9・27東京
  沖縄県議会の決議実現へ
    辺野古新基地NO!沖縄から玉城義和さん、当山栄さんが報告

 九月二七日、「辺野古の新基地建設NO!沖縄県議会の決議実現へ9・27集会」が東京・文京区民センターで開かれ、百数十名が参加した。主催は、沖縄一坪反戦地主会関東ブロックなど首都圏の諸団体による「辺野古への基地建設を許さない実行委員会」。
 この集会では、7・18沖縄県議会決議の提案者である玉城義和さん(県議会副議長)、また辺野古現地闘争の中心の一人である当山栄さん(平和市民連絡会)、このお二人からまとまった報告がなされ、これを受けて東京では何ができるのかなど討議が行なわれた。
玉城さんは、県議会決議と沖縄政治情勢について次のように報告した。「今回の決議は、基地についての直近の世論を示すものです。一九九六年に県内移設反対の決議がありますが、それ以来の反基地決議で、また辺野古を特定した決議は今回が初めてです。一時的ではなく構造的な沖縄世論を示すものです。わたしは沖縄にとって日本の国家、政府とは何なのかとよく考えますが、九五年以降のたたかいの教訓として、県民の統一した力でもって日本政府と対峙すること、これが大事であると考えます。」「仲井真県知事は九月五日、決議に対する異例の見解を発表しました。知事として県議会決議を尊重せねばならないにも関わらず、いちゃもんを付けるというもので、その見識が疑われています。その内容も、決議では『新基地』と言っているが、キャンプ・シュワブに施設を作るものだから新基地とは性格が異なる、などとするものです。明後日からの定例議会で徹底的に追及せねばなりません。」「重要なのはこれから、決議はそのままではペーパーです。いかに運動に転化していくか。選挙情勢となり日程が立てにくくなっていますが、決議実現の県民大会を十二月から年初には成功させたい。」
 当山さんは、辺野古現地闘争の現況と今後の展望について次のように報告した。「このかん私たちは、〇四年からのボーリング阻止の闘いで海上案を破産させたあと、辺野古での非暴力実力闘争を、〇七年四月からの違法な『事前調査』、〇八三月からの追加資料の公告・縦覧を欠いた違法なアセスメント本調査の阻止としてたたかってきました。現在の阻止行動の力量では部分的な調査阻止しかできませんが、この結果、防衛省は来年三月ごろまで調査をせざるを得なくなり、予定より八ヵ月ほどの遅れを強いられています。守屋事務次官の時の、『事前』と本調査を併せて早期終了のもくろみは粉砕されたのです。」「来春までは阻止行動を堅持し、その後は、準備書・評価書をめぐる沖縄防衛局、県、県環境影響評価審査会に対する追及・要請行動となります。そうするうち二〇一〇年には、一月名護市長選挙、十一月県知事選挙となります。この両選挙の前までに決着をつけようとした日本政府の日程は崩れ、大逆転の可能性が出てきました。今後は、辺野古NO!での県民大会、教科書問題で十万集まったことをよく考える必要がありますが、大きな県民大会を実現すること、また議会で可能となっている県民投票条例の制定も検討すべきです。」「辺野古は沖縄で初めて知事が受け入れて新基地を作るというものですから、このたたかいは沖縄の運命を決するたたかいであり、絶対に勝利しなければなりません。自立した沖縄なのか、死の商人のような沖縄なのか、それが問われています。」
 たいへん有意義なお二人の報告を拍手で確認したあと、アオサンゴなど自然環境保護について花輪伸一さん(WWF)からの特別報告、また本日から開始された署名活動についての提案が主催者から行なわれた。
 この署名は、衆参両院議長宛に「7・18沖縄県議会決議を尊重し、辺野古新基地建設の断念を求める請願書」署名活動。首都圏で署名を広げ、決議に連帯したうねりを作っていこう。(署名用紙等は辺野古実行委員会へ。東京都千代田区三崎町2−2−13−502 沖縄一坪反戦地主会関東ブロック気付 090−3910−4140)
(東京W通信員)
 

大江・岩波沖縄戦裁判 墓穴掘る控訴人側
   高裁でも歴史歪曲に断を

 九月九日、大阪高等裁判所での大江・岩波沖縄戦裁判の第二回口頭弁論が、六月二五日の第一回に続いて開かれた。また午後六時半からはエル大阪で、裁判報告集会が沖縄戦裁判支援連絡会によって行なわれた。
「集団自決」の強制はなかったとして元守備隊長らが大江健三郎さん・岩波書店に対して名誉毀損等を訴えたこの裁判は、すでに今年三月二八日の大阪地裁判決で、「軍の深い関与」との表現で軍の強制性を事実上認める史実認定が行なわれ、原告の請求は退けられているが、原告が不当にも控訴していたもの。
控訴審では、梅澤陳述書を否定されるなど一審敗訴で追い込まれた原告側は、新しい証言として、座間味島の宮平秀幸証言を持ち出してきた(宮平秀幸さんが一九四五年三月二五日の夜、村の幹部が自決用の弾薬などの交付を求めた際、梅澤隊長が自決するなと命令したとするその会話を2メートルそばで聞いていたとの証言)。被告側の準備書面では、まったく信用できないとすでに指摘されているものである。
第二回口頭弁論では、このウソがあばかれ、打ち砕かれた。秀幸さんの母宮平貞子さんの手記が「座間味村史下巻」に掲載されており、当日の秀幸さんを含む七人家族の行動が詳しく書かれている。また秀幸さんのビデオ・本など、彼のこれまでの証言もある。これらは原告が二審で出してきた「新証言」とは、異なる内容であり食い違っている。秀幸証言を補強せんとする藤岡信勝(新しい歴史教科書をつくる会)の意見書も、虚偽であることが明らかにされた。原告側が墓穴を掘る展開となった。
裁判後の報告集会では、被告の岩波書店・岡本さんが、出版人として沖縄戦で、またかっての戦争全体で何を記録し何を伝えなければならないのか、改めて考え続けていきたいと挨拶。秋山弁護士は、「集団自決」とは何だったのか、生き残りのかたは高齢でどんどんいなくなる、証言すべき人から証言を得られないままで裁判が終わったら使命を果たせないと微力ながら心がけてきた、そしていろいろな人から証言をしてもらうことができた、と裁判報告を述べた。
つぎに、東京、沖縄の裁判支援団体の報告の後、中村正則さん(一橋大学名誉教授)の講演「オーラル・ヒストリーの力、沖縄戦の聞きとりから」が行なわれた。中村さんによると、オーラル・ヒストリーとは個人からその戦争体験・生活体験などを聞き取り、文字史料からでは知ることのできない体験の個別性、歴史のディテールを記録にのこす作業である。中村さんは、その観点で座間味島・渡嘉敷島における「集団自決」聞き取り調査を行なってきたことを報告した。
集会は最後に討論が行なわれた。原告側の目的は個人の名誉毀損回復にあるのではなく、教科書を書き換え国民の歴史認識を作り変えることにある。その意味では昨年の教科書検定を通じて、教科書から「命令」「強制」が削除されたことは、かれらにとって訴訟目的の一つを果たしたということになる。我々としては、国家権力の機関である軍隊が何を行ったのか、その是非を議論することを抑制しようとする動きを許すかどうかが問われる裁判である。検定意見への批判の高まりによって、記述は一定書き換えとなり、議論も大きく広がった、しかし検定意見はいぜん撤回されていない。完全に勝利する必要がある。このかんの経過と地裁判決からすれば、十月三十一日に結審となる高裁の判断は控訴却下しかありえない。
我々は、この裁判闘争に勝利するたたかいももちろん重要であるが、いわゆる歴史修正主義者が、さきのアジア太平洋戦争で日本軍がアジア各地で住民殺害を行ない、沖縄でも住民を「強制集団死」に追い込んだこと、これらの歴史的事実を何が何でも隠蔽し歪曲しようとしていることを許さず、かれらを完全に一掃しなければならない。
我々は、沖縄戦住民「集団自決」を「殉国死」「名誉の死」「家族愛」などとして美化する歴史修正主義勢力とのたたかいを広め、あくまで文科省の教科書検定意見の撤回を求める。そして歴史修正主義者を尖兵として歴史を歪曲し、こんにちの日米軍事一体化と新たな戦争体制への国民動員を可能にしようとしている日本の支配層を打倒しなければならないのである。(N)


   名護市辺野古沿岸域への
     新基地建設に反対する意見書


                              7・18沖縄県議会

 日米両政府は、1995年の10・21県民大会に代表される県民の米軍基地の整理・縮小・撤去等の声と行動により1996年4月、普天間飛行場の返還を発表した。
 しかし、これは県内への移設条件つきであり、しかも箇所や工法が紆余曲折を経て今日、辺野古沿岸域でのV字型の新基地建設計画へと立ち至っている。
 ところで、本県は国土面積のわずか0・6%にすぎない狭隘な県土面積に全国の米軍専用施設の約75%が集中しており、これら米軍基地は県土面積の10・2%、特に人口、産業が集中する沖縄本島においては、実に18・4%を占める異常な状況下にある。
 このような中、県民は普天間飛行場の名護市辺野古での新基地建設には、基地の過重な負担と固定化につながることから一貫して反対してきた。
 同様に、地元名護市民も1997年12月に行なわれた市民投票において辺野古新基地建設に反対するという意思を明確に示した。
 また、名護市辺野古海域は沖縄県が「自然環境の保全に関する指針」で「評価ランク1」に分類しているように、国の天然記念物であり国際保護獣のジュゴンをはじめとする希少生物をはぐくむ貴重な海域であり、新たなサンゴ群落が見つかるという世界にも類を見ない美しい海域であることから、新たな基地の固定化と、新基地建設工事に伴う環境汚染や大規模な埋め立てによる環境破壊につながる辺野古新基地建設には断固反対し、世界に誇れる自然環境を後世に残し引き継ぐことこそが我々沖縄県民の責務である。
 よって、本議会は、名護市辺野古への新基地建設を早急に断念されるよう強く要請する。
 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

平成20年7月18日
内閣総理大臣
外務大臣
防衛大臣
沖縄及び北方対策担当大臣あて