辺野古新基地建設の固定化狙う

     「沖縄海兵隊グアム移転協定」の国会承認阻止を

  二月十六日にオバマ新政権の新しい国務長官ヒラリー・クリントンが来日し、翌十七日、「沖縄海兵隊のグアム移転に関する協定」の調印が日米両政府によって強行された。麻生連立政権は二四日、協定の批准承認案を閣議決定した。協定の国会承認を阻止しよう。ただちに国会解散をかちとって批准案を廃案とし、新政権に沖縄基地再編日米合意の見直しを強制しよう。
このグアム移転協定は、〇五年および〇六年の米軍基地再編合意での、普天間基地「返還」・県内移設と沖縄海兵隊八千人グアム移転とのパッケージ、およびグアム移転費用の日本負担を再確認するものであり、また、政府間合意を行政協定(日本では外交条約と同じ扱いになる)に格上げするものである。
この協定は、何よりもパッケージ論により辺野古新基地建設を強行せんとするための条約である。沖縄県議会が昨年七月十八日に県内移設・辺野古新基地建設反対決議とその意見書を採択し、また仲井真沖縄県知事も一応現行案には同意していないにもかかわらず、沖縄の声をまったく聞かずに、東京でヒラリーと中曽根外相が勝手に調印した。沖縄県民総体を圧殺せんとする暴挙である。
また、日米安保条約で想定外の、外国(米国領グアム)の米軍基地建設に日本がカネを出す、しかも61億ドルも出すというもので、この協定では米政府への直接提供分28億ドル(約3000億円)が約束されている。〇九年度予算案では、この直接提供分の一部として346億円が計上されているが、グアムのアプラ港海軍基地やアンダーセン空軍基地の整備にも、海兵隊移転の関連費用だと強弁して使われようとしている。
八千人移転と言われているものも定数から言っているもので、実際の沖縄駐留数からいうと数千人の移転にすぎないと見られており、しかも司令部要員であって第三海兵遠征軍の実働部隊は残るのである。残るから、普天間基地機能を大幅に拡張した新基地を辺野古に作ろうとしているのである。
いまや国民の九割に見切りをつけられ、崩壊寸前の麻生連立政権にこのような条約を結ぶ資格はない。しかし、あえて条約への格上げを図ったのは、自公連立政権が民主党中心政権に代わることを見越して、〇六年ロードマップ合意に日本の新政権を拘束するためである。オバマ新政権側が主導したとも見られるが、日米の両支配層がそのねらいで一致したのだろう。日本の民主党は「普天間基地の県外移設」をこのかんの国政選挙で公約としているが、条約になってしまえば民主党も言い訳ができ、新政権も財政措置を執らざるをえないというわけである。
二月二四日、奈良市の記者会見でグアム移転協定への態度聞かれた民主党・小沢代表は、「第7艦隊で米国の極東でのプレゼンスは十分」、「日本の防衛は日本が責任を」などと言いつつ、結局「個別の話は政権取ってから」と態度をはぐらかした。その後、この小沢発言の前者の部分が与野党双方から色々言われているが、グアム移転協定に野党として反対だと明言しなかったことこそ批判されるべきである。「第7艦隊で十分」なら、沖縄の米軍は全部いらんではないか。協定反対!は当然ではないか。
かなり不意打ち的に進められたグアム移転協定であるが、反対運動もひろがりつつある。沖縄ではクリントン来日の二月十六日、平和市民連絡会が「辺野古新基地建設の固定化をねらう『グアム移転協定』反対」をかかげて県庁前集会を緊急に行ない、国際通りをデモ行進した。そして同日、宮里政玄氏ら十四名の知識人がクリントン宛の緊急声明を発表し、米新政権に沖縄基地政策の根本的再考を求めている。
 二十日には、グアム移転協定に係わる視察として、アイク・スケルトン下院軍事委員長らの米議会視察団が来沖した。この日、平和市民連絡会、平和運動センター、ヘリパッドいらない高江住民の会、名護ヘリ基地反対協、統一連の五団体によって、「米国は沖縄の声を聞け!」と叫び、グアム移転協定の撤回を要求する県庁前集会が行なわれた。また県庁内では野党議員が、7・18県議会決議をスケルトン委員長に手渡した。同日の県議会で、仲井真知事がグアム移転協定に対して「県民の基地負担軽減につながる」と答弁したことは驚くべきことである。
「本土」では、辺野古への基地建設を許さない実行委員会などによって、昨秋から行なわれてきた「7・18沖縄県議会決議を尊重し辺野古新基地建設の断念を求める請願署名」の国会提出が二月三日に行なわれ、院内集会や市民集会が開かれた。この日に提出された四万九千筆をふくめ、署名は現在十三万筆が集まっている。
三月十一日には、辺野古実の主催で、「グアム移転協定の成立を許すな!辺野古への基地建設を断念せよ!3・11集会」が都内で行なわれる(星陵会館ホール、午後六時半)。
沖縄と「本土」から、「移転協定」の国会承認を阻止しよう。(A)