09春闘

正規・非正規労働者の分断許さず失業反対を闘おう
経済危機に立ち向う春闘を

 年度末を迎え、いっそうの「派遣切り」が強行されんとしている情勢下、〇九年春闘が山場となっている。
今、日本のすべての労働組合が、今春闘を経済危機に立ち向かう春闘として闘いぬくこと、正規・非正規の分断を許さず賃金改善・雇用確保を求めて立ち上がることが第一に問われている。そして第二には、これらの闘いを通じて労働者人民のための社会改革、制度政策の要求を明確にし、それを実現するのに有利な政治転換、自民公明連立政権打倒と当面の政権交代をかちとることが問われている。
 昨年、わが党・労働者共産党は、当初賃上げ容認ムードであった〇八春闘情勢が、サブプライムローン問題の露呈で一気に冷え切った状況に対して、「この時代の転換を市場原理にもとづく競争による更なる規制緩和で乗り切るのか、労働者の生活を守り規制緩和策を転換させていくのか、〇八春闘は岐路に立っている」と述べた。また〇八春闘総括では、非正規労働者の闘いに着実な前進が見られたことを強調した。
 その後、昨年九月の米国発国際金融危機の勃発以降、日本では非正規労働者への急激な大量首切り攻撃が開始され、〇九春闘は、金融危機が実体経済にひろがった世界恐慌の只中でたたかわれる春闘となっている。競争による市場原理にもとづく新自由主義路線の破綻は明らかであるが、未だに規制緩和によってこの危機を乗り越えると公言してはばからない資本家もいる。〇九春闘は、新自由主義路線からの決別を政府・資本に突きつけつつ、正規労働者と非正規労働者が共同して、貧困をなくし雇用と生活を守る社会づくりの出発点としなければならない。
 まず取り組まなければならないのが、雇用を守るたたかいである。これには、緊急対策、当面の制度改革、将来を見通した新たな制度づくり、と段階的に課題・政策を立てる必要がある。これらを混同しないように着実に実行していかなければならない。
 緊急の課題としては、これ以上の非正規切り拡大を許さず、首切りに反対し直接雇用などを求めていく労働組合としての闘い、また、すでに解雇させられた仲間の生活・就労支援という新たな闘い、この両面の闘いが必要となっている。
 前者の首切り反対の闘いでは、地域ユニオンなど個人加入制労組が、非正規労働者を組織化し闘うことが重要であることは言うまでもない。また同時に各企業内の労働組合にとっても、派遣労働者や期間工の解雇は労使の交渉課題であり、一方的実施を許さず、整理解雇四要件(相当の必要性、回避努力、人選の合理性、労組などへの説明)にもとづきチェックを行なうことが必要だ。それさえ行なえない労働組合では、次には組合員である正規労働者の雇用さえ守れなくなるだろう。
製造業派遣で三年目を迎える「09年問題」は、これまでは「クーリング期間」を入れた派遣の継続は常用代替を禁ずる派遣法の趣旨に反する(08・9・26厚労省通達)という問題であったが、昨秋以降、いっきに継続自体をしない、09年で派遣切りがさらに大量に出るという問題となっている。これまでの違法性を解雇によって帳消しにすることは、なおさら許されるものではない。労働組合は、反復雇用を繰り返している派遣労働者、とくに三年を超えている者に対しては直接雇用とするよう会社に要求しなければならない。
後者の闘い、やむなく解雇されてしまった非正規労働者などへの生活支援、「屋根」と「仕事」のための闘いは、春闘方針という次元をこえた課題であるが、まさにこの時期に問われる課題となっている。これは労働組合だけで対応することは難しく、市民団体や弁護士、福祉・医療関係者などが参加する新たな地域共闘を必要とする闘いである。各地で「派遣村」的対応が必要になっている。炊き出しとテント、行政に要求しシェルター、生活保護を緊急に実施させること、中期的にはNPOなどを立ち上げての公的就労の獲得、雇用創出も問われてくる。一時的救済で解散ではなく、失業者・野宿者の拠り所となる恒常的な地域連帯組織が必要だ。
このような両面の闘いが問われているなか、首切りは自動車・電機の輸出大企業による非正規切りから、その下請けはもちろん製造業全体・各種業界へひろがりつつある。緊急対策の一つとしては、政府が助成率などを上げざるを得なくなった雇用調整助成金、中小企業緊急雇用安定助成金の積極活用が求められる。しかし、これら助成金は、休業、教育訓練、出向などを行なう企業を対象としたものであるから、その利用は経営者の一方的判断を許さず、労働者側のチェックと同意、労使協定を前提とすることが必要だ。助成金の活用は、いわば企業内に失業を抱え込むことになるので、労働組合の雇用対策が問われることになる。雇用保険の被保険者が対象になるので、雇用保険に加入していない非正規労働者の扱いが問題となる。非正規労働者や関連会社の労働者の雇用を含めて、対策が立てられるかどうかが問われている。
 連合と日本経団連は一月十五日、労使が協力して雇用の安定・創出に取り組むとともに、政府に早急の雇用対策を求めるという内容の「労使共同宣言」を行なった。ここで連合中央は、現在進行の非正規切り、とくに違法な中途解約などに対し、日本経団連の指導責任・加盟企業の経営責任を追及していない。非正規の首を切った後の、政府による後始末を労使で要請しているにすぎない。非正規から正規へ首切りが拡大しつつある中、正社員の雇用維持しか念頭にないようでは正社員の雇用すら守れない。春闘開始の前に白旗を掲げる共同宣言である。
 ITバブルがはじけた〇二年にも同じように政労使の共同宣言として「ワークシェアリング宣言」を行なったが、日本では成功していない。企業内でワークシェアリングを行なえば、雇用を守るために賃金を下げざるをえなくなる。これではワークシェアと言っても従来の企業ごとの操業短縮、雇用調整であるにすぎない。正規労働者の長時間過密労働・サービス残業をなくし、そのぶんを非正規労働者などの雇用へ回すためには、雇用・賃金制度での重層的な分断をなくしていく必要がある。したがって日本では、労働時間規制、均等待遇、最低賃金の引き上げなどを推進する法制定ぬきに、本来のワークシェアリングをすすめることは不可能であろう。
 むしろ緊急対策としては、実体のないワークシェア論議よりも、実効ある雇用対策基金が必要だ。連合などが言う定額給付金をカンパして雇用対策基金を創設する(それで、首を切られた非正規労働者のことも考えていると言うつもりか!)というのではなく、派遣労働者を解雇した派遣先企業から派遣労働者の雇用保険掛金を3年分徴収して基金に当てる、また企業誘致で減免措置を行なった税金を全額納付してもらって住宅費の財源に当てるなど、つまり派遣切りを行なった企業の責任を追及する措置が必要である。
 今年は連合が八年ぶりにベースアップ要求をかかげ、内需拡大、物価上昇分を考慮した賃上げを要求している。このかん大企業は内部留保と配当金を急拡大させ、労働者の実質賃金は低下の一途となってきた。「賃金も雇用も」は当り前だ。しかし労働組合が、同じ職場の非正規切りを放置したうえで正社員の賃上げのみを求めるならば、世間の理解は得られない。非正規の雇用を守り、かれらを含めた企業内最賃協定をかちとろう。賃金の底上げのためには、最低賃金の引き上げ、公契約条例、リビングウェイジの確立が重要であり、正社員と非正規労働者の地域共闘形成が問われている。
そして、ズタズタにされたセーフティネットの再構築、失業保険や生活保護の再構築が必要だ。製造業禁止・登録型原則禁止など当面の労働者派遣法の抜本改正、非正規労働者の無保険を大量に生んでしまった雇用保険制度の改革、これらが急いで行なう課題
である。
さらには政権交代を展望して、社会保障制度の全面的な見直しを政策課題として準備しておく必要がある。要求と政策を実現するために、ただちに総選挙を実施させ麻生連立政権を打倒すること、この政治課題も春闘に欠かせない。
わが党は、〇五年の第三回党大会において「労働運動政策決議」を採択し、制度政策闘争の課題を明らかにしている。正規労働者を前提とした現行の制度ではなく、正規・非正規をカバーする一元的な制度づくりが求められている。このような政策を実現していく能力と運動を、〇九春闘でつくりあげていかなければならない。