましたが、内乱嫌疑とは意外でした。」「歴史を後世に伝えるために『現場』は保存されるべきです。日本の皆さんが原爆ドームを保存するように。再開発による元道庁取り壊しに反対し、今251日目の座り込み闘争を続けています。金大中さんは、『行動しない良心は偽善である』と言っています」。……歴史の生存者の、実に貴重な発言であった。
 つづいて集会は、金東鶴さん(在日朝鮮人人権協会事務局長)が在日コリアンの人権状況について述べ、安倍内閣時の漆間前警察庁長官が麻生内閣になって官房副長官に入って以降、新宿商工会への不当捜索・逮捕など再び朝鮮総連弾圧が強まっていること、いぜんとしてマンギョンボン号が止められ、制裁といっても一般民衆のみが被害を受けていることを報告した。
また西野留美子さん(VAWW−NETジャパン共同代表)は、日本軍「慰安婦」問題の解決に向けて述べ、このかん日本軍「慰安婦」についての教科書記述が一社のみに減らされているが、2012年度版中学歴史教科書で「慰安婦」記述の復活を求める運動を開始し、教科書会社8社に二月十二日に要請したことなどを報告した。
関連運動からは、沖縄一坪反戦地主会関東ブロックが「グアム移転協定」国会承認反対を、また、許すな!憲法改悪・市民連絡会がソマリア沖派兵反対と3・20ワールドピースナウ参加をアピールした。
最後に「和解・平和・友好の実現を求める3・1アピール」を採択して終了した。なお集会には、韓国進歩連帯からの連帯メッセージが寄せられた。(東京W通信員)
 

転換始まった米新政権の対朝鮮政策
  米朝・日朝正常化へ

 オバマ米新政権の登場に期待と不安が一番交錯している一つが、この北東アジア、なかんずく朝鮮半島南北をめぐる諸国家関係ではなかろうか。
 前ブッシュ政権は、ネオコン派主導の軍事・外交路線により「悪の枢軸」と共和国(北朝鮮)を名指ししたものの、アフガン、イラクでの戦況の泥沼化に追い討ちをかけるアメリカ発の金融危機にみまわれ、米朝間の直接対話へと舵を切らざるをえないところに追い込まれた。
 これとは裏腹に、対北制裁を続ける日本の自公政権と歩調を合わせ、共和国との関係悪化の道を突き進む韓国イ・ミョンパク政権の姿がある。しかしブッシュ路線を破綻させた歴史の流れからすると、李政権も、麻生政権も、早期に歴史のゴミ箱に捨て去られることは避けられない。
 オバマ新政権の対朝鮮政策は、まだ明確には示されてはいない。しかしながら、ヒラリー・クリントン国務長官の二月アジア歴訪に見られるごとく活発な動きをみせている。
 そのクリントン長官は就任前の一月十三日に、長官承認のための上院聴聞会で、米朝の正常化は「北朝鮮が核兵器を完全かつ検証可能な方式で放棄することなくしては、不可能だ」とし、ブッシュ政権末期の立場を踏襲している。これに対し共和国外務省スポークスマンは、「米国の対朝鮮敵視策と核の脅威の根源的な清算なしには、百年経っても核兵器を先に手放すことはない」、「非核化を通じた関係正常化ではなく、関係正常化を通じた非核化」との談話を明らかにして反論した。両国間の外交でのしのぎを削る戦いは、しばらく続くことが予想される。
 しかしながら、オバマ新政権の発足後、ボズワース元駐韓大使など朝鮮問題の専門家が相次いで平壌を訪問している。かれらは共和国から正式な招待を受けての訪問ではないため、オバマ大統領などのメッセージを持って行ってはいないが、前ブッシュ政権の朝鮮政策を否定する立場にいる人びとである。朝米関係は、九十年代のクリントン政権末期の関係まで、とりあえず引き戻されることだけは確実な状況と言える。
 六者協議や朝米間の直接対話などを通じ、米朝・日朝の国交正常化の道が切り開かれるならば、北東アジアの平和、南北朝鮮の統一実現にとって画期的な転換となるだろう。そのためにも、政府間外交の傍観者となることなく、日韓・日朝民衆連帯の力によって、日本政府、韓国政府の対北朝鮮敵視という基本政策を変更させることが何としても必要である。(Ku)


オバマ大統領の施政方針演説を評す

  「新産業」は米国を救えるか

 二月二四日、オバマ米大統領が施政方針演説を行った。この施政方針の特徴は、7870億ドル(約76兆円)に上る史上最大規模の景気対策法を成立させ、2兆ドル(約194兆円)をこす金融安定計画、2750億ドル(約26兆円)の住宅ローン対策を打ち出すなどの緊急措置をステップに、「(米国の)繁栄を継続させるための新たな基礎を築く」長期経済戦略を提起したところにある。
 曰く「米国経済に力強さを完全に取り戻す唯一の方法は、新規雇用や新産業、世界に対する競争力を取り戻すことに通じる長期的な投資だ」と。そして投資すべき3分野に言及する。「まずエネルギーから始まる」とこの分野をとりわけ強調し、「われわれは、クリーンで再生可能なエネルギーを利用する国が21世紀をリードすることを知っている。…米国が再びリードする時が来たのだ」と主張。次いで「医療制度における高負担に対処しなければならない」と指摘し、「米国における教育の保証を拡大する緊急の必要性」を訴えた。
 「新産業」、これがカギではある。例えば一九二九年大恐慌からの立ち直りは、緊急の雇用対策や戦争経済を介しつつも、最終的に自動車産業に代表される耐久消費財産業の勃興によって達成された。だが問題は、膨大な過剰貨幣資本と過剰人口とを吸収できる「新産業」が果たしてあるのか、ということである。
 かつて数千年つづいた農業の時代につづいて、工業の時代も基本的に終わったのである。耐久消費財産業の発展とは、生産領域の機械化につづく生活領域の機械化であった。軽工業、重化学工業、耐久消費財産業という形で継起的に過剰貨幣資本と過剰人口を大規模に吸収し発展してきた工業化時代は終わったのである。第三世界への波及という側面は続いているにしても。これ以降の機械化は、それがクリーンエネルギーを使うものであろうと、必要労働時間の節約に寄与する性格を強めていかずにいないのである。
 すでに産業の成熟という到達地平は、物的豊かさの実現という社会的欲求を後景化した。この到達地平は、世界的構造として加速する就労と失業の分裂、精神労働と筋肉労働を基軸とする分業の各分節への隷属、都市と農村の対立、生産と消費の乖離、自然環境破壊、等々を克服し、一人ひとりの自由な発展を基礎にした文化的に豊かな社会を目指す、新たな欲求を醸成し始めている。利潤を目的とする一つの支配・隷属関係である資本主義は、新たな欲求の実現である人間(およびその自然環境)を大切にする社会活動領域には適合しない。
 こうした中でオバマは、夢よもう一度とばかりに、工業化の延長としての「新産業」の勃興に展望を求め、しかも資本主義的企業に頼って局面を打開しようとしているのである。このような方針は、財政赤字を膨らますだけの惨めな結果に終わらざるを得ない。
とはいえ、より大規模な金融バブルなり戦争の拡大によって、問題を一時的に隠蔽する道は残されている。オバマは、息継ぎ策をとりながら、金融安定化計画なり、アフガン侵略戦争へのテコ入れという形で、そうした道もしっかり確保しているのである。もっともそれはそれで、より大きな政治的・財政的破綻と社会の崩壊をもたらすものでしかないのだが。
このようにオバマの施政方針は、長期的にみると労働者民衆を苦しめるものではある。しかし局面的・実践的見地からすると、この政権の息継ぎ的、民衆懐柔的、国際融和的側面は、東アジアの連帯を促進し、日本の政権交代とも連動して、日本の労働者民衆の運動的再構築と政治的進出にとってプラスの条件たりうるものである。この点も軽視してはならないことである。(M)