労働者共産党 第四回党大会
   情勢・任務決議    

       

               世 界 情 勢


 今日の世界は、アメリカを主柱とする国際反革命同盟体制を基本的枠組みとしている。だが、近年、アメリカ帝国主義の一極支配体制は、怨嗟と糾弾の的となったイラク侵略、国際金融危機を引き起こしたサブプライム問題など、隋所にほころびが見られ、大方の予想以上に急速に支配の陰りが増大している。これが、今日の世界情勢の最大の特徴である。
 他方、労働者人民は、新自由主義・グローバリゼーションに反対するという共通の性格を持つ闘いを徐々に強めており、広範な闘いの戦線が次第に建て直されはじめている。

1、 イラク侵略戦争の泥沼化とアメリカの威信失墜

 アメリカ帝国主義の軍事・外交路線は、典型的にはイラク侵略の頓挫に示されるように、いくつもの戦線で破綻している。
 イラク侵略戦争においては、イラク人民の果敢な抵抗闘争や、全世界人民の広範な反戦闘争などにより、野蛮で不正義のブッシュ政権は孤立してきた。ブッシュ政権は、2006年11月のアメリカ中間選挙で、民主党が上下両院で多数を占めることにより、ついに単独行動主義を転換せざるを得なくなった。これにより、ブッシュ政権はチェイニー副大統領を除くネオコン強硬派を更迭し、イラク侵略戦争の進め方をも見直さざるを得なくなった。2007年1月のイラク新戦略は、アメリカ帝国主義の「名誉ある撤退」の方策をさぐり、結局、当面は米軍を増派し、撤退の道筋を探るというものである。だが、安保理決議による米軍の駐留期限が切れる来年以降、米軍はイラク政府との新たな二国間協定を締結して駐留しなければならないのだが、イラク諸勢力の抵抗により、協定交渉はアメリカ側が大幅に譲歩した内容になりつつある。
泥沼化したイラク侵略戦争により、イラク人民の犠牲者は17〜22万人にのぼり、その圧倒的多数は、非戦闘員である。アメリカ軍の犠牲者も、4000人以上となっている。アフガニスタン・イラク侵略により、アメリカの戦費も膨れ上がり、財政収支は2002年度以降、赤字続きである。そして2009年度(08年10月〜09年9月)の予算は、過去最大の約4820億ドルの赤字に達する見通しとされている。
アフガニスタン・イラク侵略戦争で特筆すべきことは、アメリカ的民主主義の神話が粉々に砕かれ、アメリカの威信は完全に地に落ち、一部にあったアメリカへの幻想も大きく剥がれ落ちたということである。それは、イラク侵略の開戦理由がウソであったということだけではない。アフガンでの捕虜や「テロ容疑者」をグアンタナモ基地内の収容所に不法に拘束し虐待し、ついには自殺者まで出した。イラクでも同様に、アブグレイブ収容所で虐待し、拘束者の人権を蹂躙した。これらは、アメリカの無法と野蛮さを全世界に暴露したものであり、アメリカの威信は完全に失墜した。
 イラク侵略戦争の泥沼化、アメリカの威信低下は、対立する諸勢力との力関係にも大きく影響し、ブッシュが大統領就任時に、「悪の枢軸」、「ならず者国家」と名指したイラン、朝鮮民主主義人民共和国などに対する外交においても、当初の強硬路線を転換せざるを得なくなっている。
 2008年3月、国連安保理はイランの核開発に関して、06年12月、07年3月に続いて三度目の非軍事的な制裁決議を採択した。しかし、イランは中東での政治力強化を背景にしつつ、「核の平和利用の権利」を主張して、かたくなにこれら決議を拒否している。イランの核問題では、英仏独とイランとの間の交渉が中心であり、アメリカは中ロと妥協し主導権をとれていない。
アフガニスタンでは、NATO主導の国際治安支援部隊(ISAF)約4万7000人が駐留し、カイザル政権を保つ形をとっているが、最近は、旧政府タリバン勢力のゲリラが活発化し、ISAF部隊の増強が問われている。だが、パキスタンでは、今年3月に成立した人民党、イスラム教徒連盟シャリフ派、アワミ民族党による連立政権は、アメリカと結託した『テロ対策』も含めた強権政治を行なってきたムシャラフ大統領を8月に辞任へと追い込んだ。加えて、連立政権の内部対立は、アフガニスタン国境に近い部族地域のイスラム武装組織に対する政策を不安定なものにせざるを得なくしている。
アメリカのイラク侵略の主な目的には、大量破壊兵器の危険性をとりのぞくこと、石油利権を確保拡大することとともに、中東諸国の民主化と安定化があった。しかし、イラクはもとより、中東全般でも民主化が進んだとはとても言えず、イスラエルの侵略政策とあいまって、かえって中東情勢は混迷の度合いを深めている。
 北朝鮮の核問題については、アメリカは当初、中国を議長とする6カ国協議における交渉に委ね、朝米間の直接交渉をかたくなに避けていたが、今や積極的に直接交渉を行なわざるを得なくなっている。そして、今日では、第二段階である北朝鮮の核計画申告・ヨンビョンの核施設の無力化と、アメリカによる「テロ支援国家」指定の解除が結論づけられる段階が近づきつつある。
 アメリカをはじめとする核大国は、自国利害に固執して、真剣に核軍縮・核兵器廃絶を進めておらず、むしろ、核不拡散条約(NPT)体制の空洞化が進行しているというのが今日の状況である。

2、 サブプライム問題に端を発する国際金融危機と食糧危機

 アメリカ系資本を筆頭とする多国籍資本などが推進するグローバリゼーション・新自由主義は、全世界において社会の分極化・途方もない格差を押しつけている。国連大学世界開発経済研究所が2006年12月に発表した調査によると、世界の富の半分以上が全成人人口のわずか2%によって所有され、貧困層など全成人人口の50%が所有する富の合計は、たった1%でしかない。新自由主義は、文字通り弱肉強食なのであり、反人間的なものである。
だが、このグローバリゼーション・新自由主義の誤りもまた、ブッシュ政権やグリーンスパン前FRB(アメリカ連邦制度理事会)などが推し進めた住宅バブルとその崩壊で、全世界に暴露された。
サブプライム問題を震源とする世界同時株安の連鎖的波及は、2007年には年頭から数回にわたって繰り返され、信用収縮危機への発展は、2007年の夏・同年末の信用収縮、2008年3月の米証券大手ベアー・スターンズ社の破綻、同年7月のファニーメイ(米連邦住宅抵当公社)・フレディマック(米連邦住宅貸付抵当公社)の経営危機と、立て続けに起こっている。株の暴落や信用収縮での資金繰り悪化などによって、アメリカやヨーロッパのヘッジ・ファンドの閉鎖、銀行・証券会社の実質的破綻が続出した。
2008年3月金融危機で、サブプライム問題に関連する損失も、がぜん跳ね上がった。前年7月、バーナンキFRB議長は、最大で1000億ドル(約9兆7000億円)と予測していたが、アメリカのエコノミストの間では、1兆ドル(約97兆円)という見方が出てきた。更に、アメリカ証券大手のゴールドマン・サックスのエコノミストは、総額1兆2000億ドル(約120兆円)にのぼる可能性を明らかにした。IMF(国際通貨基金)も4月に発表したリポートで、9450億ドル(約95兆円)を予測した。
2007年の8月危機以降、明らかに投資マネーの流れが変わった。サブプライム・ローンの債権は、多様な証券化商品に組み入れられ世界中に拡散した。誰がどのくらいリスクがあるか、誰もわからない不気味さに、投資家はまず安全な米国債へ逃避した。だが、FRBは、流動性危機や景気減速に対処するために、金利を相次いで引き下げた。金利安からドルは一段と安くなり、投資家は国債にも止まれず、さまざまな商品市場に流れた。
アメリカの住宅バブル―サブプライム問題を震源とする国際金融危機は、とりわけ世界資本主義の中枢部の金融システムを大きく動揺させた。と同時に、ドル安を強め、ドル基軸体制を熾烈に揺さぶっている。また、投機マネーは、原油、金、穀物、鉱石などの商品市場をもかく乱し、世界人民の生活を極度に圧迫し、世界的にインフレ傾向を強めつつある。1970年代から顕著となった過剰資本は、住宅・自動車などのような関連産業への幅広い波及力を持った新たな投資対象もなく、投機マネーとしての身勝手な利潤追求で世界人民の生活そのものを脅かすだけでなく、ドル基軸体制そのものまでをも、ますます動揺させている。
 資本の利己主義的な「自由な活動」を保障するブッシュ政権の反動ぶりは、地球規模での温暖化問題でも際立っている。アメリカもかつては「先進国に二酸化炭素の排出削減を義務付けた京都議定書(1997年)」に賛成したにもかかわらず、ブッシュ政権に代わると、これを反故にした。また、昨年のG8サミットで「2050年までに世界全体の排出量を半減する」という目標を「真剣に検討する」としながらも、今年4月の演説でブッシュ大統領は、2025年までにアメリカの温室効果ガスの排出量の伸びをゼロにする方針を明らかにした。つまり、それまでは排出量が伸び続けるということであり、全く以てふざけた態度である。国際資本間の競争を第一とする新自由主義は、人類のあらゆる生活の土台である自然を破壊するだけであり、自然の再生産を決して保障するものではあり得ない。

3、 唯一の超大国アメリカと競合・対立する諸勢力の増大

欧州連合(EU)は、中・東欧など12か国の参加により加盟27か国となり、人口も5億人近くとなった。国内総生産は、アメリカを抜いて、世界の約3割を占めるに至った。巨大組織になったEUは、加盟国首脳が2007年末に調印したリスボン条約によって、組織運営の効率化を図ったが、アイルランドの国民投票の否決で再びつまづくこととなった。  
欧州中央銀行(ECB)設立の翌年、1999年に11か国で発足した「ユーロ圏」は、現在正式には15か国であるが、自国通貨をユーロに連動させるバルト三国などを含めれば「事実上のユーロ圏」は、40か国以上となる。ユーロの紙幣流通量は2006年末に、ドル紙幣流通量を追い抜き、各国中央銀行の外貨準備でも、ユーロの占める比率が拡大している。
北大西洋条約機構(NATO)は、今年4月にクロアチアとアルバニアが加盟し、26か国体制に拡大している。NATOは、さらに旧ソ連構成国をも加盟させる機会をうかがっている。
豊富なオイルマネーをもつ中東諸国は、1970年代の非戦略的な「バラマキ投資」の教訓から、今日では自国の人材育成や産業基盤建設などに投資を集中している。また、対外的な投資対象は、従来からの米欧日にとどまらず、北アフリカ・中東・南アジア・東南アジアにつらなるイスラム圏や、経済成長をつづける東アジアなどへも拡大している。イスラム教の教義に基づくイスラム金融は、その資産残高はおよそ1兆ドルと推計されているが、今後も年率15〜20%で成長すると見られている。サウジアラビア、UAEなど湾岸協力会議(GCC)を構成する六産油国は、近い将来に、域内共通市場や域内単一通貨の発行をめざしている。
 ロシアは、近年の資源価格の高騰を背景に経済的な復調を示し、この経済力を背景に、旧ソ連構成国の離反を推し止めようとしている。特に、NATOがウクライナ、グルジアなどを加盟させようとする動きには、激しく反対している。また、アメリカとの関係では、09年に失効する第一次戦略兵器削減条約(START1)に代わる法的拘束力のある合意などを目指すことになっているが、ポーランドに迎撃ミサイル基地を、チェコにレーダー基地を設置する米ミサイル防衛構想には、中国と共に反対の態度をとっている。
 中国は、政治的には、しばしばロシアなどと連携して超大国アメリカをけん制する動きを示しているが、経済的には、アメリカを主柱とする西側経済体制に確固とした席を占め、「世界の工場」として欧米日などへの商品輸出を急拡大し、いままた国際的な金融活動も強化しつつある。そして、ASEANとの経済関係を強めながら、ASEANプラス中日韓の構成による東アジア共同体の形成を着々と推し進めている。小泉政権時代に悪化した日中関係をその後、「戦略的互恵関係」とし、今年4月には中韓関係もまた「戦略的関係」に引き上げた。
南米はかつてアメリカの「裏庭」と呼ばれたが、今日では明確な親米政権はコロンビアだけといわれる。ほとんどが、ベネズエラ、ボリビアなど、一部資源の国有化と対貧困政策を推進する反米左派政権、ないしはブラジル、アルゼンチン、チリなど、市場経済の下で産業政策と強い社会政策を加味する社会民主主義政権や中道左派政権となっている。
 アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイが1991年に発足させた南米南部共同体(メルコスル)は、2006年7月にベネズエラが参加し、強化された。メルコスルは、共同市場を強化するだけでなく、政治的社会的結合の重要性が大きくなっていることが議論されている。アメリカは、キューバを除く米州34か国で「米州自由貿易地域」(FTAA)を構想したが、これは頓挫している。キューバとの協調関係は、ベネズエラが最も強く推進している。
 アメリカ帝国主義と競合ないしは対立する諸勢力の台頭の中で、アメリカの軍事力を支える軍需産業、金融業、農業なども、軍需産業を除くと不安定さが目立ち始めている。そして、無批判的に追随する同盟者は、日英など一部に限られている。世界支配のための国際反革命同盟体制における盟主の地位は、極めて危ういものとなりつつある。

4、 新自由主義に抵抗する労働者人民の闘争拡大

南米で反米左派政権や中道左派政権が次々と樹立されたことの背景には、1980年代の累積債務危機をIMF主導により超緊縮財政政策、規制緩和・民営化などの新自由主義政策で乗り越えようとしたが、マイナス成長と激しいインフレにみまわれた「失われた10年」がある。さらに1997年のアジア金融危機、翌年のロシア金融危機の連鎖が及び2003年頃までの「失われた5年」という経済不況がある。
中南米の労働者たちは、反失業、賃上げ、労働条件の向上などの闘いを推進しつつ、左派・中道左派政権を支え、新自由主義・グローバリゼーションに敢然として反対している。闘いの中でも特徴的なのは、労働者たちが倒産した企業の工場を占拠し、自主的に操業する闘争である。この運動は、ベネズエラ、アルゼンチン、ブラジル、ウルグアイなどで盛んである。ボリビアの鉱山では、労働者たちは協同組合方式で操業している。
もう一つ特徴的なのは、ベネズエラ、ボリビア、アルゼンチン、メキシコでは、この間の闘いの中で、既存の労働組合全国組織とは異なる新たなナショナル・センターが形成されていることである。これらの組織では、内部矛盾もあるが、左派・中道左派政権を地域住民と共に支えている。
新自由主義・グローバリゼーションと対決した労働者の闘いは、今もっとも経済成長が高く、多国籍資本が集まるアジアでも発展している。近年、労働者たちは賃上げ、労働条件の改善を求めて、ストライキで立ち上がっている。とりわけ、中国、ベトナムなどでは、ストライキが頻発している。
ベトナムでは、2006年から外資企業でストライキが急増しているが、それは多くの場合、未組織労働者の決起によるものである。ストの理由は、外資企業の人権侵害や全般的な物価上昇から生活を防衛するためなどである。このストの影響で、ベトナム政府は、ストに至るまでの複雑な手続きをもつ労働法の修正を迫られ、不十分ながら一部を改定した。また、最低賃金が大幅に引き上げられた。特に外資部門の最低賃金は、国内経済部門と異なり6年半ぶりの値上げであった。
中国でも、最近、外資企業でのストライキが頻発している。スト急増の背景には、内外からの圧力による物価上昇と新労働契約法に基づく雇用関係の改編がある。また、これまでの市場経済に基づく経済政策により、中国での貧富の格差は、「1978年の0.317から06年には0.496に上昇」(『人民日報』07年10月18日付け)するほどに悪化している。中国での出稼ぎ労働者は約1億2000万人(07年現在、雇用労働者総数は約7億6400万人)で、製造業の60%、炭鉱の採炭現場の80〜90%、建築現場の80%ほどが農民工である。昨年夏、山西省の約20のレンガ工場での農民工の「奴隷労働」が摘発された。労働者の賃金・労働条件の改善とともに格差の是正が喫緊の課題となっている。
サブプライム問題に端を発した国際金融危機は、欧米の金融関係労働者の首切りを増大させただけでなく、貪欲に利潤を求める投機マネーが商品市場に流入し、世界各地の食糧獲得闘争、石油値上げ反対闘争を激化させている。
賃上げ、食糧値上げ反対の闘いは、アフリカ、アジア、ラテンアメリカ、ヨーロッパなど世界各地に広がっている。とくに、エジプト、セネガル、モーリタニア、コートジボアール、マダガスカル、バングラデッシュなどで激しく闘われ、一部では暴動にまでなっている。ハイチでは、食糧高騰に対し適切な措置を怠ったとして、首相が解任されている。
石油高騰に抗議する闘いも、世界各地で広がっている。モザンビークでは、警官隊との闘いで労働者が殺され、カメルーンでもタクシー運転手たちがストライキで抗議した。フランス、スペイン、ポルトガル、イタリア、ベルギーなどでは、漁民たちが連帯して抗議し、イギリス、韓国などでは、トラック運転労働者が怒りのデモ・ストを展開している。韓国では、格差拡大への怒りを背景に、李明博新政権の米国産牛肉の輸入問題に対し、中高生・大学生を先頭に数十万人の労働者人民が激しい抗議闘争を展開した。
欧米の労働組合運動も、非正規労働者の増大や格差の拡大、正規労働者の賃金・労働条件の改悪、公務員労働者の削減などに対決して粘り強く闘っている。
フランスでは、2006年の1月後半から4月半ばまで、見習い期間を延長(2〜3月を2年間へ)し、その間自由に解雇できる「初採用契約(CPE)」を撤回させる大闘争が行なわれた。それは、仏全国学生連合、全国高校生連合と、労働総同盟(CGT)など主要8労組の呼びかけにより、最大300万人が参加する大規模なもので、見事に勝利を勝ち取った。露骨に新自由主義を唱えるサルコジ新大統領の社会保障制度改悪や公務員の人員削減に対しても、ひき続き断固として闘っている。ドイツでは、「協約自治」が尊重され「協約最低賃金制」が行なわれてきたが、非正規労働などによる低賃金層が増加し、ドイツ労働総同盟(DGB)の第18回全国大会(06年5月)は、セカンド・ベストとして法定最低賃金制に踏み込んだ。06年10月には、22万人が付加価値税の引き上げや年金改悪などに反対する闘いに起ち上がった。07年には、金属産業労組(IGメタル)は5年ぶりに大幅賃上げを要求し、ストを含めた闘いで勝利的な妥結に至った。鉱業・化学・エネルギー労組(IG BCE)、建設・農業・環境労組(IG BAU) 、ドイツ鉄道(DB)の各労組なども賃上げを勝ち取っている。
また、新たな動きとして注目すべきは、グローバリゼーションに対応して、国境を越えた労組の本格的な統合が始まったことである。2008年夏、イギリスの「ユナイト」とアメリカのUSW(全米鉄鋼労働組合)の統合が決定され、新組織は組合員300万人で、「ワーカーズ・ユナイティング」の新名称で発足することとなった。
世界の労働者人民の闘いが、次第に共通した敵に対する闘いとして目に見えるようになってきており、ますます強固に連帯した闘いと団結によって、新自由主義・グローバリゼーションと対決することが問われている。                        (以上)

   
              日 本 情 勢                                     

1、「新自由主義」の登場、そして、「格差・貧困問題」の政治問題化

@ 小泉改革と日本における「新自由主義」の登場

 今日の日本情勢を把握するには、すくなくとも「小泉改革」から語り始める必要があるだろう。
 小泉改革は、新自由主義グローバリゼーションの日本への波及であった。それは、多国籍企業の発展を基盤に姿を現した、産業の成熟が生み出す過剰貨幣資本の行き場のない膨張の時代、投機マネーの時代の到来である。それは、最初にこの過程に突入したアメリカ金融独占資本の自己増殖運動が求める全世界のあらゆる政治・経済・社会的障壁の破壊であり、超大国アメリカの日本への要求として突き付けられたものである。
 小泉が改革を推進したのは、日本の金融独占資本がすでに高いレベルで多国籍展開しており、そのグローバル市場での権益の拡大にとって国内市場の一層の開放が不可欠だったからである。また日本の金融独占資本も、世界に伍する投機マネーの育成という課題に当面しだしたからに他ならない。
 小泉改革がもたらした事態の第一は、「官から民へ」「規制緩和」の掛け声の下に、介護、福祉、医療、教育、保育など利潤目的に適さない社会活動領域にまでひろく民間資本の参入に道をひらいたこと。第二は、福祉、教育、公共事業などの予算の削減を推進したこと。第三は、従来専門職などに限定されていた労働者派遣制度を全産業的に許容するなど、非正規雇用制度を一般的・基幹的な雇用システムとして確立し、それによって労働賃金の大幅引き下げを現出させ、資本に高い搾取率を提供したこと。第四は、郵政民営化なども媒介に、金融の規制を大幅に緩和し、世界的なマネーゲームに日本経済をリンクさせたこと。第五は、ケインズ主義的な利益誘導型政治を後退させ、東京一極集中・弱肉強食社会を現出させたことである。
 小泉改革を成功させた基本的要因は、超大国アメリカが強力に後ろ盾として支えたこと、ケインズ主義的な財政出動政策が、自動車産業等の耐久消費財産業の成熟産業化によって景気浮揚効果を喪失し、財政赤字肥大化の元凶に転化していたこと、政官癒着と官僚の腐敗が前面化し、その暴露を政治的に利用しえたことである。こうして小泉改革の政治目的である利益誘導型政治のヘゲモニーの打破、日本における新自由主義政治の立ち上げは、成し遂げられたのだった。
 小泉は、軍事外交政策においてアメリカ一辺倒をやることで、小泉改革に対する超大国アメリカの強力な後ろ盾を確かなものとした。それが、アメリカのイラク侵略戦争に対する全面的支持と参戦であった。靖国参拝などよる東アジアとの不和がこれを補完していた。同時に小泉は、超大国アメリカが地域大国を統制しながら活用しつつ、全世界各地の武装反乱を機動的に鎮圧していく戦略へ、冷戦期の戦略から転換した事態の中で、世界的規模での自衛隊の対米協力と米軍への自衛隊の一体化を受け入れた。基本的に残されている課題は、海外における自衛隊の殺戮行為を合法化し、米軍と最前線を共同できるようにすることだけとなった。9条改憲問題が浮上している所以である。

  A「格差・貧困問題」の政治問題化と小沢民主党の参院制覇
     
 安倍政権は、小泉政治の諸結果が国際関係の行き詰まりと社会の崩壊現象の噴出という形で顕在化し始めた時に登場し(2006年秋)、そうした状況であるにも関わらず小泉路線を継承・推進しつづけたことにより、実質一年足らずであえなく瓦解する。
 小泉も持ち上げたマネーゲーム時代の象徴「ホリエモン」は、投機資本家の地位がまだ脆弱な段階にある日本において、そのあまりの拝金主義の故にひんしゅくを買って早々に退場。「格差」「年金」「腐敗」に対する民衆の怒りが広がった。しかし安倍政権は、社会・経済問題における小泉路線からの転換に関心はなく、超大国アメリカとの一層の軍事一体化・戦争国家確立をめざして教育基本法改悪、改憲国民投票法制定などの強行を重ねていった。その結果二〇〇七年夏の参院選で、自公与党が「国民の生活が第一」を掲げた小沢民主党に大敗、参院において少数派に転落し、その年の秋になって安倍が政権を投げ出すということになる。
 ここで注目すべきは、小泉が立てた市場原理主義の旗に対置する形で、「国民の生活が第一」の旗が立てられたことである。この旗は、小沢が立てたことにも見られるように、支配階級の一半の旗である。われわれはこの事態を、政界再編成が大きく動きだす節目として押さえておかねばならない。

  B福田政権の性格
      
 二〇〇七年秋に登場した福田政権は、アメリカ一辺倒・市場原理主義を継承しつつもこれを背後に隠し、「国民の生活が第一」を大きく取り込むことで、自公による連立政権の維持を策す政権である。
 この政権は、小沢民主党との「大連立」を画策し、中国との「戦略的互恵関係」の形成や「消費者庁」の新設に踏み込むなど小泉政治からの転換を模索する。しかしこの政権は、他方で小泉路線を継承して、米軍再編・沖縄新基地建設、「新テロ特措法」の成立、「派兵恒久法」制定策動、「後期高齢者医療制度」の施行を推進したため、民衆の批判の波をかぶる。また福田政権は、伝統的な官僚システムの解体・再編にたいして全く消極的であり、族議員に支えられた政権でもあるため世論の支持は極めて低い。さらには新自由主義グローバリゼーションの推進で、世界的な金融不安、原油高騰、食糧危機が日本の民衆の生活を脅かす事態をもたらし、重層的な政権批判に包囲される。福田政権は、衆院における与党圧倒的多数を失うことになるかもしれぬ総選挙に打って出ることもできず、路線的混迷をかかえたまま統治能力がじり貧化していく趨勢をどうすることもできない。
 こうしてこの政権の下で、旧来の政治構造の崩壊と政治的混沌化がすすみ、政界大再編の機運が熟そうとしている。

2、労働者階級・人民の側の動向

   @ 労働者民衆の諸運動の発展


   @)労働者階級、非正規層

 日本に新自由主義グローバリゼーションの波が押し寄せるなかで、労働者階級はその大きな部分が失業・半失業状態、使い捨ての雇用形態を強制され、生存さえも確保しえない賃金水準に落とされた。しかし困難の中で、非正規・失業層の間から反撃が始まり、正規層においても長時間労働などにたいするたたかいが広がろうとしている。
 労働者階級就労部分5000万人のうち非正規は34%、1737万人(06年)で、年々増加している。年収200万円以下の労働者は1000万人超(06年)、「外国人」労働者は76万人(06年)、生活保護受給者は151万人(06年)で、それらもひきつづき増大過程にある。失業率は、ここ数年の「景気回復」期に若干もちなおしたものの、ここにきて再び増勢に転じて4・0%となり、統計上の完全失業者は275万人(08年4月)となった。このように日本においても、失業・半失業層を背景にした労働者使い捨てシステムが、基幹的雇用制度として確立し、拡大されつつある。このことは、下層の青年において端的だが、経済的な困窮や社会的諸関係の崩壊をもたらすだけでなく、自尊心の磨滅、社会的貢献と自己発展への意欲の解体、結婚・子育てを含む将来への絶望、孤独、現実逃避、死への願望などの形で、精神的崩壊をももたらしている。
 これに対して民衆の反撃がはじまる。反撃は、「改革」から「格差社会」への社会的関心の移行(05年末)をもたらしつつ、着実に発展し始めている。
 野宿労働者の運動が、北海道から沖縄までを貫く全国ネットを結成した。フリーターの若者が労働組合を結成するなど、非正規の多様な層で組合運動が興る。企業の枠を超えた個人加盟のユニオンが発展した。外国人労働者の労働組合運動への参加が増加する。介護労働者の運動も始まった。登録型派遣労働者からのピンはねや偽装請負形態の搾取など違法なぼったくりをとがめる闘いが勝利し勢いづく。そうした中で2007年、連合は非正規センター、全労連も非正規労働センターを設置し、非正規対策に力を入れるようになった。2008年のメーデーは、「非正規」問題を前面に掲げて実施される。
正規層でもこの間、名ばかり管理職にたいするサービス残業の強制、長時間労働による健康被害や過労死をなくすたたかいが前進した。
とはいえ労働者のおかれる状況は、世界的な景気後退の趨勢と物価高騰・増税攻撃の中で一層厳しくなろうとしている。アキバの無差別殺傷事件は、非正規下層にたまるマグマが爆発的噴出を求めて動き出していることを否定的な形であきらかにした。この状況は、非正規・失業層の労働運動の大規模な発展、正規層と非正規・失業層の協力関係の発展を求めるだろうし、企業の枠を超えた個人加入のゼネラルユニオンの必要を浮上させるにちがいない。最賃引上げ、労働時間の短縮、派遣労働規制、就労・生活保障システムづくり、後期高齢者医療制度廃止、物価値上げ反対・増税阻止などが課題となるだろう。

   A)地域社会

 「小泉改革」は、巨大投機資本と多国籍企業にたいする規制を緩め、大資本の本社が集中する東京の一人勝ちと地方の没落を加速した。中央・地方の累積財政赤字1000兆円超(借入金、政府短期証券を含む)の問題にたいして、福祉・教育支出等の大幅削減と「地方分権化」を利用した地方自治体への財政赤字負担の押し付けで対処し、所得再分配機能を切り捨てた。地方の住民、農民、高齢者、障がい者、生活困窮者、失業者、非正規労働者予備軍の子どもたち、地球環境が犠牲となった。地方はさびれ、人々の生活の場としての地域社会が存立の危機を深めた。
 支配階級は、少子高齢化にともなう労働力不足対策として女性と高齢者の労働力化率を高め、あるいは移民労働者の大量導入をも検討している。しかし新自由主義的発想からするそれらの対策は、地域社会が担う人を育てる機能に最後的なダメージを与えるだろう。
こうした事態に対して、民衆の抗議と闘いが広がり始めている。07年夏の参院選(特に地方一人区)は、自民党からの農民の離反という事態を劇的に反映した。現代姥捨て山「後期高齢者医療制度」は、高齢者を怒らせた。「介護」の質の低下と負担の増大にたいする批判、「年金制度」への不信も深刻である。障がい者を切り捨てる「障害者自立支援法」にたいして、大きな抗議運動が巻き起こった。「生活保護」支出抑制策の結果餓死者が出ても平然としている行政に社会的批判が拡大する。学校・学級崩壊が拡大し、「ニート」などの形態での消極的抵抗も増大した。
またこうした中で地域社会は、一人ひとりの自由な発展の実現と各人の条件に応じた社会への貢献のために(国籍、民族、宗教、性、「身分」、障がい、等々の違いを越えて)互いに助け合う場として、その機能を再構築することが問われている。そうした見地から、介護・年金・生活保護などの福祉システム、保健・医療システム、家事・育児を含む特定の活動・職種に緊縛されない生き方を保障する教育=就労システム、農業の再建、自然環境の保全などのために協同することが求められる。
 こんにち多くの人々は、失業・半失業労働者の場合が典型だが、極めて不安定な経済的条件下で闘うことを強いられる。NPO,協同組合、社会的企業などの諸形態によって地域社会を再構築することが、自己の生存を確保しつつ闘うためにますます重要になっている。民衆自身による生存のための事業、新たな社会を模索する運動は、その本格的な発展の時代を手繰り寄せるに違いない。

   B) 政治課題

 第一は、アメリカ一辺倒政治、戦争国家づくりとの対決である。
 アメリカのイラク・アフガン侵略戦争の発動と小泉・安倍政権のテコ入れで急激に強まった9条改憲の動きは、侵略戦争の泥沼化と安倍政権の瓦解を契機に、一旦弱まった。しかし安倍政権が改憲を焦点化したことで火のついた9条改憲反対の世論は、安倍政権瓦解後も拡大している。08年、9条世界会議が大成功した。
だが、自衛隊が世界有数の戦力を保持するようになり、戦地派兵を実現し、防衛庁を省へ昇格させ、宇宙の軍事利用を合法化するところまで9条の実質的改憲事態がすすんで、あとは9条改憲で自衛隊の最前線投入への制約を取り払うのみとなっている。新憲法制定議員同盟が民主党の有力議員を巻き込み、草の根からの巻き返しを目論むなどの動きも始まっている。国民投票に勝つ構想、非正規下層との連帯がカギとなるだろう。アフガンへの陸上自衛隊の派兵、新テロ特措法の延長、派兵恒久法の制定が、当面の焦点である。
グローバルな米軍再編の一環である在日米軍基地の強化と米日軍事一体化に対して、沖縄・辺野古、岩国、横須賀、座間などで闘いが高まる。三理塚、関西新空港、白保、静岡などの反空港闘争も、全国ネットを形成して、ねばり強く展開されている。
 沖縄では07年、日本政府が歴史教科書の沖縄戦に関する記述において、沖縄人にたいして死を強制した日本軍の犯罪を抹殺したことに対して、11万人を超える空前の大抗議集会が開かれ日本政府を震撼させた。また、超大国アメリカとこれに追随する日本政府によって依然在日米軍基地の75%が押しつけられたまま新基地建設が画策され、米兵犯罪が後を絶たない状況にある中で、民衆の怒りが大きく日米安保条約地位協定の改訂、米軍基地の撤去へと向かっている。「本土」において、沖縄の闘いとの交流と連帯の輪を広げていかねばならない。
 第二は、労働者民衆に対する、監視と弾圧、内部矛盾の扇動との対決である。
 今日のブルジョア階級は、基本的には、労働者民衆を使い捨て、社会を崩壊させる方向に突き進む以外ない。利益誘導型統治の余力もほとんどなくなってきている。このためブルジョア階級はその階級支配の維持を図るのに、基本的には、監視と弾圧に頼り、また民衆の間の内部矛盾の扇動を多用する。
 インターネットの監視と規制が強められ、街頭の監視カメラがいまや広く張り巡らされている。市民団体の反戦ビラ配布にたいする逮捕・有罪に端的なように、表現の自由を否定し、政治的自由を制限する動きが強まっている。重大事件・犯罪の増加に対して、警察力の増強と、裁判員制度の導入をテコとした形式的な「法治」の強化で対処しようとしている。しかしこうした対処は、崩壊する社会を前にしては、時とともに無力を晒さずにいない。表面的な強圧性に委縮することなく、連帯の輪を広げて反撃していくことである。
 民衆の内部矛盾を煽る仕方で統治目的を貫徹する手口も、露骨になってきている。典型は、小泉政権による改革幻想をもってした下層民衆のけし掛けであった。政治的な下層の使い捨てである。とはいえ、民衆の諸運動の側にもつけ入られる根拠がなかった訳ではない。利益誘導型統治に取り込まれていた部分があったからである。運動の建て直し、連帯の再構築が問われている。
第三は、国際的な民衆連帯の実現である。
 新自由主義グローバリズムの時代は、国境の壁が極めて低くなる時代である。階級闘争の国際的な連帯と連携がかつてなく重要になる。サミットなどに対抗する共同行動、世界社会フォーラム、世界的なイラク反戦、そして前記の9条世界会議などに象徴されるように、民衆のグローバルな連携が形成されてきている。東アジアの民衆連帯も大きく発展させていかねばならない。

3、日本の政治構造の大転換へ
  
 米ソ冷戦構造が解体してアメリカ一極支配の下での国際反革命同盟体制の再編が進行し、ケインズ主義が過去のものとなって新自由主義グローバリゼーションの波が世界を席巻した時代状況の中で、また同時にそれらに対する人々の対抗運動も始まった状況の中で、日本においても戦後の利益誘導型政治構造が後景に退き、これからの一時代の階級攻防を規定する政治構造が形作られる局面に突入した。新たな時代の階級闘争は、以下の三つの路線を極とする三つの政治ブロックに収れんして闘われるに違いない。

   @ 「第一極」
       
 「第一極」をなす路線は、アメリカ一辺倒・新自由主義(市場原理主義)である。
 これは、超大国アメリカのグローバル支配と良好な対米関係を大前提とする路線である。グローバルに権益を漁る巨大投機資本と多国籍企業の利益を代表し、資本の自己増殖運動と社会の存立が両立しなくなるこれからの時代において、開き直り的に前者を推進する路線である。この路線がそれなりに政治的に受け入れられる限度は、成熟段階に到達した産業をグローバル市場(とくに中・印・露・ブラジルなど)において量的に発展させ、地球環境問題も含め資本主義の発展可能性を食いつくす程度にかかっているし、マネーゲームを介して弱小資本を食い漁り、民衆の小金を巻き上げ、非正規労働者下層の生活を生存線以下に引き下げ、社会的諸紐帯を消滅させ、社会を二極分裂させうる程度にかかっている。
 この路線を推進するには、民衆に対して「痛み」を強要でき・社会の崩壊に動じない統治機構が必要となる。首相の権限強化、社会生活領域の責任の放棄・地方移譲、ボトムアップシステムの解体である。またこの路線を推進するには、民衆に対する監視と治安弾圧の強化が必要となる。さらには、中、韓・朝に対する民族排外主義感情を煽ったり、階層間、世代間などの諸矛盾を煽るやり方で、脆弱化した政治基盤を補完することも必要となる。
 いずれにせよ資本はその自己増殖運動をやめる訳にはいかないから、政治的限度をこえて社会の破壊を推し進めるこの潮流の性向は強まらずにいない。

   A 「第二極」

「第二極」の路線は、アメリカ一辺倒・新自由主義(市場原理主義)のあからさまな推進が、東アジアでの孤立と支配秩序の崩壊をもたらすことを危惧する支配階級の広範な層を代表する。それは、一方でアメリカ一辺倒・新自由主義(市場原理主義)をやりながらも、他方でアメリカと一定距離をとった東アジア共同体を志向し、民衆の政治的包摂に腐心するマッチ・ポンプ路線となるだろう。この路線は、新自由主義の諸結果である「格差」「貧困」などに対する民衆の側からする批判が高まる局面で、政治的に浮上する。
こうした「第二極」路線が主導する政権は、親米派、反米派、利益誘導型政治、市場原理主義、社会民主主義などの諸潮流、中小資本家・自営業者・労働者・市民など様々な層との幅広い連合の上に形成されるだろう。この政権の特徴は、動揺・不安定ということになる。
この政権の下で労働者民衆は、その運動力量と社会再建の広範な発展をかちとることが可能となるに違いない。この政権下では、超大国アメリカとの関係が一定不安定になり、世界的投機マネー経済への合流という「資本主義的発展」の方向も一定抑制され、日本資本主義の停滞をまねくだろうから、巻き返しを図る新自由主義との闘争が熾烈化するに違いない。

   B 「第三極」

 「第三極」の路線はまだ、「第一極」の「アメリカ一辺倒・市場原理主義」のようなトータルな性格を示す旗として立てられてはいないし、「第二極」の「国民の生活が第一」のような一側面的特徴を押し出す形の旗としてさえ立てられてもいない。しかし「第三極」の形成に向けて備えがなければならない。
労働者民衆は、これからの一時代の支配体制を確立しようとしているブルジョア階級に対抗して、自己自身の政治勢力を形成しなければならない。そこにおいて土台となるのは、非正規層への立脚と階級的団結の形成であり、地域を基盤とする相互扶助社会の創出である。それらの発展こそが、労働者民衆の政治勢力としての強さの基になるものである。
 だが、そうした「第三極」をなす政治勢力が、それとしてただちに形成できる状況ではない。いま政治の領域において労働者民衆の圧倒的大多数が求めているものは、政治の流れの転換である。より正確にいえば、小泉・安倍路線を背後に隠した福田政権を打倒して、はじまった政治の転換を政権交代として完遂することである。
労働者民衆自身の政治勢力の形成という見地からみても、人々がこの政治経験をくぐることは大きな意味を持つ。人々は新政権に、「国民の生活が第一」を期待する。新政権は、この期待にそれ相応にこたえねばならないから、その下で民衆の運動と地域社会の再構築を大きく発展させる諸条件を勝ち取ることが可能となるだろう。同時に新政権の「国民の生活が第一」は、中途半端に終わらざるを得ないし、経済停滞をまねいて新自由主義政策への回帰の転回点となるという代ものでしかないから、新政権と労働者民衆の矛盾が拡大する。その中で人々は、「第三極」形成を自己の生活にとって切実なものとするだろう。
実際の展開は大連立の動きもからむ複雑なものとなるだろうが、その全過程は、労働者民衆の利益の見地から左翼がふるいに掛けられる過程になる。その中で左翼の政党・政派は、諸々のセクト主義を打破し、横のネットワークを広げ、時代を画する再編成を成し遂げることが求められるのである。
巨大投機資本と多国籍企業のグローバルな自己増殖運動が日本の社会をも崩壊させ始めた時代状況の中で、これからの時代の支配の在り方をめぐる支配階級の側の路線形成と政治再編が路線対立を顕在化させながら先行してきた。だが民衆の側においてもまた、旧来の運動の在り方からの転換、政治・組織的流動、路線の模索という過程が深く進行している。
 共産主義者は、この過程を推進する態度が求められるし、その中で自己の理論と政治・組織の在り方が試され、力量も問われる。民衆の大連合的なネットワーク・統一戦線を形成する中において、同時に共産主義者の団結・統合を模索していかねばならない。
                                            (以上)

       
               任 務

    新自由主義、戦争政策に反対し、「第三極」の形成に向けて奮闘しよう


    以上の世界・日本情勢をふまえて我が党は、当面の任務を次のように定める。

1、 福田・自公連立政権を打倒しよう。
      民衆の利害を代表する「第三極」の形成を準備しよう


 日本の労働者民衆は、新自由主義政策とその諸結果に対する批判を強めており、福田・自公連立政権の打倒・政権交代を求める方向に向わずにいない。この民衆の求めるところから離れて、セクト主義的な態度をとる政党は淘汰されるだろう。わが党もまた、この間の政治の流れの転換を、自公政権打倒として完遂する態度をしっかり堅持しなければならない。
 同時にわが党は、自公政権の打倒によって形成される新政権が、新自由主義と決別できず、動揺的な政権たらざるを得ないこともおさえ、民衆の利害を代表する「第三極」の形成を準備していく。
 民衆の利害を代表する「第三極」の実現には次の三点が不可欠である。それは第一に、我が党が結党以来掲げ闘いとってきた非正規・失業労働者の闘いの組織化。つまりユニオン・個人加入制中小単産を主力とする地域社会に根ざした日本労働運動の発展である。我が党は労働者大衆とともに、これを基礎に「第三極」を形成する。そしてそのことによって、日本労働運動の新しい潮流のさらなる前進を実現する。なぜなら「第三極」が労働者民衆の団結を形成して格差社会の廃絶へと導き得ない時は、右へと雪崩うつ可能性が存在するからである。
 第二に、我が党は右への政治の流れを止め、崩壊が進む地域社会の再構築を目指しつつ、日本革命に勝利できる地域的統一戦線の実現のために労働者大衆とともに奮闘してきた。その活動によって地域の運動組織相互の連携や、市民運動と労働運動との連携、ネットワーク作りが一歩一歩前進している。この運動の成果を基礎として、我が党は労働者大衆とともに「第三極」を実現する。それは革命の勝利にむけた地域的統一戦線の飛躍的な拡大をもたらすにちがいない。
 第三は、左翼政治勢力の広範な共同を具体的に支持し支援する活動を強化して左翼の横のつながりを強めることである。「第三極」の形成には労働者民衆の側の結び付きを強めることが求められている。そのためには、まず左翼の自己変革と路線・戦術の相違を超えた横のつながりが必要である。
 我が党は、これまで労働者大衆とともに闘いとってきた成果をてこに「第三極」形成のために奮闘する。この活動によってさらなる革命への道・地域的統一戦線の強化から全人民の統一戦線の実現が可能になるであろう。また予想される衆院選では、自公政権の打倒・政権交代の実現を第一におきつつ、「第三極」勢力の前進を念頭に活動を進める。

2、 憲法改悪・戦争政策に反対し、新自由主義による格差拡大・貧困の
     深刻化等、耐え難い生活苦を許さず闘いを組織しよう


 第一に、改憲手続法が通常国会で強行に成立させられたことを踏まえ憲法改悪反対の大衆的な闘いを全国の職場地域で組織することである。平和主義を破壊し、立憲主義を空洞化させる憲法改悪の意図を全国各地で宣伝し、労働者民衆による政治的、運動的な総団結、ネットワークを形成する。そして、職場地域で九条改悪反対の運動を幅広く組織し、「憲法審査会」の始動を阻止する。
 第二は、全世界人民と団結してアメリカ帝国主義等の戦争政策に断固として反対し、闘争を強めることである。「テロ特措法」の再々延長を許さず、アラビア海での多国籍軍への給油活動を中止させるよう活動する。そして航空自衛隊によるイラク侵略軍への後方活動を停止させ、イラクからの完全撤退を実現する。そのためにも「海外派兵恒久法」の成立を必ずや阻止しなければならない。
 さらに我が党は、辺野古の闘いを始めとした沖縄、岩国、座間、厚木などの反基地闘争を闘い、全国の空港、港湾等の軍事利用に反対して闘う。
 また東アジアの人民と連帯し、東アジアの核問題の公正かつ平和的な解決のために闘い、拉致問題をテコにした経済制裁をやめさせて、日朝国交正常化交渉の再開を要求する。戦前の侵略の歴史を偽造し、「北朝鮮脅威論」や「中国脅威論」を強調し、排外主義、ナショナリズムを煽りたてる政府与党等の反動的イデオロギー政策とも断固闘い奮闘する。
 第三の課題は、格差拡大と貧困層の増大、そして社会保障の抑制・圧縮、増税によって、労働者大衆の生活がますます耐えがたいものになってきている現状を打破することである。新自由主義による弱肉強食の諸政策によって格差がますます増大し、貧困層が増大している。非正規雇用の拡大と低賃金、首切り等労働問題からくる貧困、医療等社会保障の後退からくる貧困など深刻な社会問題が山積みしている。それにもかかわらず政府与党は、年金医療等で負担の増大、給付の削減を画策し、生活保護支給の抑制、自立支援の名による障がい者の生活破壊などを無慈悲におし進めている。そしてさらに労働者大衆からしぼりとろうと消費税率のアップを目論んでいる。法人税は引き下げ、労働者大衆からはしぼりとることによって、生活は耐え難いものになってきている。後期高齢者医療制度では労働者民衆の怒りが高まり、国会での座り込み等、各地で不満が噴出し、署名運動など闘いが行なわれている。投機マネーによる食料価格の暴騰によって生活費が上がり、一層生活が耐えがたいものになっていることも事実であり、世界では多くの人々が命を落としている。
 我が党は、新自由主義による格差拡大と深刻な貧困層の増大、社会保障の削減、増税による耐え難い生活苦、そのことを見すえ、後期高齢者医療制度や消費税引き上げ等に反対して、労働者大衆とともに闘いを組織するために奮闘する。

3、 個人加入制ユニオンを主力とした新しい労働組合運動を発展させ、
     さらなる日本労働運動の新潮流の前進を勝ち取ろう


 非正規労働者の賃金・労働条件は劣悪なものであり、ワーキングプアの層が増大している。若者の中には日払いのその日暮らしの労働者もふえている。我が党は任務達成にむけ、パート、派遣など非正規労働者の賃金・労働条件を大幅に改善し、健康で文化的な生活水準を獲得するために闘う。また、最賃法違反、サービス残業、偽装請負などを摘発し、ナショナルセンターの枠を越えた地域の労働者の団結を促進し、地域の最賃共闘形成にむけて奮闘する。そして地域最賃向上の布陣を作りながら全国一律の最賃制を目指して闘う。二〇〇七年十一月、民主党と自民党が合意し国会審議なくして労働契約法と最低賃金法改定案が可決成立した。労働法制全体の闘いとてしは当面、派遣法改定が焦点化するが、就業規則万能の実質化を許さない事を含め、闘いはまだこれからである。格差拡大、権利破壊の労働法制を阻止し人間らしく働ける労働法制を勝ち取るために労働者大衆とともに奮闘する。
 「ホームレス自立支援法」見直し年度を経て今年七月、基本方針改定を求め運動が行なわれている。野宿労働者支援の実効ある施策を追求し、実効ある基本方針を勝ちとるべく全国的な力で取りくみが行なわれている。我が党はその先頭に立って奮闘し、反失業闘争前進のために今後も全力で活動する。
 我が党は新たな日本労働運動の潮流発展のために、これらの闘争を重視して活動を進める。そして、政治課題をとらえ、地域の市民運動、労働運動組織とも連携して闘いを進め、運動組織相互の連携や幅広いネットワークの形成を推し進める。我が党はこのことによって、日本労働運動の新しい潮流の飛躍的発展を勝ち取るために、労働者大衆とともに奮闘する。

4、 地域的統一戦線を実現しよう

 我が党は、第三回大会決議に基づき、地域的統一戦線実現のために奮闘してきた。その活動によって勝ち取られた成果を更に発展させねばならない。
そのために我が党は次の闘いを重視する。それは、新自由主義により急速に荒廃する地域社会建て直しのためにたたかうことでる。夕張市につづく再建団体の予備軍が増大し、多くの自治体が「連結赤字」に至っている。社会保障費の抑制で医師不足も顕著になり、地方間格差も拡大している。地方自治体の財政自主権を確立する闘いを推進し、税制改革などによる地方格差を是正するために我が党は、労働者大衆とともに闘う。それとともに、地域での学校、医療、自然破壊、高齢者問題、子育て、仕事づくり、反差別闘争など諸分野の闘いをもりあげ、市民運動、住民運動、NPO、協同組合、労働組合などが連合し、公平で平等な地域社会建設のために闘う。我が党は、これらの闘いの先頭に立ち、労働者大衆の願いに基づく地域づくりから未来社会建設に向けた教訓を導き出す。

5、 世代交代を実現して自力の党建設を推し進め、
          誠実な共産主義者との団結を推進しよう


 我が党は、新自由主義に敢然と立ちむかい、「第三極」形成の闘いを推進して革命の陣形を勝ち取るために、@若い次世代の同志を迎え入れ、世代交代を実現して自力の党建設を推し進める。そのためにも我が党は、各地方組織の政治的思想的な団結を強化し、党活動の活性化をはかって党勢を拡大する。Aそれと同時に我が党は、引き続き政治路線の基本的一致による共産主義者との団結・統合を求めて活動を推し進める。B党は左翼の共同を具体的に支持・支援する活動を強め、左翼の横の連携を強化する。そして、左翼政党・政派・個人による様々な共同形態を支持し、その合意の発展を支援して活動する。
 これらの活動は必ずや「第三極」の形成発展に貢献するものであり、我が党は、その一翼を断固として担い、労働者大衆の解放のために奮闘する。 
         
                                    (以上・全文了)