編集部だより

★最近耳目を集めたことの一つは、三月のチベット暴動と、それに続く四月の北京オリンピック聖火騒動である。チベット問題が左翼紙を含めメディアで大きく論じられることは、日本では珍しく、一九五九年のチベット動乱以来のことかもしれない。その意味ではチベット独立派の作戦(?)が当たったのかもしれない。★今日のチベット問題への基本的態度は、現在のチベットが中国の領域の一部であることを認めつつ、チベット民族の民族自決権が支持されるべきだということに尽きるだろう。民族自決権とは狭義には、国として分離するか結合するか、結合するとすれば自治制か連邦制か、これらは当事者民族に決定権があるということだ。★中国の愛国主義にすれば、蔵独も、台独も、香港回収も、かっての日本軍国主義による満州「独立」や内蒙古「独立」も、ひとしく外国勢力が干渉する「祖国分裂」との闘いという括り方になるのだろう。冷戦時代のチベット問題は、確かにそうした性格が強かった。しかし時代と状況は動いてくる。★共産主義者にとっては民族自決権の承認は、民主主義的事項であるだけでなく、民族間の、とくに抑圧民族側の労働者が被抑圧民族側の労働者の心からの信頼を得て、労働者階級の国際連帯を推進するための道筋である。しかし民族自決権の承認は万能薬ではない。自決権の名によって民族主義が煽られ、労働者の分断がもたらされる場合もある。万国の労働者団結せよ!(若杉)