ソマリア沖海自艦船派遣を阻止しよう
  権益防衛へ派兵拡大

 一月二八日に麻生連立政権の浜田防衛相が、海上自衛隊にソマリア沖艦船派遣のための準備指示を行なった。麻生政権は当面、自衛隊法82条「海上警備行動」を根拠とした形で三月中に艦船を出動させ、また、この海上警備行動による措置をつなぎとして、三月初旬にはソマリア沖派兵のための「新法案」を今国会に提出し成立させるとしている。
 今回のソマリア沖艦船派遣の策動は、これまでの自衛隊海外派兵と比べても極めてデタラメ、かつ危険な愚行である。
 第一に、これは日本資本主義の権益を守るためなら、いつでもどこでも自衛隊海外派兵を行なうべきだという、文字通りの帝国主義的軍事政策への突破口となる。
 一九七〇年代からシーレーン防衛論はあった。しかし当時は米ソ二大軍事ブロックの対峙の一部分として語られ、また、そのための実際の海外派兵は政治的に困難であった。今日、自衛隊の海外派兵が本務化され、いわゆる国際協力的活動に対してならば、それに自衛隊を投入することへの国民の抵抗感が薄らいでいる。
 日本の船を「海賊」から守るのに自衛隊を使って当然、他国も軍艦を出している、日本も出せ、こうした政府・与党の単純な主張は憲法9条を真っ向から否定するものである。船舶のみならず、海外の日本企業・資産・官民の施設、これらも海外派兵で守れ、という暴論に直結している。
 第二に、ソマリアの「海賊」対策は、軍事力によって根本的解決はない。憲法9条をもつ日本は、欧米や中国のように軍艦を出すことによってではなく、ソマリアと周辺国に対する独自の平和外交・民生援助によって対処すべきである。(海上保安庁艦船派遣という代案も実力組織対応論であり、何ら本質的な対案ではない)。
 ソマリアは、長年の諸大国の介入を背景に中央政府が解体する中、外国船の漁場荒らしや欧州からの放射性廃棄物投棄が行なわれてきた。これに対し漁民が自主的な沿岸警備で対抗するなか、一部が生活のために「海賊」化したものとみられている。「対テロ」観点の軍事で何も解決しないことは明らかだ。十一月の国連安保理ソマリア決議も、軍事力による対策のみを加盟国に要請しているのではないのであって、麻生政権がそれを派兵の根拠の一つとすることは筋違いだ。
 第三には、政府は艦船護衛による抑止力を強調しているが、武器使用規準を新たに拡大して「海賊」との交戦を想定している。ソマリア沖派兵が、殺し殺される自衛隊の初の事例となり、重大な転換点となるだろう。
政府は、国と国の交戦ではなく海賊相手だから、憲法が禁ずる武力行使ではないなどと言っている。アフガニスタンに今後、陸上自衛隊を派兵した場合についても、アフガン政府の治安協力であって武力行使ではないなどと言っている。「対テロ」なら海外で戦闘状態に突入しても合憲だ、海外で集団的自衛権行使しても合憲だなどとするなら、9条の下でもいくらでも人を殺せることになる。
第四に、当面は「海上警備行動」で派遣するとすることは、国会に対する防衛省・自衛隊の「軍部独走」である。
これまでのPKO派兵、インド洋艦船派遣、イラク派兵は、海外派兵の法的根拠として特別措置法など「新法」を作り、それを国会で成立させて強行してきた。「新法」を作らず、現行法で対応できるとして自衛隊海外派兵を強行した前例としては、一九九一年のペルシャ沖掃海艦派遣がある。このときは、自衛隊法99条「機雷除去」を根拠とした。「海上警備行動」も「機雷除去」も、自衛隊法は日本領海を前提としたものであるにも関わらず、世界中に拡大せんとしている。「新法」自体も許されないが、行政府の判断だけで海外派兵が強行されることも重大である。
前空幕長・田母神の改憲発言に続く、防衛省・海上自衛隊の「軍部独走」を許すな!(A)


イスラエルによるパレスチナ・ガザ侵攻・
大虐殺に抗議し、日本各地でも市民行動

  
ガザ封鎖解除せよ

 年末二七日から開始されたイスラエル軍によるパレスチナ・ガザ地区に対する大規模な空爆は、年が明けて地上侵攻に進み、人口密集地への無差別殺戮という言語道断の凶行となった。イスラエルは、一月二十日の米国オバマ大統領就任式直前の一月十七日に「一方的停戦宣言」を行なったが、そのかん少なくとも1300人以上の市民(3分の1が子どもとみられている)が殺害され、何倍もの負傷者、街と生活の徹底的破壊が残された。
 このかん世界各地で、このイスラエルのガザ侵攻・殺戮に抗議し、即座の停戦およびガザ封鎖の解除をもとめる大衆行動が行なわれ、日本でも一月中旬には、東京、大阪、京都、長崎、那覇など各地で集会・デモ・街頭宣伝が行なわれた。
一月十日の東京・芝公園での「ガザに光を!即時停戦を求めるピースパレード」は、パレスチナ子どものキャンペーン、アムネスティ・インターナショナル日本、日本国際ボランティアセンター、ピースボートなど市民団体の呼びかけで行なわれ、パレスチナ関連の日本での行動としては非常に多いといえる約1500人が参加した。
同日、大阪では中之島公園女神像前で「許すな!イスラエルのガザ侵攻1・10緊急行動」が、パレスチナの平和を考える会や関西共同行動など諸団体の呼びかけで行なわれた。携帯電話を通じてガザ在住のB・サーメドさんが現地報告し、岡真理さん(京大教員)が基調的なアピールを行なった。集会後、イスラエルを支えるアメリカの総領事館へ向け糾弾のデモを行ない、最終的には約500人の参加であった。
今回のイスラエルの侵攻は、一九九四年の暫定自治政府の発足以来、パレスチナへの最大最悪の蛮行であり、日本でも多くの人々の怒りと憂慮を呼び起こしたのである。
イスラエルは侵攻の名目に、ハマスなどによるロケット弾の武装解除を掲げた。日本でも政府やマスコミには、ハマスのロケット弾とイスラエルの空爆を「暴力の応酬」であるかのように描く傾向が強い。しかしイスラエルの今回の侵攻が、〇六年の選挙で合法的に自治政府の政権党となり、〇七年からはガザ地区の統治者となっているハマスに対し、これを壊滅させるという目標の一環であることは明らかだ。ハマスを支持するガザ住民に懲罰を与えるための戦争、とも言えるだろう。選挙で選ばれ市民多数の支持を得ている勢力を、国際法違反の侵略戦争によって打倒せんとするイスラエルの行為は、まさに国家テロリズムである。
このかんイスラエルは、ハマスとPLOの内紛を利用し、ハマスが実権を握るやいなや、ガザ封鎖という占領地住民を苦しめる違法行為を強化した。ロケット弾は、ガザ封鎖への反撃・抵抗として開始されたのである。イスラエルは昨秋、ガザ領内でハマス戦闘員殺害の停戦違反行為をやりハマスの反撃を挑発した。そして用意周到に準備してきた全面侵攻を、半年の停戦期間終了とともに開始したのであった。
残虐兵器・白燐弾の使用をふくめイスラエルの今回の市民大量虐殺は、かならず罰せられなければならない。そして公正な停戦の前提として、ガザ封鎖が解除されなければならない。歯まで重武装したイスラエルが、相手を武装解除させるために封鎖を続けるというのでは恒久的な停戦は実現できない。ガザ住民の生命と生活のために、直ちに封鎖を解除せよ。
アメリカは、一月八日の国連安保理での停戦・完全撤退要請決議に棄権して侵攻を擁護し、イスラエルの「停戦」声明によって大統領就任式の対面を取り繕った。オバマ新大統領よ、君は就任演説で、つい先ほどまで続いていた虐殺に沈黙したままであったが、それでブッシュ時代を清算できるとでも思っているのか。米新政権は、ハマスを直接の交渉相手として認めよ。(W)