新テロ特措法と麻生連立政権を一掃しよう
  再議決阻止・衆院解散を


 麻生首相がデタラメにも解散・総選挙をどんどん引き伸ばし、首相の座にしがみついている。アメリカの侵略戦争に支援を続ける新テロ特措法の延長案をやめ、ただちに解散・総選挙を行なえ、これが現局面での労働者人民の最大の要求である。
麻生首相は最初は、九月末の臨時国会冒頭解散を予定していた。しかし麻生連立政権発足時の九月二五日の世論調査で、福田内閣発足時の57%すら下回る支持率48%と出たため、「ご祝儀相場」作戦は変更となってしまった。
つぎの解散権行使のタイミングは、補正予算案が成立した十月十六日以降であった。ところが、この補正予算と総合経済対策が歓迎されるどころか、十九日の共同通信世論調査では内閣支持率42%とさらに低下してしまった。燃料高騰対策や中小企業支援と称されるこの1兆8081億円の追加支出案は、民主党も賛成(社民、共産は反対)して「大連立」的に成立したが、一時しのぎにもならないバラマキとして世論からも経済界からも見透かされてしまったのである。
米国発の国際金融危機・九月動乱が、実体経済の国際不況、世界的株暴落に発展し、東京株式市場でも十月二四日、バブル崩壊以降初めての八千円割れとなった。こうして麻生首相は「政局より政策」と繰り返し、解散・総選挙は、給油新法(新テロ特措法)の延長案を成立させた後にするとか、国際金融危機対応の第二次補正予算案を提出してからでもよいなどとして、総選挙の審判から無期限に逃げ回る対応となった。第二次補正予算案だ、来年度予算案だと口実にしていれば、衆院四年満期の来年九月解散と変わらなくなってしまう。
こうして解散時期については自民党内でも、与党公明党との間でも支離滅裂となり、首相の求心力は低下の一方である。このままでは麻生首相は、解散権の行使もできず、「ねじれ国会」乗り切りもできない自滅状態に近づく。これでは福田前政権の繰り返しである。
この自滅の危機を乗り切らんと麻生首相は十月三十日、財政支出5兆円・融資枠含めて27兆円にのぼる新総合経済対策を発表した。その新対策に基づく第二次補正予算案の提出は明言せず、それへの野党の対応を「政局」とする意図を示している。要するに、現下の経済危機に対して麻生政権は懸命に対策を打っているというイメージを最大限に演出できたならば、総選挙にも臨めるというわけである。
また同時に麻生首相は、まず景気回復をやり「三年後に消費税増税を」と提案した。消費税率アップの明言は一見選挙には不利であるが、この背景には、社会保障の毎年二千億円実質削減が国民の生命を脅かし限界に来ていること、それを増税の口実にしようとしていることがあるだろう。十月下旬になって発覚した東京での妊婦死亡事件に対し、医師不足を作った政治責任を棚に上げつつ、舛添厚労相は削減続行の見直しを口にした。政府の社会保障国民会議も十月二十三日、医療・介護の水準を切り下げなかった場合には「2025年には消費税4%相当の財源が必要」と発表し、増税論議を誘導しているのである。
新総合経済対策の目玉は、「生活支援定額給付金」である。これは総額2兆円で国民一人当たり1万2千円を給付するというもの。これに対し、民主党の鳩山幹事長が「定額給付は究極のバラマキで究極の選挙対策だ」と批判し、民主・社民・国民新は三十一日に共同談話として、「一度限りの効果なきバラマキの対価として、消費税の恒久増税を国民に押しつけることは認められない」と批判した。そのとおりである。「定額減税」よりも「定額給付金」のほうが、公費で票を広く買収する効果が見込めるというわけであり、これほど国民と貧乏人を愚弄する手法はない。
この新経済対策に対しては一次補正案の時と違って、野党はそろって反発しており、麻生連立政権は立ち往生するだろう。必要な経済対策を実行するには、総選挙を行ない、新政権を作るしかないという常識的な世論が、麻生の策略を打ち負かすだろう。
麻生連立政権の対外政策はどうか。それは総選挙で政権を即刻打倒しなければならないほど愚劣なものでしかない。政府・与党は、来年一月で期限切れとなるインド洋での多国籍軍への給油活動を更に一年間延長するための新テロ特措法改定案(補給支援特措法改定案)を、十月二十一日に衆院通過させた。民主党が解散総選挙を促すためと称して、この法案の拙速審議・採決に応じたことは、(採決で反対するとはいえ)実質的に成立に加担するものであり、厳しく糾弾されなければならない。
首相の解散見送り策によって、参議院の新テロ特措法審議では民主党も一定硬化しているが、参院での「否決」・衆院での「再議決」がいつ強行されてもおかしくない状況が続いている。今年一月には半世紀ぶりの「再議決」と騒がれたが、麻生政権はもはや「再議決」は当り前という感覚になっている。総選挙なしでの政権たらい回し、そして解散しない衆院多数派の横暴、もはや議会制民主主義が腐臭を放っているのである。
麻生首相は、その右翼的体質が米国メディアから懸念されていることも一因し、日米同盟最優先論を意識的に強調している。しかし、航空自衛隊の田母神幕僚長が日本軍国主義のアジア侵略戦争を全面肯定する論文を発表していたことが発覚し、十月三十一日に浜田防衛相は彼を更迭せざるを得なくなる事態がおきた。対米信用が第一の麻生政権にとって大失策である。
自公政権は、米帝国主義などによるタリバン政権打倒の侵略戦争を「国際社会の一員としての対テロ協力」と言いくるめてきたが、最近では、主戦場をイラクからアフガンに移しつつある米帝への一層の加担を探っている。六月にはこっそりとアフガンへ政府調査団を送り、自衛隊大型輸送ヘリの派兵について米軍と検討している。麻生政権は給油のみならず、自衛隊艦船の派遣をシーレーン防衛や海賊対策にも拡大しようなどと口にしている。
戦争継続を望んでいる者はだれなのか。アフガン国内では議会諸勢力とタリバンの交渉が行なわれ、武装闘争停止の条件として外国軍の撤退をタリバンが主張するなど和平の努力が行なわれているにもかかわらず、米・日はこれに逆行している。対テロ戦争への協力など有害無益であり、何の国際的信用も得られるものではない。しかし麻生政権にとっては、給油活動の継続こそが米国向けの政治生命の綱となっている。前政権の時のように、その中断が生ずれば即刻政権危機となるだろう。
対米一辺倒を続けようとする麻生政権は、国際金融危機・世界同時不況に対しても、何の戦略も持っていない。麻生首相は十月二四日に訪中したが、対米債権が大きい日中の共同利害を根拠に、ドル基軸体制の維持を合意するのみであった。ドル基軸に代わる国際通貨体制が模索され、またさらに資本主義世界そのものが問われている時代に、ドル権益にしがみついているだけなのである。
無益・無能な麻生自公連立政権をただちに一掃しよう。