姿を現した裁判員制度
  
     5月実施へ「さぁ廃止だ!11・22東京集会」

 十一月二八日に裁判員候補者(29万5千人)が最高裁判所に登録され、この日から十二月にかけて、「裁判員候補者名簿にあなたの名前が登録された」という通知が最高裁判所から私たちに送付されてくることになる。この抽選は約350人に1人の確率である。
 こうした来年五月二十一日実施という状況を前に、「裁判員制度はいらない11月全国一斉行動」が各地で行なわれた。主催は、弁護士や市民団体などによる「裁判員制度はいらない!大運動」。十一月二十二日には東日本では札幌、仙台、松戸、東京などで、集会・デモ、裁判員制度の賛否を問う街頭シール投票などが行なわれた。
 東京では、「さぁ廃止だ!裁判員制度 全国一斉11・22行動東京集会」が社会文化会館で開かれ約六四〇名が参加した。
 最初に、今井亮一さん(交通ジャーナリスト)が、「このかんの反対・延期の声の広がりにも関わらず、いよいよ裁判員制度が国民の面前に姿を現そうとしている。しかし国民の参加がなければ、この制度は崩壊する」と開会挨拶を行なった。
 玄侑宗久さん(作家、臨済宗福聚寺住職)のビデオレター「私が裁判員制度に反対する理由」が上映された。人を裁くことに関わりたくない、というのは美徳ではないか。人は人を裁けるのか。法の裁きは相対的なものだが、裁判員制度で「法」と「世間」が合体することを恐れる、と彼は語った。
 新潟の弁護士・高島章さんが特別発言を行ない(新潟県弁護士会は裁判員制度実施の延期を表明している)、つづいてパネル討論が、高山俊吉弁護士をコーディネーターに、蛭子能収(漫画家)、森本孝子(元小学校教員)、吉沼紀子(FM葛飾パーソナリティ)、藤原隆男(台東区竹町中町会会長)の各氏の参加で行なわれた。各氏は、生活や営業の妨げになる、憲法改悪の動向全体の一部分だ、など各自の反対意見を述べた。高山さんは、裁判員制度は司法への国民参加を大義名分としているが、「日本の刑事裁判がまともに行なわれていることを前提とする」新制度では、司法改革にまったくならないと断じた。
 最後に、佐藤和利弁護士が行動提起を行ないつつ、次のように述べた。まもなく最高裁長官に最高裁判事からではなく、東京高裁の竹崎判事が異例の人事で就任するが、彼は裁判員制度を進めてきた司法官僚の権化というべき人物で、制度実施の態勢を作ろうとするものである、これを踏まえ、さらに反対運動をひろげていこう。
 参加者の多くは集会後、デモ行進を赤坂見附から銀座へ行なって実施阻止を訴えた。
さて、私たちへの「裁判員候補者名簿登録の通知」に対して、各地で大衆運動的な対応が工夫されるべきだろう。裁判員制度はいらない!大運動としては取り合えず、勝手に登録されたことに抗議の声をあげること、大運動事務局(Fax03−3348−5153)への通知票のコピーの送付、あるいは受け取り拒否をした場合の連絡、これらを提起している。(東京W通信員)
 

沖縄戦裁判
  大阪高裁10・31勝利判決−原告主張は「虚言」
  改めて検定意見撤回を

 十月三十一日、大阪高裁は大江・岩波沖縄戦裁判において、三月の大阪地裁判決を支持して、梅澤裕(座間味島元戦隊長)、赤松秀一(故赤松嘉次渡嘉敷島戦隊長の弟)らの控訴請求(大江健三郎『沖縄ノート』、家永三郎『太平洋戦争』などの出版差し止め・慰謝料支払い・謝罪広告)を全面的に棄却した。
 判決骨子は―-
・座間味島及び渡嘉敷島の集団自決については、「軍官民共生共死」の大方針の下、日本軍がこれに深く関わっていることは否定できず、これを総体としての日本軍の強制ないし命令と評価する見解もあり得る。しかし控訴人梅澤及び赤松大尉自身が直接住民に対してこれを命令したという事実に限れば、その有無を本件証拠上断定することはできない。
・本件各書籍出版のころ、梅澤・赤松命令説は、学会の通説ともいえる状況にあった。したがって本件各記述について真実相当性があった。
・出版当時に真実性ないし真実相当性が認められ、長く読み継がれている本件各書籍の出版等の継続は不法行為に当たらない。
・控訴人梅澤による、一九四五年三月二五日本部壕で「決して自決するでない」と命じたとする主張は到底採用できず、また宮平秀幸は、梅澤が本部壕で自決してはならないと厳命したのを聞いたと供述するが明らかに虚言である。これを無批判に採用し評価する意見書など到底採用できない。
・梅澤・赤松命令説が、援護法適用のために後から作られたものであるとは認められない。――などである。
二審では、新たに出された宮平秀幸新証言もそれを補強した藤岡信勝意見書などもことごとく不採用とされ、控訴側のでたらめ、ウソがばくろされたのである。
当日夜にはエル大阪で、報告集会が行なわれ百五十名が参加した。主催は、沖縄から平和教育をすすめる会、沖縄戦の真実を広める首都圏の会、大江・岩波沖縄戦裁判支援連絡会の三団体。
最初に弁護団から報告。近藤早史弁護士は、地裁判決を維持した内容と全体評価しつつ、宮平秀幸証言などについての判決内容を詳しく説明した。また今回の判決では、出版時に真実相当性がある出版物は、どういう内容の場合出版継続が違法になるか、についての基準を明らかにしたと説明した。
秋山淳弁護士は、現在ベルリン自由大学にいる大江健三郎さんからのコメントを読み上げつつ、表現の自由で切り込んだ判断が出たので上告審でも議論になると思うと述べた。(十一月十一日、原告側は上告した。)
秋山幹男弁護士は、本件の出版差し止め請求の不当性をどう理論化しようと悩んでいたが、今日の判決でそれを理論化したまったく新しい踏み込んだ判断が出された、最高裁で非常に重要な論点になると述べた。
岩波書店の岡元厚さんは次のように述べた。この裁判を起こした人たちは政治目的であったと自ら言っている。いろいろな証言をしてくれた沖縄の人たちがいなかったら、また昨年の県民大会がなければ、この裁判は勝てなかった。言論・出版の自由、歴史研究の自由にとって非常に大きな意味をもつ判決だ。歴史修正主義者たちは、沖縄の人はウソをついている、一つは自決命令がなかったのにあったとウソをつき、二つは援護法の適用を受けるためにウソをついていると言い、いつのまにか隊長・日本軍兵士は加害者の立場から被害者の位置に座っている。こんなひどい倒錯はない。これからも歴史修正主義者と闘っていく。
つづいて講演を平良宗潤さん(沖縄歴史教育者協議会)、宮城晴美さん(女性史研究家)が行ない、最後に小牧事務局長から三年半の経過報告と、最高裁でのさらに大きな裁判支援運動をとの訴えがあった。
さてあらためて、文部科学省の教科書検定意見が撤回されなければならない。二審でも梅澤主張は否定されたが、〇六年高校教科書検定ではこの裁判と梅澤陳述書を理由に上げた検定意見が出され、軍の強制・命令の記述が削除された。その後、記述は一定再訂正されたが、検定意見は撤回されないままである。
歴史修正主義者は、南京大虐殺、軍隊「慰安婦」、沖縄「集団自決」などで史実を歪曲し、教科書を書き変えさせてきた。侵略戦争の歴史正当化を行なった田母神前空幕長は、「新しい歴史教科書をつくる会」メンバーを統合幕僚学校の講師としてきた。藤岡、八木秀次らの歴史修正主義者と、田母神、そのバックの安倍・森元首相など政治・軍事の右派勢力とは結びついている。沖縄戦裁判に完全勝利するとともに、これら改憲・戦争勢力を打倒しよう。(関西N通信員)


日米合同軍事演習反対11・22あいばの行動
  田母神の居直り糾弾し

 十一月二十二日滋賀県高島市今津にて、「日米合同軍事演習反対11・22あいば野集会」が約650名の労組員・市民の結集で開催された。
 この集会は、二年前の各個別の反対集会の取り組みから、労働組合を主体とするフォーラム平和・人権・環境関西ブロックと、市民グループを中心に活動してきた「あいば野に平和を!近畿ネットワーク」との共同行動へ前進したものとして取り組まれた。
 集会ではまず司会の挨拶で、こうした経過をふまえつつ、当日午前には自衛隊あいば野基地に代表がおもむき、日米合同演習の即時中止を求める抗議文を手渡してきたことが報告された。
 大阪より駆け付けたナニワの唄う巨人こと趙博さんの景気づけのコンサートの後、平和フォーラム関西の富永議長、近畿ネットワークの野坂代表がそれぞれ決意の挨拶を行なった。つづく各団体の挨拶では、平和フォーラムの京都および神戸、アジア共同行動・京都、しないさせない戦争協力関西ネットなどが発言した。
 関西ネットを代表して発言した服部良一さん(山内徳信参院議員秘書、総選挙比例予定候補)は、秋の国会を振り返りつつ、「十一日に国会に参考人として田母神前空幕長が招致されたが、彼はクーデターを図ったがごとくの様子で、居直りの発言をしている。今、彼のような歴史観、歴史ねつ造の攻勢がかけられ、全国の基地での軍事演習とあいまって、戦争体制の世論作りをすすめる危険な情勢となっている。我々の団結の力でこれらに反対していこう」と訴えた。
 最後に、沖縄の名護ヘリ基地反対協、岩国の艦載機移転反対の「市民の会」などからの連帯メッセージを確認しつつ、集会決議を採択し終了。デモ行進を、あいば野基地周辺と今津の町中で、軍事演習に反対するぞ!の声高らかに貫徹した。
 この日米合同軍事演習は十一月下旬より十二月中旬までの間、陸上自衛隊第17普通科連隊と米軍沖縄海兵隊の各二五〇名で行なうもので、朝鮮民主主義人民共和国を仮想敵と明確に規定し、市街地制圧訓練などを含むきわめて反人民的な実動演習となっている。米朝関係と六者協議の進展という国際動向にも、まったく逆行するものである。
 集会決議ではこの演習反対と共に、あいば野基地へのパトリオットミサイル(PAC3)の配備計画、米原子力空母の九月横須賀配備を指弾し、また格差・貧困がひろがる社会の中でひたすら戦争の道を突き進もうとする動きに反対しようと訴えている。
 また今集会では、平和フォーラムに参加する自治労、教組をはじめとした労働組合の部隊を久しぶりにみることができた。集会では大阪から、十一月二十一日の米イージス艦大阪港入港に反対する緊急行動の報告もなされていたが、自治体労働者などをはじめ労働組合が明確に戦争反対の声と行動をとれる態勢作りを、今後も強力に押しすすめていく必要があるだろう。(関西I通信員)


パトリオットミサイル(PAC3)配備一周年11・24習志野基地行動
  6兆円MD利権やめよ

 昨年十一月二十九日の未明、千葉県の航空自衛隊習志野基地にPAC3システムが強行配備されてから一周年を迎え、十一月二十四日、市民統一抗議行動として、小雨降る中、津田沼一丁目公園での集会と習志野基地への抗議デモが、「パトリオットミサイルはいらない!習志野基地行動実行委員会」の主催で行なわれた。
 PAC3は、首都圏周辺の入間を始めとして習志野、武山、霞ヶ関の四ヶ所と浜松に配備され、さらには各務ヶ原基地への前倒し配備が決められている。
 MD計画は、「ミサイル防衛」の名のもと、米帝の先制攻撃論を保障するものとして編み出されたものである。しかし、多額の費用を要するばかりか精度上の保障も危ぶまれる中、同盟諸国に売りつけようと米国務省と軍需産業が躍起となっていたが、同盟諸国はケタ違いの多額さに及び腰となり、手を上げる国も見当たらないという惨状が続いていた。
 そのような中、小泉政権時代の防衛庁事務次官・守屋が、庁内の消極論を抑え強引に導入を図り、これを積極的に後押ししたのが小泉であった。ここには利権問題も絡んだことは、周知の事実といえる。
 二度のハワイ沖とニューメキシコ州での発射実験では、十一月二十日におこなわれたイージス艦「ちょうかい」によるSA3迎撃実験の失敗にも見て取れるごとく、未完成の兵器であることが露呈してしまった。このかんの経費は、百五十億円にものぼり、湯水のごとく使われている。「ミサイル防衛」では総額六兆円にも上るといわれており、無駄な税金の使途の典型的な事例といえる。
 集会には、習志野近隣の市民団体ばかりではなく、首都圏の配備反対、展開訓練反対を闘う仲間たちも駆けつけ、百三十人が結集して、小雨降る肌寒いなか最後まで果敢に闘われた。実行委員会からの基調報告のあと、福島瑞穂社民党党首と民主党の岩国手哲人議員の連帯のメッセージが読み上げられ、集会アピールが採択された。
 集会後、津田沼駅周辺のデモと習志野自衛隊基地へのデモを貫徹した。基地正門前では、採択されたアピール文を手渡す要請行動もおこなった。(千葉A通信員)