労働者派遣法の抜本改正を
  
   非正規首切り攻撃に抗しつつ、抜本改正・反貧困の大連合へ

 アメリカ発の国際金融危機の影響を受け、日本でも経済の先行き不安から派遣労働者や有期契約社員の「中途解約」や期間満了に伴う「雇い止め」が始まっている。厚生労働省は来年三月までに失職する非正規労働者は、三万人にのぼる見込みだと発表した。寮生活の派遣労働者は、解約されれば住宅も失い、いわゆるホームレス、野宿労働者にならざるを得なくなる。マネーゲームの破綻の結果を、責任のない労働者の側に一方的に犠牲転嫁することは許されない。
 こうした情勢下、このかん雇用を破壊し、ワーキングプア−を生み出してきた元凶である労働者派遣法の改定案が、十一月四日、政府から国会に提出された。日雇い派遣を禁止することを大きな目的とする改正案と言われてきたが、見せ掛けの「改正」であり、かえって派遣労働者の保護が遠のくのではという批判が広がっている。
 その「改正」案は、日雇い派遣を禁止すると言いながら派遣元との「30日以内の雇用契約」を禁止するものであり、日々派遣契約を禁止していない。仕事があるときだけ雇用関係が成立する登録型派遣を禁止していないし、マージン率の規制、均等待遇もしていない。違法派遣を受け入れた場合に派遣先の責任が問われる「みなし雇用責任」も回避された。雇用期間に定めのない派遣労働者(常用型派遣)に対しては派遣先の事前面接を認めるなど、財界の要望を受け入れた面もある。
 一方、抜本改正をめざす野党の取り組みに乱れが生じている。民主党は、「2ヶ月以内の雇用契約」の日雇い派遣原則禁止、罰則の強化など、登録型派遣維持の改正案を準備していたが、国会提出を見送った。共産党、社民党、国民新党の各案は、一九九九年改悪の前に戻して派遣対象業種を専門性の高い職種に限定すること、マージン率の上限規制、派遣先の責任強化などが共通しているが、提出までには至っていない。
 政府の改定案に反対し、派遣法の抜本改正をめざす運動が大きく盛り上がっている。このかん、派遣法の改正を求めて国会内で数度の集会を行なってきた全国ユニオン、全日建が中心となり、また労働法制改悪反対の共同行動を行なってきた全労連、全労協、中立組合なども参加する形で、新たに「労働者派遣法の抜本改正をめざす共同行動」が組織され十一月十三日にスタートした。
 この「共同行動」に連帯する著名氏のよびかけの形で、十二月四日には「派遣法の抜本改正をめざす12・4日比谷集会」(午後六時半・日比谷野外大音楽堂)が行なわれるが、これには自治労東京都本部なども参加を決定するなど、今まで以上にひろがりを見せている。
 また日本弁護士連合会は、十月に開催した人権擁護大会で「貧困の連鎖を断ち切り、すべての人が人間らしく働き生活する権利の確立を求める決議」を採択した。これは派遣法の抜本改正をはじめ、社会保障制度の充実、最賃の引き上げ、雇用形態の違いによって賃金・労働条件の差異が生じないよう労働契約法を改正することなどを訴えるもので、法曹界も貧困問題に積極的に取り組み始めた。
 これから深刻になる雇用情勢に対抗していくうえで、派遣法の抜本改正をかちとることは、労働側から政策を実現していく第一歩となるだろう。(K)