静岡空港問題
  11・22〜23空港つぶせ!第8回反空港全国集会
   開港自体をあきらめよ


 十一月二十二日、静岡労政会館で「空港つぶせ!第8回反空港全国連集会」が、静岡反空港8団体(空港はいらない静岡県民の会、空港に反対する榛原オオタカの森トラストの会、「空港ノー」吉田町民の会、空港に反対する地権者・住民の会、空港に反対する地権者・自治体議員の会、空港をかんがえる周辺住民の会、空港予定地の自然を守る会、空港用地共有地権者会)の主催、反空港全国連絡会の共催の形で行なわれ、90名が参加した。
 ムダな公共事業のワーストにも挙げられた静岡空港建設を強引に押し進めてきた石川嘉延知事は、10月29日、県議会の全員協議会で2500メートル滑走路の09年3月開港予定を延期せざるをえないことを表明した。空港滑走路西端1.5キロの区域内にある反対地権者・大井寿生さんの制限表面を1メートルも越える土地約8平方メートルと、10メートルを超える立ち木が3ケ所合計153本もあることのためである。
県の測量ミスから派生した問題であるが、この事実をひた隠しにし、地権者の大井さんや県民の会の指摘にも一切答えず、工事を進めてきたのであった。9月の公判で裁判官に指摘され、国が事実関係を認めたため、県側もしぶしぶ認めるという始末であった。この結果11月1日の国の空港完成検査を受けられないことが明確になり、やむを得ず延期を決定したのである。しかし石川県政は、また延命の道、更なる税金の無駄遣いに走ったのである。県政への抗議が強まっているのも係わらず、これまでの対応を反省し、反対地権者と対話をするのではなく、また膨大な赤字を作り出す空港建設計画そのものをストップするのではなく、滑走路を暫定的に三百メートル短くして二千二百メートル滑走路で開港する道を選んだのである。この滑走路の短縮工事費に一億一千万円におよぶ補正予算案を議会で強行可決までもした。
 石川知事は、わざわざ「空港つぶせ!第8回反空港全国集会」の前日の二十一日に大井さんに対して「心労やご迷惑をおかけしたことを、地権者と家族におわびを申し上げます」などとアリバイ的な謝罪会見をした。
 しかし、この謝罪は、大井さんの以下の「申し入れ」(10月28日)に答えていない。「申し入れ」は、「@西側制限表面の収用事業認定申請において、極めてずさんな手続きにより収用及び使用範囲の確定に誤りがあったことを認め、書面での謝罪A収用委員会審理において、一方的に審理を打ち切って裁決を下したことについてその誤りを認め、書面によってこれを謝罪すること、B共有地権者及び立木所有者を含む 西側制限表面に係るすべての権利者に対し書面で謝罪、C知事及び静岡県収用委員会長の公の謝罪、D略、Eすべての要件の完全な履行が確認されたうえで、静岡県からの正式な協議の申し入れが書面によって行なわれた場合に限り、静岡空港西側制限表面部分権利者・大井寿生は、制限表面上の支障物件の問題についての協議に応ずる、F協議についてはすべて書面の交換によって公開されたかたちで行なう」である。
 石川知事の会見は「立ち木が伸びた」などの言い訳をいまだ行ない、「とりあえず私の責任、決断の範囲に焦点を当てて交渉した。申入書の数点は、協議するところが残っている」などと言い訳に終始し、大井さんは、「具体的な責任や原因について言及しておらず、不誠実な対応と言わざるを得ない」と厳しく糾弾し、交渉には入れないと明言している。開港延期の伴い「変更許可申請」を提出、国はわずか2日間で許可を与えている。12・3国交省交渉では、「工事完成延期許可」に正当性は無く、国は県の申請を鵜呑みにしただけということが明らかになっている。7月延期開港をも許さず、開港をあきらめさせる闘いを更に押し進めよう。
このような反対地権者、空港反対運動と県との緊迫した状況下の中で、集会が始まったのである。
 鈴木卓馬さん(県民の会共同代表)が主催者の挨拶を行ない、「県は強引な工事を続け、空港利用者数設定はいまだ過大である。民主主義が問われている。廃港をめざすとともに、跡地の利用も提示しながら石川知事を追い詰めていこう」と発言した。
 静岡県のもう一つの無駄な公共工事である「沼津鉄道高架事業反対の闘いの現状と今後」について、加藤益久さんから報告があった。
 桜井建男さん(県民の会・事務局長)が「基調報告」を行なった。「航空業界は闇に入った。世界では路線・運賃の自由化を中心とする『オープンスカイ』協定が進んで、燃料費高が追い打ちをかけ、グローバル競争下での大規模な再編・統合が続いている。アジアのハブ空港をめぐっては、シンガポール・中国・韓国がはるかに先行し、さらに、LCC(低コスト航空)と呼ばれる路線が拡大している。日本の「空」も、JAL・ANAの2社も厳しい生き残りを迫られていて、両社もグローバルな大競争の下で生き残るのは容易でないというべきであろう」と航空情勢を展開した。
更に桜井さんは、「地球温暖化対策やCO2削減対策が緊急の課題となっているとき、莫大な化石燃料を消費し、CO2をまき散らす航空輸送の際限のない拡大を放置してよいはずがない。また、偽りの公共性・公益性の下にムダな地方空港を乱造し続けてきた日本の交通政策は、道路・鉄道を含む交通物流システム全体の中で厳に問い直されなければならない。静岡空港は不要な公共事業として負の存在でしかない空港の典型である。空港の軍事利用の問題も高まっている。反空港全国連絡会の果たす役割は大きい。静岡空港工事完成予定期日の四カ月延期申請を、国交省はいとも簡単に『やむを得ない』として認めた。この行政権力・官僚間の癒着を糾弾し、その実態を暴くとともに、大赤字の国民への押しつけを阻止する運動をはじめ住民利益に反する空港を許さない闘いを続けていかなければならない」と明確に述べた。
 次に「各地の報告」で、全国の仲間が報告を行なった。新石垣空港反対運動を取り組む八重山・白保の海を守る会は、赤土流出、こうもりの絶滅の危惧と共有地の強制測量を報告。泉州沖に空港をつくらせない住民連絡会は、本日滋賀県あいば野では日米共同軍事演習反対を闘っていること、および「9・21関西新空港反対!泉州現地集会」の報告を行なった。
中部国際空港・関連開発を考えるネットワークからは、空港は環境破壊と赤字経営に追い込まれていることが報告された。
羽田空港を監視する会は、羽田空港の騒音問題などを告発。三里塚・暫定滑走路に反対する連絡会からは東峰住民追い出し攻撃を強行する空港会社に対する批判が報告された。また、加瀬勉さん(三里塚反対同盟)の集会メッセージが紹介された。
続いて、弁護団の安部浩其弁護士が静岡空港訴訟の経過を報告し、地権者の大井寿生さんは、07年1月に立ち木の問題を指摘したにも係わらず、県の地すべり対策としてしか対応しなかった。いい加減な工事と石川知事の無責任ぶりを批判した。また、地権者の松本吉彦さんが空港近くにある石雲院の御神木の立木も制限表面にかかわり、管制の障害になっていることを報告した。
 続いて、「空港ノー」吉田町民の会の島野房巳さんが、「開港延期をかちとったが、この地平で安住してはならない。空港廃港にむけた広い視野と長期的な展望を持って運動を広げていこう」と提起した。元県議の松谷清さんが発言し、最後に竹野昇さんが集会宣言を読み上げて採択、佐野慶子さんが閉会あいさつを行なった。その後、あいば野の闘いから追いかけて参加した関西の仲間も合流し、交流会が行なわれた。
翌二十三日は、現地調査が行われた。大井さんの滑走路西端にある立ち木と土地では、大井さんが制限表面を超える百五十三本の樹木や土地についての経過、県の工事のやり方を怒りを込めながら説明してくれた、県が作った石雲寺の空港展望台より障害となっている神木を見学し、オオタカの森の家に移動、昼食を取りながら交流会を行なう。反対地権者の檜林耕作さんと村田利廣さんが発言。参加者全員が感想を述べた。開港を延期させた地権者、県民の会の運動と団結を感じた一日だった。(東峰団結小屋維持会・渡邉)


12・7三里塚・東峰現地行動
  一坪共有地を堅持しよう
   空港会社が一坪共有地強奪へ手紙ばらまき

 十二月七日、「三里塚・暫定滑走路に反対する連絡会」主催による「12・7三里塚・東峰現地行動」が開催された。
 東水労の若い仲間の司会で始まった東峰共同出荷場での集会では、この間の現地報告が山崎さんからなされ、石井紀子さんからは「ワンパックとしては全然使わなくなってしまったけれども、今後も出荷場を使う呼びかけを発信していきたい」との力強い発言があった。関西連帯する会の渡邉さんからは、十一月静岡での第8回反空港全国集会の報告。また加瀬勉さんからの「我々の意志はゆるがない」との力強いメッセージ(第8回反空港全国集会へ向けたもの)が仲間によって代読され、全体の拍手で確認された。
 開拓道路へのデモを挟んだ後半の集会では、らっきょう工場の平野さんから、「空港会社よりさまざまな『お願い』が住民にされているが、おことわりしている」との報告を受け、さらに「田んぼくらぶ」「しいたけ運動」等の参加者からの発言・報告を受けて、最後に「団結ガンバロー!」で集会をしめくくっていった。
 成田国際空港会社は、2010年3月に暫定滑走路を2500mに延伸して供用することを目指して、北側への延伸工事を進めているが、さらには羽田空港の国際空港としての機能強化にあせりつつ、南側への延長で3500m級の滑走路を目指すと明言して、用地内農民への追い出し攻撃を強めている。
そして空港会社は、一坪共有地の強奪をも画策していてる。五月には、一坪共有者宛に権利の売渡を求める手紙を翌月にも発送することを明らかにしていたが、12・7行動後の十二月十一日、空港会社は森中社長名で、「貴方の有しておられる共有持分を弊社にお譲りください」などとする手紙を、全国の一坪共有者にばらまいた。 。
 現地では、北側延伸のための新たな誘導路建設によって、用地内の孤立化がより一層進められている。かっては、小見川県道より、脇にある東峰神社から出荷場、らっきょう工場、小泉さん宅、島村さん宅、さらには東峰団結小屋まで見渡すことができたが、小見川県道がトンネル化され、生活道路も高いフェンスで囲われ、東峰十字路へいたる道路も一部トンネル化された。
 また、現在20万回の発着数を、北側延伸後は22万回に、さらには30万回に増やすとして、用地内への騒音・排気ガスによる生活破壊、環境破壊によって追い出し攻撃を強めている。
 空港反対同盟は、一坪共有地の強奪策動に対して、柳川秀夫さん(反対同盟世話人)がただちに「ひき続き、一坪共有地を守ってもらいたい」とのアピールを五月に発し、また大地共有委員会は一坪共有運動の意義などを伝えるレターニュースを共有者に送ることによって、こうした策動を打ち破っている。
 今回の空港会社による手紙ばらまきは、「恫喝」と居直りである。それは譲渡価格を提示したものであり、空港会社のあせりを示している。1千2百名の共有者の皆さん、共有を堅持しよう!
 騒音・排気ガスによる追い出し攻撃に屈することなく営農−生活を続けている用地内農民・東峰住民と連帯し、平行滑走路の延長、発着数の増加に反対しよう。空港を廃港へ!(東京S通信員)