道路暫定税率期限切れは、自公連立政権の終わり
  「再議決」阻止し倒閣へ

 四月一日、ガソリン税など道路特定財源の暫定税率が期限切れとなり、このかんの国会での与野党の攻防(三面参照)は、道路関係暫定税率を復活させる税制法案(租税特別措置法改定案)の衆院での「再議決」を阻止できるか、できないか、という局面に突入した。
いま労働者人民に問われる第一には、この税制法案の衆院「再議決」による成立という自民党の強硬策を、国会の諸野党と協力しつつ木っ端みじんに粉砕し、福田連立政権の打倒もしくは解散総選挙を強制するために闘うことである。
第二に、この「再議決」を焦点に混迷するブルジョア政治の総体に対峙しつつ、自民・民主の二大ブルジョア政党に対決する「第三極」的な左翼政治勢力を、当面の情勢との闘いの中で、強力に前進させることが問われている。自民・民主が基本路線的に一致し、「大連立」的に進めようとしている派兵恒久法と憲法改悪の策動、G8洞爺湖サミット「成功」の策動などに、断固たる大衆闘争で対決しよう。
当面の第一の課題、税制法案「再議決」の阻止は、福田政権の終わりに直結する闘いである。四月一日のガソリン期限切れ・値下げは、昨年十一月一日の自衛隊艦船インド洋派遣の期限切れ・一時撤退の事態と政治手続き的には同様の事態であり、「立ちすくむ政治」(朝日新聞社説)と評されて、自民公明連立政権の末期状態をばくろするものとなっている。ガソリンが少々値下がりしたこと自体が重要なのではない。税金徴収が政治闘争によって法的に執行できなくなったことはおそらく戦後初の事態であり、民主党の思惑を越えて、情勢がおおきく転換しつつあることを示している。
今回も自民党は、一旦撤退した海上自衛隊を新テロ特措法の「再議決」によって再派遣したように、税制法案の「再議決」によって暫定税率を復活させようとしている。こうした「再議決」の乱発は、自民・公明が昨年の参院選挙での与党大敗にもかかわらず、衆院での三分の二多数(小泉首相時代に謀略的郵政解散で一時的にかすめ取った議席)にしがみつき、解散総選挙を引き伸ばして、与党の政治を強行しようとしている結果である。今回、「再議決」を強行しえたとしても、それは、利権と戦争参加の政治を続ける自公連立政権の醜悪さをばくろし、また日本政治の国際的評価を失墜させるだけに終わるだろう。(福田首相は最近、ガソリン値下げでは地球環境がテーマのサミットなのに恥ずかしいという宣伝を急にやり出したが、恥ずかしいのは福田の統治能力のほうだろう)。今回は税金の問題であるだけに、経済的利害に敏感な公明党が動揺しており、政権危機が近づきつつある。
「再議決」は、憲法の六十日規定により四月二九日以降可能となる。四月二七日の衆院山口2区補選は、日本共産党が初めて候補を立てない形での与野一騎撃ちとなっており、これで野党側が勝てば一挙に議会政局は激動となる。
このかん、この「道路ガソリン問題」では、総選挙をにらんだブルジョア諸党の政争という性格が表面に出るため、労働者人民の対政府大衆行動の具体的課題となるのではなく、政争を見物する「観客」の席に国民は押し込められてきた。しかし我われが「観客」であるかぎり、今後、ブルジョア諸党の手打ちもまた容易となってしまう。税制法案「再議決」阻止!の大衆闘争を組織しよう。
第二の課題では、福田政権は安倍政権のようには明文改憲を急いでいないが、それだけに実質的な改憲としての「派兵恒久法」の制定を急ぎ、今国会中の提出を策している。一方、自民・民主などの参加で「新憲法制定議員同盟」(会長・中曽根元首相)が三月四日に発足した。民主党からは、その顧問に鳩山幹事長、副会長に前原副代表が参加した。国会の憲法審査会を始動させ、改憲スケジュールを立て直そうとしている。来る5・3の大衆行動で、派兵恒久法と改憲派の巻き返しを粉砕しよう。
七月七〜九日の洞爺湖サミットを始め六月京都の外相サミット、四月東京の開発相サミットなどで、世界の帝国主義ブルジョア諸政府が、動揺する主柱・米帝との関係を調整し、グローバルな搾取・収奪体制を強化せんとしている。環境問題はおしゃべりに終わるだろう。その主催国政府を打倒することは、日本人民の世界人民へのおおきな国際貢献にほかならない。反サミット行動と福田政権打倒闘争をむすびつけて闘おう。


「道路国会」
  予算は通っても税制法案は通らず
  頓挫した「一般財源化」首相提案

 二〇〇八年度の一般会計予算が三月二十八日夜に成立した。規模は、八三兆六一三億円である。同日の参院では野党の反対多数で否決されたが、衆院優先の憲法規定で政府案が成立した。
 この間、道路特定財源をめぐり、与野党のチキンレースがつづき、こちらの方は、会期末を越えて、四月になだれ込むことは必至となった。
 その前日、三月二十七日に、福田首相は、道路特定財源をめぐるこの間の熾烈な攻防の中で、突然、緊急記者会見を行ない、次のような新提案を行なった。@さまざまな「混乱」を回避するために、〇八年度の歳入法案は年度内に成立させる。A道路関連の公益法人や特別会計の無駄は排除する。B道路特定財源制度は、今年の税制抜本改革時に廃止し、〇九年度一般財源化する。C暫定税率分も含めた税率は、環境問題、地方の道路整備、厳しい財政状況を踏まえて検討する。D10年間で59兆円の中期整備計画は、5年間に短縮し策定し直す。
 この首相の新提案に対して、民主党は、〇八年度からの暫定税率廃止が峻拒されたため、
ガソリン税などの暫定税率の継続を含む税制関連法案の年度内採決を厳しく拒否した。
しかし、翌二十八日には、三月末に期限がくる特別租税措置(注)をめぐって、与野党の妥協が成立した。すなわち、道路特定財源の問題を除き、暫定税率の期限を五月末まで二ヶ月延長することで合意したのである。
こうして民主党がこだわったガソリンの値下げは、一時的には実現されることとなったが、争点の全体が持ち越されることとなった。今後、「大連立」的妥結のための土台として首相提案が復活する可能性があるが、暫定税率と道路中期計画の基本的維持では、首相の言う「一般財源化」の真意が疑われる。たしかに、道路特定財源の問題は、政官業(財)のトライアングルの利益誘導型政治を象徴するものであり、不明確な妥協は決して許されないものである。
弱肉強食の新自由主義が推進した社会全般の二極化の進展は、小泉構造改革の名による財政改悪でさらに加速された。その財政改悪は、一言で言えば、「小さな政府」や「国際協力の強化」を名分とした企業や金持ちの減税であり、減少した分は社会保障費や地方交付税などの大幅削減でとりつくろってきた。その結果が、昨年の参院選での自公の歴史的大敗である。
安倍に代って登場した福田内閣は、地方票の再獲得を目指して打ち上げたのもの一つが中期道路整備計画である。それは、まさに「土建国家ニッポン」の全盛期の政策の無反省な復活でしかない。
一方で、医療費高騰、医師不足、介護費不足など、社会保障の全般的劣悪化や、過疎地や高齢者の多い地方のみならず、東京など一部を除く都道府県の全般的な財政悪化などで、多くの人々が苦しんでいる。それなのに、他方では、新自由主義の政策で「勝ち組」なるものに属した者だけでなく、旧来からの特権に守られて、多くの人々の犠牲の上に甘い汁を吸っている高級官僚たちも依然として存在し続けている。
衆議院の調査によると、天下りした国家公務員は、昨年四月現在で、四六九六法人に二万六六三二人存在している。この四分の一である六四二二人が国土交通省の出身である。
そして、これらの天下りした特殊法人・独立行政法人、民間企業へ国が〇六年度に発注した事業は五兆七八〇五億円、補助金は六兆八一七三億円、合わせて十二兆五九七八億円にも上っている。しかも、これらの事業契約の98・3%が随意契約である。
国家予算は、近年、社会保障費の自然増を圧縮するために、毎年二二〇〇億円削減し、小泉一体改革では、地方交付税が五・一兆円も削減されている。それなのに、国家公務員の天下りのために、すくなくとも数兆円が費消されているのである。
国土交通省の調査では、〇六年四月一日現在、同省所管の50法人のうち、16法人では、役員(非常勤を含む)の数が一般職員の数を上回っているという(『毎日新聞』三月一六日付け)。まさに人民をみくびった、ふざけきった所業という他にはない。
道路特定財源制度を、抜本的に改革するだけでなく(本紙前号、前々号を参照)、政官業の癒着をたちきり、官僚・官僚OBの特権を根本的に一層しなければならない。(T)

(注)租税特別措置とは、時々の政権の一定の政策目的を実現するために、企業や特定の個人に対して、多くは特別の減税を行うもので、一種の補助金といわれる。これは、日本経済の復興を名目に一九五〇年代から始まり、高度成長期にさまざまな企業減免税の種類が増えた。今日でも、国税分だけで三〇〇件近くあり、企業の研究開発を促す「研究開発税制」(〇七年度減収額約六千億円)や「住宅ローン減税」(同前約八千億円)などが大規模なものである。しかし、租税特別措置は、減税だけでなく、逆の増税もある。ガソリン税に上乗せされている暫定税率もその一つである。租税特別措置法の改正案は、毎年度の予算審議時に、国会提出されている。