日米両政府は、7・18沖縄県議会決議を尊重し、新基地建設を断念せよ
  沖縄・全国で「決議」連動の行動を

 七月十八日、沖縄県議会は辺野古新基地建設に反対する決議を賛成多数で可決し、それに基づき七月二九日〜三十一日には、県議要請団が東京で日米両政府に意見書を提出し要請行動を行なった。
 この県議会決議は、六月の沖縄県議選で仲井真県政与党の自民・公明が敗北し、野党六会派が過半数を制する26議席を獲得し勝利したこと、また新基地「海上案」が破産したあとの「沿岸・V字案」に対しても県民の圧倒的多数が反対し続けていることによって、可能となったものである。
 この「名護市辺野古沿岸域への新基地建設に反対する決議・意見書」は、第一に、新基地建設は基地の新たな負担過重と固定化であり、県民は一貫して反対してきたこと、第二に、国天然記念物ジュゴンが生息するなど世界にも類を見ない美しい辺野古沿岸域の環境破壊にも、県民は広く反対してきたこと、これらを踏まえ日米両政府に新基地建設撤回を求めるものである。これまでの諸決議と比べると、「世界に誇れる自然環境をのこし後世に引き継ぐことは県民の責務」として、基地による自然環境破壊への反対を強く出していることが特長である。
 これまでの経過をみると、大田県政時代の一九九六年七月の県議会では、「普天間全面返還促進、基地県内移設に反対する決議・意見書」が全会一致で可決されている。この決議は、同年四月に橋本首相・モンデール大使による「普天間全面返還」合意が発表されたが、これが県内移設を前提としていることに対抗したものであった。その後、日本政府は稲嶺県政を作り出し、県議会も一転して、九九年十月には「早期県内移設」要請決議を与党が強行することとなった。〇五年十二月には「沿岸案」反対が全会一致で決議されるが、これは稲嶺知事による「海上案」なら条件付賛成という対応を支えるための代物であり、真の反基地決議ではなかった。結局、SACO合意の「海上案」は反対運動によって破産し、それに代わり日米両政府は、米軍再編合意の一環として「沿岸V字案」を強行した。
 今回の決議は、日米のこの現行案に反対する初めての決議である。沖縄県民の意思が県議会決議によって代表されるとすれば、今回〇八年の決議は、十二年ぶりに沖縄民衆が日米両政府に真っ向から対峙する格好になったと言えるのである。
 決議は25対21で、議長1を含めると野党26名によって可決された。傍聴席をうめた数百名の歓声があがった。決議前日の十七日には、「基地の県内移設に反対する県民会議」の主催によって、県議会前の県民広場で緊急県民集会がひらかれ約四百名が参加している。野党六会派の代表や、ヘリ基地反対協の安次富浩さんらがアピールし、明日の歴史的な決議から新基地阻止の積年の闘いの勝利へ前進しようと訴えた。
 決議後の県議会野党会派による要請団(団長新里米吉・社民)の東京行動に対し、予想されたこととはいえ、日米当局は県民意思への冷たい姿勢に終始した。日米当局は、県民の頭ごなしに決められた沖縄基地再編のパッケージ論を繰り返して要請を拒否し、日米軍事再編合意を何としても守らんとしている。決議を不当にも無視する仲井真県知事に、日米当局は救われているとも言える。しかし、当局側を最も救っているのは、低調な「本土」世論と言うべきだろう。沖縄では県議会決議の次をどうするか、が広く関心事となっているが、「本土」では決議の意味、その事実すらよく知られていない。
 なお要請最終日の七月三十一日には、東京・市谷の防衛省に対して「沖縄県議会決議を尊重し、辺野古沿岸への基地建設の断念を求める要請行動」が沖縄一坪反戦地主会関東ブロックの呼びかけで行なわれ、県議要請団の一人の玉城義和さん(県議会副議長・社民、ヘリ基地反対協顧問)が参加した。
 他方、仲井真知事は決議が可決された七月十八日のその日に、決議など知らぬとばかりに東京で、日本政府との普天間移設措置協議会に参加している。この日の協議会で、知事と町村官房長官は、「普天間飛行場の危険性除去に関する」実務と「代替施設の環境影響評価を円滑に進める」実務の二つの作業班を設けることに合意した。これについて仲井真知事は二五日、「沖合移動の暗黙の了解があるから、実務者協議がスタートする」などと述べている。その後の内閣改造で町村は官房長官に留任し、八月五日にはこの作業班の協議が始められた。
仲井真知事は、沖縄県民のほとんど誰も支持していない「沖合移動」案を、県議会決議の後も平気で掲げ続けているが、今や「沖合移動」云々は、辺野古でのエセ・アセスメントの作業完了を急ぐ日本政府の煙幕以外の何物でもないことが明らかだ。
 さて、玉城義和県議は三十一日の防衛省前でのアピールでも、県議会決議だけではダメで、連動した大きな運動が必要だと強調している。沖縄の「県民会議」は新基地阻止の最も広い共同戦線であるが、7・18決議をテコに県民会議を再活性化させることが求められている。しかし、その主催で七月十七日の緊急集会をやったものの、沖縄で大衆運動の結集軸として再活性化しつつあるとは依然言い難いものがある。
沖縄県議選につづく選挙戦では、十一月の那覇市長選挙が近づいており、野党統一予定候補として平良長政氏(前県議・社民)が野党間で合意された。これに勝つ必要があるが、沖縄民衆の意思よりも政党合意が優先した動きとなる危惧がある。平良長政氏は沖縄社民党の「実力者」であるが、〇六年の沖縄県知事選で党利党略によって選挙戦を混迷させ、その敗北をもたらした責任者の一人である。
沖縄民衆の反基地の意思を存分に引き出し、日本政府に一致して対抗していくための、沖縄民衆本位の政治態勢が求められている。九月中の大衆集会が予定されつつあるが、現在の沖縄のお盆が終わった後、時間を置かずに大きな運動が必要だ。議会野党過半数に連動し、それを活かしきる沖縄民衆の統一戦線を登場させよう。(A)